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【第01講】 級数とは
【第02講】 無限等比級数の和
【第03講】 無限等比級の問題
【第04講】 その他の級数
数列の和を級数と言う。数列 $\{ a_{n} \}$ の和を
$\displaystyle \displaystyle \sum_{n=1}^{\infty} a_{n}$
のように表す。級数のことを無限級数とも言う。無限大ではなく有限数 $N$までの和だと数学Bで学習した「数列の和」になる。それを有限級数と言う、と書いている本もあるがふつうは級数とは無限級数だけを指す。
例えば、$0.333\cdots=\frac{1}{3}$ は
$0.3, 0.33, 0.333,\cdots \rightarrow \frac{1}{3}$
の意味であるから、初項$0.3$, 公比$\frac{1}{10}$ の無限等比級数の和は$\frac{1}{3}$ であると唱える。いま「級数の和」と言ったが、その意味が何となく分かったであろう。例えば$0.333$は初項から第3項までの和である。それらの行き先(収束する値)が$\frac{1}{3}$なのであるから、級数の和とは第$n$部分和
$\displaystyle \displaystyle \sum_{n=1}^{N} a_{n} =\frac{0.3(1-0.1^N)}{1-0.1}$
の極限(値)のことである。
【定義】 (無限級数の和)
$\displaystyle \displaystyle \sum_{n=1}^{\infty} a_{n}=\lim_{N \rightarrow \infty}\displaystyle \sum_{n=1}^{N} a_{n}$
が有限確定値に収束するとき、これを級数の和と言う。発散するとき($\infty,-\infty$に発散、または振動)は、和$\displaystyle
\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty} a_{n}$は存在しないと言う。
$\displaystyle \displaystyle \sum_{n=1}^{\infty} a_{n}$が存在しないのに、$\displaystyle \displaystyle \sum_{n=1}^{\infty}
a_{n}$と表現してしまうのは少し変だが、そういう決まりだから仕方がない。
さきに出てきた$0.333\cdots$の求め方は数学Tで学習したように、
$10 x=3.333\cdots$
$x=0.333\cdots$
を辺々引いて
$9 x=3$
であるが、$10$倍でなく、$0.1$倍でもできる。すなわち
$ x=0.333\cdots$
$0.1x=0.033\cdots$
を辺々引いて
$0.9 x=0.3$
である。公比倍して辺々引けばよいのだ。これを一般化すると
$S=a+ar+ar^2+ar^3+\cdots$
$rS=ar+ar^2+ar^3+\cdots$
を辺々引いて
$(1-r)S=a$
$S=\frac{a}{1-r}$
となりそうである。しかし厳密には間違いなのである。循環(無限)小数のときは公比が$0.1$だからよかったが、一般には収束するとは断定できない。そこで定義に戻って無限等比級数の和を求めよう。
$r \neq 1$のとき第$n$部分和は
$\displaystyle \lim_{n \rightarrow \infty} \frac{a(1-r^n)}{1-r}$
だが、分子が収束するのは前節で述べたように$-1 <r \leq 1$のときであり、そのときの極限値は$a(1-0)$か$a(1-1)$である。$r=1$だと分母が0になることに注意してまとめると、…
【公式】 初項$a$, 公比$r$ の無限等比級数の和$S$は
(ア)$a=0$のとき
$S=0+0+0+\cdots=0$
(イ)$a \neq0,r=1$のとき
$S=a+a+a+\cdots$ だから和はない
(ウ)$a\neq 0,=1<r<1$のとき
$S=\frac{a}{1-r}$
(エ)それ以外のとき
和はない
【問題】 地上$1m$の高さから地面に向かってボールを落とす。
(1) 地面にワンバウンドして$0.5m$の高さまでボールが上がる。2バウンド後は$0.25m$の高さまで、次のバウンドで$0.125m$の高さまで、…というように前の回の半分の高さまでボールが跳ね返る。ボールが上下運動する道のりの総計を求めよ。
(2) 同様のことを時間についてみると、$1m$の高さを$1$秒で落ち、$\frac{1}{\sqrt{2}}$秒で$0.5m$の高さに到達し、$\frac{1}{\sqrt{2}}$秒かけて地面にぶつかり、$(\frac{1}{\sqrt{2}})^2$秒で$0.25m$の高さに到達し、…を繰り返す。ボールが地面に留まって動かなくなるまでの総時間を求めよ。---
【解】 (1) 道のりの総計は
$1+0.5+0.5+0.25+0.25+\cdots=1+2(0.5+0.25+\cdots)$
$=1+2 \cdot \frac{0.5}{1-0.5}=3(m)$ …(答)
(2) 時間の総計は
$1+2(\frac{1}{\sqrt{2}}+ (\frac{1}{\sqrt{2}})^2+(\frac{1}{\sqrt{2}})^3+\cdots)$
$=1+2 \cdot \frac{1/\sqrt{2}}{1-1/\sqrt{2}}$
$=1+2 \cdot \frac{1}{\sqrt{2}-1}=3+2\sqrt{2}(秒)$ …(答)
永久にバウンドしているように思ってしまうが、有限時間内に動かなくなってしまう。
