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【第1-1節】 数列の極限

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【第01講】 等差数列の極限
【第02講】 一般項が多項式・分数式の場合
【第03講】 √ がある場合
【第04講】 等比数列の極限
【第05講】 極限の公式

【第01講】 等差数列の極限

数学Uでは

$\displaystyle \lim_{h \to 0} \frac{4 h+h^2}{h}$

のような「関数の極限値」を学んだ。ここでの関数は独立変数$h$ も従属変数$\frac{4 h+h^2}{h}$ もともに実数(連続量)である。
ところが数列の場合の独立変数$n$は自然数であって、離散量(分離量)でトビトビの値を取る。だから考えるべき極限は$n \rightarrow \infty$(限りなく大きくする)しかない。
次に、極限値極限の違いだが、前者は有限確定値(「収束する」と言う)だけを指し、後者はそれにプラスして$a_{n} \rightarrow \infty$(無限大発散)と、$a_{n} \rightarrow -\infty$(負の無限大に発散)を含めて考える。

例えば等差数列$\{ a_{n} \},a_{n}=4 n-3$の極限を考えると

$\displaystyle \lim_{n \rightarrow \infty} (4 n-3)=\infty$

である。つまり、$4 \times \infty=\infty$, $\infty -3=\infty$ とやってかまわない。公差が負だったら

$\displaystyle \lim_{n \rightarrow \infty} (-5 n+7)=-\infty$

のようになる。

両者に極限値はないが、極限はあってそれぞれ$\infty$ と $-\infty$ である。
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【第02講】 一般項が多項式・分数式の場合

等差数列の一般項は$n$の1次関数だが、多項式関数だったら極限はどうなるか。

$\displaystyle \lim_{n \rightarrow \infty} (2n^3+3n^2+5n-7)=\infty+\infty+\infty-7=\infty$

である。つまり $\infty^{k}=\infty(k \geq 1)$ とやってよい。上の3次関数のグラフはグラフ用紙の右上の方に伸びていくことからもこの結果は了解できる。さて

$\displaystyle \lim_{n \rightarrow \infty} (2n^3-3n^2+4)$

だったらどうする? こういうのを$\infty -\infty$型の不定形の極限と言う。グラフから$\infty$は明らかなのだが、計算では次のように無理やり括り出してやる。すなわち

$=\displaystyle \lim_{n \rightarrow \infty} n^3(2-\frac{3}{n}+\frac{4}{n^3})=\infty \times 2=\infty$

である。ここで使ったことは

$\displaystyle \lim_{n \rightarrow \infty} \frac{1}{n^k}=0 (k \geq 1)$

である。この分数が$0$に限りなく近づくことは明らかであろう。標語的に表せば

$\frac{1}{\infty}=0$

である。

結論。多項式は最高次数の項の符号だけ見ればよい。(正なら$\infty$, 負なら$-\infty$)

では一般項が分数式(多項式/多項式)だったらどうなるか。例を挙げてみる。

(ア)分母・子が同次式の場合

$\displaystyle \lim_{n \rightarrow \infty} \frac{3n^2+4n-5}{2n^2-5n+1}=\lim_{n \rightarrow \infty}\frac{3+\frac{4}{n}-\frac{5}{n^2}}{2-\frac{5}{n}+\frac{1}{n^2}}=\frac{3+0-0}{2-0+0}=\frac{3}{2}$

ここでもし分母・子とも$\infty$だからといって、$\frac{\infty}{\infty}$ とやってしまっては正解に到達しない。これを$\frac{\infty}{\infty}$ 型の不定形の極限と言う。次項、次々項も同様。

(イ)真分数の場合

$\displaystyle \lim_{n \rightarrow \infty} \frac{3n^2+4n-5}{2n^3-5n+1}=\lim_{n \rightarrow \infty}\frac{\frac{3}{n}+\frac{4}{n^2}-\frac{5}{n^3}}{2-\frac{5}{n^2}+\frac{1}{n^3}}=\frac{0+0-0}{2-0+0}=0$

(ウ)仮分数の場合

$\displaystyle \lim_{n \rightarrow \infty} \frac{3n^3+4n-5}{2n^2-5n+1}=\lim_{n \rightarrow \infty}\frac{3n+\frac{4}{n}-\frac{5}{n^2}}{2-\frac{5}{n}+\frac{1}{n^2}}=\frac{\infty +0-0}{2-0+0}=\infty$


