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【第1-2節】 整除法と分数式(書きかけ)

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【第01講】 多項式の整除法
【第02講】 検算の式
【第03講】 有理式の演算
【第04講】 組立除法(ホーナー)

【第01講】 多項式の整除法

多項式とは

$ax^2+bx+c (a,b,c$は実数または複素数$)$

のような形をした式である。$x=10$を代入したら

$a \cdot 10^2+b \cdot 10+c$

で、もし$a,b,c$が0〜9の整数なら、10進法で表された整数である。多項式は整数に似るから、整式とも言う。

さて整数の体系は除法については閉じていない。例えば$2 \div 3$ は整数にならない。多項式も同様に除法について閉じていない。例えば$(x+1) \div x=\frac{x+1}{x}$は分数式であって多項式でない。
ところが除法はできなくても、整除法ならできる。それについては小学校で習っている。商と余りを求める演算のことである。あれを真似すれば、多項式の整除法もできる。

【問題】 多項式の割り算$(3x^2+2x+3)\div(x+3)$を行え。---

【解】 小学校では整除法を筆算で行った(下図・左)。それを真似して、多項式の整除法を実行すればよい。

したがって

$(3x^2+2x+3)\div(x+3)=3x+2 \cdots 5$ …(答)

注意。いま商の$3x$を同じ次数の$8x$の真上に書いた(日本式)が、最高次の$3x^2$の真上に書く流儀(欧米式)もある。当然、商を書く場所がすべてずれていく。

【定理】 多項式$f(x)$を$g(x)$で割ると

$f(x) \div g(x)=q(x) \cdot r(x)$
ただし商$q(x)$の次数は$f(x)$の次数$-g(x)$の次数である。余り$r(x)$は0になる(割り切れると言う)か、さもなくばその次数$deg(r)$は$0 \leq deg(r) <deg(g)$すなわち除数$g(x)$の次数未満になる。

次数0の多項式とは定数のことである。
0という多項式の次数は考えない(または$-\infty$とする)。
注意。上において、$g(x)$は0であってはならない。$0 \leq deg(r) <deg(g)=-\infty$とできないからである。整除法においてもゼロ割禁止だ。
注意2。上の問題では$x+2$で割ったが、もし$x=-2$だったら0で割ることになって、不都合ではないかと思う人がいる。代入して0になっても気にしなくてよいのであって、$g(x)$が多項式として0でなければよいのである。(「$g(x)$は恒等的に0」ではないと言ったりする。)多項式という抽象的な世界で割り算をしているので$x$に何かを代入するということは想定していないのである。
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【第02講】 検算の式

整除法

被除数÷除数=商 … 余り

の検算の式というものを小学校で学習した。すなわち

被除数=除数×商+余り

である。

【問題】 $x^2-2x-1$で割ったら、商が$2x-3$で、余りが$-2x$になった。どんな整式を割ったのか。---

【解】 検算の式より

被除数$=(x^2-2x-1)(2x-3)+(-2x)$

だから、右辺を計算すればよい。暗算でも筆算でもあるいは下図のように直積表(面積図、田の字)でもできる。このように余りがあるときは、$3 \times 2$の長方形の右側(3列目)にはみ出し田んぼができる。

パラパラまんが
答は四角の中の式をすべて合計して、$2x^3-7x^2+2x+3$ …(答)

【別解】 割り算の覆面算と考えて下図のようにやる。ただ計算が間違いやすい。

パラパラまんが


【問題】 $x^3-x^2+3x+1$を$b(x)$で割ったら商が$x+1$, 余りが$3x-1$だった。整式$b(x)$を求めよ。---

【解】 $a(x)=b(x)q(x)+r(x)$を変形して

$b(x)=(a(x)-r(x)) \div q(x)$
$=(x^3-x^2+2)\div (x+1)$

これが割り切れるはずだ。筆算または直積表(田の字)で割ればよい。


筆算のアルゴリズム:
  1. (商を)立てる
  2. (商と除数を)掛ける
  3. 引く
  4. 下ろす
4.まで行ったら1.に戻って繰り返す。下ろせなくなったら終了。

組立除法でやってもよい。


組立除法のアルゴリズム:
  1. (1行目を3行目に)下ろす
  2. (3行目と左上のカギを)掛ける
  3. (1行目と2行目を)足す
3.まで行ったら2.に戻って繰り返す。(3行目に商と余りが出る。)

