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【第1-3節】 展開と因数分解(書きかけ)

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【第01講】 多項式の加減
【第02講】 たすき掛け
【第03講】 変数が増えたら

【第01講】 多項式の加減

これより式の計算を行うのだが、式とは

$ax^3+b^2+cx+d$

のような多項式(整式とも言う)のことで、これは加法、減法、乗法について閉じている。
そこで初めに加減を扱おう。

【問題】 $A=4x^2+2x-5, B=3x^2-x+1$ のとき $2A-5B$ を求めよ。

【解】 $5A$は積とも考えられるが、「定数倍」でもあるから$5A=A+A+A+A+A$と考えればむしろ和に近い。そもそも$5A$ は英語の five Apples が $5A$ になったのだろう。日本語だと林檎5個だから、$A5$ になるはず、数学は英語仕様なのだ。(「5個の林檎」は直訳で本来の日本語ではない。)

定数倍は暗算で出して、あとは筆算でやる。これが一番間違いの少ない方法だと思う。

空間内のベクトル $\vec{v}$ は基本ベクトル $\vec{i}, \vec{j}, \vec{k}$ を使って、$\vec{v}= a \vec{i}+b \vec{j}+c\vec{k}$ と表せて、次のように加減ができる。

$\vec{v} \pm \vec{w}= (a \vec{i}+b \vec{j}+c\vec{k}) \pm ( a' \vec{i}+b' \vec{j}+c' \vec{k})$
$=( a\pm a')\vec{i}+(b \pm b')\vec{j}+(c \pm c')\vec{k}$

多項式もまったく同様で

$(a x^2+b x+c) \pm ( a' x^2+b' x+c' )=( a\pm a')x^2+(b \pm b')x+(c \pm c')$

であるので、$1,x,x^2,x^3,\cdots$は基本ベクトルなのである。
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【第02講】 たすき掛け

多項式がベクトルと違うところは、乗法ができることだ。(内積は乗法ではない。)
最も簡単な乗法は、(定数)×(1次式)だが、これは前講でやった。
次に易しいのは、(1次式)×(1次式)だ。

【問題】 $(4x+5)(2x-3)$ を展開せよ。---

【解】 下のように筆算でやると間違えない。

(答) $8x^2-2x-15$

この筆算を逆に使うと、たすき掛けによる因数分解ができる。(下図)

2次3項式の因数分解の問題は簡単に作れる。答の$(ax+b)(cx+d)$を考えておいて、これを展開した式を「因数分解せよ」と言って出題すればよいのだ。これを生徒同士でやってみると、うまく因数分解できない問題に出くわす。

【問題】 $16x^2-36x+18$ を因数分解せよ。---

【解】 ある生徒は $(8x-6)(2x-3)$ と言い、別の生徒は $(4x-3)(4x-6)$ だと言う。展開してみるとどちらも合っている。どう考えればよいのだろうか。
整数の場合を考えてみる。$-6$ を(素)因数分解すると、$-6=(-1) \times 2 \times 3$ が正解なら、$(-1) \times (-1) \times (-1) \times 2 \times 3$ だって正解だ。つまり$-1$ のような数は1個でも3個でもこだわらないのだ。整数の世界では$1$ と $-1$ のことを単元(単数)と言って、見て見ぬ振りをするのである。単元とは$a \times b=1$ となる数$a$ のことである。有理数(または実数、複素数)を係数とする多項式の世界で単元とは、定数のことである。例えば $2 \times \frac{1}{2}=1$ だから$2$は ($\frac{1}{2}$も)単元である。しかるに $x \times \frac{1}{x}=1$で$\frac{1}{x}$は多項式でないから$x$は単元ではない。

くだんの2人の生徒は

$(8x-6)(2x-3)=2(4x-3)(2x-3)$,
$(4x-3)(4x-6)=2(4x-3)(2x-3)$

とすれば両者の答は一致するのだが、$2$は単元だから無視してよく、そうすると2人の2様の答は両方とも正解だったのである。

というのは、有理数を係数とする多項式の世界でのことであって、整数を係数とする多項式の世界では$2$は単元ではないから

$2(4x-3)(2x-3)$

としなければならない。

結論。$16x^2-36x+18$ のように定数が括り出せる因数分解の問題は高校では扱わないという暗黙のルールがあるのである。

【問題】 次の多項式を因数分解せよ。---
(1) $6a+12b$
(2) $6ac+7bc$

【解】 (1) 甲:$2 \cdot 3(a+2b)$ か、乙:6も12も単元だから因数分解できない、のどっちも正解になるのでこういう問題は出さない決まり。($6(a+2b)$はどっちの解釈に立っても間違い。)
(2) 正解は $c(6a+7b)$ しかない。($-c(-6a-7b)$もあるじゃないかと思った人、それは先の正解と同一のものと考えます。これを×にする先生はまさかいないですよね。)

蛇足。$x^2$ を $xx$ と書いたら×にする先生もいないですよね。(それなら $\vec{a} \cdot \vec{a}$ も $\vec{a}^2$ と書かないと×ですか?) ガウスの整数論をチラ見すれば、この表記がいっぱい出ています。19世紀初頭では$(\mbox{ })^2$は使われていなかったのでしょう。

たすき掛けを使って、中学校で学習した因数分解の問題を解くことができる。

【問題】 次の多項式を因数分解せよ。---
(1) $a^2+2ab+b^2$
(2) $a^2-b^2$
(3) $a^2+ab$

【解】 もちろん (1) $(a+b)^2$, (2) $(a+b)(a-b)$, (3) $a(a+b)$ だが、下図のように実行することもできる。(実際にはたすき掛けでなく、公式だとしてやる方が早い。たすき掛けの汎用性を確認したかっただけの話。)

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【第03講】 変数が増えたら

変数が$x$だけでなく$x,y$に増えた場合の因数分解を考えてみよう。

【問題】 $2x^2-5xy-12y^2$ を因数分解せよ。---

【解】 変数が増えたとは言え、相変わらず2次3項式だから、下図のようにたすき掛けして、答は$(2x+3y)(x-4y)$

注意。文字$x,y$を省略して数値だけでやるやり方があるが、ともすると$y$を書き忘れるので上図のように文字込みでやる方が安全。
コツ。上図で$2x$ の右隣には$3y$がある。この場所にはけっして$\pm 2y$や$\pm 4y$は来ない。もし来たら与式が$2$で括り出せるからで、真横に同じ倍数(今の場合は2の倍数)の係数は来ないのである。このコツを知っていると計算時間が約半分にできる。

上記の問題は2次3項式だから前講で扱ったのと同列で、たいしたことはない。
問題になるのは因数分解して$(ax+by+c)(a'x+b'y+c')$や$(ax+by+c)(a'x+b'y+c')$になるタイプである。後者は同次1次式(定数項なしの1次のみの多項式)の積である。一般に後者の方が易しいと言われている。

【問題】 $x^2+3xy+2y^2+x-y-6$ を因数分解せよ。---

【解】 2次6項式ともなると、$2 \times 2$ではなく$3 \times 3$の直積表(田の字とも言う)を描かないとダメ。下図の通り。

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