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微分入門

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【1 平均速度】
斜面上を物体が落ちていくという運動を解析してみよう。
落ち始めてからの時間が$x$[秒]のとき、物体の位置は出発点から測って$y$[cm]だとするね。
そのとき
   $y=x^{2}$
という関係式が成り立つとするよ。これを図にしてみると下のようになるね。

だんだん落ち方が速くなっていることが分かる。落下運動では加速がつくからだ。
図と同じことを表で表してみよう。

この物体の速度を求めてみよう。$x=3$[秒]のとき $y=9$[cm]だから、……
S「キハジの公式!」
S「速さは距離/時間」
   $9$[cm]/$3$[秒]=$3$[cm/秒]
これを$x=0$[秒]から$3$[秒]までの間の平均速度という。
速度は初めは遅く、あとにいくほど速くなる。遅い部分と速い部分をならして測っているので「平均」速度というわけだ。
次の問題をやってみよう。

(問) $x=0$[秒]から$2$[秒]までの平均速度を求めよ。
(解) $x=2$[秒]のとき$y=4$[cm]だから
   $4$cm/$2$秒=$2$[cm/秒]■

(問) $x=1$[秒]から$3$[秒]までの平均速度はいくらだろう。
S「3cm/秒」
ちょっと待てよ、それは$x=0$[秒]から$3$[秒]までの平均速度じゃないか。$x=1$[秒]から$3$[秒]までの間にどれだけ進んだかな。
S「8cm」
どうしてかな
S「(9−1)cm」
かかった時間は?
S「2秒」
(3−1)秒だね。
 変化の表を書いてみよう。

Δはデルタと読む。ギリシア文字で英語の大文字のDにあたる。差という意味のdifference の頭文字だ。これを増分という。Δxは経過時間、Δyは移動距離を表す。
ΔxとΔyを求めるにはそれぞれ右側のx,yの値から左側のx,yの値を引き算すればよい。
$x=1$[秒]から$3$[秒]までの平均速度は
   $ \frac{\Delta y}{\Delta x} = \frac{8}{2} =4 [cm/\mbox{秒}]$
となる。■

(問) x=4[秒]から6[秒]までの平均速度を求めてみよう。

   $ \frac{\Delta y}{\Delta x} = \frac{20}{2} =10 [cm/\mbox{秒}]$■
同じ2秒間でも後になるほど大きい、つまり加速がついている。

では次に1秒ごとに、1秒間の平均速度を求めることにしよう。すなわち
x=0〜1の平均速度
x=1〜2の平均速度
x=2〜3の平均速度
……………………
を求めるのだ。
いずれもΔx=1だから簡単に求まって
x=0〜1の平均速度=1cm/秒
x=1〜2の平均速度=3cm/秒
x=2〜3の平均速度=5cm/秒
x=3〜4の平均速度=7cm/秒
x=4〜5の平均速度=9cm/秒
……………………
となる。これはなんだ?
S「奇数」
ちょうどこれは階差数列になっている。

2乗数の数列の階差数列は奇数列というわけだ。ガリレオ・ガリレイは落下運動を解析して奇数列が現れることを発見した。


【2 瞬間速度】
瞬間の瞬の字を訓読みすると
S「またたく」
瞬間はまたたく間、すなわち目をぱちくりするほんの短い時間という意味だ。

(問) x=2秒のときの瞬間速度を求めてみよう。

瞬間を0.1秒としてみよう。x=2〜x=2.1の間の平均速度を求めればいいのだから、

$\frac{\Delta y}{\Delta x} = \frac{0.41}{0.1} = 4.1 [cm/\mbox{秒}]$
となる。
$x=2 \mbox{〜} x=2.01$ の間の平均速度を求めると

$\frac{\Delta y}{\Delta x} = \frac{0.0401}{0.01} = 4.01 [cm/\mbox{秒}]$
となる。
$x=2 \mbox{〜} x=2.001$ の間の平均速度を求めると

