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あぶら算と不定方程式
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§1. 塵劫記の問題
§2. 不定方程式を解けばよい
§3. 1組の解とそれに対応する具体的方略
§4. 幾何学的解法
§5. 別解
§∞. 注
§1.塵劫記の問題
江戸時代の和算書「塵劫記」(注[1])に『あぶら算の事』という項目がある。問題を少し言い換えれば
(問) 10升(=1斗) から3升マスと7升マスを使って、5升を測り取れ。
(塵劫記の挿絵)
となる。(10升と限定せず、あぶらは無尽蔵にあるとしてもよい。)
§2.不定方程式を解けばよい
(解) この問題は、
3 x + 7 y = 5 …… (1)
という不定方程式の整数解を求めることに帰着する。3 と 7 は互いに素だから
3 x + 7 y = 1
は解を持ち、それは目の子ですぐに見つかり、例えば
x = -2, y = 1
である。これを 5倍すれば(1)の特殊解
x = -10, y = 5 …… (2)
が求まる。これを(1)に代入して
3 ・(-10) + 7 ・5 = 5
だが、これを(1)から辺々引けば
3 (x +10) + 7 (y - 5) = 0
だから、一般解
x = -10 + 7k, y = 5 - 3k …… (3)
が得られる。
§3.1組の解とそれに対応する具体的方略
(解1) ここで、例えば k = 1 とすれば
x = -3, y = 2 …… (4)
という、(1)を満たす1組の解が得られるが、この値って何だろう?
実はこれが、油の測り取り方の具体的方略を示しているのである。今の場合、y が正であるのでこれは油を貯蔵庫からマスに
汲み出してくる回数
を意味し、負数である x はマスから貯蔵庫へ
戻す回数
を意味している。
では、(4)に対応する具体的方略を示そう。
(1) 貯蔵庫から7升マスへ汲み出す。だから (A, B) = (0, 7) これが「汲み出し」1回目。
(2) 7升マスのあぶらを3升マスへ移動し、 (A, B) = (3, 4)
(3) 3升マスのあぶらを貯蔵庫へ戻す。 (A, B) = (0, 4) これが「戻し」1回目。
(4) 7升マスのあぶらを3升マスへ移動して、 (A, B) = (3, 1)
(5) 3升マスのあぶらを貯蔵庫へ戻す。 (A, B) = (0, 1) 「戻し」2回目。
(6) 7升マスのあぶらを3升マスへ移動し、 (A, B) = (1, 0)
(7) 貯蔵庫から7升マスへ汲み出して (A, B) = (1, 7) 「汲み出し」2回目(汲み出しはもうおしまい)。
(8) 7升マスのあぶらを3升マスへ移動し、 (A, B) = (3, 5) (まだ終わりではない。このままだと3升マスのあぶらの料金を請求されるので…)
(9) 最後に、3升マスのあぶらを貯蔵庫へ戻す。 (A, B) = (0, 5) 「戻し」3回目で完了。
(※) ここまでの説明では、銀林浩著「初等整数論入門」(ちくま学芸文庫、2015)p.78の問題とその解答を参考にさせてもらいました。
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