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【第01講】 実数と数直線の関係
【第02講】 演算について閉じている
【第03講】 ルートの計算
【第04講】 実数を小数で表す
$l \ni O \leftrightarrow 0 \in \mathbb R$ ,
$l \ni E \leftrightarrow 1 \in \mathbb R$
のように対応させる。
では $2,3,\cdots$ はどういう数かというと、$O$ を始点として $\vec{OE}$ の $2$倍、$3$倍、$\cdots$
に延長(スカラー倍) したベクトルの終点に対応する $\mathbb R$ の要素のことである。反対方向に延長すれば負の数が得られる。
有理数とは $\frac{m}{n}$($m,n > 0$は整数)のことだが、線分$OE$を$n$等分して$m$倍に延長すれば 得られる。$m$が負の場合も含んでいることに注意。
【問題】 2つの有理数 $r,s(r \neq s)$ の間には無数の有理数が存在することを証明せよ。---
【証明】$r<s$ として一般性を失わない。$x=\frac{r+s}{2}$は有理数である。なぜなら有理数は足し算、($\frac{1}{2}$倍という)掛け算に関して閉じているからである。(「閉じている」の意味については後述。) そして
$r=\frac{r+r}{2} <\frac{r+s}{2} <\frac{s+s}{2}=s$
だから $r<x<s$ である。次に $r<x'<x<s$ という有理数$x'$が存在して、$\cdots$ とやっていけば無限に繰り返せるから、無限個の有理数が$r,s$の中間にあることが分かる。■
この事実を有理数は数直線上に稠密に存在すると唱える。
どんな狭い場所にも無数の有理数がひしめいているのだから、数直線は有理数で充填しているのかと言うと、そうはならない。言い換えれば有理数と有理数との間は隙間だらけなのである。この隙間にある(有理数でない)数を無理数という。
しかも驚くべきことに無理数の方が有理数よりもいっぱい存在するのである。(その証明にはカントールの対角線論法が必要で高校のレベルを超えるので省略する。)
両者とも無限個ある訳だが、有理数の方は番号付けできる程度の可附番無限個($\aleph_{0}$, アレフ・ゼロ)で、無理数の方はさらにいっぱいの連続の濃度($\aleph$, アレフ)の無限個だけあると言う。
【参考文献】数直線の隙間を埋める話なら、
志賀浩二著『数学が生まれる物語 第2週 数の世界』岩波書店、1992年、
などを参照せよ。(同じものが岩波現代文庫にも収められている。)
ところで無理数なんて本当にあるの? と疑問に思う生徒もいるので、一言しておく。上図のように1辺1の正方形を描き、その対角線を原点を始点にとって数直線に乗っければ$\sqrt{2}$ という無理数(点)が得られる。(数直線は1次元の話なのに、2次元の図形=正方形を持ってきていいのかという理論的難点はある。) 古代ギリシアにおいて、無理数が実在することに気づいたピタゴラス派のある人間は、余計なことをしてくれたもんだとして同僚に殺害された。
【参考文献】数学史の書物はたくさんあるが、例えば
森毅著『異説 数学者列伝』ちくま学芸文庫、2001年、
などを参照せよ。
保留にしておいた次の事実を証明しておこう。
【問題】$\sqrt{2}$ は有理数でないことを証明せよ。---
【証明】有理数であったとし、$\sqrt{2}=\frac{m}{n}$ とおく。分母を払って2乗すると
$2 n^2=m^2$
ここで両辺を素因数分解すると、左辺には奇数個の素数があるのに右辺は偶数個である(同じ素数はダブってカウントする)。これは矛盾だ。■
この証明を変形すれば2乗数でない整数$n$について、$\sqrt{n}$ が無理数であることが証明できる。
【問題】2乗数でない整数$n$について、$\sqrt{n}$ は無理数であることを証明せよ。---
【証明】$n$を素因数分解し、同じ素数が偶数個あったら、√ の外へ追い出してやる。そうすると
$\sqrt{n}=\sqrt{p^{2e+1}q^{2f+1}r^{2g+1} \cdots}= (p^{e}q^{f}r^{g} \cdots )\sqrt{p q r \cdots}$
の形になる。ここで$\sqrt{p q r \cdots}$が無理数であることを言えばよい。
