放物線 $y=x^2$ を左に $4$,下へ $5$ 移動したグラフの式を求めてごらん。「右、上」でなく「左、下」と両方ともさかさまだから、符号も両方ともさかさにして
$y=(x+4)^2-5$
だ。たしかに、$y(-4)=-5$ だから、頂点は $(-4,-5)$ だね。
では、今求めた式を展開してごらん。ここで田の字計算を使おう。田の字を書いて、縦・横の長さをともに $x+4$ にする。すると、$4x$ と $4x$ という同じ項が斜めに現れる。それに合わせて、$-5$ というはみ出し田んぼは定数 $16$ の斜め右上に書く。斜めに同類項が現れるようにするのがコツだ。
上の 5枚の田んぼ(大きい正方形 1枚とはみ出し田んぼ 1枚)の面積の合計を計算すると、
$y=x^2+8x+11$
では、次は一般形を標準形に直す問題をやってみよう。例えば、
$y=x^2+3x+4$
を変形してみよう。
$\frac{3}{2}\times \frac{3}{2}=\frac{9}{4}$
になるので、これを記入する。
$h+\frac{9}{4}=4$
より、$\frac{9}{4}$ を移項して、$h=\frac{7}{4}$ と求まる。これをはみ出し田んぼに記入する。
$(x+\frac{3}{2})^2+\frac{7}{4}$
これで、標準形に変形できた。括弧の 2乗すなわち平方ができたので、この計算法を平方完成と言うんだ。
今度は、$a\neq 1$ の 2次関数の一般形を平方完成してみよう。例えば、
$y=-2x^2-4x-5$
だ。まず2次の係数の$-2$ が邪魔だね。消えてくれればいいのに。両辺を $-2$ で割ってしまおう。
$\frac{y}{-2}=x^2+2x+\frac{5}{2}$
となる。
これの右辺をさっきのように田の字で平方完成すれば上図の通りで、
$\frac{y}{-2}=(x+1)^2+\frac{3}{2}$
となる。最後に両辺を $-2$ 倍して、元に戻して、
$y=-2(x+1)^2-3$
である。
上記の方法を使えば、任意の2次関数
$y=ax^2+bx+c$
前節最後に述べたことを実際にやってみよう。両辺を $a$ で割って
$\frac{y}{a}=x^2+\frac{b}{a}x+\frac{c}{a}$
$=(x+\frac{b}{2a})^2-\frac{b^2-4ac}{4a^2}$
$a$ 倍して元に戻せば標準形に直せる。これより頂点の$x$ 座標が
$x=\frac{-b}{2a}$
であることが分かる。これを公式として覚えておこう。頂点の $y$ 座標も求まるのだが、そちらは覚えなくてよい。覚えるのが大変だし、覚えておかなくても $y$ 座標は $x$ 座標を代入することにより分かるからだ。
ところで、いま導き出した「頂点の $x$ 座標の公式」は、2次方程式の解の公式
$x=\frac{-b\pm\sqrt{b^2-4ac}}{2a}$
に似ているね。ルートの部分がなくなったと覚えておけばいい。
実は、解の公式も前述の田の字計算により求めることができる。本質的には同じものなんだ。
では、今覚えた「頂点の $x$ 座標の公式」を使って、問題を解いてみる。
$y=-\frac{1}{2}x^2+x+\frac{3}{2}$
のグラフを描け、という問題だ。
頂点の $x,y$ 座標はそれぞれ
$X=\frac{-b}{2a}=\frac{-1}{-1}=1$,
$y=y(1)=-\frac{1}{2}+1+\frac{3}{2}=2$
である。$a=-\frac{1}{2}$ は負であるから、上に凸の放物線を平行移動したものになる。
増減表を書くと、上記のようになる。斜め矢印は増加・減少を表す。この矢印を指でなぞるだけでも、グラフのおおよその形が分かるというものだ。$y$ 切片は
$y(0)=\frac{3}{2}$
であることを確かめて、グラフを描けば下図のようになる。
この関数の最大値は
$y(1)=2$
