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箱にカードを入れるという考え方(別解の研究)
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ある生徒は次のような感想を述べる。
「問題集の順列・組合せの部分を解いて答合わせをすると、答は合うのに解き方がまったく違うのでがっくり来る。なぜ、自分の考え方ではいけないのかが分からない。」
問題集ではなぜ別の解き方をしてあるのかのあたりを研究してみると有益な結論が引き出せるかもしれない。
別解を考えることによって、その問題の全体像が分かりやしないかという予感がする。別解を「そういう考えもあるね」程度にほうっておくのは勿体ない。そこをつついてみよう。
【いっけん重複順列】
「重複順列」は積の法則を単純に使えば出てくるので、最も簡単ということになりそうだ。そこで、最初にこれを取り上げる。
(例題1) (投票結果)
5人の仲間で、夏休みは海へ行こうか、山に行こうか、それとも湖に行くかと話し合っている。話がつかないので各自記名の上、投票して決めることにした。投票の方法は何通りあるか。---
(本解)A,B,C,D,Eの5人のそれぞれが、海・山・湖の3通りの投票ができるので、積の法則により、
$ 3^{5} = 243 \mbox{通り} $
つまり、5つの変数が{海,山,湖}の3つの値のうちのひとつを取る、と考えた訳である。■
(別解)はたして、この5人はどこに行くんだろう。それが一番心配なのだから、海、山、湖の3つを変数とする。つまり、空箱を3つ用意して、そこにA,B,C,D,Eと書かれた5枚のカードを入れるのだ。投票結果は、
が考えられる。全部で何通りかを計算すると、
$ 3 + (_{5}C_{4} \times 3! + _{5}C_{3} \times 3!) +(\frac{5!}{3!1!1!}
\times 3! \div 2 + \frac{5!}{2!2!1!} \times 3! \div 2)$
$= 3 + (30 + 60) + (60 + 90) = 243 \mbox{ ■} $
別解の方は計算するのも頭が痛い。重複順列の問題で、別解を考えるととてつもなく難しくなることがあることは注意すべきだろう。そうすると、さきほど重複順列は最も簡単と言いかけたことは、本当かどうか疑わしくなってきた。
ともかく、投票する者(人間)と投票されるもの(行き先)のうちのどちらを変数(空箱)にし、どちらを箱に入れるカード(値集合)にするかを逆転しただけで、こんなにも解答が異なることが分かった。
(例題2) (ベキ集合)
要素$n$個の集合の部分集合は、全部でいくつあるか。---
(本解) 各要素に {取る,取らない} の2種類のどちらかを選んで並べる「重複順列」だから、$2^{n}$個である。■
(別解) $n$個のものを「取る」箱と「取らない」箱に入れる方法だから、割れ方が
$ (n,0),(n-1,1),\cdots,(0,n) $
とあるので、
$ _{n}C_{n} + _{n}C_{n-1} + \cdots + _{n}C_{0} = 2^{n} $
右辺に直せることは二項定理のところでを習う。■
【いっけん順列】
(例題3) (Perfumeの並び方)
あ〜ちゃん、かしゆか、のっちの3人を横1列に並べる方法は何通りか---
(本解) 1番,2番,3番の箱に「あ〜ちゃん」、「かしゆか」、「のっち」と書かれたカードを入れる3次の置換の問題と考えて
$ _{3}P_{3} = 3! = 3 \times 2 \times 1 = 6 $
とやる。■
(別解)「あ〜ちゃん」、「かしゆか」、「のっち」という名の3つの箱があって、ここに1,2,3と書かれた番号札を入れる。これでも、計算法はまるで同じで
$ _{3}P_{3} = 3! = 3 \times 2 \times 1 =6 \mbox{ ■} $