前ページ


【別解】 所与の等式を辺々引けば $xy=a-b$ (双曲線)だから、これと円 $x^2+y^2=a$ が第1象限で交わればよい。ということは、$a-b>0$ であり、円の半径が双曲線と原点との間の距離以上であればよい。
   
ところで、双曲線と原点との間の距離は、$y=x$ と双曲線との交点と原点との間の距離に等しい。したがって
   $\sqrt{a} \geq \sqrt{2} \times \sqrt{a-b}$
よって
   $a \geq 2(a-b)$
   $b \geq (1/2)a$
はじめに出した条件と合わせれば
   $(1/2)a \leq b <a$
 PageTopへ


§3. 3次方程式・不等式

【問題3.1】 $a^3-7a+6=0$を因数分解せよ。---数U

【解】 因数定理を使います。詳しくは数学Uの教科書を読んでください。
【答】 $(a-1)(a+3)(a-2)=0$ ■
 PageTopへ


§4. 因数定理

【問題4.1】 $ax^{3}+bx^{2}+cx+d=0$($a,b,c,d$は整数) が有理数解を持つとき
   $(ex^{2}+fx+g)(hx+i)=0$
($h,i$は互いに素な整数で$e,f,g$は整数)と変形でき、最初の式と恒等式とできる ということを証明せよ。---数U

【証明】
【1】$ax^{3}+bx^{2}+cx+d=0$($a,b,c,d$は整数で、$a \neq 0$とします) が有理数解
   $x=-\frac{i}{h}$
を持つとします。($h,i$は互いに素な整数とする。) すると左辺は
   $x+\frac{ i}{h}$
で割り切れます(因数定理)。 実際に割り算をすると 商は
   $a x^{2} + (-a\frac{i}{h} + b)x +(a\frac{i^2}{h^2} -b\frac{i}{h} +c) $
余りは
   $-a\frac{i^3}{h^3} + b\frac{i^2}{h^2} -c\frac{i}{h} + d $
となります。 割り切れるのだから
   $-a\frac{i^3}{h^3} + b\frac{i^2}{h^2} -c\frac{i}{h} + d = 0$ …… (*)
となります。そして、所与の3次式は
   $(x+ \frac{i}{h})\{a x^2 + (-a\frac{i}{h} + b)x +(a\frac{i^2}{h^2} -b\frac{i}{h}+c)\} $
を変形して
   $(hx+ i)\{\frac{a}{h}x^2 + (-a\frac{i}{h^2} + \frac{b}{h})x +(a\frac{i^2}{h^3} -b\frac{i}{h^2} +\frac{c}{h})\} $
となります。 証明すべきことは、{ }の中の係数
   (ア) $\frac{a}{h}$
   (イ) $-a\frac{i}{h^2} + \frac{b}{h}$
   (ウ) $ a\frac{i^2}{h^3} -b\frac{i}{h^2} +\frac{c}{h}$
がすべて整数になることです。

(ア) (*)より
   $a\frac{i^{3}}{h^{3}} = b\frac{i^2}{h^2} -c\frac{i}{h} + d$
で、$h^{3}$ 倍して $ai^{3} = (bi^{2} -cih + dh^{2} )h$ 両辺ともに($i$と互いに素の)$h$ で割り切れるので、$a$ は $h$ で割り切れる。
よって $ \frac{a}{h} = a'$ は整数である。

(イ) (*)より
   $-a\frac{i^{3}}{h^{3}} + b\frac{i^{2}}{h^{2}} = c\frac{i}{h} - d $
で、$h^{3}$ 倍して $(-ai + bh) i^{2} = (ci - dh) h^{2}$ 両辺ともに($i^{2}$と互いに素の)$h^{2}$ で割り切れるので、$(-ai + bh)$ は $h^{2}$ で割り切れる。
よって $-a\frac{i}{h^{2}} + \frac{b}{h}$ は整数である。