結局、影響を与えるのは分母・子の最高次数だけだから、その他の項をネグって(neglect)、

$\displaystyle \lim\frac{3n^2+\cdots}{2n^2+\cdots}=\lim \frac{3n^2}{2n^2}=\frac{3}{2}$,
$\displaystyle \lim\frac{3n^2+\cdots}{2n^3+\cdots}=\lim \frac{3}{2n}=0$,
$\displaystyle \lim\frac{3n^3+\cdots}{2n^2+\cdots}=\lim \frac{3n}{2}=\infty$

とやっても正解にたどり着く。

結論。分数式は分母・子の最高次数だけ見ればよい。

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【第03講】 √ がある場合

平方根が混ざっており、しかも不定形の場合は分母または分子を有理化すればよい。例えば

$\displaystyle \lim_{n \rightarrow \infty} (\sqrt{n^2+2n+4}-\sqrt{n^2-3n+5)}$

だったら、まず$\infty -\infty$ 型の不定形であることを確認する。もし平方根間の演算子が"$+$"だったら $=\infty+\infty=\infty$ と簡単に求まる。(有理化すると答が出ないので、わざとそういう問題を出す教師がいるもんだ。)さて分子を有理化すると

$=\displaystyle \lim \frac{(\sqrt{n^2+2n+4}-\sqrt{n^2-3n+5})(\sqrt{n^2+2n+4}+\sqrt{n^2-3n+5})}{\sqrt{n^2+2n+4}+\sqrt{n^2-3n+5}}$
$=\displaystyle \lim \frac{5n-1}{\sqrt{n^2+2n+4}+\sqrt{n^2-3n+5}}$
$=\displaystyle \lim \frac{5-\frac{1}{n}}{\sqrt{1+\frac{2}{n}+\frac{4}{n^2}}+\sqrt{1-\frac{3}{n}+\frac{5}{n^2}}}$
$=\frac{5}{1+1}=\frac{5}{2}$

不定形の極限がいくつか出てきたので、ここでおさらいしておこう。次の形は不定形だから、

$\infty-\infty,\frac{\infty}{\infty}$

括り出したり、約分したり、有理化したりというテクニックを駆使して正解を求める。ちなみに

$\frac{\infty}{\infty}=\infty \times \frac{1}{\infty}=\infty \times 0$

なので、$\infty \times 0$ も不定形である。

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【第04講】 等比数列の極限

初項は$r$にして、公比を$r$とすれば一般項は

$a_{n}=r^n$

である。これの極限を考えよう。

(ア) $-1<r<1$ のとき

$\displaystyle \lim_{n \to \infty}r^n=0$

は明らかだろう。

(イ) $r=1$ のとき

$\displaystyle \lim 1^n=\lim 1=1$

一言すると、$n$がどれだけ変化しても$1^n$は初めから徹頭徹尾 1 に等しく、1 そのものである。だから 1 に限りなく近づくことはないのだが、こういう場合も極限は 1 ということにするのである。関数の極限値で独立変数を$h \to 0$ としたとき、$h$ は0 に限りなく近づくのであって、0 に等しくなることはなかった。「限りなく近づく」の意味は独立変数と従属変数の場合では異なるのである。

(ウ) $r>1$ のとき

$\displaystyle \lim r^n=\infty$

は明らか。

(エ) $r=-1$ のとき

$n$が偶数なら$(-1)^n=1$, $n$が奇数なら$(-1)^n=-1$

となって、有限確定値(ある特定の1つの値)に近づかないので、極限値は「なし」となる。$\infty$にも$-\infty$にもならないので、こういうのを振動(たしかに雰囲気が出ている言葉だ)と言い、極限はなしと考える。そして、$\infty$tと$-\infty$と振動の3つをひっくるめて、発散と言い、その他の極限が有限確定値になる場合を収束と呼ぶ。(「$\infty$に収束する」とは言わないことに注意しよう。)
蛇足。今のは「極限も極限値もなし」だったが「$\pm 1$」と書いてはダメかという疑問に対して。たしかにその気持ちは分かる。ただ数学ではそれを集積値と呼び、極限値とは区別する。

(オ) $r<-1$のとき

$n$が偶数なら$r^n \to \infty$, $n$が奇数なら$r^n \to -\infty$

と書きたくなる気持ちは分かるが、前項と同様、答が2つあってはならず、この場合も振動と呼び、極限も極限値もなしである。

【問題】次の極限を求めよ。---

$\displaystyle \lim_{n \to \infty}\frac{6 \cdot 5^n+3 \cdot 2^n}{7 \cdot 4^n-4 \cdot 3^n}$

