1つの底面に平行に四面体を薄くスライスする(上図参照)。薄っぺらいスライスされた三角形の重心(質量中心)は、数学におけるふつうの意味での重心と同じである。積み上げられたスライス三角形の重心は、頂点 D と $\triangle ABC$ の重心 G を結ぶ線分上にある。ということは、四面体の重心 $G_{0}$ もこの線分上にあるわけだ。よって
$\vec{g_{0}}=s \frac{\vec{a}+\vec{b}+\vec{c}}{3} +(1-s)\vec{d}$
である。また、別の頂点と底面のペアを考えれば
$\vec{g_{0}}=t \frac{\vec{b}+\vec{c}+\vec{d}}{3} +(1-t)\vec{a}$
2つの $\vec{g_{0}}$ を等しいとおけば
$s (\vec{a}+\vec{b}+\vec{c} ) +3(1-s)\vec{d}=t (\vec{b}+\vec{c}+\vec{d} ) +3(1-t)\vec{a}$
$\{ s- 3(1-t)\}\vec{a}+(s -t)\vec{b}+(s-t)\vec{c} +\{3(1-s)-t\}\vec{d}=\vec{0}$
$(s -t)(\vec{b}-\vec{a})+(s-t)(\vec{c} -\vec{a})+\{3(1-s)-t\}(\vec{d}-\vec{a})=\vec{0}$
3つのベクトル $\vec{b}-\vec{a}=\vec{AB},\vec{c}-\vec{a}=\vec{AC},\vec{d}-\vec{a}=\vec{AD}$ は1次独立なので、
$s-t=0,s-t=0,3(1-s)-t=0 \Rightarrow s=t=\frac{3}{4}$
だから、3:1 に内分だと分かる。これで
$\vec{g_{0}}=\frac{ \vec{a}+\vec{b}+\vec{c}+\vec{d}}{4}$
が分かった。■
今、考えているのは正四面体だから、重心と外心は一致する。点 A を原点 O に取って位置ベクトルを考えると、
$\vec{a}=\vec{AA}=\vec{0},\vec{b}=\vec{AB},\vec{c}=\vec{AC},\vec{d}=\vec{AD}$
だから
$\vec{g_{0}}=\frac{\vec{b}+\vec{c}+\vec{d}}{4}$
であり、外接円の半径 $R$ は、重心と頂点の間の距離 $|\vec{AG_{0}}| = |\vec{g_{0}}|$に等しいから
$R^2=|\vec{g_{0}}|^2=\vec{g_{0}} \cdot \vec{g_{0}}=\frac{1}{16} (\vec{b}+\vec{c}+\vec{d})
\cdot (\vec{b}+\vec{c}+\vec{d})$
$= \frac{1}{16} (|\vec{b}|^2+ |\vec{c}|^2+|\vec{d}|^2+ 2\vec{b}\cdot\vec{c}+
2\vec{c}\cdot\vec{d}+ 2\vec{d}\cdot\vec{b})$
$=\frac{1}{16}(1+1+1+2\cos 60^\circ +2\cos 60^\circ+2\cos 60^\circ)=\frac{3}{8}$
よって
$R=\sqrt{\frac{3}{8}} =\frac{\sqrt{6}}{4}$ ……(答)
ところで、今「重心と外心は一致する」ということを使ったが、これを使いたくないときはさらに $|\vec{BG_{0}}|=|\vec{CG_{0}}|=|\vec{DG_{0}}|=\sqrt{6}/4$
であることを示せばよい。実際、
$|\vec{BG_{0}}|^2=(\vec{g_{0}}-\vec{b}) \cdot=(\vec{g_{0}}-\vec{b})=(\frac{-3\vec{b}+\vec{c}+\vec{d}}{4}) \cdot (\frac{-3\vec{b}+\vec{c}+\vec{d}}{4})$
$= \frac{1}{16} (9|\vec{b}|^2+ |\vec{c}|^2+|\vec{d}|^2-6\vec{b}\cdot\vec{c}+
2\vec{c}\cdot\vec{d} -6\vec{d}\cdot\vec{b})$
