これを図示すると $y=x^{3}$ と2点で交わることが分かる。接点ではない方の点を求めてみよう。
$y=x^{3}$ と接線の方程式を連立して
$x^{3}-3x+2 =0 $
が出てくる。$x=1$ が重解であることは既に分かっているので、簡単に因数分解できて
$(x+2)(x-1)=0$
交点の座標は
$(-2,-8)$
だ。
S「交わるのに接線と言うんですか」
局所的に、つまり狭い範囲だけを見て接するとか接しないとかを判断するので、接線と言ってよいのです。
【4 数学Vの微分】
以上が数学Uの微分の導入の授業を再現したもので、$h$ に $0$ を代入することにより微分係数・導関数を求めた。限りなく $0$ に近づくという極限の概念は使わなかった。数Uでは不必要と考えたからだ。数学Vでも
$y=\frac{1}{x}$ や $y=\sqrt{x}$ の微分では極限概念を使わずに微分できる。
$y= \frac{1}{x}$ ならば
$\Delta y = \frac{-h}{x(x+h)}$
$\frac{\Delta y}{\Delta x} = \frac{-1}{x(x+h)}$
$(\frac{1}{x})' = - \frac{1}{x^{2}}$
しかし、以下に示すように極限概念を使わざるを得なくなることも確かである。
数Vにおける関数の微分の導入を以下に記そう。まず三角関数 $y=\sin x$ の微分だが、
$ \frac{\sin(x+h)- \sin x}{h} = \frac{\sin x \cos h + \cos x \sin h
-\sin x}{h}$
$ = \frac{\sin x(\cos h-1) + \cos x \sin h}{h}$
ここで
$\displaystyle \lim_{x \rightarrow 0} \frac{\sin x}{x} = 1 $
が使われる。
この極限は $x$ が $0$ に近づけば、$2 \sin x$ と $2x$ が近い値をとるようになることから、極限値の1が導き出される。丸い地球も我々が住んでいるところでは平らな世界だ。
$ \frac{\cos h-1}{h} = \frac{(\cos h-1)(\cosh+1)}{h(\cosh+1)}$
$ = \frac{\sin^{2} h}{h(\cosh+1)}$
$ = \frac{\sin^{2}h}{h(\cos h+1)}$
$ =- \frac{\sin h}{h} \cdot \frac{\sin h }{\cos h +1} \rightarrow 0$
$\cos x$ の微分は、 $\cos x=\sin(x+\frac{\pi}{2})$ の両辺を微分して
$(\cos x)'= \cos(x+ \frac{\pi}{2}) =- \sin x$
指数関数では、その微分を次のように導入する。
$y=2^{x}$
をグラフを描いてその接線の傾きを見てみると
$y'=A \cdot 2^{x}$
になりそうだと分かるが$A=y'(0)$ は1より小さい値である。なぜならば $x=0$ での接線の傾きは明らかに1より小さいからだ。