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(2) ジャンケンに勝ったら$X=1$,負けたら$X=-1$, 引分なら$X=0$ を対応させる。この対応は確率変数である。

確率変数$X$の期待値を$E(X)$と表す。したがって

【公式】 全事象が $U=\{ \omega_{1},\omega_{2},\cdots, \omega_{n} \} $のように$n$個の根元事象がなるものとする。このとき期待値$E(X)$は

$E(X)=X(\omega_{1}) \times P(\omega_{1})+X(\omega_{2}) \times P(\omega_{2})+\cdots +X(\omega_{n}) \times P(\omega_{n})=\sum XP$

【問題】 1個のサイコロを振る。出る目の数の期待値を求めよ。---

【解】 $E(X(=1 \times \frac{1}{6}+2 \times \frac{1}{6}+\cdots +6 \times \frac{1}{6}=\frac{1+2+3+4+5+6}{6}=\frac{21}{6}=3.5$ …(答)

なんだ、目の数を6個足して6で割るんだから、平均ではないか。だから期待値のことを平均(値)とも言う。平均は真ん中だから$3.5$だというのも当たり前。

いまの問題は確率変数の対応が1対1であったが、そうでない問題も扱ってみよう。

【問題】 トランプが1セット=52枚ある。1枚めくってハートが出たら1000円、ハート以外なら500円貰える。期待金額はいくらか。---

【解】金額のときだけ、期待値ではなく期待金額とも言う。期待金額=賞金×確率の和、だから

$E(X)=1000 \times \frac{13}{52}+500 \times \frac{39}{52}=\frac{1000+1500}{4}=500$(円) …(答)

【公式】 $E(X)=x_{1} \times P(X=x_{1}) +x_{2} \times P(X=x_{2}) +\cdots +x_{r} \times P(X=x_{r})=\displaystyle \displaystyle \sum_{i=1}^{r} x_{i} P(X=x_{i} )$

ただし、確率変数$X$の値が$x_{i}$になる事象 $A_{i}=\{ \omega | X(\omega)=x_{i} \}$の起こる確率を$P(X=x_{i})$と表した。
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【第04講】 期待値の計算

【問題】 次の2つの試行に対しそれぞれ与えられた確率変数の期待値を求めよ。---
(1) 1枚のコインを投げ、表が出たら1000円貰え、ウラが出たら1001円取られる。貰う金額を$X$(円)とするときの期待値。
(2) 1枚のコインを投げ、表が出たら1億1円貰え、ウラが出たら1億円取られる。貰う金額を$Y$(円)とするときの期待値。

【解】$E(X)=1000 \times \frac{1}{2}+(-1001) \times \frac{1}{2}=\frac{1000-1001}{2}=-0.5$(円)であり、他方は
$E(Y)=(10^8+1) \times \frac{1}{2}+(-10^8) \times \frac{1}{2}=\frac{10^8+1-10^8}{2}=0.5$(円)

だから、前者の賭けは損で、後者の賭けは得だ。だから、後者の賭けに参加せよ、などと言う人がいる。てな訳ないだろ、後者は負けたら自殺するしかなくなる可能性がある。期待値は損得を教えてくれる数値ではない。

【問題】 1枚のコインを1回投げ、もし表だったら1円貰ってゲームオーバー。ウラだったもう1回投げて、もし表だった2円貰ってゲームオーバー。2回目もウラだったら3回目を投げて、もし表だった先の倍の4円貰ってゲームオーバー。3回目もウラだったら4回目を投げて、もし表だった先の倍の8円貰ってゲームオーバー。……、これをゲームオーバーするまで続ける。期待金額を求めよ。---

【解】$1 \times \frac{1}{2} +2 \times (\frac{1}{2})^2 +2^2 \times (\frac{1}{2})^3 +2^3 \times (\frac{1}{2})^4 +\cdots$
$=\frac{1}{2} +\frac{1}{2} +\frac{1}{2} +\frac{1}{2} +\cdots =\infty$(円)

この賭けに参加すれば大金持ちになる。そこで賭けの参加者には参加料を支払ってもらうことにしよう。値段をいくらに設定すればよいだろうか。∞円の金額を貰える訳だから、例えば1万円であっても皆喜んで参加しくれるに違いないはずだ。でも実際にはこの賭けで千円稼ぐのも容易ではないだろう。
なぜこうなってしまうかと言うと、ここに出てきた無限級数は無限大に発散するのであるが、その発散のスピードがとても遅いのだ。だから、この賭けを多数回、それも1人の人生の何倍もの時間を掛けて賭けを続ければ、やっと平均して∞の金額を稼げるであろう。
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