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§1. 方向余弦(3次元ベクトル)
§2. 方向余弦(2次元ベクトル)
【定義】 方向余弦とは、$\vec{0}$ でないベクトルをその大きさ(長さ)で割って、単位ベクトルにしたときの各成分のことである。すなわち
$\frac{1}{|\vec{v}|}\vec{v}=(v_{x},v_{y},v_{z})$ または $=(v_{x},v_{y})$
としたときの
$v_{x},v_{y},v_{z}$ または $v_{x},v_{y}$ である。
2次元の場合、偏角(ベクトルと $x$ 軸の正の向きとのなす角)を $\theta$ とすれば、方向余弦は
$\cos \theta,\sin \theta$である。 「方向余弦」なのに、正弦が出てくる。
平面上における直線なら傾きを考えればよいが、空間内における直線の方向を考えるには方向余弦なる概念が大切だ。
方向余弦とは何だろう。
空間ベクトルの向きを考えようとすると、各座標軸とのなす角を知らねばならない。でも、このとき左回りに測ろうとしてもどこを軸にして左回り、右回りを決めればよいかが分からない。
なぜなら、左回りとは反時計回りのことであるが、それは文字盤を表側から見て言えることであって、3次元(以上)の世界ではどっち側を表と言ってよいか、分からないのだ。
そこで、サイン・コサインを定義したときのように有向的($-\infty<\theta<\infty$)に測るのではなく、絶対的に($\theta \geq0$)に測るしかない。
つまり、角の測り方には、左回りと右回りとを区別するものと、しないものとの2種類、すなわち
の2つがあるわけだ。地球の緯度・経度は(北緯、南緯等は符号と考えれば)前者の例で、「正三角形の各内角の大きさは $60^{\circ}$ である」と言うときは後者である。
この2つは、直線上を運動する物体の速度(有向的)と速さ(絶対的)の関係のようなものだ。
任意の空間ベクトル $\vec{u}$ が各座標軸($x_{i}$軸)の正の向きとなす角を $\alpha_{i}(0^{\circ}\leq
\alpha_{i}\leq 180^{\circ})$ とする。ここでもし $\vec{u}$ の長さが 1 ($\mid\vec{u}\mid=1$)ならば
$ \vec{u} = \cos \alpha_{1}\vec{e}_{1}+\cos \alpha_{2}\vec{e}_{2}+\cos \alpha_{3}\vec{e}_{3} $
(各 $\vec{e}_{1}$ は $ x_{i}$軸を生成する基本ベクトル)
と表わされる。--- 実際、$ \vec{u} = k_{1}\vec{e}_{1}+k_{2}\vec{e}_{2}+k_{3}\vec{e}_{3} $ とすれば、
$\cos \alpha_{i}=\frac{\vec{u} \cdot \vec{e_{i}}}{|\vec{u}||\vec{e_{i}}|}=\frac{k_{i}}{|\vec{u}|}=k_{i}$
だからだ。長さが 1 でないときは、$\vec{u}$ を $\mid\vec{u}\mid$ で割ったものを改めて $\vec{u}$ とおけばよいことも分かる。
ここに出てきた 基本ベクトルの係数の $\cos\alpha_{i}$ 達が方向余弦である。
$\cos, \sin, \tan$ と3つあるうち、偶関数であるのは $\cos$ だけで、ひとり $\cos$ は特殊な位置に立つ。偶関数だから、角を有向的に測ろうが絶対的に測ろうがお構いなしなのだ。方向余弦があるのに、方向正弦や方向正接がないわけだ。
【問題】 $\vec{0}$ でないベクトル $\vec{v}=(x,y,z)$ の方向余弦を求めよ。---
【解】 このベクトルと向きは同じで、長さが 1 のベクトル $\vec{u}$ を求めるには、$\vec{v}=(x,y,z)$ をその長さで割ればよい(逆数を掛ければよい)。よって
$\vec{u}=\frac{1}{|\vec{v}|}(x,y,z)=\frac{1}{\sqrt{x^2+y^2+z^2}}(x,y,z)$
$=(\frac{x}{\sqrt{x^2+y^2+z^2}},\frac{y}{\sqrt{x^2+y^2+z^2}},\frac{z}{\sqrt{x^2+y^2+z^2}})$
前述のように、このベクトルが
