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ii乗って、いくら?

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§1. オイラーの公式

テイラーの定理によれば、関数$f(x)$ は
   $f(x)=f(0) + f'(0)x + \frac{f''(0)}{2!} x^{2} +\cdots$
と無限級数展開される。したがって、
   $e^{x} = 1 + x + \frac{1}{2!}x^{2} + \frac{1}{3!}x^{3} +\cdots ,$
   $\sin x = x - \frac{1}{3!}x^{3} + \frac{1}{5!}x^{5} -\cdots ,$   
   $\cos x = 1 - \frac{1}{2!}x^{2} + \frac{1}{4!}x^{4} -\cdots $
となる。無限級数では収束するか否かが大切だが、上の3つの級数はいずれも $| x| < \infty$において収束する(証明略)。このことを収束半径が∞であるという。
さて、ここで指数関数$e^{x}$の独立変数$x$は実数なのだが、ここに純虚数 $i\theta$を代入してみると、
   $e^{i \theta} $
   $= 1 + i \theta - \frac{1}{2!}\theta^{2} - i \frac{1}{3!}\theta^{3} +\frac{1}{4!}\theta^{4} + \cdots $
   $= (1 - \frac{1}{2!}\theta^{2} +\frac{1}{4!}\theta^{4} - \cdots) +i( \theta - \frac{1}{3!}\theta^{3} +\frac{1}{5!}\theta^{5} + \cdots) $
   $=\cos \theta +i \sin \theta$
となる。($|i \theta| <\infty$だから収束する。)これをオイラーの公式という。

§2. 指数法則

指数法則
   $e^{x} e^{y} = e^{x+y}$ ……(1)
を証明してみよう。といっても数学Uに出てくる方法ではなく、テイラー級数を使う。
   $e^{x}e^{y} =( 1 + x + \frac{1}{2!}x^{2} + \frac{1}{3!}x^{3} +\cdots)( 1 + y + \frac{1}{2!}y^{2} + \frac{1}{3!}y^{3} +\cdots )$
   $=1+(x+y) + \frac{1}{2!} (x^{2} +2xy +y^{2}) +\frac{1}{3!}(x^{3}+3x^{2}y +3xy^{2} +y^{3}) + \cdots$
   $=1+(x+y) + \frac{1}{2!} (x+y)^{2} +\frac{1}{3!}(x+y)^{3} + \cdots$
   $= e^{x+y}$
である。
ここで先のように純虚数を代入すれば
   $e^{i \theta_{1}} e^{i \theta_{2}} = e^{i(\theta_{1}+\theta_{2})}$
これを繰り返せば
   $e^{i \theta_{1}} e^{i \theta_{2}}\cdots e^{i \theta_{n}}= e^{i(\theta_{1}+\theta_{2}+\cdots+\theta_{n})}$
すべての$\theta_{k}$を$\theta_{k}=\theta$とおけば
   $(e^{i \theta})^{n} = e^{i n\theta}$
これがド・モアブルの定理である。いまのところ$n$は正の整数である。三角関数を使って書き直すと
   $(\cos \theta +i \sin \theta)^{n} = \cos n \theta +i \sin n \theta$ ……(2)
ある仮定を設ければ、この公式は$n$が任意の整数のときに成り立つ。実際、複素数の0乗はまだ定義していなかったのだが、
   $(\cos \theta +i \sin \theta)^{0} =1$
と定義すれば、(2)は$n=0$のときにも成り立つ。また複素数の負数乗を(実数のときと同様に)逆数と定義すれば、途中分母を実数化して
   $(\cos \theta +i \sin \theta)^{-n} =(\frac{1}{\cos \theta +i \sin \theta} )^{n} $
   $=(\frac{\cos \theta -i \sin \theta}{1})^{n}$
   $=(\cos (-\theta) +i \sin (-\theta))^{n}$
   $=\cos (-n\theta) +i \sin (-n\theta)$
となるからである。

§3. 複素関数としての指数・対数関数

前節では指数法則(1)の指数$x,y$に純虚数を代入したが、今度は$y$だけに純虚数$iy$を代入してみよう。
   $e^{x+iy} = e^{x} e^{iy} $
でこのあと、オイラーの公式を使って
   $=e^{x}( \cos y +i \sin y)$
この関数、すなわち複素数
   $z=x+iy$
に対して、複素数
   $w=e^{x}( \cos y +i \sin y)=e^{Re z}( \cos Im z +i \sin Im z)$
を対応させる関数が、複素関数としての指数関数である。($Re z,Im z$はそれぞれ$z$の実部、虚部である。)
この指数関数は、直交座標で$(x,y)$の点を、極座標で$(r,\theta)=(e^{x},y)$の点に移す。
   
