円環1つの面積は、縦が円周$2 \pi r$ で、横が$dr$ の長方形の面積で近似できる。だから
$ dS = 2 \pi r dr $
これを積分して
$ S = \int_{0}^{r} 2 \pi r dr = \left[ \pi r^{2} \right]_{0}^{r} = \pi r^{2} \mbox{■} $
ところで、小学校では円の面積を扇形への細分で求めている。
(証明2) 円を放射状に細分する(デコレーションケーキ型微分)。扇形1つの面積は、高さが$r$ で、底辺が$r d\theta$ の二等辺三角形の面積で近似できる。
だから
$ dS = \frac{1}{2} r^{2} d \theta .$
これを積分して
$ S = \int_{0}^{2\pi} \frac{1}{2} r^{2} d \theta = \left[ \frac{1}{2} r^{2} \theta \right]_{0}^{2\pi} = \pi r^{2} \mbox{■} $
このように2つの証明法が出てくることを少し考えてみよう。元来、面積は重積分で求めるものである。例えば、曲線下の面積なら
$ S = \int \! \! \! \int_{D} dxdy $
ただし、領域$D$ は
$ D = \{ (x,y) \mid a \leq x \leq b, 0 \leq y \leq f(x) \} $
である。
この重積分を$y$ から先に積分すると、
$ S = \int_{a}^{b} \left( \int_{0}^{f(x)} dy \right) dx $
$= \int_{a}^{b} \left( \left[ y \right]_{0}^{f(x)} \right) dx = \int_{a}^{b}
f(x) dx $
と、$x$ の単積分で求まるのであった。
(証明3) 円の面積なら
$ D = \{ (r,\theta) \mid 0 \leq r \leq R, 0 \leq \theta \leq 2\pi \} $
として、座標変換の式は
$ \left\{\begin{array}{rcl}x & = & r \cos \theta \\y & = & r \sin \theta\end{array}\right.$
だから、ヤコビアンは
$ \frac{\partial (x,y)}{\partial(r,\theta)} = \det \left( \begin{array}{rr}\cos \theta & -r \sin \theta \\\sin \theta & r \cos \theta \end{array}\right) = r \cos^{2}\theta + r \sin^{2}\theta = r $
である。よって
$ S = \int \! \! \! \int_{D} dxdy = \int \! \! \! \int_{D} \left| \frac{\partial (x,y)}{\partial(r,\theta)} \right| dr d\theta = \int \! \! \! \int_{D} r dr d\theta $
となり、これを$\theta$ から先に累次積分すれば、
$ S = \int_{0}^{R} \left( \int_{0}^{2\pi} r d\theta \right)dr = \int_{0}^{R} 2\pi r dr = \pi R^{2} $
で同心円状の積分になる。一方、$r$ から先に積分すると
$ S = \int_{0}^{2\pi} \left( \int_{0}^{R} r dr \right)d\theta = \int_{0}^{2\pi} \frac{1}{2}R^{2} d \theta = \pi R^{2} $
で、放射状の積分だ。■
【球の表面積】
微分(differential)の威力を試す問題として、最後に球の表面積を求めることにしよう。
円の面積の導関数が円周の長さになるように、球の体積の導関数は表面積である。
(解1) 球の体積は、回転体の体積の公式より
$ V = \frac{4}{3}\pi r^{3} $
と求まる。これから
$ V'(r) = 4 \pi r^{2} $
で、これが球の表面積である。■
表面積を求めるのに、それより次元の高い体積が分かっていないとならないというのは、順序が逆のようで、理論的には美しくない。体積の公式を仮定しないで、この問題を解いてみよう。
(解2) $x$-$y$平面上に原点中心、半径$r$ の上半円
$ y = \sqrt{r^{2} -x^{2}} $
を描く。これを$x$軸の回りに回転して、表面積を求める。$x$軸を細分して、$dx$の回りを回転してできる帯の表面積 $dS$ を考える。
そのために、次図の円錐台の側面積 $s$ を$a,b,c$ で表す式を出しておく。母線の長さが $a$ の円錐の側面を展開すると、中心角が
$ 360^{\circ} \times \frac{2\pi c}{2\pi a} = 360^{\circ} \times \frac{c}{a} $
の扇形になる。よって
$ s = \{ \pi(a+b)^{2} - \pi a^{2} \} \times \frac{c}{a} = \pi(2ab+b^{2})\times \frac{c}{a} = \pi(2bc + \frac{b^{2}c}{a} ) $ ……(*)
である。
円錐台の側面積の公式を適用するために、$a,b,c$ を求めよう。まず
$ c = \sqrt{r^{2}-x^{2}} .$
三角形の相似から$ a : c = r : x $だから、
$ a= \frac{rc}{x} = \frac{r\sqrt{r^{2}-x^{2}}}{x} .$
もう1組の三角形の相似から$ b : dx = r : c $だから
$ b= \frac{r dx}{c} = \frac{r dx}{\sqrt{r^{2}-x^{2}} } $
が言える。これをさきほどの $s$ の式に入れる。(*)に出てくる$b^{2}$ は
$ \frac{r^{2} (dx)^{2}}{r^{2}-x^{2}} $
で、$dx$ より高位の無限小になるので、無視する。すると
$ s = \pi \times 2bc = 2\pi r dx .$
あとは $dS=2\pi r dx$ を積分すればよい。
$ S = \int_{-r}^{r} 2\pi r dx = 2\pi r \left[ x \right]_{-r}^{r} = 4 \pi r^{2} \mbox{■} $
$x$-$y$座標系で計算したので、面倒くさくなってしまった。やはり、円や球は極座標と相性がよいようだ。極座標で計算すると、以下のようなずっと簡単な別解ができあがる。
(解3) 上半円を $\theta$ 方向に細分する。線素は、半径$r$、中心角$d\theta$の扇形の弧長だから $ r d\theta $ である。
これは$x$軸から $r \sin \theta$ だけ離れたところにある。よって、線素を$x$軸の回りに回転すると、長さ$2\pi r \sin \theta$、幅$r d\theta$の細長い長方形の帯ができる。したがって、面素は
$ 2\pi r \sin \theta \cdot r d\theta = 2\pi r^{2} \sin \theta d \theta $
で、これを積分して
$ S = \int_{0}^{\pi} 2\pi r^{2} \sin \theta d \theta = 2\pi r^{2} \left[ - \cos \theta \right]_{0}^{\pi} = 4 \pi r^{2} $
を得る。■
今の例では、線素$r d\theta$ が$x$軸に対して斜めに傾いていたが、微分(diffrential)の考えにのっとればちゃんと正しい答に到達する。微分の考えを使わずに、この計算をするのはきわめて困難だろう。
[婆茶留高校数学科☆HP] Top pageに戻る このページを閉じる 探したい言葉はここへ→