である。一方、最小値は求めようとしても
−1万,−1億,−1兆,……
と際限なくいくらでも小さい値を取りうるから、「これが最小値だ」という値がない。だから、「最小値はなし」となる。−∞ というのは値ではないから、最小値にするわけにはいかないんだよ。
$x$ の変域に制限がつく場合がある。実際問題として関数を扱うときには、変数 $x$ の取りうる値の範囲には限界があることが多いだろうからね。$x$ の変域のことを関数の定義域という。関数
$y=2x^2-8x+9$ $(1\leq x \leq 4)$
の最大値・最小値を求めよう。
頂点の座標は
$x=\frac{-b}{2a}=\frac{8}{4}=2$,
$y=y(2)=8-16+9=1$
だから、増減表は下のようになる。
最大値は左右の端点における値 $3$ と $9$ を比較すれば分かる。最小値は頂点の $y$ 座標を見ればよい。従って
最大値 $y(4)=9$,
最小値 $y(2)=1$
となるね。最大値・最小値を求めるには、端点と頂点を調べればよいわけだ。
ナニ? $3$ という値は計算する必要がなかったって? そうだね、頂点の $x$ 座標が $2$ だから $x=1$ より $x=4$ の方が遠く離れているから、$x=4$
で最大になるって分かるね。その意味では、$y(1)$ の値は計算する必要はなかったね。
今と同じ関数で、定義域を
$-1 \leq x \leq 1$
に変えたら、答はどう変わるかな?
2つの矢印は両方とも減少になるよ。頂点の左側では減少状態だからね。右へ行くほど値は小さくなるから、
最大値 $y(-1)=19$,
最小値 $y(1)=3$
2次関数の式が因数分解されている問題をやってみよう。関数
$y=(x-1)(x-5)$
を調べてみる。
$y$ 切片は $x=0$ を代入すれば分かった。では、$x$ 切片は? $y=0$ を代入すればいいね。
$(x-1)(x-5)=0$
となるから、
$x=1,5$
が $x$ 切片だ。つまり、グラフは2点
$(1,0),(5,0)$
を通ることになる。
放物線はある縦線に関して左右対称となるが、この対称軸のことを放物線の軸という。今の場合、軸はどこにあるかな? $1$ と $5$ の真ん中はどこだ? $5-1$ を $2$ で割って、それを $1$ に足して……なんて、面倒なことをしなくても
$\frac{1+5}{2}=3$
と、平均をとれば真ん中が分かる。
ということで、軸の方程式は $x=3$ なので、頂点の $x$ 座標は $3$ である。
不等式
$(x-1)(x-5)<0$
を満たす $x$ の値の取りうる範囲を求めてみよう。このことを不等式を解くと言うんだが、グラフは前節で描いた。
$y<0$
となるような $x$ のいる場所を求めればいいんだ。$y<0$ は $y$ 座標が負ということだから、放物線上で該当するところを太線にしてごらん。
太線上には点 $(x,y)$ がたくさん乗っかっているが、どの点にも共通して言えることは、$x$ 座標が
$1<x<5$
となっていることだ。これが不等式の解になる。
では、不等号の向きを反対にして、
$(x-1)(x-5)>0$
だったら、どうかな。$y$ 座標$>0$ となる点の $x$ 座標について調べればいいわけだ。今度は、解の範囲が2つの部分に分かれて、
$x<1,5<x$
となる。2次方程式
$(x-1)(x-5)=0$
なら、
$x=1,5$
の2つが解で、$y<0$ ならこの2解の内側で、$y>0$ なら外側だ。<はひらがなの「く」の字に似ているから、「(ふ)くは内」と覚えておけばいい。まるで豆まきだね。
$-x^2+x+12<0$
のように、2次の係数が負のときは両辺に−1を掛けて
$x^2-x-12>0$
とする。不等号が逆向きになるね。これを因数分解して、
$(x+3)(x-4)>0$
「鬼は外」じゃないが、今度は外側が解で、
$x<-3,4<x$
となる。