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【第1-4節】 解と係数の関係(書きかけ)

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【第01講】 解と係数の関係とは
【第02講】 基本対称式で表す
【第03講】 方程式を作る

【第01講】 解と係数の関係とは

2次方程式$ax^2+bx+c=0$の左辺を変形してみよう。$a$で割れば$x^2+\frac{b}{a}x+\frac{c}{a}=0$だが、これの左辺をさらに変形すると、前節で出てきた等式(*) (←クリックすれば新ウィンドウで開く)の左辺、すなわち

$(x+\frac{b}{2 a}-\frac{\sqrt{b^2-4ac}} {2a})(x+\frac{b}{2 a}+\frac{\sqrt{b^2-4ac}} {2a})$

になる。解の公式で得た解を使って2次式を因数分解したと思ってもよい。結局

$x^2+\frac{b}{a}x+\frac{c}{a}=(x+\frac{b}{2 a}-\frac{\sqrt{b^2-4ac}} {2a})(x+\frac{b}{2 a}+\frac{\sqrt{b^2-4ac}} {2a})$

2解を$\alpha,\beta$とおけば

$x^2+\frac{b}{a}x+\frac{c}{a}=(x-\alpha)(x-\beta)$.

これは式を同値変形しただけだから$x$の値にかかわらず(恒等的に)成り立つ。展開して係数比較すれば次の公式を得る。

【公式】 (2次方程式の解と係数の関係)

$\alpha+\beta=-\frac{b}{a}, \alpha\beta=\frac{c}{a}$

これって、前節で触れたトレースとノルムだ。
ところで、2解のうち、どちらが$\alpha$で$\beta$かを言っていなかった。でも$\alpha$と$\beta$を取り換えても

$\alpha+\beta \rightarrow \beta+\alpha=\alpha+\beta$,
$\alpha\beta \rightarrow \beta\alpha=\alpha\beta$

となって変わらない。このように変数を交換しても変わらない式を対称式と言う。
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【第02講】 基本対称式で表す

対称式の中でも基本になるのが基本対称式で、変数が$n$個の場合なら、その基本対称式は$n$個あって、次数の低い順に

1次:$x_{1}+x_{2}+\cdots+x_{n}$の$n$項式,
2次:$x_{1}x_{2}+x_{1}x_{2}+\cdots+x_{n-1}x_{n}$の$_{n}C_{2}=\frac{n(n-1)}{2}$項式,
3次:$x_{1}x_{2}x_{3}+x_{1}x_{2}x_{4}+\cdots+x_{n-2}x_{n-1}x_{n}$の$_{n}C_{3}=\frac{n(n-1)(n-2)}{3!}$項式,
………………
$n$次:$x_{1}x_{2} \cdots x_{n}$の$1$項式,

である。証明なしで次の定理を掲げる。

【定理】 対称式は基本対称式で表せる。---

$\alpha-\beta$は交換すると$-(\alpha-\beta)$となり符号が反転する。(こういう式は交代式と呼ばれる。) でもこれを2乗した$(\alpha-\beta)^2$は対称式だから、定理が言う通り、基本対称式で表してさらに変形すれば

$(\alpha-\beta)^2=(\alpha+\beta)^2-4\alpha\beta$
$=\frac{b^2}{a^2}-4\frac{c}{a}=\frac{b^2-4ac}{a^2}$

最後の式で分母は常に正だから無視して、分子を$D$とおこう:

$D=b^2-4ac$

この式(判別式と呼ばれる)の符号は、
(ア) $\alpha=\beta$(重解)なら $D=0$,
(イ) 虚数解なら$\alpha=\beta$は純虚数(実部が0の複素数)になるから $D<0$,
(ウ) 異なる2つの実数解を持てば、2乗すれば正値。$D>0$

