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返済額の公式-等比の和

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§1. はじめに

ローン(借金の分割返済)の毎月の返済額は、等比数列の和の公式を使えば求まる---などと、教科書に図入りで書かれていたりするが、どうしてその公式になるのかの説明がよく分からない(説明が下手)ということが多い。

$A$ 円を借りて、利率を月利 $r(=100r\%)$ として、毎月末に均等額 $B$ 円を返済し、$n$ 回($=n$ ヵ月)で完済する

としよう。
毎月の返済額 $B$ を $A,r,n$ で表す公式を作りたい。

そもそも、価値は増殖する(資本主義の原則)。今、$A$ 円の価値の財物は $n$ ヵ月後には $A(1+r)^n$ 円の価値になる。
$A$ メートルの苗木は $n$ ヵ月には $A(1+r)^n$ メートルの樹木に成長している、というようなものだ。
現在の $A$ 円と将来の $A$ 円は、(インフレでなくても)異なるのである。

$A$ 円を借りた者自身が起業して貸金業者になって、その金を月利 $r$ で貸付けをすれば $n$ ヵ月後には $A(1+r)^n$ 円になる。ふつうは借りた金で買い物をするか、投資をするだろう。投資をした場合、儲けが生じて $n$ ヵ月後には $A(1+r)^n$ 円になると考えてよかろう。(もっと儲かるよ、となったら貸金業をやる者はいなくなる。)買い物をした場合は、$n$ ヵ月間その商品を早めに使用できるという利得を得るのであって、その価値を $n$ ヵ月後に測れば $A(1+r)^n$ 円だということになる。
とにもかくにも、$A$ 円を借りた人が何をしても構わないが、$A$ 円を貸した者としては、 $n$ ヵ月後に $A(1+r)^n$ 円を返済してもらわないと納得できないだろう。

§2. 公式のワケ

我々は貸方の立場に立ってみよう。

(1) 今 $A$ 円 を貸して $n$ ヵ月後に一括で返済してもらう場合、$A(1+r)^n$ 円を返してもらうことになる。

(2) 分割返済の場合はどうなるか。
●最初の月末に $B$ 円返してもらうが、返った来たらこれを別の人間(ダミー)に 「$n-1$ ヵ月後に一括返済」の約束で貸し付けてやろう。
そのときには、この金は $B(1+r)^{n-1}$ 円になって戻ってくる。
●2ヵ月目の月末にも $B$ 円返してもらうが、返った来たらこれをダミーに 「$n-2$ ヵ月後に一括返済」の約束で貸し付けてやろう。
そのときには、この金は $B(1+r)^{n-2}$ 円になって戻ってくる。
●3ヵ月目の月末にも $B$ 円返してもらうが、返った来たらこれをダミーに 「$n-3$ ヵ月後に一括返済」の約束で貸し付けてやろう。
そのときには、この金は $B(1+r)^{n-3}$ 円になって戻ってくる。
●(……以下同様……)
●最後の月($n$ ヵ月目)の月末にも $B$ 円返してもらうが、返った来たらこれをダミーに「 $0$ ヵ月後に一括返済」の約束で貸し付けてやろう。
そのときには、この金は(無利子なので) $B(1+r)^{0}$ 円になって戻ってくる。

(3) 貸方としては、(1) でも (2) でも $n$ ヵ月後に同額が戻ってこないと、理屈に合わない。これを等式にしてみる。
分割返済の場合に $n$ ヵ月後に貸方の手元にある金額は

$B(1+r)^{n-1}+B(1+r)^{n-2}+B(1+r)^{n-3}+\cdots+B(1+r)+B$
$=B+B(1+r)+B(1+r)^{2}+\cdots+B(1+r)^{n-1}$
$=B\frac{(1+r)^n-1}{(1+r)-1}$

で、これが (1) の場合の返済額と同額だから

$B\frac{(1+r)^n-1}{r}=A(1+r)^n$,
$B=\frac{r(1+r)^n}{(1+r)^n-1}A$

§3. 教訓

ある人に金を貸しても、ダミーさんに貸しても、お客様は平等に扱われる。だから上記の説明が成り立つ。平等でないと、そもそも貨幣による交換経済が成り立たなくなる。

上記の説明は一見トリッキーなようだが、実は経済の原理・原則に則った解法だったのだ。
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