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【第01講】 集合の要素の個数
【第02講】 倍数・約数の個数
【第03講】 積の法則
【第04講】 和の法則
【第05講】 2個のサイコロ
(有限)集合$A$の要素(元ともいう)の個数を
$n(A)$
と表す。(number of A の頭文字)
【定理】(加法定理) 2つの有限集合の要素の個数について
$n(A \cup B)=n(A)+n(B)-n(A \cap B)$
が成り立つ。---
その理由は下の図を見れば納得できるだろう。
実際問題としては、この公式を使うより2つのパックマン と真ん中の黄色の凸レンズに分けて
$n(A \cup B)=n(A \cap \bar{B})+n(\bar{A} \cap B)+n(A \cap B)$
集合の要素の個数に関係して、倍数・約数の個数について考えてみよう。
【問題】 7の倍数である3桁の整数は何個あるか。---
【解】 $1000$以下の正なる3の倍数は
$7 \times 1, 7 \times 2, 7 \times 3, \cdots, 7 \times 142$
である。なぜ最後が$7 \times 142$なのかと言うと、筆算で $7)999$ の割り算をして商と余り(実は余りは求めなくてもよいのだが)を求めると
$999 \div 7=142 \cdots 5$,
$999=7 \times 142+5$
だからである。同様に
$99 \div 7=14 \cdots 1$,
$99=7 \times 14+1$
だから、1〜999の中には142個の倍数があり、1〜99の中には14個の倍数がある。よって、求めえるべき個数は
$142-14=128(個) …(答)
注意。今のは3桁の整数だから問題にならなかったが、$0$ も $7 \times 0=0$ で7の倍数である。また、$-7=7 \times
(-1)$ で負の倍数もある。正の数に限定されないので注意しよう。ついでに、約数の方も負の約数というものが
あるので要注意。ただし $0$ は $0$ 以外の整数の約数にはなりえない。さらに言っておくと、$0$ の約数は
$0=0 \times 0, 0 \times (\pm 1), 0 \times (\pm 2), 0 \times (\pm 3),\cdots$
より、無数にあることが分かる。
【問題】 $360$ の正の約数は何個か。---
【解】 素因数分解する(下図参照)と、$360=2^3 \cdot 3^2 \cdot 5$ である。素因数分解のコツは、$2,3,5,\cdots$と素数を小さい順に割れるか試していくこと。$3$で割るときに九去法(各桁の数字の和が$3$で割れれば元の数も$3$で割れる)が使えることを知らないと少しつらい。
さて、これの約数は
$2^a \cdot 3^b \cdot 5^c (0 \leq a \leq 3, 0 \leq b \leq 2, 0 \leq c \leq 1 )$
だから、その個数は
$(3+1)(2+1)(1+1)=4 \cdot 3 \cdot 2=24$(個) …(答)
【問題】 $360$ の正の約数を列挙し、その和を求めよ。---
【解】 さきに述べた約数の形から、それらは
$(1+2+2^2+2^3)(1+3+3^2)(1+5)$
を展開して出てくるすべての項である。したがって、その和は
$S=\frac{2^4-1}{2-1} \cdot \frac{3^3-1}{3-1} \cdot \frac{5^2-1}{5-1} =15 \cdot \frac{26}{2} \cdot \frac{24}{4}=1170$ …(答)
約数を列挙すると下図のようになる。
【問題】 写真のようなダイアル錠がある。回すところが3段あって、各段には$0,1,2,\cdots,9$の数字が刻印されている。
3桁の番号を発生させられるが、その番号は何通りできるか。---
ついウッカリ、最大の番号が999だから、999通りと答えてしまう。000があるのを忘れている。
【解】各段に10通りの数字の選び方があるから、
$10 \times 10 \times 10 =1000$(通り) …(答)
このように掛け算で答が求まるので、この原理を積の法則とかでかけるのやり方と呼ぶ。「でかける」というのは、1段目が10通りで2段目が10通りで3段目が10通りと、「で」のときは掛ければよいというルールが成り立つのでこの駄洒落を使う。
ちなみに上のダイアル錠を横にすれば、スロットマシンになる。
【問題】 写真のようなスロットマシンがある。まどが3つあって、各窓にはリンゴ、バナナ、チョコレートの絵柄のいずれかが出る。何通りの出方があるか。
3桁の番号を発生させられるが、その番号は何通りできるか。---
【解】$3 \times 3 \times 3 =27$(通り)でもできるし、Apple, Banana, Chocolate について樹形図(tree)を作ってもよい。
ただ、ほんとに樹形図が分かりやすいとは言えないだろう。(ダイアル錠の問題でホントに1000本の枝を描く者はいない。)
【問題】 3クラスあって、各クラスには30人ずつ生徒が所属する。全部で生徒は何人いるか。---
【解】 もちろん$30 \times 3$だが、スロットマシンで考える。生徒に在籍番号を付けるのだが、百の位には1〜3 の組番号、十と一の位には1〜30の番号が入る。全体では、積の法則で
$3 \times 30=90$(人) …(答)
厳密には、人数ではなく番号の付け方の個数を答えている。
【問題】 3階建のアパートがあって、各階には4つずつ部屋がある。つまり101号室から304号室まである。部屋は全部でいくつか。---
【解】 ダイアル錠のときと違って304部屋あるという者はなぜかいない。百位は1〜3, 十位は0のみ、一位は1〜4だから
$3 \times 1 \times 4=12$(部屋) …(答)
【問題】 A町から B町へ行く方法は車なら2通り、電車なら3通りある。全部で何通りか。---
【解】 車で行くか、電車で行くかのどちらかだから、「か」→加法公式=和の法則が適用できて
$2+3=5$(通り) …(答)
樹形図にすると上図だが、枝分かれの本数が均等でないので積の法則にならない。積の法則は和の法則の特殊な場合だった訳だ。
甲(車)の場合と乙(電車)の場合に場合分けしたときに両者に重複(かぶり)があったり、場合分けに漏れがあったりしないように注意する。
ところでかぶりがないとは、2つの集合$A,B$に分けたとき、$A \cap B= \emptyset$ となる(2つの集合は互いに素であるという)ということである。このとき$n(\emptyset)=0$ だから
$n(A \cup B)=n(A)+n(B)$
で第01講に出てきた加法定理の特殊な場合である。
【問題】 1円玉、5円玉、10円玉を使って、ちょうど50円支払う方法は何通りか。---
【解】 それぞれ$x,y,z$枚使うとすれば、
$x+5 y+10 z=50$
になればよい。$z$の値により$z=0$〜$z=5$に場合分けする。例えば$z=i$の場合だと
$x+5 y=50-10 i$
だから、5円玉は $y=0$枚 から $y=\frac{50-10i}{5}=10-2i$枚 までの
$(10-2i)+1=11-2i$通り
ある。この値に対し、$i=0,1,2,3,4,5$と変化させて、和の法則を使うと
$11+9+7+5+\cdots+1=6^2=36$(通り)
2個のサイコロを…という問題がある。$6 \times 6$表で解くという特殊な解き方がある。
【問題】 大小2個のサイコロを振る。目の和が8になる目の出方は何通りか。---【解】下図の〇印をつけた5通りである。
【問題】 大小2個のサイコロを振る。目の差が3になる目の出方は何通りか。---
【解】36通りすべて差を計算して、そこから拾い上げてもよい。下図の色をつけた6通りである。
これを律儀に和の法則を使って
大が1のとき〇通り、2のとき〇通り、……、6のとき〇通りで、計●通り。
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