(ウ) (*)より
   $a\frac{i^{3}}{h^{3}} - b\frac{i^{2}}{h^{2}} + c\frac{i}{h} = d$ で、$h^{3}$ 倍して $(ai^{2} - bhi + ch^{2}) i = d h^{3}$ 両辺ともに($i$と互いに素の)$h^{3}$ で割り切れるので、$(ai^{2} - bhi + ch^{2})$ は $h^{3}$ で割り切れる。
よって $a\frac{i^{2}}{h^{3}} - b\frac{i}{h^{2} }+ \frac{c}{h}$ は整数である。

【2】$ax^{3}+bx^{2}+cx+d=0$($a=0,b,c,d$は整数で、$b\neq0$とします) すなわち $bx^{2}+cx+d=0$ が有理数解
   $x=-\frac{i}{h}$
を持つとします。($h,i$は互いに素な整数とする。) このときどうなるかというと、【1】において $a=0$ とおけば、そのまま今の証明が通用します。

【3】$ax^3+bx^2+cx+d=0$($a=b=0,c,d$は整数で、$c\neq0$とします) すなわち $cx+d=0$ が有理数解
   $x=-\frac{i}{h}$
を持つとします。($h,i$は互いに素な整数とする。) このときどうなるかというと、【1】において $a=b=0 $とおけば、そのまま今の証明が通用します。 ■

【蛇足】 3次式に限らず、一般に整係数の $n$ 次方程式が有理数の解を持てば、2つの整係数の多項式の積に因数分解される、 という定理(ガウスの補題)が成り立ちます。

【問題4.2】 $P(x)=ax^4+(b-a)x^3+(1-2ab)x^2+(ab-10)x+2ab$ が $x^2-4$ で割り切れるときの $a,b$ の値を求めよ。--- 数U

【解】 $P(x)$ を $x^2-4$ で実際に割っていると計算が面倒。そこで、因数定理を使う。
$x^2-4=(x-2)(x+2)$ で割り切れるから、 $P(x)$ は $x-2$ でも $x+2$ でも割り切れるので、
   $P(2)=P(-2)=0$
よって
   $16a+8(b-a)+4(1-2ab)+2(ab-10)+2ab=0$ ……(1)
   $16a-8(b-a)+4(1-2ab)-2(ab-10)+2ab=0$ ……(2)
あとは、(1),(2)の連立方程式を解けばよい。
(1)と(2)を辺々足せば
   $16a+4(1-2ab)+2ab=0 \Rightarrow 3ab-8a-2=0$ ……(3)
同じく、辺々引けば
   $8(b-a)+2(ab-10)=0 \Rightarrow ab-4a+4b-10=0$ ……(4)
(3),(4)から $ab$ を消去すれば
   $4a-12b+28=0 \Rightarrow a=3b-7$
これを(4)に代入すれば、
   $b^2-5b+6=0 \Rightarrow (b-3)(b-2)=0$
これより
   $a=2,b=3$ または $a=-1,b=2$ ……(答)
【別解】 (1),(2)の連立方程式の解き方だが、次のような方法もある。2式をそれぞれ展開した後、因数分解する。
   $ab-2a-2b+4=0 \Rightarrow (a-2)(b-2)=0$
   $ab-3a+b-3=0 \Rightarrow (a+1)(b-3)=0$
このように因数分解できるとはよほど運がいいと言わねばならない。
第1式から、$a=2$ または $b=2$ だが
(ア) $a=2$ ならば 第2式により $3(b-3)=0 \Rightarrow b=3$
(イ) $b=2$ ならば 第2式により $-(a+1)=0 \Rightarrow a=-1$
 PageTopへ

§5. 整数解

【問題5.1】 連続する $7$ つの自然数がある。このうち初めの $4$ つの自然数の二乗の和が残りの $3$ つの自然数の二乗の和に等しくなるという。このような $7$ つの自然数の組を全て求めよ。---