等比級数以外でも和が求まる級数がある。どんな級数があるかを考える1つのヒントは次の定理である。
【定理】 和$S=\sum a_n$が存在する級数の項$a_{n}$は$0$に収束する。すなわち$\lim a_{n}=0$である。---
【証明】 第$n$部分和が収束するのだから
$a_{n}=\displaystyle \displaystyle \sum_{k=1}^{n} a_{k} -\displaystyle \sum_{k=1}^{n-1} a_{k}=S_{n}-S_{n-1}$
の極限をとれば
$\displaystyle \lim_{n \rightarrow \infty} a_{n}=\lim_{n \rightarrow \infty} S_{n}-\lim_{n \rightarrow \infty} S_{n-1}$
$=S-S=0$■
気をつけたいのは$\lim a_{n}=0$は和を持つための必要条件であって、十分条件ではないということである。逆は成り立たない。等比級数だけ考えていてはそれは分からない。逆が成り立たない例で有名なのが調和級数である。
【問題】 調和級数 $\displaystyle \displaystyle \sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{n}$ は発散することを証明せよ。---
【証明】 別の発散する級数より大きいことを言えばよい。(挟み撃ち論法)
$1 =1$
$\frac{1}{2} =\frac{1}{2}$
$\frac{1}{3 } + \frac{1}{4 } > \frac{1}{4 } + \frac{1}{4 }=\frac{1}{2}$
$\frac{1}{5 } + \frac{1}{6 } + \frac{1}{7 } + \frac{1}{8 }>\frac{1}{8
} + \frac{1}{8 } +\frac{1}{8 } + \frac{1}{8 }=\frac{1}{2}$
$\frac{1}{9 } + \cdots +\frac{1}{16 } > \frac{1}{16 } + \cdots+ \frac{1}{16 }= \frac{1}{2 }$
$\frac{1}{17} + \cdots+ \frac{1}{32 } >\frac{1}{2 }$
$ \frac{1}{33 }+\cdots +\frac{1}{64 } > \frac{1}{2} $
……………………………………………………………………
だから
$1+\frac{1}{2} +\frac{1}{3}+ \cdots +\frac{1}{2^{k}} >1+\frac{1}{2}\times
k$
よって
$\displaystyle \displaystyle \sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{n} = \infty$ ■
このように$\lim \frac{1}{n}=0$であるにもかかわらず、調和級数の和は存在しない。とはいえ、$\lim a_{n}=0$であれば和を持つ可能性はある訳だ。次の級数は和を持つ。
【問題】 $\frac{1}{1 \cdot 2}+\frac{1}{2 \cdot 3}+\frac{1}{3 \cdot 4}+\cdots$の和を求めよ。---
【解】 部分分数分解すると
$a_{n}=\frac{1}{n(n+1)} =\frac{1}{n} -\frac{1}{n+1}$
となるので、第$N$部分和は
$(\frac{1}{1}-\frac{1}{2})+(\frac{1}{2} - \frac{1}{3}) +(\frac{1}{3} -\frac{1}{4})+\cdots+(\frac{1}{N} -\frac{1}{N+1})$
$=1-\frac{1}{N+1}$
(先頭車両の運転席と、最後尾の車掌室だけ残る。) よって和は
$S=\lim (1-\frac{1}{N+1})=1$ …(答)
部分分数分解を利用して無限級数の和を求める例題をもう一つ挙げておこう。
【問題】 $\displaystyle \sum_{k=2}^{\infty} \frac{1}{k^3-k}$ を求めよ。---
【解】 未定係数法を使って、分解すれば
$\frac{1}{k^3-k}=\frac{1}{k-1}-\frac{2}{k}+\frac{1}{k+1}$
$=\frac{1}{2}(\frac{1}{k-1}-\frac{1}{k})-\frac{1}{2}(\frac{1}{k}-\frac{1}{k+1})$
となるので、
$\displaystyle \sum_{k=2}^{n} \frac{1}{k^3-k}$
$=\displaystyle \frac{1}{2}\sum_{k=2}^{n} (\frac{1}{k-1}-\frac{1}{k})-\frac{1}{2} \sum_{k=2}^{n} (\frac{1}{k}-\frac{1}{k+1})$
$=\frac{1}{2} (\frac{1}{1}-\frac{1}{n})-\frac{1}{2} (\frac{1}{2}-\frac{1}{n+1})$
$n \rightarrow \infty$ して
$\displaystyle \sum_{k=2}^{\infty} \frac{1}{k^3-k}$
$=\frac{1}{2} (\frac{1}{1}-0)-\frac{1}{2} (\frac{1}{2}-0)$
$=\frac{1}{4}$ …(答)
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