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【第01講】 退化型2次方程式
【第02講】 解の公式
【第03講】 複素数の世界
【第04講】 共役とは
2次方程式はどんなものでも(因数分解できなくても)、解の公式で解ける。最も簡単なタイプなら解の公式も因数分解もせずに解ける。
次の2次方程式は1次の項が欠けているので、退化型の2次方程式の1つである。(もう一つの退化型は、1次の項はあるが定数項のない型:$ax^2+bx=0$である。)
【公式】 2次方程式 $x^2=a(a \geq 0)$ の解は
$x=\pm \sqrt{a}$
である。---
これは公式と言うよりも、平方根の記号の定義そのものである。ところで、いまは$a \geq 0$ という制限が付いていたが、鬱陶しい。負であっても解があると仮定しよう。
【問題】 次の2次方程式を解け。---
(1) $x^2=-1$
(2) $x^2=-5$
【考え方】 (1) 解が少なくとも1つあると仮定したから、それを$\sqrt{-1}$ と書き表そう。すると、もう1つの解は$-\sqrt{-1}$である。
【答】 (1) $x=\pm \sqrt{-1}$ (2) $x=\pm \sqrt{-5}$…(答)
$i$を使って書き直さなくてよいのか、と思った生徒もいるかもしれない。世間一般では直さなくてもよいのだが、高校では直さないとダメという暗黙のルールがある。(直さないと×にする先生もいるだろう。)
そこで、
$i=\sqrt{-1}$
と定義し、$i$ を虚数単位と呼ぶ。これで(1)の答は $x=\pm i$ でよいことになる。解の一方の$i$を(1)の方程式に代入すれば
$i^2=-1$
$(\sqrt{5}i)^2=\sqrt{5}^2 i^2=5(-1)=-5$だから、$\sqrt{-5}=5 i$ としてよいと分かる。よって
【公式】 $\sqrt{-a}=\sqrt{a} i (a>0)$
これで先の(2)の解は、$x=\pm \sqrt{5}i$ と書ける。
【公式】 $a \neq 0,b,c$ を実数とするとき、2次方程式
$ax^2+bx+c=0$
の解は
$x=\frac{-b \pm \sqrt{b^2-4ac}}{2a}$
である。---
【証明】 両辺を$a$で割って、移項して
$x^2+\frac{b}{a}x=-\frac{c}{a}$,
$x^2+2 \cdot \frac{b}{2 a}x+(\frac{b}{2 a})^2=(\frac{b}{2 a})^2-\frac{c}{a}$,
$(x+\frac{b}{2 a})^2=\frac{b^2-4ac}{4a^2}$
ここで前講でやった退化型の解き方により
$x+\frac{b}{2 a}=\pm \sqrt{\frac{b^2-4ac}{4a^2}}$
となるが、$a>0$か$a<0$かにより
$\sqrt{\frac{b^2-4ac}{4a^2}}=\frac{\sqrt{b^2-4ac}} {2a};=\frac{\sqrt{b^2-4ac}}{-2a}$
となるから、解は余分な部分を右辺に移項して
$x=-\frac{b}{2 a}\pm \frac{\sqrt{b^2-4ac}}{2a};=-\frac{b}{2 a}\mp \frac{\sqrt{b^2-4ac}}{2a}$
複号は逆さになっても同じと考えれば、
$x=\frac{-b \pm \sqrt{b^2-4ac}}{2a}$■
$a$の正負により解き方が微妙に変わってくるのだが、実際の問題では$a<0$だったら両辺を$-1$倍して解くのがふつうだから、このような問題は生じない。
$a$の正負によって証明を場合分けするのを嫌うのなら、こうしよう。$X^2-A^2$を因数分解したものは$(X+A)(X-A)$でも$(X-A)(X+A)$でもどちらでもよい。したがって
$(x+\frac{b}{2 a})^2-\frac{b^2-4ac}{4a^2}=0$
の左辺を因数分解すると
$(x+\frac{b}{2 a}-\frac{\sqrt{b^2-4ac}} {2a})(x+\frac{b}{2 a}+\frac{\sqrt{b^2-4ac}} {2a})=0$ … (*)
$a$の正負で2つの括弧の順序が逆になるのだが、いま述べたように順序を変えても同じだから、この因数分解の結果は$a$の符号に左右されない。あとは
$x+\frac{b}{2 a}-\frac{\sqrt{b^2-4ac}} {2a}=0,x+\frac{b}{2 a}+\frac{\sqrt{b^2-4ac}} {2a}=0$,
$x=-\frac{b}{2 a}+\frac{\sqrt{b^2-4ac}} {2a},-\frac{b}{2 a}-\frac{\sqrt{b^2-4ac}} {2a}$
2次方程式の解に$i$が含まれるか否かは重要である。$i$が混ざった数を虚数と呼ぶ。解の公式によれば
$D=b^2-4ac$
が負であれば虚数解を持つことになり、$D \geq 0$ なら実数解を持つことになる。$D=0$なら重解を持つ。
$D$を実係数2次方程式の判別式と呼ぶ。
実数と虚数を合わせて複素数と呼ぶが、それでは複素係数の2次方程式:
$\alpha z^2+\beta z+\gamma =0$