さて対数関数は指数関数の逆関数である。$x=\log r$であることと、偏角$\theta$は一意に決まらない($2 \pi$の整数倍だけの違いが生じる)ことに注意して
   $\log w = \log |w| + i(y+2n\pi),(n=0,\pm1,\pm2,\cdots)$
となる。1つの$w$に対して無数の$z$が対応するから、厳密に言うとこれは「関数」ではない。しかし大学では多価関数と呼んで、あたかも関数のように扱う。


【問題】 次の値を求めよ。
(1) $\log 1$  (2) $\log (-1)$  (3) $\log i$  (4) $\log(1+i)$ ---

(答) (1) $1=1(\cos 0 +i\sin 0) \Rightarrow \log 1=2n\pi i$
(2) $-1=1(\cos \pi +i\sin \pi) \Rightarrow \log (-1)=(2n+1)\pi i $
(3) $i=1(\cos \frac{\pi}{2} +i\sin \frac{\pi}{2}) \Rightarrow \log i=(2n+\frac{1}{2})\pi i$
(4) $1+i=\sqrt{2}(\cos \frac{\pi}{4} +i\sin \frac{\pi}{4}) \Rightarrow \log (1+i)=\frac{1}{2}\log 2 +(2n+\frac{1}{4})\pi i$

§4. ベキ関数の定義

ド・モアブルの定理が成り立つのは$n$が整数のときであった。たとえば$n=1/2$のときには成り立たない。$n=1/2$乗は√ だから、$\sqrt{x}$をテイラーの定理で無限級数展開すればよさそうなのだが、$\sqrt{x}$は$x=0$において微分可能でないから、それは無理な相談なのである。
$n=1/2$乗どころか、そもそもベキ関数$y=x_{1}^{x_{2}}$($x_{1},x_{2}$は実数)はどのように計算してきただろうか。両辺の対数をとって
   $\log y= x_{2} \log x_{1}$
だから
   $y=e^{\log y} =e^{x_{2} \log x_{1} }$ ……(3)
である。この(3)は対数微分法を扱わない教科書では、必須の公式と言ってよいだろう。

【問題】 $y=a^{x}(a>0)$を微分せよ。
(解1) $y=e^{x \log a} \Rightarrow y'=e^{x \log a} \log a = a^{x} \log a$
(解2) $\log y = x \log a \Rightarrow \frac{y'}{y} = \log a \Rightarrow y'=a^{x}\log a$
★解2の方法を対数微分法という。
【問題】 $y=x^{a}(x>0)$を微分せよ。
(解1) $y=e^{a \log x} \Rightarrow y'=e^{a \log x} \times \frac{a}{x} =x^{a} \times \frac{a}{x}=a x^{a-1} $
(解2) $\log y = a \log x \Rightarrow \frac{y'}{y} = \frac{a}{x} \Rightarrow y'=a x^{a-1}$

実関数における公式(3)を複素関数としてのベキ関数の定義とすればよい。すなわち
   $z_{1}^{z_{2}}=e^{z_{2} \log z_{1}}$
($z_{1},z_{2}$は複素数)とすればよい。対数関数については上述した。

§5. $i^{i}$の値

それでは懸案の$i^{i}$の値を求めよう。
   $i^{i} = e^{i \log i}= e^{i (2n+\frac{1}{2})\pi i} =e^{-(2n+\frac{1}{2})\pi }$
と、値は一つに決まらず無限多価になる。

【蛇足】 $i=\cos \frac{\pi}{2} +i \sin \frac{\pi}{2}=e^{i \pi/2}$だから
   $i^{i} = (e^{i \pi/2})^{i} =e^{-\pi/2}$
のようにやると$n=0$のときの値(主値という)しか出てこない。主値以外の値(分枝という)が求まらない。
これは$(e^{z_{1}})^{z_{2}} =e^{z_{1}z_{2}}$という公式が成り立たないということを意味する。

ついでだから、$\sqrt{4}$の値も求めてみよう。
   $4 = 4(\cos 0 +i \sin 0) \Rightarrow \log 4= \log 4 +2n \pi i$
だから
   $\sqrt{4} = e^{\log 4/2}= e^{(\log 4 +2n \pi i)/2 }$
   $ =e^{\log 2+n \pi i} =e^{\log 2} e^{n \pi i} = 2 (\cos n \pi +i \sin n \pi) $
   $=\pm2$
値は$2$ではなく$\pm2$である。2価関数である。
このようにベキ関数も√ も多価関数であって、厳密な意味での関数(一価関数という)ではないのである。
これでは扱いにくいというので、複素数平面を改造して一価になるようにしたものがリーマン面という道具である。

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