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(図の上にマウスを置くと答が出ます。)
【解】 $\vec{a}+\vec{b}$を描こうとすると画面からはみ出る。そこで$\vec{b}+\vec{c}$を三角形の法則で描き、それの始点が$\vec{a}$の終点に一致させ、再度三角形の法則を使うと作図ができる。答は赤い矢線である。
でもこの手の問題、少しおかしくないだろうか。答が与えられた方眼の中に描けるか否かは自明でない。実際、枠からはみ出る問題を作るのは簡単だし、枠からはみ出なくても始点の取る場所によってははみ出てしまう。作図可能か否かを、いろんな作図を試してみて確認することはできない。なぜなら試行錯誤を無限に繰り返すことができないからである。
ということは、作図以外の方法で作図可能なことを確認した後でなければ、矢線ベクトルは描けないということになる。
【ホントの解】 成分表示により答のベクトルを求め、それと方眼を比較検討し、作図できるためには始点をどこに取るかを決めるのである。成分表示してから計算すると
$\vec{a}+\vec{b}+\vec{c}=(4,1)+(1,3)+(-3,-2)=(4+1+(-3),1+3+(-2))=(2,2)$
だから、$x$軸方向に2, $y$軸方向に2 だけ移動するベクトルが答だから、始点を$(0,0), (0,1), (1,0), (1,1),
(2,0), (2,1)$ のどこかに置けば描ける。
ベクトルを成分表示して、加法と実数倍を施したときの計算経過と結果はどうなるだろうか。
$\vec{a}=(x_{1},y_{1}), \vec{b}=(x_{2},y_{2})$のとき、それの和と実数$r$倍は
$\vec{a}+\vec{b}=(x_{1}+x_{2}, y_{1}+y_{2})$,
$ r\vec{a}=(r x_{1},r y_{1})$
となる。その理由は両座標軸への正射影を考えれば分かる。図形の正射影というのは、図形上の点から座標軸へ下した垂線の足全体からなる図形のことである。
そもそも、ベクトルというのは向きと大きさ(長さ)を持つ量であった。ただそのままでは扱いづらいので、成分表示をした。ここで我々はベクトルの誕生より以前に座標軸が設定されていた、という構図を採用してきた。実は数学的にはベクトルを導入した後、ベクトルを使って座標軸を作るのである。
さて、ベクトルの大きさ(絶対値)とは矢線の長さのことである。ベクトル $\vec{a}=(a_{1},a_{2})$ の大きさを絶対記号を流用して表す。三平方の定理を使って成分で大きさを書き表せる。すなわち
$|\vec{a}|=\sqrt{a_{1}^2+a_{2}^2}$
大きさが 1 のベクトルは単位ベクトルと呼ばれる。与えらたベクトルと同じ向きの単位ベクトルは何かと役に立つ。
【問題】 $\vec{a}=(a_{1},a_{2})$ と同じ向きの単位ベクトルを求めよ。---
【解】 同じ向きだから正の実数倍しなければならない。長さが長ければ短くしなくてはいけないから、\frac{1}{|\vec{a}|$ 倍すればよい。だから求めるべき単位ベクトルは
$\vec{e}=\frac{1}{|\vec{a}|} \vec{a}= \frac{1}{\sqrt{a_{1}^2+a_{2}^2}}\vec{a} =(\frac{a_{1} }{\sqrt{a_{1}^2+a_{2}^2}},\frac{a_{2} }{\sqrt{a_{1}^2+a_{2}^2}})$
座標軸の正の向きと同じ向きを持つ単位ベクトルを基本ベクトルと言う。
のように表す。これを使って任意のベクトルを1次結合の形に表現できて、
$\vec{a}=(a_{1},a_{2})=a_{1}(1,0)+a_{2}(0,1)=a_{1}\vec{e_{1}}+ a_{2}\vec{e_{2}}$
となる。これって便利だな、と思うのは早計で、そもそもノッペラボーだった平面に原点 $O$ と直交する右手系の単位ベクトルを2つ、$\vec{e_{1}}$ と $\vec{e_{2}}$ を与えると、平面上の任意のベクトルは
$x \vec{e_{1}}+y\vec{e_{1}}$
と表現できる。このベクトルの始点を原点にしたときの終点の座標を $(x,y)$ と定義するのである。これにより、平面に座標が導入される。はじめに基本ベクトルありきで、座標はあとから生まれたのである。だから「便利」なのではなく当然なのである。
ベクトルは大きさと向きを持つ量と言った。では、$\vec{a}=(a_{1},a_{2})$ の向きを数式で表すにはどうすればよいだろう。傾き=偏角のタンジェント、すなわち
$\tan \theta$ を使えばよさそうだが、ベクトルが $x$軸に垂直になると使い物にならなくなる。向きを表すには次の方法を使う。
下図は以前にも出てきたものである。
$\overrightarrow{AB}=\overrightarrow{OP}$ であるのだが、これを成分表示するとどうなるか。$x$軸方向に 2, $y$軸方向に 1 だけ平行移動しているから $(2,1)$ だが、それは B の座標から A の座標を引いたものになっている。つまり
$\overrightarrow{AB}=B-A=(1,2)-(-1,1)=(1-(-1),2-1)=(2,1)$
と、終点の座標から始点の座標を引けばよい。このベクトルを平行移動して $\overrightarrow{OP}$ に持ってきたら、$P-O=\overrightarrow{OP}$ で、移項して $P=(0,0)+\overrightarrow{OP}$, すなわち
$P=\overrightarrow{OP}$
座標と原点を始点とするベクトルが等しくなる。この、原点を始点とし、終点を $P$ とするベクトルを点 $P$ の位置ベクトルと言う。今後は座標と位置ベクトルを同一視しよう。だから
点 $P(\vec{p})$
のような書き方をする。今までなら括弧の中に座標を書いていたが、そこに位置ベクトルを書くのである。座標を使って解ける問題は、ベクトルでも解ける。ただ、どっちで解くのが楽かという問題はあるが。
【問題】 2点 $A(\vec{a}), B(\vec{b})$ を結ぶ線分を $m:n$ (一方のみが負なら外分)に分ける点 $P(\vec{p}$
を求めよ。---
【解】 図より