定義が鈍角に拡がったので、半径 $r$ の半円を描く。
$ 0^{\circ}\leq \theta, \theta' \leq 180^{\circ} $
なる角 $\theta, \theta'$ が
$ \theta+\theta'=180^{\circ} $
ならば、互いに補角という。このとき
$ \sin \theta = \sin \theta',$
$ \cos \theta = - \cos \theta' $
$ \tan \theta = - \tan \theta' $
という性質が成り立つ。
$\cos \theta'$ 等に $-$ が付くのは符号反転のためである。「負の値だから」と言ってはならない。$\cos \theta$ は正であることもあるからである。
(注) `$-$' には、引くという演算記号、正・負の別を表わす符号という2つの他に、符号反転という意味がある。$|x|=-x(x<0$のとき)
などは符号反転と考えるとよい。
この性質を使って、例えば $\cos 150^{\circ}$ の値は
$ \cos \theta' = - \cos \theta= -\cos(180^{\circ}-\theta') $
より
$ \cos 150^{\circ}= -\cos(180^{\circ}-150^{\circ}) $
$ = -\cos30^{\circ}
= - \frac{\sqrt{3}}{2} $
と求まる。
(3)一般角にまで拡張された三角関数
数学Uでは次のように定義される。
原点中心で半径1の円において、$x$ 軸の正の部分から左回りに測った角が $\theta$ の半径(動径) $OP$ を描く。
円周上の点 $P$ の $x$ 座標が $\cos\theta$ であり、$y$ 座標が $\sin\theta$ である。
ヨコ座標がコサインで、点$P$の$x$軸からのタカサがサインだから、
ヨコ = コサイン,
タカサ = サイン
と尻取りになっている。
このように考えると、
$ \cos 0^{\circ}=1, \mbox{ } \sin 90^{\circ}=1, $
$ \cos 180^{\circ}=-1, \mbox{ } \sin 360^{\circ}=0, $
$ \cos 450^{\circ}=0, \mbox{ } \sin (-90^{\circ})=-1 $
のような値は簡単に分かる。
$360^{\circ}$ を超える角や負の角も、それほど難しくない。
タンジェントは、動径の傾きとして定義する。だから
$ \tan \theta = \frac{\sin \theta}{\cos \theta} $
である。また、傾きとは 1 だけ右へ行ったときの高さでもあるから、
さきの図の中の点 $(1,0)$ から真上に測った高さでもある。
したがって、
タカサ = タンジェント
と、今度は頭韻を踏むことになる。
ところで、この数Uで習う「量$\rightarrow$数」対応の三角関数は、
$ \sin 45^{\circ} = \sin \frac{\pi}{4} rad $
のように、独立変数に単位の付いた量が代入される。$rad$ という単位はふつう「省略して書かない」と説明されるが、度の方はけっして省略されることはない。
これは高校数学に出てくる関数としては異色である。
例えば、2次関数で、
$ s = 4.9 \times t^{2} $
とは書くが
$ s = 4.9 \times ( t \mbox{秒})^{2} $
のように独立変数に単位を付けて書くことはない。
それなのに、数学IIに出てくる三角関数には、独立変数に単位をつける。
【例題】$90^{\circ}-\theta$の三角関数
上図のように、単位円内に角 $\theta(0^{\circ}<\theta< 90^{\circ})$ の動径を描く。
ここで動点 $P(x,y)$ の$x$ 座標と $y$ 座標を交換してできる点 $P'(y,x)$ を考えると、$x$ 軸と $y$ 軸とをひっくり返すことになるから、傾き $45^{\circ}$ の直線 $y=x$ についての対称移動になる。
$P'(y,x)$ に属する角は $90^{\circ}-\theta$ になり、$x$ と $y$ を交換しているので
$ \cos(90^{\circ}-\theta) = y =\sin\theta, $
$ \sin(90^{\circ}-\theta) = x =\cos\theta, $
$ \tan(90^{\circ}-\theta) = \frac{x}{y}=\frac{1}{\tan\theta} $
が、わりあい簡単に出てくる。
ただ、さきの図で分かりにくいのは、点 $P$ については $x$ 軸の正の部分から左回りに測っているのに、点 $P'$ については右回りなのか、左回りなのかどっちなのか混乱しそうなところだ。
(4)実数→実数対応の三角関数
数学IIIで扱うのは、「実数$\rightarrow$実数」対応の三角関数である。
$ y= \sin x $
において、$x$ には「度」も「ラジアン」も、単位は付かない。
だから、$x=0$ における $\sin x$ の微分係数は誰が計算しても同じ値になる。
「僕は度を使ったから、微分係数の値が他の人と違う」ということはない。
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