の解はどうなるのだろうか。(複素数値であることに注意するため$x$でなく$z$を使った。) 実は先に述べた解の公式とまったく同じになる。ただし$\sqrt{\mbox{ }}$を計算するとき、ルートの中に虚数が入っているので面倒である。そのため高校では複素係数の2次方程式を解の公式で解くことはしない。(ド・モアブルの公式を使ったりする。)
【問題】 $x$の2次方程式 $x^2-\frac{4}{3}x+2k-1=0$ が実数解をもつときの $k$ の値の範囲と、重解をもつときのその重解を求めよ。---
【解】 係数を整数化して $3x^2-4x+3(2k-1)=0$. これの判別式より
$\frac{D}{4}=4-9(2k-1)=-18k+13 \geq 0$,
$k \leq \frac{13}{18}$ …(答)
重解は解の公式のルートの中(判別式)が 0 なのだから
重解は$x=\frac{-b}{2a}$
という「重解の公式」が成り立つ。今の場合は
$x=\frac{4}{6}=\frac{2}{3}$ …(答)
ここに出てきた「重解の公式」から、「放物線 $y=ax^2+bx+c$ の頂点の$x$座標の公式」が導かれる。実際、最大または最小になる点は1個しかなく、その点(頂点)の$y$座標を$m$とすると、2次方程式
$ax^2+bx+c=m$
は重解をもち、その重解が頂点の$x$座標である。だから、それは
$x=\frac{-b}{2a}$
$i$の混ざった数(虚数)と実数を合わせて、複素数と呼んだ。複素数同士の加減乗除はふつうの式($i$を$x$のように見て)のように計算し、$i^2$が出てきたら$i^2=-1$の公式で置き換えればよい。
実数と$i$を足したり引いたり掛けたりすれば
$a+bi+ci^2+di^3+\cdots$
という数を得るが、$i$の偶数乗は実数になるので、結局すべて
$a+bi(a,b$は実数)
の形になる。あと、これに割り算を施せば
$\frac{a+bi}{c+di}$
という数を得る。これに対し分母の有理化のようなことを行う。分母の有理化とは、例えば分母が$2+\sqrt{3}$だったら、2次方程式の2つの解:
$x=\frac{2 \pm \sqrt{3}}{1}$
のうちの相方の数(それを共役な解と言う)を分母・分子に掛けることであった。
だから、分母が$c+di$だったら、2次方程式の2つの解:
$x=\frac{c \pm d \sqrt{-1}}{1}$
のうちの相方の数、すなわち$c-di$を分母・分子に掛ければ分母の実数化ができる。結局
$\frac{a+bi}{c+di}=\frac{(a+bi)(c-di)}{(c+di)(c-di)}=\frac{(ac+bd)+(ac-bd)i}{c^2+d^2}$
$=\frac{ac+bd}{c^2+d^2}+\frac{ac-bd}{c^2+d^2}i$
で、割り算の結果も$A+Bi$の形になった。
よって、複素数$z$はすべて$Z=A+Bi(A,B$は実数)と表すことができる。$A,B$をそれぞれ複素数$z$の実部、虚部と言う。そして複素数は、上述の通り四則演算について閉じている。
ところで言い忘れていたことがあった。割り算ではゼロ割り禁止であった。今の例だと$c+di$は0であってはいけなかったのだ。では
$c+di=0$
とはどういう意味なのだろうか。
$c+di$を多項式の$c+dx$のように扱えと言ってきた。$c+dx$が多項式として0に等しいのは、1次の項も定数項もいずれも0に等しいときだから、
【定義】 (複素数の相等)
$c+di=0(c,d$は実数) $\Leftrightarrow c=d=0$
だから、$a+bi=c+di$だったら$(a-c)+(b-d)i=0$となるから、$a=c$ かつ $b=d$ と同値である。
【問題】 $\frac{4-i}{3-2i}$ を$a+bi$ の形にせよ。---
【解】 与式$=\frac{(4-i)(3+2i)}{(3-2i)(3+2i)}=\frac{14+5i}{9+4}=\frac{14+5i}{13}$
ここで止めてはならない。さらに直して
$\frac{14}{13}+\frac{5}{13} i$ …(答)
最後まで持って行くのは除法について閉じているのを確認する問題であるからである。
【問題】 $\frac{2-i}{2+i}$ を計算せよ。---
【解】 与式$=\frac{(2-i)^2}{(2+i)(2-i)}=\frac{3-4i}{4+1}=\frac{3-4i}{5}$ …(答)
「計算せよ」の問題の場合は、$\frac{3}{5}+(-\frac{4}{5})i$ に直さなくてよい。
実数係数の2次方程式 $x^2+x+1=0$ を解けば(実数係数の範囲では因数分解できないので、解の公式を使う)
$x=\frac{-1 +\sqrt{3}i}{2}, \frac{-1 -\sqrt{3}i}{2}$
という2つの解が出てくる。これら2つの解を互いに共役な解と呼ぶ。これから派生して、$a+bi$と$a-bi$($a,b$は実数)を互いに共役な複素数と言う。共役とは$i$を$-i$に交換した複素数のことである。
【問題】 次の複素数と共役な複素数を言え。---
(1) $2+i$, (2) $\sqrt{3}-2i$, (3) $\sqrt{2}i$, (4) $-5$