有理数であったとし、$\sqrt{p q r \cdots}=\frac{m}{n}$ とおく。分母を払って2乗すると
$p q r n^2=m^2$
ここで両辺を素因数分解すると、左辺には$p$が奇数個あるのに、右辺には偶数個ある。これは矛盾だ。■
これまた保留にしておいた「演算について閉じている」について説明しよう。
2数 $a,b$ に対し、第3の数 $c$ を対応させるのが(二項)演算である。関数の記号を使って書くと
$(a,b) \mapsto f(a,b)=c$
で、2変数関数である。ところで四則演算と言うから、加減乗除の4つの演算があると解釈してもよいのだが、数学の理論としては加法と乗法の2種類の演算について論述するのがふつうだ。
自然数全体の集合を $\mathbb N$ と書く。だから
$\mathbb N= \{ 1,2,3,\cdots \}$
この自然数の世界で足し算、掛け算をしても計算結果はやはり自然数である。だから
$a,b \in \mathbb N \Longrightarrow a+b,a \times b \in \mathbb N$
これを「$\mathbb N$は加法、乗法について閉じている(半群をなす)」と唱える。(「閉じている」では結合法則が成り立つことは要求されないのだが、半群ではこの法則の成立が要請される。ただしこの章ではこれら2法則が成り立つ数体系しか扱わない。)
では、減法、除法については閉じているかというと、これを
$a-b=a+(-b)$,
$a \div b=a \times \frac{1}{b}$
のように考えよう。だから、その前に反数$-b$ と逆数$\frac{1}{b}$ を定義しないといけない。(両者をひっくるめて逆元という。) それぞれ
$b+(-b)=(-b)+b=0$,
$b \times \frac{1}{b} =\frac{1}{b} \times b=1$
となるような数である。だからさらに遡って、加法の単位元$0$ と乗法の単位元$1$を定義しなくてはいけない。$\mathbb N$ には後者はあるのに前者がないので不自然だ。むしろ
$\bar{\mathbb N} = \mathbb N \cup \{0 \} $
を自然数と呼ぶのが相応しいと思えるが、残念ながらこれは「非負整数」と呼ばれる。
でも、$\mathbb N $ にせよ、$\mathbb N \cup \{0 \}$にしても減法、除法はいつでもできる訳ではない。(閉じていない。)
そこで四則演算が不自由なくできるように、人類は数体系を拡張した。
小学校高学年では$\mathbb N $を除法ができるように正の有理数の世界 $\mathbb Q^{+}$ へ拡張した($\mathbb Q^{+}$
は乗法について群をなすと言う)。小学校では有理数と言わずに「分数」と呼ぶ。0も有理数だが、これによる除法(ゼロ割)は不可能である。だから、除法と言うときには常にゼロ割は除いて考える。(0を0でない数で割るのは構わない。)
【問題】どんな有理数$x$であっても、0で割れないことを示せ。---
【証明】$x \div 0=y$ になったとすると$x=0 \times y$とならなければならない。右辺は0だから$x$が0でない限り不可能である。
では$x=0$ のときだけ割り算ができるのかと言うと$0 \div 0=y$なら$0=0 \times y$で$y$は何であってもよくなり、商が1つに決定できないので、これまた割り算ができると言えない。
いずれにしても0で割ることは不可能である。■
この証明を見れば、乗法と除法を別々のものと考えないで、順演算と逆演算のペアとしてワンパックにして考える(群ととらえる)方がよいと分かる。
一方、中学校1年では減法が自由にできるように、$\mathbb N $を整数(正の整数+零+負の整数)の世界 $\mathbb Z$ へ拡張した(加法について群をなすことになった)。
【注】 ここまでに出てきた数体系の記号は次の単語の頭文字である。
$\mathbb R$: Real number,
$\mathbb N$: Natural number,
$\mathbb Q$: Quotient(比),
$\mathbb Z$: Zahl(ドイツ語で数)
中学3年では、円周率 $\pi$ 以外の無理数として $\sqrt{2},\sqrt{3},\cdots$ が導入されてなんとなく実数の世界まで辿り着いた。
ただ、この$\mathbb Q$から $\mathbb R$への拡張は二項演算による拡張ではないところが、他より難しい。(本講では数直線を無定義術語として、実数を定義したワケ。ここで数直線なんて実在するの?と言われると身も蓋もない。)