【解】前に分数式(正しくは有理式と言うが)で最高次数に注目した。ここでも最も大きくなる部分に注目しよう。$5^n, 2^n,4^n,3^n$のうち分子では$5^n$, 分母では$4^n$だからその他の項をネグれば

$\displaystyle \lim \frac{6 \cdot 5^n}{7 \cdot 4^n}=\lim \frac{6}{7} \cdot (\frac{5}{4})^n=\infty$

と見当が付く。そこで、$4^n$ で約分して

与式$= \displaystyle \lim\frac{6\cdot (\frac{5}{4})^n +3 \cdot (\frac{1}{2})^n}{7 -4 \cdot (\frac{3}{4})^n}=\frac{\infty+0}{7-0}=\infty$ …(答)
これを$5^n$ で約分してしまうと
$\displaystyle \lim \frac{6 +3 \cdot (\frac{2}{5})^n}{7 \cdot (\frac{4}{5})^n-4 \cdot (\frac{3}{5})^n}=\frac{6+0}{0-0}=6 \cdot \frac{1}{0}$

で$\frac{1}{0}$の不定形になってしまう。($\infty$とも$-\infty$とも振動とも言えないから不定形である。)

【類題】次の極限を求めよ。---

$\displaystyle \lim_{n \to \infty}\frac{7 \cdot 4^n-4 \cdot 3^n}{6 \cdot (-5)^n+3 \cdot 2^n}$

【解】不要な部分をネグれば

$\displaystyle \lim \frac{7}{6} \cdot (-\frac{4}{5})^n=0$

だから$(-5)^n$ で約分して

与式$= \displaystyle \lim \frac{7 \cdot (-\frac{4}{5})^n-4 \cdot (-\frac{3}{5})^n}{6 +3 \cdot (-\frac{2}{5})^n}=\frac{0-0}{6+0}=0$ …(答)

これを$4^n$で約してしまうと分母に振動する数列$(-\frac{5}{4})^n$が出てきてうまくいかない。
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【第05講】 極限の公式

数列$\{a_{n}\}, \{b_{n} \}$が両者ともに収束すれば

$\displaystyle \lim (a_{n}+b_{n})=\lim a_{n}+\lim b_{n}$,
$\displaystyle \lim (a_{n}-b_{n})=\lim a_{n}-\lim b_{n}$,
$\displaystyle \lim (a_{n}\times b_{n})=\lim a_{n}\times \lim b_{n}$

が成り立つ。既に自明であるかのように使用してきた。例えば第1式は和の極限値は極限値の和である、のように言い表せる。つまり、「和をとる」と「極限をとる」という2つの操作の交換法則である訳だ。このような順序交換の公式はしばしば登場する。

商の極限値だけ注意が必要で

$\displaystyle \lim \frac{a_{n}}{b_{n}}=\frac{\lim a_{n}}{\lim b_{n}}$

なのだが、任意の$n$について$b_{n} \neq0$ であることは当然として、$\displaystyle \lim b_{n}\neq 0$も前提とされる。

あと、よく使われる公式は挟み打ちの原理である。

$a_{n} \leq b_{n} \leq c_{n} \Rightarrow \displaystyle \lim a_{n} \leq \lim b_{n} \leq \lim c_{n}$

不等号が"<"でないことに注意。これの変形版が

$a_{n} \leq b_{n}, \displaystyle \lim a_{n}=\infty \Rightarrow \lim b_{n} =\infty$

である。

あと、ときどき使われる定理は

$a_{1} \leq a_{2} \leq a_{3} \leq \cdots \leq A$ ならば数列$\{ a_{n} \}$は収束する(上に有界な単調増加数列は収束する)

単調収束定理と呼ばれる。こんなの、どこで習った? と思われるかもしれないが、数列$0.3,0.33,0.333,\cdots <0.4$は$0.333\cdots =\frac{1}{3}$に収束する、というところで使われた。小学校の内容だ。

【問題】$\displaystyle \lim_{n \to \infty} \frac{\sin n}{n}$ を求めよ。---

【解】$-\frac{1}{n} \leq \frac{\sin n}{n} \leq \frac{1}{n}$だから

$0 \leq \displaystyle \lim\frac{\sin n}{n} \leq 0$,
$\displaystyle \lim\frac{\sin n}{n}=0$ …(答)

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