【解】 $(x-3)^2 + (x-2)^2 + (x-1)^2 + x^2 = (x+1)^2 + (x+2)^2 + (x+3)^2$
   $4x^2 -12x +14 = 3x^2 +12x + 14$
   $x^2 -24x = 0$
   $x(x -24) = 0$
$x-3>0$ より $x=24$
【答】 $21,22,23,24,25,26,27$ の1組しかない。


【問題5.2】 自然数$x,y$は、$x<y$および$(1-1/x)(1-1/y)=2/3$を満たす。これらの条件を満たす自然数$x,y$の組をすべて求めよ。---

【解】
   $(1-1/x)(1-1/y)=2/3$
   $\frac{x-1}{x} \times \frac{y-1}{y} = \frac{2}{3}$
   $3(x-1)(y-1) = 2xy$
   $xy -3x -3y +3 =0$
   $(x-3)(y-3)=6$
$6$の因数分解のうち、$x-3<y-3$になるものは
   $(x-3, y-3)= (1,6), (2,3), (-6, -1), (-3,-2)$
の4組だけ。よって
   $(x,y)=(4,9),(5,6),(-3,2),(0,1)$
自然数でないものを除けば
   $(x,y)=(4,9),(5,6) $ ……(答)


【問題5.3】 $0<a<1, 0<b<1$を満たす有理数$a,b$に対し、どのような偶数$n$に対しても
   $f(n)=an^3+bn$
が偶数となる$a,b$の組のうち、$a$が最小であるものを求めよ。---


【解】 $n$にいろいろな偶数を代入してみよう。(とは言っても、$0$を代入しても意味だし、負の偶数も正の偶数を代入するのと効果は変わらない。)
   $f(2)=8a+2b=2(4a+b)$が偶数。
ここからは、$4a+b$が整数ということくらいしか分からない。
   $f(4)=64a+4b=4(4a+b)+48a$が偶数。
$偶数-偶数=偶数$だから
   $48a$は偶数、$24a$は整数
が分かる。よって、$a$を既約分数とするなら、その分母は$24$の約数でなければならない。そのような分数で、かつ$0<a<1$の範囲で最小のものは
   $a=1/24$
である。あとは、$(a,b)=(1/24, ?)$で所与の条件を満たすものが実際に存在すれば、これが答になる。
前述のように、$4a+b=(1/6)+b$は整数でなければならないから、$b=5/6$とせざるをえない。そこで
   $f(n)=\frac{1}{24}n^3+\frac{5}{6}n$
とすれば、どのような偶数$n$に対しても偶数となることを示そう。
   $f(2k)=\frac{1}{3}k^3+\frac{5}{3}k=\frac{k(k^2+5)}{3}$
だが、この分数は$3$で約分できる。実際、$k=3l$なら
   $\frac{k(k^2+5)}{3}=\frac{3l(9l^2+5)}{3} = l(9l^2+5)$
だし、$k=3l\pm 1$なら
   $\frac{k(k^2+5)}{3}=\frac{(3l\pm1)(9l^2\pm6l+6)}{3} =(3l\pm1)(3l^2\pm2l+2)$
だからである。
【答】 $a=1/24$
【別解】 $n$が偶数なら
   $f(n+2)-f(n)=6an^2+12an+8a+2b$
も偶数。先述のように$f(2)=8a+2b$も偶数だから、
   $6an^2+12an=6an(n+2)$は偶数、$3an(n+2)$は整数
である。$n=2,4,6,\cdots$を代入すれば
   $3an(n+2)=24a,72a,144a,\cdots$
はすべて整数、既約分数$a$の分母は少なくとも$24$の約数でなければならない。これ以降の論理は先の【解】と同じである。


【問題5.4】 $p,q$ を整数とし、$f(x)=x^2+px+q$ とおく。$f(1),f(2)$ がともに2で割り切れないとき、方程式 $f(x)=0$ は整数の解を持たないことを示せ。---