「なんとなく実数の世界に辿りついた」と述べたけど、その真意はこうだ。数体系$\mathbb Q$に方程式$x^2-2=0$の解を添加して数体系を拡張(これを代数的拡大と呼ぶ)して、新たな体系$\mathbb Q(\sqrt{2})$を作り、次に$\sqrt{3}$を添加して$\mathbb Q(\sqrt{2})(\sqrt{3})$を作り、$\cdots$とやっていっても実数体$\mathbb R$ には永久に辿り着かないという意味である。そこには$\pi$や$e$(自然対数の底、ネピア数とも言う)のような代数的数でない実数が入ってこないからだ。数直線と完璧に同等な実数の体系を作るにはふつうデデキントの切断やワイルシュトラスの方法を使う。だがこの話題は大学レベルの内容だ。
【文献】 背伸びしてみたい高校生には
デーデキント著、河野伊三郎訳『数とは何か』岩波文庫、1961年
や、それの別訳である、
デデキント著、渕野昌訳『数とは何かそして何であるべきか』ちくま学芸文庫、2013年
がお薦め。デデキントの切断により実数体を構築する話が書かれている。理論を構築するときの筆者のワクワク感が伝わってくる。
【問題】次の数体系が四則演算について閉じている(〇)か否(×)か、表を埋めよ。「除法」とある所はゼロ割を除いて考える。
←
マウスを置くと答が出ます。
有理数の体系$\mathbb Q(\sqrt{2})$は四則演算について閉じているのだが、それはどんな数の集合なのだろうか。
$1$と$\sqrt{2}$に対して、足したり引いたり掛けたりすれば
$a_{0}+a_{1}\sqrt{2}+a_{2}\sqrt{2}^2+a_{3}\sqrt{2}^3 +\cdots$
となるが、($(\sqrt{2})^2$と書くことが多いが$\sqrt{2}^2$も正しい) $\sqrt{2}^2=2$に注意すれば、上記の数は
$a+b\sqrt{2},a,b \in \mathbb Q$
となる。今度はこれで除法を行うと($(c,d) \neq (0, 0)$とする)
$\frac{a+b\sqrt{2}}{c+d\sqrt{2}}=\frac{(a+b\sqrt{2})(c-d\sqrt{2})}{(c+d\sqrt{2})(c-d\sqrt{2})}
=\frac{(ac-2bd)+(bc-ad)\sqrt{2}}{c^2-2d^2}=\frac{ac-2bd}{c^2-2d^2}+\frac{bc-ad}{c^2-2d^2}\sqrt{2}$
となって、結局四則に関して閉じていることが分かる。
以上で、$\mathbb Q(\sqrt{2})$という数体系は
$a \cdot 1+b \cdot \sqrt{2}$
という$1,\sqrt{2}$ を基底(基本ベクトルのようなもの。同じではないが。)とし、有理数を係数に持つ数からなる集合である。
【述語】方程式$x^2-2=0$の解は$\sqrt{2},-\sqrt{2}$の2つだが、これらを互いに共役な解と呼ぶ。
$a+b\sqrt{2}$という数において$\sqrt{2}$をそれと共役な$-\sqrt{2}$で置き換えた数
$a-b\sqrt{2}$
をもとの数の共役数と呼ぶ。共役数同士を掛けると
$(a+b\sqrt{2})(a-b\sqrt{2})=a^2-2b^2$
のように有理数になるが、これを$a+b\sqrt{2}$のノルム(norm)と言う。
【問題】$a+b \sqrt{3}$($a,b$は有理数)からなる集合は四則演算について閉じていることを示せ。---
【証明】加減については
$(a+b \sqrt{3})\pm(c+d \sqrt{3})=(a\pm c)+(b\pm d)\sqrt{3}$
より、乗法については
$(a+b \sqrt{3})(c+d \sqrt{3})=(ac+3bd)+(ad+bc)\sqrt{3}$
より、除法については$(c,d) \neq (0,0)$として
$\frac{a+b\sqrt{3}}{c+d\sqrt{3}}=\frac{ac-3bd}{c^2-3d^2}+\frac{bc-ad}{c^2-3d^2}\sqrt{3}$
より、四則について閉じていると分かる。■
これでなぜ分母を有理化するのかが分かる。それは$a+b\sqrt{2}$という要素などからなる数体が除法について閉じていることを逐一具体的な数にあたって確かめる行為なのである。そんなの、閉じているのは知っているよ、というのであれば有理化しなくてよい理屈になる。実際、$\sin