$\cos \alpha_{1}\vec{e}_{1}+\cos \alpha_{2}\vec{e}_{2}+\cos \alpha_{3}\vec{e}_{3} $
$=\cos \alpha_{1}(1,0,0)+\cos \alpha_{2}(0,1,0)+\cos \alpha_{3}(0,0,1) $
$=(\cos \alpha_{1},\cos \alpha_{2},\cos \alpha_{3}) $
に等しいのであるから、$x,y,z$ 軸方向の方向余弦はそれぞれ
$\cos \alpha_{1}=\frac{x}{\sqrt{x^2+y^2+z^2}}$,
$\cos \alpha_{2}=\frac{y}{\sqrt{x^2+y^2+z^2}}$,
$\cos \alpha_{3}=\frac{z}{\sqrt{x^2+y^2+z^2}}$ …(答)
ただし、$\alpha_{i}$ は $\vec{v}$ と $x_{i}$ 軸($x_{1}=x,x_{2}=y,x_{3}=z$) の正の向きとのなす角である。
上の答から、次の公式が得られる。
【公式】 $\cos \alpha_{1}^2+\cos \alpha_{2}^2+\cos \alpha_{3}^2=1$
平面上の単位ベクトルの方向余弦を考えるとどうなるか。
$ \vec{u} = \cos \alpha_{1}\vec{e}_{1}+\cos \alpha_{2}\vec{e}_{2} $
だが、もし $\vec{u}$ を $x$ 軸の正の部分から左回りに測った角が $\theta(-\infty<\theta<\infty)$ であったとすると、$\cos \alpha_{1}$ のところは $\cos \theta$ で置き換わる。
早とちりしないでいただきたいのは、$\alpha_{1}=\theta$ とは限らないということだ。$0^{\circ}\leq \alpha_{i}\leq 180^{\circ}$ ではあるが、$\theta$ の方は負にもなりうるし、$180^{\circ}$ を超えることもありうる。
それでも
$ \cos \alpha_{1}=\cos \theta $
が成り立つ。
さて、$\cos \alpha_{2}$ の方はどうか。「余角の三角比」の節でやったように、$x$軸と $y$軸とをひっくり返せばよい。そうすると $\vec{u}$ に属する角は $y$ 軸の正の部分を基準にして測って
$ 90^{\circ}-\theta $
になる。なぜなら、$90^{\circ}$ から逆向きに $\theta$ だけ戻るからだ。(と言いながら、これで正しいことは意外と難しい。$-\infty<\theta<\infty$
なることに注意して、どんな角でもそうだと言えるか考えてみていただきたい。)
ともかく
$ \cos \alpha_{2}=\cos (90^{\circ}-\theta) $
になることが言えた。(ここでも $\alpha_{2}=90^{\circ}-\theta$ であるとは限らない。)
そもそものサインの定義に戻って考えれば、
$ \cos \alpha_{2}=\sin\theta $
だったから、
$ \cos (90^{\circ}-\theta) =\sin\theta $
という等式が一般角においても成り立つことが示される。
【問題】 $\vec{0}$ でないベクトル $\vec{v}=(x,y)$ の方向余弦を求めよ。---
【解】 前節より次元が 1 下がって、$x,y$ 軸方向の方向余弦はそれぞれ
$\cos \alpha_{1}=\frac{x}{\sqrt{x^2+y^2}}$,
$\cos \alpha_{2}=\frac{y}{\sqrt{x^2+y^2}}$ …(答)
ただし、$\alpha_{1},\alpha_{2}$ はそれぞれ $\vec{v}$ と $x$ 軸、$y$ 軸の正の向きとのなす角である。
$\cos\alpha_{1},\sin \alpha_{1}$
が方向余弦であると言っても正解である。
第1の答から、次の公式が得られる。
【公式】 $\cos \alpha_{1}^2+\cos \alpha_{2}^2=1$
上述のように、$ \cos \alpha_{2}=\cos (90^{\circ}-\alpha_{1})=\sin\alpha_{1} $ だから当然である。
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