(答)$x^2-2x+2$

【問題】 $ax^5+bx^4+1$が$x^2-2x-1$で割り切れるときの定数$a,b$を求めよ。(2010東京理科大)---

【解】 下図の田の字で計算できる。使うのは掛け算と足し算だけだ。連立方程式を知らなくても解ける。

パラパラまんが

$a=12,b=-24-5=-29$ …(答)

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【第03講】 有理式の演算

多項式(整式)が整数のようなものだとすれば、有理数に相当するものは何だろう。
有理数とは$\frac{a}{b}$のことで、$a,b \neq 0$は整数である。式の世界でこれに対応するものは、分母・子が整式(多項式)である、

$\frac{f(x)}{g(x)}$,
ただし
$f(x)=a_{0}x^n+a_{1}x^{n-1}+\cdots +a_{n}$,
$g(x)=b_{0}x^m+b_{1}x^{m-1}+\cdots +b_{m}$,
係数の$a_{i},b_{j}$は実数または複素数で、$g(x)$は恒等的に0に等しくあってはならない。

である。これをふつう有理式と言うが、高校では分数式と呼ぶ。

【例】 $\frac{\sqrt{2} x+1}{x^2-1}$ は分数式だが、$\frac{\sqrt{x} +1}{x^2-1}$ は分数式ではない。

有理数の約分

$\frac{a b}{a c}=\frac{b}{c}$

とすることである。分母・子を(素)因数分解すればできる。したがって分数式の場合も同様に因数分解して

$\frac{f(x)}{g(x)}=\frac{f_{1}(x) h(x)}{g_{1}(x) h(x)}=\frac{f_{1}(x) }{g_{1}(x)}$

とすればよい。約分の逆の操作が倍分で、

$\frac{f_{1}(x) }{g_{1}(x)}= \frac{f_{1}(x) h(x)}{g_{1}(x)h(x)}$

とすることである。通分のときに必要になる。通分すれば分数式の加減ができて、

$\frac{f_{1}(x) }{g_{1}(x)}\pm \frac{f_{2}(x) }{g_{2}(x)}=\frac{f_{1}(x) g_{2}(x)}{g_{1}(x)g_{2}(x)}\pm \frac{f_{2}(x) g_{1}(x)}{g_{1}(x)g_{2}(x)}$
$=\frac{f_{1}(x) g_{2}(x)\pm f_{2}(x) g_{1}(x)}{g_{1}(x)g_{2}(x)}$

である。結果の式の分子はたすき掛けになっている。このあと約分できるようであればやっておく。
これでどんな加減もできるのだが、実際には分母は分母同士の積ではなく最小公倍数にする方が計算が楽になることが多い。整数のとき、最小公倍数や最大公約数を求めるとき素因数分解したように、分数式のときも因数分解する。すると次のようになる。

$\frac{f_{1}(x) }{g_{1}(x)}\pm \frac{f_{2}(x) }{g_{2}(x)}=\frac{f_{1}(x) }{g_{10}(x)h(x)}\pm \frac{f_{2}(x) }{g_{20}(x)h(x)}$
$=\frac{f_{1}(x) g_{20}(x)}{g_{10}(x)g_{20}(x)h(x)}\pm \frac{f_{2}(x) g_{10}(x)}{g_{10}(x)g_{20}(x)h(x)}$
$=\frac{f_{1}(x) g_{20}(x)\pm f_{2}(x) g_{10}(x)} { g_{10}(x) g_{20}(x) h(x) }$

分母の共通因子(最大公約数)をのけて、たすき掛けすればよい。これが考え悩まずにスムーズにできないとダメだ。分母=最小公倍数で通分しても結果が約分できる場合がある。

【問題】 $\frac{5x+6}{2x^2-5x-3} - \frac{x+9}{x^2-2x-3}$ を計算せよ。---

【解】 与式$=\frac{5x+6}{(x-3)(2x+1)} - \frac{x+9}{(x-3)(x+1)}=\frac{1}{x-3} (\frac{5x+6}{2x+1} - \frac{x+9}{x+1} )$
と最大公約数を括り出すと楽だ。この後、たすき掛けをして

$=\frac{1}{x-3} \cdot \frac{(5x+6)(x+1)-(x+9)(2x+1)}{(2x+1)(x+1)} $
$= \frac{1}{x-3} \cdot \frac{3x^2-8x-3}{(2x+1)(x+1)} $
$= \frac{1}{x-3} \cdot \frac{(x-3)(3x+1) } {(2x+1)(x+1)} $
$=\frac{3x+1}{(2x+1)(x+1)} $ …(答)

