この循環論法をめぐって、教師の対応は次のように2つに分かれて、しばしば論争になってしまう。
このような循環論法(厳密には間違った論理です。-- 念のため)は他にもある。有名な例は底角定理の証明だ。
「二等辺三角形の底角は等しい」という命題は、ユークリッド原論第1巻第5条([1]参照)に出てくる。
ユークリッドは図のように二等辺三角形 $\triangle AB\it\Gamma$ に対し補助線を引いて、等しい線分 $AZ$ と $AH$
を設けて証明している。$\triangle AZ\it\Gamma$ と $\triangle AHB$ が合同(二辺夾角)になり、よって
$BZ=\it\Gamma H,Z\Gamma=HB, \angle BZ\it\Gamma=\angle \it\Gamma HB$
再度、二辺夾角で $\triangle BZ\it\Gamma$ と $\triangle \it\Gamma HB$ が合同になって、
$\angle ZB\it\Gamma=\angle H\it\Gamma B$
が出てくるので、あとはこれの補角を考えればよい。
これを下図のように、角 A の二等分線を引いて証明してしまうと循環論法となる。
角の二等分線が作図可能であることを証明するのにこの底角定理が根拠とされるからである。(下図を見て考えてみてください。)
もし中学生が頂角の二等分線を引いて底角定理を証明(?)したとき、教師はどう対応すべきであろうか。
前述したように、
と、ここでも教師間で意見は真っ向から対立する。
ちなみに上の底角定理の循環論法による証明がまずいと見抜けるかどうかが、かつて数学を理解できるか否かの分水嶺とされていて、古来「ロバの橋」(ロバは橋を渡れずに川に落ちる)と呼ばれていた。この難関を渡りきれるかが幾何学を理解できるかどうかの試金石であったのだ。詳しくは文献[2] pp.66-72 参照。
話が「ロバの橋」の方にそれてしまった。$\lim \sin x/x=1$ の正しい証明を述べていなかった。高木 [3] の第1章第9節には次図 (半径 1 ) とともに