こんなことは知っていたよ、と思う生徒もいるかもしれないけど、3次以上の方程式にも使える考え方であるので、紹介した。

さらに具体的な問題を解くことによって、上の対称式の定理の効用を実感しよう。

【問題】 2次方程式 $2x^2+6x-1=0$ の2つの解を $\alpha, \beta$ とするとき、次の式の値を求めよ。---
(1) $(\alpha-3)(\beta-3)$, (2) $\alpha^2+\beta^2$, (3) $\frac{1}{\alpha}+\frac{1}{\beta}$, (4) $\alpha^3+\beta^3$

【解】 いずれも$\alpha,\beta$ について対称であることを確認する。(対称でなければ答は1つに決まらない。) 次のように変形する。

(1) $\alpha\beta-3(\alpha+\beta)+9$
(2) $(\alpha+\beta)^2-2\alpha\beta$
(3) $\frac{\alpha+\beta}{\alpha\beta}$
(4) $(\alpha+\beta)(\alpha^2-\alpha\beta+\beta^2)$として(2)の結果を利用、または
(4') $(\alpha+\beta)^3-3\alpha\beta(\alpha+\beta)$

あとは解と係数の関係から $\alpha+\beta=-3,\alpha\beta=-\frac{1}{2}$を上式に代入する。

(1) $-\frac{1}{2}+9+9=\frac{35}{2}$
(2) $9+1=10$
(3) $(-3) \div (-\frac{1}{2})=6$
(4) $-3(10+\frac{1}{2})=-\frac{63}{2}$, または(4') $-27-3(-\frac{1}{2})(-3)=-\frac{63}{2}$

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【第03講】 方程式を作る

「2,3 を解とする方程式を作れ」というような問題がある。$\alpha+\beta=5,\alpha\beta=6$だから$x^2-5x+6=0$とやってはならない。
話を多項式を限定しても、これ以外にもある。
$x-2, x-3$を各々を1個以上因数として持ち、これ以外に1次以上の因数を持たなければよいのだから、求めるべき方程式は

$a(x-2)^e (x-3)^f=0, a \neq 0 $は実数または複素数, $e, f \geq 1 $は整数

である。2次方程式とは言っていなかったから。因数として出てきた$x-2,x-3$はこれ以上因数分解できない。そういう多項式を既約多項式と言う。整数の世界における素数に相当する。
上で述べたことに対応する整数の世界での問題は、「2,3 を素因数として持ち、これ以外に素因数を持たない整数は何か」である。答はもちろん

$\pm 1 \times 2^e \times 3^f$

である。

では、方程式を作る問題に挑戦しよう。ただし以下で作る問題は2次方程式に限定する。

【問題】 有理数 $-\frac{1}{2},\frac{2}{3}$を解とする2次方程式を作れ。

【解】 $x=-\frac{1}{2},x=\frac{2}{3}$を変形して、$x+\frac{1}{2}=0$, $x-\frac{2}{3}=0$. これらの左辺を因数に持つ2次式を作ればよい。よって、求めるべき方程式は

$a(x+\frac{1}{2})(x-\frac{2}{3})=0$

定数$a$は1にしてもよい(最高次の係数が1のときをmonicな多項式と言う)し、展開したとき係数がすべて整数にするため次のように$a=6$にしてもよい。

$6(x+\frac{1}{2})(x-\frac{2}{3})=0$,
$2(x+\frac{1}{2}) \cdot 3(x-\frac{2}{3})=0$,
$(2x+1)(3x-2)=0$,
$6x^2-x-2=0$ …(答)


【問題】 無理数 $x=\frac{3 + \sqrt{5}}{2}$を解とする2次方程式を作れ。ただし係数は整数に限る。

【解】 どこかで2乗しない限り√ は消えない。$2x=3 + \sqrt{5}$, $(2x-3)^2=5$ より

$4x^2-12x+4=0$,
$x^2-3x+1=0$ …(答)


【問題】 虚数 $x=3 - \sqrt{3}i$を解とする2次方程式を作れ。ただし係数は実数に限る。

【解】 どこかで2乗しない限り$i$は消えない。$x-3=- \sqrt{3}i$, $(x-3)^2=-3$ より

$x^2-6x+12=0$ …(答)

