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§1. 双子素数とは
§2. クレメントの定理
§3. ウィルソンの定理
§∞. 参考文献
$(3,5),(5,7),(11,13),(17,19),(29,31),(41,43),\cdots$
のペアのように、差が $2$ である 2個の素数のペアを双子素数と称する。
2つ違いの双子(同年齢でない!)とは、変な呼称だがあまりツッコまないでください。
どういう条件が成り立つと、双子素数になるのかの判定条件を与える定理がクレメントの定理である。これを証明するのが本稿の趣旨である。
次の定理がクレメントの定理である。(文献 [1] 等に紹介されている。)
【定理1】 $(n,n+2)$ が双子素数であるための必要十分条件は
$4 \{ (n-1)! +1\} +n \equiv 0 \mbox{ } (mod.n(n+2))$ … (*)
が成り立つことである。---
これを証明するには、次のウィルソンの定理を使う。
【補題2】 $n$ が素数であるための必要十分条件は
$(n-1)! \equiv -1 \mbox{ } (mod.n)$
が成り立つことである。---
ここでは、ウィルソンの定理を既知(証明は後述)として、クレメントの定理を証明しよう。
【定理1 の証明】 必要であることを示す。$n,n+2$ が素数ならウィルソンの定理から
$(n-1)! \equiv -1 \mbox{ } (mod.n)$ … (1)
$(n+1)! \equiv -1 \mbox{ } (mod.n+2)$ … (2)
が成り立つ。(1) 式から
$(n-1)!=-1+kn$
とおけば
$(n+1)!=(n+1)n \times (n-1)! =(n+1)n (-1+kn)$
となり、 (2) 式に代入すれば
$ (n+1)! \equiv (-1)(-2)(-1-2k) \equiv -1\mbox{ } (mod.n+2)$
$\Rightarrow -2(1+2k) \equiv -1\mbox{ } (mod.n+2)$
$\Rightarrow 4k+1 \equiv 0 \mbox{ } (mod.n+2)$
$\Rightarrow (4k+1)n \equiv 0 \mbox{ } (mod.n(n+2))$
$\Rightarrow -4+4kn+4+n \equiv 0 \mbox{ } (mod.n(n+2))$
$\Rightarrow 4(n-1)!+4+n \equiv 0 \mbox{ } (mod.n(n+2))$
逆に、十分であることを示す。(*) を仮定すると
$4 \{ (n-1)! +1\} +n \equiv 0 \mbox{ } (mod.n)$
$\Rightarrow 4 (n-1)! \equiv -4 \mbox{ } (mod.n)$ … (3)
ここで $n$ は奇数である。実際、もし $n=2m$ (偶数)だとすると
$4(2m-1)! \equiv -4\mbox{ } (mod. 2m)$
$\Rightarrow 2(2m-1)! \equiv -2 \mbox{ } (mod. m)$
だが $2m-1 \geq m$ だから $(2m-1)!$ は $m$ で割れる。よって
$0 \equiv -2 \mbox{ } (mod. m)$
$\Rightarrow m=2,n=4$
となるが、これは仮定の (*) に反するからである。$n$ は奇数ゆえ、$4$ とは互いに素となり、(3) から
$(n-1)! \equiv -1 \mbox{ } (mod.n)$
$\Rightarrow n $ は素数
また、(*) から
$4 (n-1)! \equiv -n-4 \mbox{ } (mod.n+2)$
$\Rightarrow 4(n+1)n (n-1)! \equiv (n+1)n(-n-4) \mbox{ } (mod.n+2)$
$\Rightarrow 4(n+1)! \equiv -n^3-5n^2-4n \mbox{ } (mod.n+2)$
$\Rightarrow 4(n+1)! \equiv (-n^2-3n+2)(n+2)-4 \mbox{ } (mod.n+2)$
$\Rightarrow 4(n+1)! \equiv -4 \mbox{ } (mod.n+2)$
$n$ が奇数ゆえ、$n+2$ も奇数で、先と同様に
$(n+1)! \equiv -1 \mbox{ } (mod.n+2)$
$\Rightarrow n+2 $ は素数■
保留にしていたウィルソンの定理の証明をしよう。
【補題2 の証明】 必要であることを示す。$n$ が素数なら、$mod.n$ の数体系では $0$ 以外、
$1,2,3,\cdots,n-1$
は可逆元(逆元を持つ)である。$k$ とその逆元 $k^{-1}$ を掛け合わせれば $1$ になる。ところが自分自身が逆元であるものが存在する。それは何かというと
$x^2 \equiv 1 \mbox{ }(mod.n)$
なる $x$ だが、2次方程式なので解は高々 2つで、それは
$(x-1)(x+1) \equiv 0 \Rightarrow x \equiv 1,x \equiv -1\equiv n-1\mbox{ }(mod.n)$
である。したがって、階乗は
$(n-1)!=1 \cdot (-1) \cdot (k k^{-1})\cdot (l l^{-1})\cdots (m m^{-1})$
$=1 \cdot (-1) \cdot 1\cdot 1\cdots 1 \equiv -1\mbox{ }(mod.n)$
逆に、十分であることを示す。$(n-1)! \equiv -1 \mbox{ } (mod.n)$ ならば
$(n-1)!+1=nk$
ここでもし $n$ が合成数なら $n=n_{1}n_{2},1<n_{1},n_{2}<n$ となる。すると右辺は $n_{1}$ で割れるのに、左辺は階乗は $n_{1}$ の因子を含むので割り切れるが、$\cdots +1$ で $1$ 余って割れなくなってしまい、矛盾。よって $n$ は素数である。■
[1] 小島寛之 「世界は素数でできている」 角川新書、2017年
p.90 にクレメントの定理が紹介されている。(証明は略されている。)
ウィルソンの定理は整数論の本なら必ずと言ってよいくらい記載されているが、クレメントに触れている本は珍しい。
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