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$\lim x\log x$ の求め方

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§1. グラフの描き方の注意点
§2. $\lim(x/e^x)$
§3. $\lim x\log x$

§1. グラフの描き方の注意点

$f(x)=x \log x$ のグラフを描くなどは数Vではありふれた問題だ。
まず定義域は、真数条件から $x>0$ だが、$x=0$ のときの値(正確には $x\rightarrow +0$ のときの右側極限値)を求めなければならない。後述するように

$\displaystyle \lim_{x\rightarrow +0} x \log x=0$

となるので、原点に白丸を描くことになる。
ただし、大学では $f(0)=0$ と気を利かせて定義して、$x \log x$ は区間 $[0,\infty)$ で連続と考える、とすることがある。その場合は白丸でなく、黒丸だ。

ついでに言うと、接線の傾きも

$f'(x)=\log x+1$,
$\displaystyle \lim_{x\rightarrow +0} (\log x+1)=-\infty$

と求めて、原点における接線は $y$ 軸である。それも考慮してグラフを描く。

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§2. $\lim (x/e^x)$

そこで、本稿のテーマは極限値 $\ \lim x \log x=0$ をいかにして求めるかである。
授業では面倒なので、ロピタルの定理を使ってパパっとやってしまうことが多いけど、それは後述するとして別の方法で求めてみよう。

$\log x$ の逆関数である $e^x$ はネズミ算で、増え方が初めチョロチョロ、やがてドバーッと増える。だから

$\displaystyle \lim_{x\rightarrow \infty} \frac{e^x}{x^k}=\infty$ ($k>0$) … (1)

である。変数を整数に変え、底も変えて、

$\displaystyle \lim_{n\rightarrow \infty} \frac{a^n}{n^k}=\infty$ ($a>1,k>0$)

を手始めに証明する。

(ア) $k=1$ のとき。$a=1+h,h>0$ とおく。

$a^n=(1+h)^n=1+n h+\frac{n(n-1)}{2} h^2+\cdots +h^n>\frac{n(n-1)}{2} h^2$,
$\frac{a^n}{n}>\frac{n-1}{2}h^2 \rightarrow \infty$ ($n \rightarrow \infty$)

(イ) $k<1$ のとき。

$\frac{a^n}{n^k}>\frac{a^n}{n} \rightarrow \infty$

(ウ) $k>1$ のとき。

$a^{1/k}>1$ だから (ア)より
$\frac{ (a^{1/k})^n} {n} \rightarrow \infty$
よって
$\frac{a^n}{n^k}=\{\frac{ (a^{1/k})^n} {n} \}^ {k} \rightarrow \infty$

これで $ \lim\frac{a^n}{n^k}=\infty$ が証明できたので、任意の実数 $x$ に対しては $n\leq x <n+1$ なる整数 $n$ を取って

$\frac{a^x}{x^k}>\frac{a^n}{(n+1)^k}=\frac{1}{a} \cdot \frac{a^{n+1}}{(n+1)^k} \rightarrow \infty$

したがって

$\displaystyle \lim_{x\rightarrow \infty} \frac{a^x}{x^k}=\infty$ ($a>1,k>0$)

が成り立ち、当然 (1) も得られる。

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§3. $\lim x \log x$

では目的だった、

$\displaystyle \lim_{x\rightarrow +0} x \log x$

を求めよう。$x\rightarrow +0$ のとき $\log x$ は $-\infty$ に発散するから、$-\log x=y$ と置こう。このとき、

$\log x=-y,e^{-y}=x,y \rightarrow \infty$
に注意して
$\displaystyle \lim_{x\rightarrow +0} x \log x=\lim_{y\rightarrow \infty}(-\frac{y}{e^y})=0$

やっと答が出た。

ではロピタルを使ったら、どうなるか。

$\lim x \log x=\lim \frac{\log x}{\frac{1}{x}}=\lim\frac{(\log x)'}{(\frac{1}{x})'}=\lim \frac{\frac{1}{x}}{-\frac{1}{x^2}}=\lim (-x)=0$

でもロピタルの定理が載っていない教科書が多い。
余りに便利な定理なので、生徒には使わせたくなくて載せないようにと教科書会社に要求する教員が多いのかもしれない。

【問題】 次の証明には誤りがある。どの点か?

「$a$ を定数とするとき $\frac{f(a+2h)-f(a-2h)}{h}$ の $h\rightarrow 0$ のときの極限は
$\lim \frac{(f(a+2h)-f(a-2h))'}{h'}=\lim \frac{2f'(a+2h)+2f'(a-2h)}{1}=2f'(a)+2f'(a)=4f'(a)$ 」

どこが誤りかと言うと、「$f(x)$ は微分可能」と書かれていない点である。$f'(x)$ が存在するとは限らないので、ロピタルの定理が使えないのである。
なんと $f'(a)$ が存在しないのに、極限値 $\lim \frac{f(a+2h)-f(a-2h)}{h}$ は存在するということがありうるのだ。

教員が好むのは次のような答案だ。

「$\lim \frac{f(a+2h)-f(a-2h)}{h}$
$=\lim \{2\frac{(f(a+2h)-f(a)}{2h} +2\frac{(f(a-2h)-f(a))}{-2h}\}$
$=2f'(a)+2f'(a)=4f'(a)$ 」

一見、厳密な証明に変わったような感じがするが、やはり微分可能性:$\lim\frac{f(a+h)-f(a)}{h} $の存在を仮定しない限り、この答案も誤りだ。

下図のような、$x=a$ において微分可能でないだけでなく、連続でない場合が反例になる。

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