\frac{\pi}{4}=\frac{1}{\sqrt{2}}$と書くことが多いし、$\frac{1}{\sqrt{3}}$を$\frac{\sqrt{3}}{3}$に直していたら却って複雑になってしまう。(センター入試はすべて分母を有理化させた解答にさせていた。分母に√
が来ると解答欄に書くと、それがヒントになって簡単に解けてしまう問題があるのかもしれない。) 本当に分母を有理化して意味があるのは、$\frac{2}{\sqrt{2}}$のような問題だけだ。
そもそも、なぜ共役な無理数で分母が有理化できると分かったのかを振り返ってみよう。例えば
【問題】$3+\sqrt{2}$に何か無理数を掛けて有理数にせよ。---
【解答】
$(3+\sqrt{2}) \sqrt{2}$ ではダメとはすぐ分かり、また$(3+\sqrt{2}) (3+\sqrt{2})$(図・中)でも√ が消えないことが分かる。ルートを消すには片方をマイナスにするしかないから、図・右のようになる。
【答】$(3+\sqrt{2})(3-\sqrt{2}=3^2-\sqrt{2}^2=7$
中学校の問題にこの方法を適用すると次のようになる。$\alpha =\frac{1}{\sqrt{2}}$の分母を有理化するには、理屈から言って、分母の共役数$-\sqrt{2}$を分母・分子に掛けて
$\alpha=\frac{-1 \sqrt{2}}{-\sqrt{2}\sqrt{2}}=\frac{-\sqrt{2}}{-2}$
とやるのが本筋ということになる。
では次の問題。
【問題】$2+\sqrt{3}+\sqrt{7}$に何か無理数を掛けて有理数にせよ。---
【解答】タイル図から試行錯誤的に解いてみよう。
⇒
図・左だとダメだからまず$\sqrt{21}$を消すために$2+\sqrt{3}-\sqrt{7}$を掛けてみよう。
$(2+\sqrt{3}+\sqrt{7})(2+\sqrt{3}-\sqrt{7})=(7+4\sqrt{3})-7=4\sqrt{3}$
となるから、さらに$\sqrt{3}$を掛ければ、12になる。
【答】$\sqrt{3}(2+\sqrt{3}-\sqrt{7})$を掛ければよい。
【別解】$2+\sqrt{3}+\sqrt{7}=(2+\sqrt{3})\cdot 1+1 \cdot \sqrt{7}$($1,\sqrt{7}$が基底)と考えて、共役数を掛けると
$(2+\sqrt{3}+\sqrt{7})(2+\sqrt{3}-\sqrt{7})=(7+4\sqrt{3})-7=4\sqrt{3}$
次は$\sqrt{3}=0 \cdot 1+4 \cdot \sqrt{3}$($1,\sqrt{3}$が基底)と考えて、共役数を掛けて
$4\sqrt{3} (-4\sqrt{3})=-48$
【別答】
$-4\sqrt{3}(2+\sqrt{3}-7)$を掛ければよい。……【答】
先の答とは少し違うが、本質的には同じだ。
新課程の有理化問題は2項程度となっているから教科書には今の問題は出てこず、出てくるのは次のものだ。
【問題】$\sqrt{7}+\sqrt{3}$に何か無理数を掛けて有理数にせよ。---
【解答】$\sqrt{7}-\sqrt{3}$を掛ければ$(\sqrt{7}+\sqrt{3})(\sqrt{7}-\sqrt{3})=4$になる。
【別解】共役3つを掛けてノルムを作ると
$(\sqrt{7}+\sqrt{3})(\sqrt{7}-\sqrt{3})(-\sqrt{7}+\sqrt{3})(-\sqrt{7}-\sqrt{3})=(\sqrt{7}+\sqrt{3})^2(\sqrt{7}-\sqrt{3})^2=16$
【別解】の方が数学の理屈に適っているのだが、高校では【解答】のようにタイル図などで試行錯誤的に求めるか、公式$(x+y)(x-y)=x^2-y^2$を当てはめて解く。
分母の有理化をもう少し練習してみよう。
【問題】$\frac{4}{3+\sqrt{5}} +\frac{1}{2+\sqrt{5}}$を計算せよ。(2010北海道薬科大学)---
【解答】与式$=\frac{4(3-\sqrt{5})}{(3+\sqrt{5})(3-\sqrt{5})} +\frac{(\sqrt{5}-2)}{(\sqrt{5}+2)(\sqrt{5}-2)}$
$=(3-\sqrt{5})+(\sqrt{5}-2)=1$ …(答)