【解】 (1) $2+(-i)=2-i$, (2) $\sqrt{3}-2(-i)=\sqrt{3}+2i$, (3) $\sqrt{2}(-i)=-\sqrt{2}i$,
(4) $-5+0(-i)=-5$
共役を「虚部の符号を反転する」のように言う人がいるが、本来は上のように考えるべきである。
中学校の問題を振り返ってみよう。
有理数係数の2次方程式 $x^2+x-1=0$ を解けば(有理数係数の範囲では因数分解できないので、解の公式を使う)
$x=\frac{-1 +\sqrt{5}}{2}, \frac{-1 -\sqrt{5}}{2}$
という2つの解が出てくる。これら2つの解を互いに共役な解と呼ぶ。これから派生して、これら2つの数を互いに共役な無理数と言ってもよいであろう。(実際には使われな言葉である。)
では、ってことで、2次方程式 $x^2+x-2=0$ の2解の場合はどうだろう。この場合は
$(x+2)(x-1)=0$
と因数分解できて$x=-2,1$ となる。このときは共役とは言わない。因数分解できたらダメなのだ。ただ注意すべきは、使ってよい係数をどの数体系(有理数とか実数とか)に限定するかで判断が変わってくる。
前講で出てきた分母の有理化(実数化)を共役の見地から見直してみよう。
係数$a,b,c$が有理数であろうが、実数であろうが2次方程式の2解は
$\alpha=\frac{-b + \sqrt{b^2-4ac}}{2a}, \beta=\frac{-b - \sqrt{b^2-4ac}}{2a}$
で、これらの積が
$\alpha \beta=\frac{-b + \sqrt{b^2-4ac}}{2a} \times \frac{-b - \sqrt{b^2-4ac}}{2a}=\frac{b^2-(b^2-4ac)}{4a^2}$
$=\frac{c}{a}$
この$\frac{c}{a}$の値を解のノルム(norm)と言う。2解のうちの片方に共役な解を掛けると、有理化(実数化)ができてそれがノルムという訳だ。
ノルムの面白い性質は
(1) 係数$a,b,c$が有理数なら、解が無理数であってもノルム$\frac{c}{a}$は有理数になる、
(2) 係数$a,b,c$が実数なら、解が虚数であってもノルム$\frac{c}{a}$は実数になる
という事実である。これと同じ性質を持つのがトレース(trace)である。ノルムが2解の積であったのに対し、トレースは2解の和である。すわなち、解のトレースは
$\alpha +\beta=\frac{-b + \sqrt{b^2-4ac}}{2a} + \frac{-b - \sqrt{b^2-4ac}}{2a}=\frac{-2b}{2a}$
$=-\frac{b}{a}$
である。
【公式】 (複素数の共役) 複素数$\alpha,\beta$について、次の等式が成り立つ。---
$\bar{\bar \alpha}=\alpha$,
$\overline{\alpha+\beta}=\overline{\alpha}+\overline{\beta}$,
$\overline{\alpha \beta}=\overline{\alpha}\overline{ \beta}$
【証明】 $\alpha=a+bi,\beta=c+di$ とおいて計算すればよい。第1式は明らか。第2式の両辺はそれぞれ
左辺$=(a+c)-(b+d)i$, 右辺$=(a-bi)+(c-di)$,
第3式は
左辺$=(ac-bd)-(ad+bc)i$, 右辺$=(a-bi)(c-di)$
だから、成り立つ。■
【問題】 虚数$\alpha,\beta$の和、積がともに実数ならば、$\alpha$と$\beta$は互いに共役であることを示せ。---
【証明】 和・積が実数だから$\alpha+\beta=\overline{\alpha+\beta},\alpha+ \beta=\overline{\alpha
\beta}$となる。よって
$\left\{ \begin{array}{L} \alpha+\beta=\overline{\alpha}+\overline{\beta}\\ \alpha \beta=\overline{\alpha}\overline{ \beta} \end{array}\right. $
この連立方程式を解けばよい。
$\alpha(\overline{\alpha}+\overline{\beta}-\alpha)=\overline{\alpha}\overline{ \beta}$,
$\alpha^2-(\overline{\alpha}+\overline{\beta})\alpha+\overline{\alpha}\overline{ \beta}=0$,
$(\alpha-\overline{\alpha})(\alpha-\overline{\beta})=0$
虚数と唱っているから$\alpha-\overline{\alpha}\neq 0$だから、$\alpha=\overline{\beta}$であり、これの共役を取れば$\beta=\bar{\alpha}$
■
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