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(図4)
斜面上を点Pから第1の球を転がすと、
   $y=ax^2 \cdots (6)$
となったとしよう。
この関係式はいつでもどこでも成り立つ(物理学的に言うと厳密には成り立たない→蛇足3 参照)。すなわち、適当に座標系を設定すれば
   $\mbox{☆} = a \mbox{□}^{2} \cdots (7)$
という方程式が成り立つ。この事実を落体の2乗法則と呼んでおく。

文字でないと不便なので、2乗法則を変数 $\mbox{□},\mbox{☆}$ をそれぞれ $X,Y$ に置き換えて
   $Y= a X^{2} \cdots (7')$
としておこう。

さて引き続いて、同形同大で同じ材質の第2の球を $p$ 秒遅れて、$q$ メートル降りた点Qから転がす(物指は動かさない)とすると
   $X=x-p,Y=y-q$
を(7')に代入して
   $y=a(x-p)^{2} +q \cdots (8)$
となる。これが平行移動した後のグラフの式なのだが、でもまだどのように平行移動したのかを言っていなかった。
   (図5)

整理してみよう。第2の球は2乗法則により、適当な座標系で表現すると
   $Y=aX^2$
となる。第1の球も同じ式(文字は異なるが)
   $y=ax^2$
で表現できる。両者は法則は同じで、変数が違うだけで、変数変換の規則は $p$ 秒遅れで、$q$ メートル低いことから
   $X=x-p, Y=y-q$
または
   $x=X+p, y=Y+q$
と分かる。図5を見ると分かるように、「第1の球」のグラフ上の点 $(x,y)$ を横方向に $p$, 縦方向に $q$ だけ平行移動した点 $(x,y)$ が、「第2の球」のグラフ上にある。変換の式を代入して「第2の球」のグラフの式(8)が得られる。
これで、$y=ax^2$ のグラフを $x$ 軸方向に $p$, $y$ 軸方向に $q$ だけ平行移動したグラフの方程式が(8)になることが説明できた。

ただ、この説明の欠点は、2つの運動を観測しているのだから、(6)と(8)はそもそも異なる関数だという点だ。
関数のグラフを平行移動したらどうなる?--を考えているのに、異なる2つの関数を考えているのであったら、意味がない。

(蛇足2)本式の物理学では、球に働く力から微分方程式をたててそれを解いて求める。(グラフを平行移動してとは考えない。)
斜面の運動が
   $ \frac{d^{2} y}{dx^{2}} = 2a$
という微分方程式で表わされるのなら、1回積分して初期条件:
   P発では $x=0$のとき $\frac{d y}{dx} =0$
   Q発では $x=p$のとき $\frac{d y}{dx} =0$
を考慮して
   $\frac{d y}{dx} =2ax$
   $\frac{d y}{dx} =2a(x-p)$
となり、さらにもう1回積分して初期条件:
   P発では $x=0$のとき $y =0$
   Q発では $x=p$のとき $y =q$
を考慮して
   $y=ax^{2} $
   $y=a(x-p)^{2} +q $
となる。

【結語】

2次関数を教えるなら落下運動だとばかりに、放物線の平行移動を物理運動から説明しようとすると、結構難しくなってしまう。

(蛇足3) 厳密に言うと、P点と Q点は標高が異なるから重力加速度が異なるので、(6) と (8) の両方が成り立つことはありえない。
精密には、標高(または距離) に応じた重力加速度を含んだ方程式に換えなければならない。すなわち、加速度の半分を $a$ ではなく、$a(h)$ というように標高 $h$ の関数にする。
(または $a(y)$ というように距離 $y$ の関数にして、微分方程式を
   $ \frac{d^{2} y}{dx^{2}} = 2a(y)$
とする。)
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『グラフの平行移動と座標変換』改題。



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