コツは$2+\sqrt{5}$のように前項の方が後項より小さいときは、ひっくり返して$\sqrt{5}+2$とするところ。
√ と言えば近似値が話題になる。近似値は次の3つくらいは語呂合わせで覚えておくと、何かと便利だ。
$\sqrt{2}=1.41421356$(一夜一夜に人見頃),
$\sqrt{3}=1.7320508$(人並みに奢れや),
$\sqrt{5}=2.2360679$(富士山麓オウム泣く)
という話をしたら、どうやって算出したんですかと生徒から質問されたことがある。
そこで$\sqrt{5}=2.2360679$を例にとって、その算出法(開平法という)を図を使って説明しよう。
(1) 整数の平方数で5に内輪で最も近い$r$は$2^2=4$で、$r=2$である。残差は$z=5-r^2=1$
(2) $z$を$r$の2倍で割った数$\frac{z}{2 r}=\frac{1}{4}=0.25$に内輪で最も近い小数1位の数は$0.2$だから、$r=2+0.2=2.2$である。残差は$z=5-r^2=0.16$
(3) $z$を$r$の2倍で割った数$\frac{z}{2 r}=\frac{0.16}{4.4}=0.036\cdots$に内輪で最も近い小数2位の数は$0.03$だから、$r=2.2+0.03=2.23$である。残差は$z=5-r^2=0.0271$
(4) $z$を$r$の2倍で割った数$\frac{z}{2 r}=\frac{0.0271}{4.46}=0.0060\cdots$に内輪で最も近い小数3位の数は$0.006$だから、$r=2.23+0.006=2.236$である。残差は$z=5-r^2=0.000304$
(5) 以下繰り返し
この求め方は原理的なもので実際的なものではない。電卓で√ の計算ができるが計算機の内部でこのような開平法が使われている訳ではない。(微分を応用したアルゴリズムで求めている。)
実数を表すには小数を使うという手がある。小数には
(ア) 有限小数(長さが有限)……$1.23$など、これは明らかに有理数。
(イ) 有限小数にならない循環小数……$1.232323\cdots$など、後述するようにこれも有理数。
(ウ) 循環しない無限小数……$0.101001000100001000001\cdots$など、これは無理数(後述)。
の3種類がある。(これ以外にないことは明らかだろう。)これらはいずれも実数である。逆に、実数は(ア)、(イ)、(ウ)のどれか一つになる。なぜならば、もしある有限小数に等しくならなければ、この実数と有限小数の間に別の有限小数を取ることができる。(有理数の稠密性!)
つまり所与の実数に対し、それにいくらでも近い有理数(近似有限小数)が取れるので、この操作を必要な回数だけ繰り返せば、望みの近似値が得られる。(所与の実数はこの近似有理数の列の極限値である。)
有理数$\frac{a}{b}$を小数に直すには分子を分母で割ればよい。
例えば$\frac{1}{2}=0.5$, $\frac{3}{5}=0.6$である。いま両方とも有限小数になったが、分母の素因子が2または5のみならば有限小数になる。実際、$\frac{c}{2^a
\cdot 5^b}$において$a \geq b$ならば
$\frac{c}{2^a \cdot 5^b}=\frac{c \cdot 5^{a-b}}{2^a \cdot 5^a}=\frac{c \cdot 5^{a-b}}{10^a}$
小数点がずれるだけだから有限小数である。($a<b$のときも同様。) 逆に、有限小数は$\frac{c}{10^a}$に直せるが、約分したところで分母には2,5以外の素因子は現れない。
次は循環無限小数になる例である。$\frac{1}{3}=0.333\cdots=0.\dot{3}$は、このようにドット$\dot{}$を使って表す。
$\frac{1}{7}=0.\dot{1}4285\dot{7}$は
のように6個(この6を循環節の長さと言う)の数字の繰り返しになる。そして循環節の長さは必ず、(分母-1)以下である。なぜなら、何回も7で割っていったたときにその余りに0が出なければ永久に割り切れない訳だが、割り切れないときのありうる余りは1から6までの6通り以下だからである。
この割り算のコツはかつて何処かに出てきたのと同じ余りが出たら、そこで計算を中止する。それ以後は繰り返しになるからだ。そして同じ余りが出るまでに何回割ったかに注意して循環節(どこからどこまでの繰り返しなのか)を決定することだ。
