例えば
$\frac{1}{17} = 0.\dot{0} 58823529411764 \dot{7}$
となることは分かった。では、
$\frac{2}{17}, \frac{3}{17}, \cdots, \frac{16}{17}$
はどんな循環小数になるのだろうか。
この節では分母の $p$ は、法 $p$ において $10$ が原始根になるような素数とする。
具体例として、$2/7$で考えてみる。$1/7$の余りの数列は、先述したように
$10 \equiv 3(mod.7),$
$10^{2} \equiv 2(mod.7),$
$10^{3} \equiv 6(mod.7),$
$10^{4} \equiv 4(mod.7),$
$10^{5} \equiv 5(mod.7),$
$10^{6} \equiv 1(mod.7)$
の公比 $10$ の等比数列であったが、$2/7$ の余りの数列も、
$2 \times 10 \equiv 6(mod.7),$
$2 \times 10^{2} \equiv 4(mod.7),$
$2 \times 10^{3} \equiv 5(mod.7),$
$2 \times 10^{4} \equiv 1(mod.7),$
$2 \times 10^{5} \equiv 3(mod.7),$
$2 \times 10^{6} \equiv 2(mod.7)$
の公比 $10$ の等比数列である。
この2つの数列は上図の円環をグルグル回ることに相当し、初項が2項分違っているだけである。したがって循環節も2個分ずれる。実際
$\frac{1}{7} = 0.\dot{1} 4285 \dot{7},$
$\frac{2}{7} = 0.\dot{2} 8571 \dot{4}$
のようにずれているだけである。
では分母の$p$が、法$p$において$10$が原始根にならないような素数のときを考察する。
具体例として、まず$1/13$を考える。$1/13$の余りの数列は、§4.のExcelの表を参照して
$10^{1}\equiv 10 ,10^{2}\equiv 9 ,10^{3}\equiv 12 ,10^{4}\equiv 3 ,10^{5}\equiv
4,10^{6}\equiv 1$
である。次に$m/13$を考えるのだが、$m$としてここに出てきた$10,9,12,3,4,1$を採用しても、前節で述べたように循環節が何項かずれるだけである。そこでここに出てこなかった数を分子とする。
例えば$m=5$として$5/13$を循環小数にしてみよう。余りの数列は
$5 \times 10^{1} ,5 \times 10^{2} ,5 \times 10^{3} ,5 \times 10^{4}
,5 \times 10^{5},5 \times 10^{6}$
となる。$5/13$の循環節の長さは$1/13$のそれと同じく $6$ になる。
なぜならば、割り初めの商は $5$ だったので、第何項で初めて $5$になるのかを考えればよい。すると
$5 \times 10^{x} \equiv 5 $
より、両辺に $5(mod.p)$ の逆元($p=13$ と $m=5(<p)$ は互いに素だから逆元が存在する)を掛けて
$10^{x} \equiv 1$
だから、結局 $1/p$ を考えたときとまったく同じなので、循環節の長さも等しくなるからである。
結局上の2つの分数の余りの数列は上図のように分子$=5$倍という操作で対応づけられる。実際に循環小数にすると
$\frac{1}{13} = 0. \dot{0}7692 \dot{3},$
$\frac{5}{13} = 0. \dot{3}8461 \dot{5}$
である。
上のように考えてくると、次の定理を得る。
【定理】 分母が素数 $p$ の分数 $m/p(1 \leq m <p)$ を循環小数に直したとき、循環節の長さ $e$ は $p-1$ の約数である。
(証明) $1/p$ の循環節の長さが $e$ であるとし、循環節(余りの円環)は $a_{1} \cdots a_{e}$ のように $e$
個の異なる整数からなるものとする。
この循環節に現れなかった数字の一つを $m$ とすれば、$m/p$ の循環節の長さは同じく $e$ であり、その循環節(円環)を $b_{1}
\cdots b_{e}$ とすれば、こにには先の循環節(円環)に現れたのと同じ数字は現れない。もし同じ数字が現れればそこから以降は同じ小数になってしまうからである。
次に、$a_{1} \cdots a_{e}$ にも $b_{1} \cdots b_{e}$ にも現れない数字の一つを $m'$ とし $m'/p$ を考えれば、また長さ $e$ の循環節(円環)を得る。この作業を繰り返していけば、余り $1,2, \cdots, p-1$ はいつかはすべてある循環節(円環)に組み入れられてしまって、何も残らなくなる。異なる循環節がちょうど $f$ 個取れたとすれば、
$p-1=e \times f$
である。よって、$e$ は $p-1$ の約数である。■
§4.のExcelファイルを見ると青色の対角線上に $0$ と $1$ 以外の数が現れている所がある。ここに対応する数を分母とする分数は、どんな分数であろう。
例えば、分母が $6$ の所では、余りが $4$ になっている。$1/12$ を小数にすると
$\frac{1}{12} = 0.08333 \cdots = 0.08 \dot{3}$
であり、途中から循環小数になる。これをこれまでの純循環小数と区別して、混循環小数と呼ぶ。容易に想像できるように、分母に $2$ または $5$
の素因数と、それ以外の素因数の両方を含んでいると、混循環になる。なぜかと言えば、部分分数に分解すると
$\frac{1}{12} = \frac{1}{3} + \frac{3}{4}-1=\frac{1}{3} -\frac{1}{4}$
小数にすると
$\frac{1}{12} = 0.333 \dots - 0.25 =0.08 + 0.00\dot{3}$
だから、小数第3位以下が循環することになる。結局、次の定理が成り立つ。
【定理】 分母が $2$ または $5$ の素因数と、それ以外の素因数の両方を含んでいるとき、混循環小数になる。
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