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チェーン・ルール(合成関数鎖律)とは

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§1. 言葉の由来
§2. 間違った証明
§3. →の2つの意味
§4. 正しい証明法

§1. 言葉の由来

関数 $y=f(u)$ に関数 $u=g(x)$ を代入すれば、合成関数 $y=f(g(x))=(f \circ g)(x)$ ができあがる。これを$x$で微分すると
   $\frac{dy}{dx} = \frac{dy}{du} \frac{du}{dx}$ ……(1)
これをチェーン・ルール chain rule と呼ぶ。日本語だと鎖率となる。なぜチェーンなのかというと、「形が似ているから」とある本に書かれていた。$f$ が多変数関数で
   $y=f(u_{1},u_{2},\cdots,u_{n})$
で、独立変数たちが $u_{1}=g_{1}(x), u_{2}=g_{2}(x), \cdots, u_{n}=g_{n}(x)$ なら
   $\frac{dy}{dx} = \frac{dy}{du_{1}}\frac{du_{1}}{dx} + \frac{dy}{du_{2}}\frac{du_{2}}{dx} +\cdots + \frac{dy}{du_{n}}\frac{du_{n}}{dx}$ ……(2)
となる。この式の形がチェーン(下の写真)に似ているのだろう。
    

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§2. 間違った証明

ところで、(1)の証明が高校の数学Vの教科書に書かれているが、たいがい間違っている。その点を調べてみよう。
某教科書には、まず
   
と書いている。ここまでは間違いはない。問題なのはこの次だ。
   
ここで、
   $\displaystyle \lim_{\Delta x \rightarrow 0} \frac{\Delta y}{\Delta u} = \lim_{\Delta u \rightarrow 0} \frac{\Delta y}{\Delta u} $
としている所が間違いだ。証明の前段で述べている、
   $\Delta x \rightarrow 0$ のとき $\Delta u \rightarrow 0$
の部分を少し詳しく考えてみよう。
   
関数 $u=g(x)$ の挙動が上図(左)のようであれば、$\Delta u$ は 0 にはならず、0 に限りなく近づく。ところが(右)だと $\Delta x=0$ の近傍で $\Delta u=0$ とズッと 0 のままの状態で居続けるのである。後者の場合、$\displaystyle \lim_{\Delta x \rightarrow 0} \frac{\Delta y}{\Delta u} $ を計算しようとしても、$\Delta u=0$ の状態から脱することができないのだから、$\frac{\Delta y}{\Delta u} $ の分母は常に 0 になり、値を持たず、当然極限値も持たない。
蛇足ながら、(左)の場合なら、分母は常に0にならずに0に近づくだけだから、分数は値を持ち、極限値も持つのである。

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§3. →の2つの意味

前節で述べた教科書による証明の間違いの原因を調べよう。我々は
   $x \rightarrow a $ のとき $f(x) \rightarrow b$
という言い方をするが、左の→と右の→は意味が違う。
左の独立変数の方は、「$a$にはならずに$a$に限りなく近づく」のであって、右の従属変数の→は「常に$b$であってもよいし、$b$ に等しくならず $b$ に限りなく近づくのであっても、どっちでもよい」のである。大学風に書くと
   $\forall \varepsilon >0 \exists \delta >0: 0<| x-a | <\delta \Rightarrow |f(x)-b|< \varepsilon$
となる。独立側には "$0<$" が付くのに従属側にはそれが付かない。

関数の連続性の定義は
   $x \rightarrow a$ のとき $ f(x) \rightarrow f(a)$
だが、$\varepsilon-\delta$ で書くと
   $\forall \varepsilon >0 \exists \delta >0: | x-a | <\delta \Rightarrow |f(x)-f(a)|< \varepsilon$
である。今度は独立側にも "$0<$" が付かない。
なんとも→は難しい。

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