分母が素数$p$なら循環節の長さは$p-1$になるかと言うと、そんなことはなくて、例えば$\frac{1}{11}=0.\dot{0}\dot{9}$と循環節の長さはたったの2である。
【発展的内容】その理屈は割り算でお尻に0をドンドンくっつけていくわけだから、$10^n,n=1,2,3,\cdots$が順不同で$\equiv 1,2,3, \cdots, p-1(mod.p)$のすべてを亘ればよいのである。このことを$10$が$mod.p$で原始根になっていると言う。具体的にやってみると
[1/7の場合]
$10 \equiv 3(mod.7), 10^2 \equiv 9 \equiv 2, 10^3 \equiv 6, 10^4 \equiv 18 \equiv 4, 10^5 \equiv 12 \equiv 5, 10^6 \equiv 15 \equiv 1$
なんてことはない、さっきの割り算で余りだけを計算しているだけだ。
[1/11の場合]
$10 \equiv 10(mod.11), 10^2 \equiv (-1)^2 \equiv 1$
案の定、2回で終わってしまった。
[1/17の場合] $10 \equiv 10(mod.17), 10^2 \equiv (-7)^2 \equiv 49 \equiv 15, 10^3 \equiv -20 \equiv 14, 10^4 \equiv 140 \equiv 4, 10^5 \equiv 40 \equiv 6, 10^6 \equiv 60 \equiv 9,10^7 \equiv 90 \equiv 5,10^8 \equiv 50 \equiv 16,10^9 \equiv -10 \equiv 7, 10^{10} \equiv 70 \equiv 2, 10^{11} \equiv 20 \equiv 3, 10^{12} \equiv 30 \equiv 13, 10^{13} \equiv -40 \equiv 11, 10^{14}\equiv -60 \equiv 8,10^{15} \equiv 80 \equiv 12, 10^{16} \equiv -50 \equiv 1$
Excelで計算したのが下表である。循環節の長さはめいっぱいの16である。
(数式)
(計算結果)
17 1 10 2 =MOD(C1*10,$A$1) 3 =MOD(C2*10,$A$1) 4 =MOD(C3*10,$A$1) 5 =MOD(C4*10,$A$1) 6 =MOD(C5*10,$A$1) 7 =MOD(C6*10,$A$1) 8 =MOD(C7*10,$A$1) 9 =MOD(C8*10,$A$1) 10 =MOD(C9*10,$A$1) 11 =MOD(C10*10,$A$1) 12 =MOD(C11*10,$A$1) 13 =MOD(C12*10,$A$1) 14 =MOD(C13*10,$A$1) 15 =MOD(C14*10,$A$1) 16 =MOD(C15*10,$A$1) 17 =MOD(C16*10,$A$1) 18 =MOD(C17*10,$A$1) 19 =MOD(C18*10,$A$1) 20 =MOD(C19*10,$A$1)
17 1 10 2 15 3 14 4 4 5 6 6 9 7 5 8 16 9 7 10 2 11 3 12 13 13 11 14 8 15 12 16 1 17 10 18 15 19 14 20 4
このように、既約分数の分母が2,5以外の素因子を含むと、有限小数にはならずに循環小数になる。
次は、循環小数を分数に直す問題だ。
【問題】$1.232323\cdots$を分数にせよ。---
【解】$x=1.232323\cdots$とおき、$100x=123.232323\cdots$から辺々引くと、
$99x=122$ よって $x=\frac{122}{99}$
【問題】$0.999\cdots$を分数にせよ。---
【解】$x=0.999\cdots$とおき、$10x=9.999\cdots$から辺々引くと、
$9x=9$ よって $x=\frac{9}{9}=1$
2問目は結果が意外だから信じがたいかもしれないが、
とすれば、たしかにそうなっている。そうすると、他の有限小数も同様であって
だから、$\frac{3}{5}=0.6=0.5999\cdots$が分かる。つまり、すべての有限小数は循環小数にすることができる。逆の循環小数を直す問題になると、有限小数になるものとそうでないものに分かれる。
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