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有理係数で因数分解できたら整係数でもできる

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$2x^3+7x^2-2$ を因数定理で因数分解しようとすると、$x=\frac{1}{2}$ を代入して $0$ だから
   $2x^3+7x^2-2=(x-\frac{1}{2})(2 x^2+8 x+4)$
となることが分かる。

ところで、ここに「整数係数の多項式が有理数係数で因数分解できたのなら、整数係数でも因数分解できる」という定理(「ガウスの定理」と呼ばれる) があって、実際に
   $(x-\frac{1}{2})(2 x^2+8 x+4)=(2x-1)( x^2+4 x+2)$

では、この定理を証明しようと思うが、その前に次の補題を証明しておく。

【補題】 整数係数の多項式
   $f(x)=a_{0}+a_{1}x+a_{2} x^2+\cdots +a_{n} x^n$ $(a_{i} \in {\mathbb Z})$
が2つの整数係数の多項式
   $g(x)=b_{0}+b_{1}x+b_{2} x^2+\cdots +b_{m} x^m$ $(b_{i} \in {\mathbb Z})$,
   $h(x)=c_{0}+c_{1}x+c_{2} x^2+\cdots +c_{n-m} x^{n-m}$ $(c_{i} \in {\mathbb Z})$
の積になる、すなわち
   $f(x)=g(x)h(x)$
であるとする。このとき、$f(x)$ が素数 $p$ で割り切れれば、すなわち $\forall i(0 \leq i \leq n) :p \mid a_{i}$ であるなら、$g(x)$ または $h(x)$ もそうなる。

【証明】$g(x)$ も $h(x)$ も $p$ で割り切れないと仮定する。両者とも係数の中に $p$ で割り切れないものがいくつかある。その中で最も次数が低い係数をそれぞれ $b_{i_{0}}, c_{j_{0}}$ としよう。
$f(x)$ の $i_{0}+j_{0}$ 次の係数は
   $b_{0} c_{i_{0}+j_{0}} +b_{1} c_{i_{0}+j_{0}-1} + \cdots +b_{i_{0}-1} c_{j_{0}+1} +b_{i_{0}} c_{j_{0}} $
   $+b_{i_{0}+1} c_{j_{0}-1} +\cdots + b_{i_{0}+j_{0}-1} c_{1} +b_{i_{0}+j_{0}} c_{0} $
となるが、仮定より
   $b_{0},b_{1},\cdots,b_{i_{0}-1},c_{0},c_{1}, \cdots, c_{j_{0}-1}$
はすべて $p$ で割り切れるにもかかわらず $b_{i_{0}} c_{j_{0}}$ の項だけ割り切れないから、全体として割り切れない。これは矛盾である。■

【定理】 整数係数の多項式 $f(x)$ が2つの有理数係数の多項式
   $g(x)=\frac{b_{0}}{b'_{0}}+ \frac{b_{1}}{b'_{1}} x+\frac{b_{2}}{b'_{2}} x^2+\cdots +\frac{b_{m}}{b'_{m}} x^m$,
   $h(x)=\frac{c_{0}}{c'_{0}}+ \frac{c_{1}}{c'_{1}} x+\frac{c_{2}}{c'_{2}} x^2+\cdots +\frac{c_{n-m}}{c'_{n-m}} x^{n-m}$
の積になるならば、整数係数の多項式の積
   $f(x)=G(x)H(x)$
にすることができる。

【証明】 $g(x)$ の分母は最大公倍数で通分し、分子は最大公約数を括り出すことにして、
   $g(x)=\frac{q q' \cdots}{p p' \cdots}(B_{0}+B_{1}x+B_{2}x^2+ \cdots)$
ここに
   $\frac{q q' \cdots}{p p' \cdots}$
は既約分数であり、括弧内の多項式の係数
   $(B_{0},B_{1}, \cdots)$
の最大公約数は $1$ である。そうすると
   $f(x)=\frac{q q' \cdots}{p p' \cdots} \times \frac{s s' \cdots}{r r' \cdots}(B_{0}+B_{1}x+B_{2}x^2+ \cdots)(C_{0}+C_{1}x+C_{2}x^2+ \cdots)$
よって
   $(p p' \cdots)( r r' \cdots) f(x)=(q q' \cdots)( s s' \cdots)(B_{0}+B_{1}x+B_{2}x^2+ \cdots)(C_{0}+C_{1}x+C_{2}x^2+ \cdots)$
両辺は素数 $p,p',\cdots,r,r',\cdots$ で割れる筈だが、多項式の係数の最大公約数は $1$, すなわち
   $(B_{0},B_{1}, \cdots)=1$,
   $(C_{0},C_{1}, \cdots)=1$
だったから、
   $( s s' \cdots)= k_{1} (p p' \cdots) $ $(k_{1} \in \mathbb Z)$,
   $(q q' \cdots)= k_{2}( r r' \cdots) $ $(k_{2} \in \mathbb Z)$
したがって
   $f(x)=k_{1} k_{2} (B_{0}+B_{1}x+B_{2}x^2+ \cdots)(C_{0}+C_{1}x+C_{2}x^2+ \cdots)$■

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