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輪ゴムギターで和音を創る(対数尺)
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輪ゴムギターというのは、上図のように輪ゴム2本をピック(写真の中の三角形)で爪弾くものである。
輪ゴムが2本あるので、和音(二和音)が創れる。
美しい音色の和音を創りたい。どう指で弦を押さえればよいだろうか。
【ユニゾン】
2本の弦とも開放弦にして、同時に2本をピッキングすると、同じ音程の2音が鳴る。これをユニゾンという。確かに音の響きがよい。
もしここで弦の長さが少しでも違うと「うなり」が生じて、嫌な音(不協和音)になる。
【オクターブ】
弦長=1:2としてみよう。
このとき、 周波数は2:1(逆比)になる。周波数の比の値=$\frac{2}{1} =2$
これが1オクターブの関係。この2音を同時に聴くと、2音がすごくなじむ。
実は、例えばドの音を演奏すると、倍音成分(1オクターブ、2オクターブ、…、だけ高いドの音)が含まれている。だから人はオクターブ違いの2音を聞いても1音が鳴っていると勘違いするくらい。
【整数比を探せ】
弦長が整数比だと、気持ちのいい音(協和音)ができる。
1:2だとオクターブで同じ音と言ってもよいから、1:1から1:2の間で、簡単な整数比を探すこととしよう。
(問題)
自然数の比$a:b$で、$\frac{1}{2} < \frac{a}{b} < 1$となるものを求めよ。
(解)
$b=3$なら、$a=2$,
$b=4$なら、$a=3$,
$b=5$なら、$a=3,4$,
……
である。
順序対で表わすと
$(a,b)=(2,3),(3,4),(3,5),(4,5), \cdots $■
【完全5度】
$(a,b)=(2,3)$なら、弦長=2:3, 周波数3:2, 周波数比の値=$\frac{3}{2}=1.5$
この音程を「完全5度」と言う。この音程をつなげていけば気持ちのいい音階ができる。
そこで周波数比の$\frac{3}{2}$の累乗:
$\frac{3}{2}, (\frac{3}{2})^{2}, (\frac{3}{2})^{3}, \cdots $
を計算して、オクターブ、すなわち 2 の累乗になるものを探す。
Excelで計算すると
となって、近似値ではあるが$ (\frac{3}{2})^{12}=128=2^{7} $と分かる。
12回、完全5度をつなげていけば、ちょうどオクターブ上がって音階ができる。
だから、1オクターブは半音12個に分割されるのだ。
ピアノの鍵盤を見れば、白鍵7個と黒鍵5個の合わせて12個のキーがあることが分かる。
完全5度の対数(底を2とする)を考えてみよう。
$ \log_{2} (\frac{3}{2})^{12}= \log_{2} 2^{7} $
より
$ \log_{2} \frac{3}{2}= \frac{7}{12} $
(この式は $\frac{3}{2}= (\sqrt[12]{2})^{7}$ と同値である。)
だから、この対数を円形対数尺(図参照)上に表わすと、210度回転することに相当する。
ピアノの鍵盤で言うと、半音7個分離れた音(低い方がCなら、高い方はG)を同時に奏でることにあたる。
これって、ドミソの三和音の真ん中(ミ)が抜けたものである。
完全五度を次々とつないでいくと、対数尺上を210度ずつ回転することになるから、Cから始めて7音取ると
C→G→D→A→E→B→F#
のように移っていくことになる。これらをGから低い順に並べ替えると、下記の五線譜に示したようにト長調ができる。
いま、7音取ったが頭の5音だけ取ると
C→G→D→A→E
となり、これをCから低い順に並べ替えると、いわゆるヨナ抜き5音階ができる。「上を向いて歩こう」や「恋するフォーチュンクッキー」はそれだ。
【完全4度】
$(a,b)=(3,4)$なら、弦長=3:4, 周波数4:3, 周波数比の値=$\frac{4}{3}=1.33$
周波数比の対数を計算すると
$ \log_{2} \frac{4}{3} = \log_{2} (2 \times \frac{2}{3}) = \log_{2}
2 - \log_{2} \frac{3}{2} =1- \frac{7}{12} = \frac{5}{12} $
150度の回転になる。鍵盤ではCとFを同時に叩くことにあたる。ファラドの三和音の中抜けだ。
【長6度】
$(a,b)=(3,5)$なら、弦長=3:5, 周波数5:3, 周波数比の値=$\frac{5}{3}=1.67$
周波数比の対数を計算すると
$ \log_{2} \frac{5}{3} = \log_{2} (10 \times \frac{1}{6}) =\frac{1}{3}
\log_{2} 1000 + \log_{2}( \frac{1}{4} \times \frac{2}{3}) $
$=\frac{1}{3} \times 10 -2 - \frac{7}{12} = \frac{9}{12} $
270度の回転になる。
上の対数計算では、
$ \log_{2} 1000 = \log_{2} 1024 = \log_{2} 2^{10} =10 $
を使った。
結局、鍵盤ではCとAを同時に叩くことにあたる。
【長3度】
$(a,b)=(4,5)$なら、弦長=4:5, 周波数5:4, 周波数比の値=$\frac{5}{4}=1.25$
$ \log_{2} \frac{5}{4} = log_{2} \frac{10}{8} =\frac{1}{3} log_{2} 2^{10}
-3 =\frac{10}{3} = \frac{1}{3} = \frac{4}{12} $
対数尺では120度の回転になり、鍵盤ではCとEを同時に叩くことにあたる。
【不協和曲線】
最後に、不協和曲線を紹介しておこう。
下図は、周波数比と不協和度の関係を表わすグラフである。グラフが低い所が協和度が高いことになる。
気持ちのいい二和音は、気持ちのいい順に4つ挙げると、
$ \frac{3}{2}$(完全5度)、$ \frac{5}{3}$(長6度)、$ \frac{4}{3}$(完全4度)、$ \frac{5}{4}$(長3度)となる。
まさに、ここに紹介した4つの二和音である。
(グラフの出典:小方厚「音律と音階の科学」ブルーバックス2007年)
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