【証明】
   $f(1)=1+p+q$
   $f(2)=4+2p+q$
がともに奇数だから、差をとって $3+p$ は偶数なので、
   $p$ は奇数
であり、$1+p+q$ が奇数であることから
   $q$ も奇数
ということが分かる。さて
   $x^2+px+q=0$ ……(*)
が、もし整数解 $x$ を持つとしたら $x = 2n$ か $x = 2n+1$ のどちらか。これらを(*)の左辺に代入すると
   $f(2n)=4n^2+2pn+q$ は奇数
   $f(2n+1)=4n^2+4n+1+2pn+p+q$ は奇数
で、いずれも奇数になり、0(偶数)にはならない。よって $f(x)=0$ は整数解を持たない。■
【別証明】 上の証明を $\pmod{ 2}$ の合同式の形に表わす。
   $f(1)=1+p+q \equiv 1$
   $f(2)=4+2p+q \equiv 1$
の差をとって $f(2)-f(1)=3+p \equiv 0$ だから
   $p \equiv -3 \equiv 1$
また $q \equiv 1-1-p \equiv -1 \equiv 1$
さて
   $x^2+px+q=0$ ……(*)
が、もし整数解 $x$ を持つとしたら $x \equiv 0$ か $x \equiv 1$ のどちらか。これらを(*)の左辺に代入するとそれぞれ
   $f(x) \equiv 0^2+ 1 \times 0 +1 \equiv 1$
   $f(x) \equiv 1^2+1 \times 1+ 1 \equiv 3 \equiv 1$
で、いずれも $\equiv 0$ にならない。よって $f(x)=0$ は整数解を持たない。■
 PageTopへ

§6. 文章題

【問題6.1】 1回に750kgの重さまで運ぶことのできるエレベーターがある。このエレベーターで1個50kgの荷物を2人で何個か運びたい。2人の体重の合計が120kgのとき、荷物は1回に何個まで運ぶことができるか。---

【解】 これはSPIの問題です。作成元はリク○ート、当該の就職問題集には「12個」などと解答が出ています。
でも、ホントの正解は、
   $750 \div 50 = 15(個)$
その方法:
(1) A君は行先階のボタンを押した後、エレベーターが発車するのを防ぐため、開ボタンを押し続けます。
(2) B君はその間、1人で15個の荷物をエレベーターに載せます。
(3) 荷物を載せたB君は階段を使って行先階へ行きます。(階段は絶対あります。)
(4) 頃合いを見て、A君はエレベーターを発車させます。
(5) 行先階で待っていたB君は、エレベーターが到着したら開ボタンを押し続けて、エレベーターが他の階へ行くことを防ぎます。
(6) 階段で行先階に到着したA君は、1人で荷物を下ろします。
解答はマークシートなので上記のような答案を書くことはできず、明晰な頭脳の就職希望の高校生は不採用にされます。


【問題6.2】 ランナーが $20km$ のうち、最初の $10km$ を $17km/h$, 後の区間を $21km/h$ で走行したときの平均速度を、調和平均で求めよ。---

【解】 前半 $10km$ を走るのに要する時間を $x_{1}$ 時間、後半 $10km$ を走るのに要する時間を $x_{2}$ 時間とすれば
   $x_{1}=\frac{10}{17},x_{2}=\frac{10}{21}$
よって、平均速度 $v[km/h]$ は
   $v =\frac{20}{x_{1}+x_{2}} $
   $= \frac{20}{\frac{10}{17}+\frac{10}{21} }$
   $=\frac{2}{\frac{1}{17}+\frac{1}{21} }=\frac{357}{19}$ ……【答】
結局
   $\frac{1}{v} = \frac{\frac{1}{17}+\frac{1}{21} }{2}$
となります。$1/v$ は $1/17$ と $1/21$ の平均になっていますが、このとき「$v$ は $17$ と $21$ の調和平均」と言います。
 PageTopへ



[婆茶留高校数学科☆HP] Top pageに戻る このページを閉じる 探したい言葉はここへ→