よく質問があるのは、最後は分母を展開しなくてよいのか、という点だ。
原則は、問題が展開してあったら答も展開しておく --- だが、ここは原則に反し因数分解したものを答とする。「約分はできませんからね」ということを知らしめるためにあえてこうする。


分数式の乗除が後回しになったが、加減より易しく

$\frac{f_{1}(x) }{g_{1}(x)}\times \frac{f_{2}(x) }{g_{2}(x)}=\frac{f_{1}(x) f_{2}(x)}{g_{1}(x)g_{2}(x)}$,
$\frac{f_{1}(x) }{g_{1}(x)}\div \frac{f_{2}(x) }{g_{2}(x)}=\frac{f_{1}(x) }{g_{1}(x)}\times \frac{g_{2}(x) }{f_{2}(x)}$


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【第04講】 組立除法(ホーナー)

多項式の除法や代入したときの値を求めるときに便利な計算法がホーナー(数学者の名前)の方法で、組立除法と呼ばれる。ただし、除法といっても除数は$x-\alpha$あるいは1次式に限られる。
被除数が3次式のときの計算法を証明しておこう。
まずふつうの筆算でやると下図である。

これを参考にしながら、組立除法をすると

で、たしかに計算が合っている。これで証明終わりだ。
筆算で$-\alpha$と書いていたところを$\alpha$にしたから、引くべきところが足すことになる訳だ。
この証明ですぐ分かるのは、余り(組立除法の右下部分)がちょうど被除数の多項式に$\alpha$を代入した値になっていることだ。これから分かることは

である。被除数が3次の場合は以上だが、次数が変わっても同様である。


【問題】 $x^3+ax^2+bx+1$ を $x-1$ で割ると余りは $4$ であり、$2x-1$で割ると余りは $\frac{3}{2}$ である。定数 $a,b$ の値を求めよ。(2010東北学院大学)---

【解】 除数が$2x-1$のとき、被除数$=(2x-1) Q(x)+R$ になったら $=(x-\frac{1}{2})\times 2Q(x)+R$とも書けるから、$x-\frac{1}{2}$で割った余りと同じだ。

より、$b=2-a$となるから、次の割り算はこれを使って

よって、$-\frac{1}{4}a+\frac{17}{8}=\frac{3}{2}$から$a$, 続いて$b$が求まる。
【答】 $a=\frac{5}{2},b=2-a=-\frac{1}{2}$


【問題】 $2x^3-3x^2+4x-5$ に $x=2$ を代入したらいくらになるかを関数電卓で厳密に計算したい。どのように計算したらよいか。---

【解】 関数電卓には累乗[$x^y$]のキーが付いている。$2^3$を計算すると、一見 8 と画面に出るが、電卓内部では 8 にはなっていないのである。「厳密に」と言ったのでそれではダメだ。なぜ 8 にならないかと言うと、電卓内部では$3 \log 2$ を計算して、さらに $e^{3 \log 2}$ を計算するという複雑な過程を経て計算したものを四捨五入しているので厳密に言うと 8 にはならないだ。
では、どのように計算するか。それに対し組立除法がヒントになる。

組立除法のアルゴリズムは、下ろす、掛ける、足す、掛ける、足す、… だったから、答の 7 を出すには

$((2 \times 2-3) \times 2+ 4) \times 2-5$

とやればよい。これなら掛け算と加減しか使っていないので、電卓でも計算誤差が生じない。
【蛇足】 電卓やパソコンが計算を間違えることはあるのかと、疑問に思う生徒がいるかもしれない。例えば Excel をパソコンで走らせて計算していると "$1+1=1$" などとなることがある。筆者は今までに2回経験した。あちこちのセルをいっぱい参照して、その中に INT 関数などがあったりしたら、内部の数値(小数)を四捨五入するため、桁落ちしてこのようなことが起きる。このため最近の電卓では内部では12桁で計算し、表示は四捨五入して8桁にするなどの工夫をしている。

【問題】 $x^2-x-1=a(x-1)^2+b(x-1)+c $ が常に成り立つように定数 $a,b,c$ の値を定めよ。---

【解】 下図のように組立除法を2回やる。

1回目の除法から 与式$=(\cdots )(x-1)-1$
$\cdots$ の部分が2回目の除法より $\cdots =1(x-1)+1$ だから、結局

$x^2-x-1=\{ 1(x-1)+1 \}(x-1)-1$
$=1(x-1)^2+1(x-1)-1$
$a=1,b=1,c=-1$ …(答)

【蛇足】 この答に直すことを $x=1$ のまわりのテイラー展開と呼ぶ。
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