本講冒頭で触れたように、解と係数の関係を使って方程式を作る方法もある。2解が有理数でなければ2解は共役になることを知っていれば、1つの解しか与えらていなくても2解とも分かるから、それらを$\alpha,\beta$とする。求めるべき方程式は

$a(x-\alpha)(x-\beta)=0$,
$a \{x^2-(\alpha+\beta)x+\alpha\beta\}=0$

別途$\alpha+\beta,\alpha\beta$の2つの値を計算して、上の方程式の係数とすればよい。$a$は1にしてもよいし、すべての係数の分母が払える値にしてもよい。上の3つの問題に関して具体的に言うと

$-\frac{1}{2}+\frac{2}{3}=\frac{1}{6}, -\frac{1}{2}\cdot \frac{2}{3}=-\frac{1}{3}$,
$x^2-\frac{1}{6} x -\frac{1}{3}=0$,
$6x^2- x -2=0$

$\frac{3 + \sqrt{5}}{2}+\frac{3 - \sqrt{5}}{2}=3, \frac{3 + \sqrt{5}}{2} \cdot \frac{3 - \sqrt{5}}{2}=1$,
$x^2-3x+1=0$

$(3 - \sqrt{3}i)+(3 + \sqrt{3}i)=6,(3 - \sqrt{3}i)(3 + \sqrt{3}i)=12$,
$x^2-6x+12=0$

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【第04講】 2次式の因数分解

本節冒頭で $x^2+\frac{b}{a}x+\frac{c}{a}=(x-\alpha)(x-\beta)$ を掲げたが、$a$倍すれば

$a^x2+bx+c=a(x-\alpha)(x-\beta)$

が成り立つ。これを使えばどんな2次式($\alpha,\beta$が整数、有理数、無理数、虚数のどれであっても) も因数分解できる。そこで、虚数を使って因数分解しもよいのかという疑問が起きるだろう。それについてはOK ともNG とも言える。因数分解した後の式の係数が整数、有理数、無理数、虚数のどれに制限するかで、OK であったり NGであったりする。
そこで言葉の節約のために、記号を導入する。

と表し、

と書く。因数分解する前の2次式は、係数がすべて整数とする。すなわち、$a^x2+bx+c \in \mathbb Z[x]$ と仮定する。解の公式から次のことが分かる。

  1. $b^2-4ac$が2乗数(ある整数の2乗)ならば、$\mathbb Q[x]$ において因数分解できる。
    のみならず、$\mathbb Z[x]$ においても因数分解できる。(その理由はガウスの定理を参照。)
    具体例を示そう。$6x^2+x-15$の解 ($=0$が付いていないから、正確には零点と言うべき) は解の公式より
    $\alpha,\beta=\frac{-1 \pm \sqrt{361}}{12}=\frac{-1 \pm 19}{12}=\frac{3}{2},-\frac{5}{3}$だから
    $6(x-\frac{3}{2})(x+\frac{5}{3}) \in \mathbb Q[x]$だが
    $2(x-\frac{3}{2})\cdot 3(x+\frac{5}{3}) =(2x-3)(3x+5) \in \mathbb Z[x]$
    たしかに整係数の範囲で因数分解できたが、狭義の因数分解は係数が整数の範囲での分解を意味する。
  2. $b^2-4ac >0$が2乗数でないときは、無理数が出てきて、
    $a(x-\alpha)(x-\beta) \in \mathbb R[x]$
    実係数の範囲での因数分解になる。(それより下の数範囲では分解できない。)
    例:$x^2-5x+1=(x-\frac{5+\sqrt{21}}{2})(x-\frac{5-\sqrt{21}}{2})$
  3. $b^2-4ac <0$のときは、虚理数が出てきて、
    $a(x-\alpha)(x-\beta) \in \mathbb C[x]$
    複素係数の範囲での因数分解になる。(それより下の数範囲では分解できない。)
    例:$2x^2-x+1=2(x-\frac{1+\sqrt{7}i}{2})(x-\frac{1-\sqrt{7}i}{2})$

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