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§1. 円分方程式
§2. 幾何学的解法
三角比の値について
$ \frac{\pi}{2},\frac{\pi}{3},\frac{\pi}{4},\frac{\pi}{6}$
に関してはすべて求められる。
では、途中抜けたところの
$\frac{\pi}{5}=72^{\circ}$
の三角比の値はどうなるのだろうか。
これが分かれば、半角、倍角、3倍角等も含めて
$18^{\circ},36^{\circ},54^{\circ},72^{\circ}$
の三角比の値が芋づる式に求められるのである。
【問題1.1】 $\cos 72^{\circ}$ の値を求めよ。---
(解)数学Vが既知なら、(三角形の合同・相似を使わずに)複素数や複素数平面の考えを使う解き方が素直である。
$z=\cos 72^{\circ} +i\sin 72^{\circ}$
とおいて、これを求める。
$z$ は絶対値が 1 で偏角が $72^{\circ}$ の複素数である。
ド・モアブルの定理により、 $z^{n}$ は絶対値が $1^{n}=1$ で、偏角が $72^{\circ}\times n$ の複素数になる。
当然、$z^{5}=1$ である。$z$ を求めるには、この 5次方程式を解けばよい。
こういう ($z^n=1$ のような)方程式を円分方程式と言う。もちろん円周を $n$ 等分するからである。
因数定理により、$z^{5}-1$ は $z-1$ で割り切れて
$z^{5}-1=(z-1)(z^{4}+z^{3}+z^{2}+z+1)=0$
$z \neq 1$より、後の括弧の中を解けばよいのだが、係数を見ると $1,1,1,1,1$ と左右対称だ。こういうのを相反方程式と言う。
真ん中の $z^{2}$ で割って
$z^{2}+z+1+\frac{1}{z} +\frac{1}{z^{2}} =0$
ここで $z+\frac{1}{z}=\alpha$ とおけば
$z^{2}+\frac{1}{z^{2}}=(z+\frac{1}{z})^{2}-2= \alpha^{2}-2$
だから、
$\alpha^{2}+\alpha-1=0$
よって
$\alpha=\frac{-1 \pm \sqrt{5}}{2}$
ところで
$\alpha =z+\frac{1}{z}=(\cos 72^{\circ} +i\sin 72^{\circ})+(\cos (-72^{\circ})
+i\sin (-72^{\circ}))=2 \cos72^{\circ} $
で、$\alpha>0$だから
$\cos72^{\circ} =\frac{1}{2} \alpha=\frac{ \sqrt{5}-1}{4}$ …(答)
これは $ \sin 18^{\circ}$ の値でもある。
【問題1.2】 $\sin 18^{\circ}$ の値を求めよ。---
数学IIの範囲で求めるのなら、$\theta=18^{\circ}$ とおいて、
$ 2\theta + 3\theta = 90^{\circ} $
より、
$ \cos 2\theta = \cos(90^{\circ}-3\theta) = \sin 3\theta $
となって、2倍角・3倍角の公式を使って
$ 1-2\sin^{2}\theta=3\sin\theta-4\sin^{3}\theta $
なので、$x=\sin\theta$ とおいて、3次方程式
$ 4x^{3}-2x^{2}-3x+1=0 $
が出てきて、因数定理で因数分解する。
$(x-1)(4x^2+2x-1)=0$
$0<x<1$ より
$ x= \sin18^{\circ}= \frac{\sqrt{5}-1}{4} $ …(答)
である。
【問題1.3】 $\cos72^{\circ} =\sin 18^{\circ}=\frac{ \sqrt{5}-1}{4}$ を既知として、$18^{\circ},36^{\circ},54^{\circ},72^{\circ}$
に対する $\sin,\cos$ の値をすべて求めよ。---
【解】 (1) $18^{\circ}$
$\cos 18^{\circ}=\sqrt{1-\sin^2 18^{\circ}}$
$=\sqrt{1-\frac{6-2\sqrt{5}}{16}}$
$=\frac{1}{4}\sqrt{10+2\sqrt{5}}$
(2) $36^{\circ}$
半角の公式から
$\sin^2 36^{\circ}=\frac{1-\cos 72^{\circ}}{2}$
$=\frac{1}{2}\cdot \frac{5-\sqrt{5}}{4}$
$=\frac{5-\sqrt{5}}{8}$,
$\sin 36^{\circ}=\sqrt{\frac{5-\sqrt{5}}{8}}$
$=\frac{1}{4}\sqrt{10-2\sqrt{5}}$
$\cos$ も半角の公式で出るけど、あえて倍角の公式でやってみよう。
$\cos 36^{\circ}=2\cos^2 18^{\circ}-1$
$=2\cdot \frac{\sqrt{5+\sqrt{5}}} {8}-1$
$=\frac{1+\sqrt{5}} {4}$
(3) $54^{\circ}$
$\sin54^{\circ}=\cos36^{\circ}=\frac{1+\sqrt{5}} {4}$
$\cos54^{\circ}=\sin36^{\circ}=\frac{1}{4}\sqrt{10-2\sqrt{5}}$
(4) $72^{\circ}$
$\sin72^{\circ}=\cos18^{\circ}=\frac{1}{4}\sqrt{10+2\sqrt{5}}$
$\cos72^{\circ}=\sin18^{\circ}=\frac{ \sqrt{5}-1}{4}$
入試問題から、$\cos 72^{\circ}$, その他の値を求めさせるものを取りあげよう。
