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【第01講】 等差数列の一般項
【第02講】 等比数列の一般項
【第03講】 等差数列の和
【第04講】 等比数列の和
正の偶数は、$2,4,6,\cdots$のことだが、「$\cdots$」で誤魔化しているところが気になる。これを避けようとしたら数式を使うしかない。偶数は2の倍数だから
$a_{n}=2 n (n$は任意の自然数$)$
となる。この式を数列 $\{ a_{n} \}$ の一般項と言う。$a_{n}$の中の$n$は添え字(index)と言う。添え字の動く範囲は自然数全体(または$N$以下の自然数全体)である。これが独立変数$n$の定義域である。$2n$の方は従属変数だから、数列とは関数:
自然数($\mathbb N$) $\rightarrow$ 実数($\mathbb R$)
$\mathbb N \ni n \mapsto a_{n} \in \mathbb R$
のことなのである。その意味では、$a_{n}$ と書くより $a(n)$ の方が本当はよい。
では、正の奇数$1,3,5,\cdots$を数式で表示するとどうなるか。偶数列(数を1列に有限個または無限個並べたものを数列と呼ぶ)と比べると、各々1だけ小さいから
$b_{n}=2n-1(n=1,2,3,\cdots)$
である。「$\cdots$」を嫌ったのに、括弧の中で使っている。大目に見てほしい。
さて正の奇数列を前から順に見ていくと、1から始まって2ずつ増えていることが分かる。これを初項が1で、公差が2の等差数列と呼ぶ。
初項は1番目、すなわち$n=1$に対応する項のことであって、$a_{1}$のことである。(数列では1個1個の数値を項と言う。)これを数式で表すと
$a_{n}=a_{n-1}+2 (n=2,3,4,\cdots)$
となる。この式を漸化式と言う。
初項と漸化式が与えられればすべての項が決定される。それが数学的帰納法の原理である。ドミノ(将棋)倒しの原理と言ってもよい。
数列の規則を表すには、下図のように2つの方法があって、
である。
等差数列の一般項を求めてみよう。
まず等差数列とは何か、だが初項を $a_{1}=a$ とし、これに公差 $d$ という数を繰り返し足していくことによって生成される数列が等差数列である。その項を順に書くと
$a_{1}=a,a_{2}=a+d, a_{3}=a+2d, a_{4}=a+3d, \cdots$
となる。第4項、すなわち4番目の項は $d$ を4個ではなく3個足して、$a+d+d+d=a+3d$ となる。この「1個減ってしまう」という事実を植木算と言う。(植木算は計算方法ではなく、原理を表す言葉で、鶴亀算などの「算」とは意味が異なる。)植木算を別の例で説明しよう。左手を見よ。指は5本ある。では水掻き(指の股)も5個あるかと言うと、$5-1=4$個しかない。
これが植木算である。(蛇足:初項を$a_{0}$ にすれば植木算にならないのでは、と思われるかもしれないが、それだとあとで数列を和を求めるときに 1 ずれてしまう。)
上のことから類推して一般項は
$a_{n}=a+(n-1)d (n \in \mathbb N)$
等差数列がどんどん足していく数列だとするなら、等比数列はどんどん掛けていく数列である。
等比数列の一般項を求めてみよう。
等比数列とは初項 $a_{1}=a$ に公比 $r$ という数を繰り返し掛けていくことによって生成される数列のことである。その項を順に書くと
$a_{1}=a,a_{2}=a \cdot r, a_{3}=a \cdot r^2, a_{4}=a \cdot r^3, \cdots$
となる。等差と比較すると、「足す」が「掛ける」に、「$n-1$倍」が「$n-1$乗」に変わっている。だから等比数列の一般項は
$a_{n}=ar^{n-1} (n \in \mathbb N)$
となる。
また、漸化式は、1つの項と次の項との関係式のことであったから、
$a_{n}=r a_{n-1}$ $(n=2,3,4,\cdots)$
最も馴染みのある等差数列の和は $1+2+3+\cdots+10$ だろうか。一般の等差数列の和を求めてみよう。
初項 $a$, 公差 $d$, 項数 $n$, 末項 $l$ の等差数列の和を $S$ とすれば
←
パラパラまんが
のように $$ を2個分計算して、2で割ればよいから
$S=a+(a+d)+(a+2d)+\cdots +(l-2d)+(l-d)+l$
$S=l+(l-d)+(l-2d)+\cdots +(a+2d)+(a+d)+a$
を辺々足すことに相当することになるから、
$2S=(a+l)+(a+l)+(a+l)+\cdots + (a+l)+(a+l)+(a+l)=(a+l)n$
よって
$S=\frac{(a+l)n}{2}$
末項は第$n$項だから $l=a_{n}=a+(n-1)d$ を代入すれば
$S=\frac{(2a+(n-1)d)n}{2}$
【公式】 初項 $a$, 公差 $d$, 末項 $l$, 項数 $n$ の等差数列の和 $S$ は
$S=\frac{(a+l)n}{2}=\frac{(2a+(n-1)d)n}{2}$
$x=0.333\cdots$ を分数にするには $x$ を10倍して $x$ を引いて求めた。(→ 数学 I 第1-1節 【第04講】 参照。)これと同じ考えで等比数列の和が求まる。
$S=a+ar+ar^2+ar^3 +\cdots +ar^{n-1}$
を $r$ 倍して
$rS=ar+ar^2+ar^3+\cdots +ar^{n-1}+ar^n$
これら2式を辺々引くのだが、引き算する項が1つずつズレていることに注意。
$(r-1)S=-a+ar^n=a(r^n-1)$,
$S=\frac{a(r^n-1)}{r-1}$
または
$S=\frac{a(1-r^n)}{1-r}$
この2つの公式は $r$ が 1 より大きいか、小さいかで使い分けるとよい。では、$r=1$ のときはどうなるかというと、
$S=a+a+a+\cdots+a=na$
だ。
【公式】 初項 $a$, 公比 $d$, 項数 $n$ の等比数列の和 $S$ は
$r \neq1$ のとき $S=\frac{a(r^n-1)}{r-1}=\frac{a(1-r^n)}{1-r}$
$r =1$ のとき $S=na$
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