もし $ \displaystyle \displaystyle \sum_{n=1}^{N} n^{[2]} $ としてしまうと、計算してみれば分かることだが、差分の公式と照らし合わせて、まずい。数列は第1項でなく、第0項から始まる方が合理的である。次のように教科書とは異なる公式ができる。
【差分の公式】
$\Delta n^{[k]} = k n^{[k-1]} $
【和分の公式】
$ \displaystyle \displaystyle \sum_{n=0}^{N-1} n^{[k]} = \frac{1}{k+1} N^{[k+1]} $
ここで、初項を第0項にとると、公式がどう変わるかを調べてみよう。
初項(第$0$項)が $a$ のとき、等差・等比数列の一般項(第$n$項)はそれぞれ
$a_{n} = a + d n $
$a_{n} = a r^{n} $
で、$n-1$を使わなくて済む。初めの$n$項($0$ 〜 $n-1$)の和は、それぞれ
$S_{n} = \frac{n(a+l)}{2} = \frac{n \{ a+a+d(n-1) \}}{2} $
$S_{n} = a + ar + \cdots + ar^{n-1} = \frac{a(r^{n}-1)}{r-1} $
となる。---
等差の和は
$ \sum (a+dk) = \sum a + d \sum k = an + \frac{1}{2}dn(n-1) $
のように和分する方が素直かもしれない。
差分についてはどう変わるだろうか。
教科書によく出てくる問題に、次の問題がある。
【例題3】
$ S_{n} = n^{2} \mbox{ } (n \geq 1) $はどんな数列か。---
(解1) 教科書流。$n \geq 2$ のとき
$a_{n} = S_{n} - S_{n-1} = n^{2} - (n-1)^{2} = 2n-1 $
とやる。つまり
$ \Delta S_{n-1} = a_{n} $
という添え字が変な式になっている。
$n=1$だけは
$ a_{1} = S_{1} = 1 $
と、別に調べなくてはならない。■
(解2) 第0項を基準に考えると、そもそも
$ S_{n} = \displaystyle \displaystyle \sum_{k=0}^{n-1} a_{k} $
であるから $n \geq 1$ のとき
$ a_{n} = S_{n+1} - S_{n} $
で
$ \Delta S_{n} = a_{n} $
が素直に成り立っている。従って、
$ a_{n} = (n+1)^{2} - n^{2} = 2n+1 $
ただし、$n=0$のときは
$ a_{0} = S_{1} = 1 $
である。■
教科書では累乗 $n,n^{2},n^{3}$ の和がおなじみである。
【例題4】
$\sum n^{2}$の公式を作れ。---
(解) $n^{2}=n+n(n-1)$ を和分する。第$0$項から足せば
$ \displaystyle \displaystyle \sum_{n=0}^{N-1} n^{2} = \sum n + \sum n^{[2]} = \frac{1}{2}N^{[2]} + \frac{1}{3}N^{[3]} $
$= \frac{N(N-1)}{2} + \frac{N(N-1)(N-2)}{3} = \frac{N(N-1)(2N-1)}{6}$
教科書のように第$1$から足すのなら、このあと $N$ を $N+1$ で置き換えて
$ \displaystyle \displaystyle \sum_{n=1}^{N} n^{2} = \frac{N(N+1)(2N+1)}{6} $
とする。先の式で初項($n=0$のとき)が0だから、うまくいく。■
3乗の和の公式を教科書流に表わすと
$ \displaystyle \displaystyle \sum_{n=1}^{N} n^{3} = \frac{N^{2}(N+1)^{2}}{4} $
になる。
さらに発展させて
【例題5】
$\sum n^{4}$の公式を作れ。---
(解) 前問と同様のやり方をする。
$ \displaystyle \displaystyle \sum_{n=0}^{N-1} n^{4} = \frac{1}{2}N^{[2]} + \frac{7}{3}n^{[3]} +
\frac{3}{2}N^{[4]} +\frac{1}{5}N^{[5]} $
ここで $N$ を $N+1$ で置き換えて$ \displaystyle \displaystyle \sum_{n=1}^{N} n^{4} $となる。
$= \frac{1}{2}N(N+1) + \frac{7}{3}N(N+1)(N-1) + \frac{3}{2}N(N+1)(N-1)(N-2) + \frac{1}{5}N(N+1)(N-1)(N-2)(N-3) $
$ = \frac{1}{30}N(N+1)(6N^{3}+9N^{2}+N-1)$
実は、
$6N^{3}+9N^{2}+N-1=(2N+1)(3N^{2}+3N-1)$
と因数分解できる。■
さらに次数を上げる。
【例題6】
$\sum n^{5}$の公式を作れ。---
(解) さきと同様の公式を求めてもよいのだが、別のやり方でやってみる。
$n^{[5]} = n(n-1)(n-2)(n-3)(n-4) = n^{5} - 10n^{4} + 35n^{3} - 50n^{2} + 24n $
より
$ n^{5} = n^{[5]} + 10n^{4} - 35n^{3} + 50n^{2} - 24n $
ここで、右辺の各項の和分はすべて事前に求めてあるから、これで左辺の和分が分かって、$ \displaystyle \displaystyle \sum_{n=1}^{N} n^{5} $となる。■
$=\frac{1}{6}N(N+1)(N-1)(N-2)(N-3)(N-4) + \frac{1}{3}N(N+1)(6N^{3}+9N^{2}+N-1) - \frac{35}{4}N^{2}(N+1)^{2} + \frac{25}{3}N(N+1)(2N+1)
- 12N(N+1) $
$= \frac{1}{12}N(N+1)(2N^{4}+4N^{3}+N^{2}-N) $
$= \frac{1}{12}N^{2}(N+1)^{2}(2N^{2}+2N-1) $
思わず、計算を楽しんでしまい、深みにはまってしまったようだ。ここいらで終わりにするが、数列の各項が漸化式により帰納的に求まるように、数列の和の公式もやはり帰納的に求まることを確認して、この節を終える。
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