【問題1.4】 $\alpha=72^{\circ}$ のとき、$\cos 3\alpha-\cos 2\alpha$ と $\cos^2 \frac{\alpha}{2}$ の値を求めよ。--- [早稲田大学・人間科学部 2010年]
【解】 $\cos 3\alpha-\cos 2\alpha$
$=\cos 216^{\circ}-\cos 144^{\circ}$
$=-\cos(216-180)^{\circ}+\cos(180-144)^{\circ}$
$=-\cos 36^{\circ}+\cos 36^{\circ}=0$ …(答)
2問目は $\cos\alpha$ が分かれば半角の公式で求まる。そこで $\cos\alpha$ だが、誘導にしたがって求める。3倍角と 2倍角の公式から
$(4\cos^3\alpha-3\cos\alpha)-(2\cos^2\alpha-1)=0$
となり、$x=\cos\alpha$ とおいて
$4x^3-2x^2-3x+1=0$
問題1.2と同一の方程式が出てきて
$x=\frac{-1+\sqrt{5}}{4}$
よって、
$\cos^2 \frac{\alpha}{2}=\frac{1+\cos\alpha}{2}=\frac{3+\sqrt{5}}{8}$ …(答)
$360 \div 5=72$より、$72^{\circ}$は正5角形の1辺を見込む中心角の大きさである。
ペンタグランマ(五芒星)を描いて、幾何学的に(三角形の合同・相似を使って)この角の $\sin.\cos$ の値を求めることができる。
(ペンタグランマ/陰陽師で有名な京都市・晴明神社にある。)
正5角形(とその対角線)を描くと下図のようになる。1 つの内角の大きさは
$(2 n-4)\angle R \div 5=6\times 90^{\circ}\div 5=108^{\circ}$
で、円周角の定理により内角は対角線により 3等分($36^{\circ}$ずつに)される。
正5角形の1辺の長さを 1 とし、対角線の長さを $x$ としよう。
$\triangle ACD$ も $\triangle BGA$ もともに $\{36^{\circ},72^{\circ},72^{\circ}\}$
の2等辺三角形だから相似なので
$ x: 1 = 1: x-1 $
(これを黄金比と呼ぶ)である。外項の積=内項の積 から2次方程式
$x^2-x-1=0$
を作って解けば $x>0$ に注意して
$ x = \frac{1+\sqrt{5}}{2} $
が対角線の長さと分かる。
【問題2.1】 上の正5角形の図から $\sin18^{\circ},\cos18^{\circ}$ の値を求めよ。---
【解】 上図から二等辺三角形 $\triangle ACD$ を取り出して考える。頂角を 2等分すれば $18^{\circ}$ だから
$ \sin 18^{\circ} = \frac{1}{2x}= \frac{1}{1+\sqrt{5}}=\frac{\sqrt{5}-1}{4}
$
であり、コサインの方は $\cos^{2}\theta+\sin^{2}\theta=1$ を使って
$ \cos 18^{\circ} = \sqrt{1-\left(\frac{\sqrt{5}-1}{4}\right)^{2}} $
$= \frac{\sqrt{10+2\sqrt{5}}}{4} $
である。
【問題2.2】 上の正5角形の図から $\sin36^{\circ},\cos36^{\circ}$ の値を求めよ。---
【解】 2等辺三角形 $\triangle ABE$ の両底角が $36^{\circ}$ だから、頂角 $A$ から底辺に垂線を下して、底辺を2等分する。
底辺の半分が
$ \cos36^{\circ} = \frac{x}{2}=\frac{1+\sqrt{5}}{4} $
であり、垂線の長さが
$ \sin36^{\circ}= \sqrt{1 - \left(\frac{1+\sqrt{5}}{4}\right)^{2} } $
$=\frac{\sqrt{10-2\sqrt{5}}}{4} $
である。
前述したことの応用として、正5角形のいろいろなところの長さや角の大きさを求める問題を解いてみよう。
【問題2.3】 1辺が 1 の正5角形 $ABCDE$ の頂点 $A$ から辺 $CD$ へ下ろした垂線の長さを求めよ。---
【解】 (前掲図参照) 垂線の足を $H$ とすれば
$AH=AC \sin72^{\circ}$
$=\frac{1+\sqrt{5}}{2}\cdot \cos18^{\circ}$
$=\frac{1+\sqrt{5}}{2}\cdot \frac{\sqrt{10+2\sqrt{5}}}{4} $
$ =\frac{\sqrt{6+2\sqrt{5}} \cdot \sqrt{10+2\sqrt{5}}}{8} $
$= \frac{4\sqrt{5+2\sqrt{5}}}{8} $
$ =\frac{\sqrt{5+2\sqrt{5}}}{2} $ …(答)
となる。
【問題2.4】 1辺が 1 の正5角形に外接する円の半径を求めよ。---
【解】 半径とは、正5角形の中心から頂点までの長さ $r$ のことである。(この値が分かれば、半径 $r$ の円で 1辺が 1 の正5角形が描ける。)
内角 $108^{\circ}$ の半分が $54^{\circ}$ だから、上図を参照して
$ r \cos54^{\circ}=\frac{1}{2} $
これを変形して、
$ r= \frac{1}{2 \cos54^{\circ}} = \frac{1}{2 \sin36^{\circ}} = \frac{2}{\sqrt{10-2\sqrt{5}}}
$
$ =\frac{\sqrt{10-2\sqrt{5}}}{5-\sqrt{5}} $
$ = \frac{\sqrt{10-2\sqrt{5}} \cdot \sqrt{30+10\sqrt{5}}}{20} $
$ =\frac{\sqrt{5} \cdot \sqrt{10+2\sqrt{5}}}{10} $ …(答)
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