$=\frac{1}{16}(9+1+1-6\cos 60^\circ +2\cos 60^\circ-6\cos 60^\circ)=\frac{3}{8}$
$|\vec{CG_{0}}|, |\vec{DG_{0}}|$ についても同様である。
【問題4】 $AB=\sqrt{3},BC=1,CA=2$ の直角三角形 ABC の内部に点 $P$ があり、$\angle BPC=2\pi/3$ を満たして動く。$AP$ の長さの最小値を求めよ。---
【解】 $\triangle ABC$ は $30^\circ-60^\circ-90^\circ$ の直角三角形であり、$\angle BPC$
を円 $E$ の円周角と考えれば、中心角は $240^\circ$ となり、下図において $\triangle EBC$ は $30^\circ-30^\circ-120^\circ$
の二等辺三角形であると分かる。
したがって、$E$ から $BC$ に下ろした垂線の長さは $\frac{1}{2\sqrt{3}}$ で、$EB=EC=\frac{1}{\sqrt{3}}$
となるから、円 $E$ の方程式は、$BC$ を $x$軸、$BA$を $y$軸に設定すれば
$(x- \frac{1}{2})^2 + (y+\frac{\sqrt{3}}{6})^2 = \frac{1}{3}$
であり、点 $P$ はこの円上にある。
よって、$AP$ の最小値は円の中心 $E(1/2, -\sqrt{3}/6)$ と $A(0,\sqrt{3})$ の間の距離から円の半径
$1/\sqrt{3}$ を引いたものになる。
$AP$ の最小値 $=\sqrt{(\frac{1}{2})^2 +(\sqrt{3}+\frac{\sqrt{3}}{6})^2}
-\frac{1}{\sqrt{3}}$
$=\sqrt{\frac{13}{3}} - \frac{1}{\sqrt{3}}$
$=\frac{\sqrt{13}-1} {\sqrt{3}}$ ……(答)
【別解】 $\angle PBC=\theta$ とする。正弦定理:
$\frac{CP}{\sin \theta} =\frac{1}{\sin 120^\circ}$
より、$CP=2 \sin \theta/\sqrt{3}$となる。また、$\angle BCP=180^\circ-120^\circ-\theta$
より $\angle ACP=\theta$ になるので、余弦定理より
$AP^2 = AC^2+ CP^2 -2 AC \cdot CP \cos \theta$
$=4+\frac{4}{3}\sin^2\theta -\frac{8\sqrt{3}}{3}\sin \theta \cos\theta$
半角と2倍角の公式: $\sin^2\theta= (1-\cos 2\theta)/2,\sin\theta \cos\theta=(1/2)\sin 2\theta$ を使って
$AP^2= \frac{14}{3} - \frac{2}{3}(\cos 2\theta+2 \sqrt{3} \sin 2\theta)$
次に単振動(三角関数)の合成を行って
$AP^2 = \frac{14}{3} - \frac{2\sqrt{13}}{3}\sin(2\theta+\alpha)$
ただし $0<\alpha<\pi/6$ である。$0<\theta<\pi/3$ だから $2\theta+\alpha=
\pi/2$ のとき最小になり、そのとき
$AP^2 = \frac{14-2\sqrt{13}}{3}$
求めるべき最小値は
$AP =\frac{\sqrt{ 13}-1}{\sqrt{3}} =\frac{\sqrt{13}-1}{\sqrt{3}}$ ……(答)
【問題5】 四面体 ABCD の辺 AB, BC, CD, DA 上にそれぞれ点 P, Q, R, S をとる。この4点 P, Q, R, Sが同一平面上にあるとき、$\frac{AP}{PB}
\cdot \frac{BQ}{QC} \cdot \frac{CR}{RD} \cdot \frac{DS}{SA}=1$ が成り立つことを証明せよ。---
【証明】