$\frac{\Delta y}{\Delta x} = \frac{0.004001}{0.001} = 4.001 [cm/\mbox{秒}]$
となる。
このように瞬間という時間を短くするほど、瞬間速度として、より精度の高い値が得られる。でも短くすればというものの、これではきりがないので、次のようにする。
瞬間というほんの短い時間を$h$秒とする。「ほんの」の頭文字で$h$だ。
$x=2 \mbox{〜} x=2+h$ の間の平均速度を求めよう。

$\frac{\Delta y}{\Delta x} = \frac{4h+h^{2}} {h} = 4+h $
瞬間の時間幅$h$は$0$[秒]であることが理想だから、ここで $h=0$ を代入して
   $y'(2) =4 [cm/\mbox{秒}]$■
これが $x=2$ における瞬間速度だ。精度の高い近似値というのではなく、正確にまさに4[cm/秒]になるのだ。$y'$は瞬間速度のことで、$y'(2)$ は$x=2$[秒]のときの瞬間速度を表す。

練習として、
(問) $x=3$[秒]のときの瞬間速度を求めてみよ。

$\frac{\Delta y}{\Delta x} = \frac{6h+h^{2}} {h} = 6+h $
$h=0$を代入して
   $y'(3) =6$■


【3 導関数】
(問) 時刻$x$[秒]における瞬間速度を求めよう。

$x$[秒]のときの位置 $y$ は、$y=x^{2}$ の $x$ のところに $x$ を代入すればよいのだから、……
S「$x^{4}$」
$x$ に $x$ を代入するということは、$x$ をいったん消しゴムで消して、その空いたところに $x$ を代入するのだから
   $x^{2}$
となる。代入する前の式と変わらない。消しゴムで消さないで $x$ の隣りに $x$ を代入したりすると $x^{4}$ になってしまう。

$\frac{\Delta y}{\Delta x} = \frac{2xh+h^{2}} {h} = 2x+h $
$h=0$ を代入して
   $y'=2x [cm/\mbox{秒]}$■

物体の移動距離と瞬間速度をまとめた表を作ると次のようになる。

後にいくほど加速がついて瞬間速度が大きくなるということだけでなく、瞬間速度が時間に比例するということも分かる。

(問) 高さ20[メートル]のビルの屋上から真上に投げたボールの運動が
   $y=-5x^{2}+30x+20$
で与えられたとする。ただし $x$[秒]は投げ上げてからの時間、$y$[m]は地上からの高さである。瞬間速度 $y'$ を求めよ。



$\frac{\Delta y}{\Delta x} = \frac{-10xh-5h^{2}+30h} {h} = -10x-5h+30 $
$h=0$を代入して
   $y'=-10x+30[cm/\mbox{秒]}$■
$y'(0)=30[m/\mbox{秒}]$ は初速を表す。
$y'(3)=0$だから$x=3$[秒]のとき瞬間的に止まっている。これは何を意味する?
S「最高地点」
そうだね。$y$ のグラフを描くと $x=3$ のところが頂点の放物線になる。
(問) 放物線
   $y=2x^{2}+8x+4$
の$x=2$ における接線の傾きを求めよ。

$\frac{\Delta y}{\Delta x} = \frac{4xh+2h^{2}+8h} {h} = 4x+2h+8 $
この傾き$\frac{\Delta y}{\Delta x} $は、放物線上の2点を結んだ直線の傾きを意味する。この直線を割線という。接線は放物線と1点で交わる直線だから、$h=0$ にすればよい。

上の2次関数の導関数を求めると、
   $y'=4x+8$
になる。
$x=2$における接線の傾きは、$y'$の式に$x=2$を代入して
   $y'(2)=16$
である。■
$x=-2$ だと
   $y'(-2)=0$
だから、ここが放物線の頂点になる。$y$切片が4ということと、左右対称になることと抱き合わせて考えるとグラフは図のようになる。

微分の法則性を考えてみよう。
   $y=x^{2}$ だと $y'=2x$
   $y=-5x^{2}+30x+20 \Rightarrow y'=-10x+30$
   $y=2x^{2}+8x+4 \Rightarrow y'=4x+8$
(問) これらの結果から
$y=ax^{2}+bx+c \Rightarrow y'=2ax+b$
になることが予想される。それを証明してみよう。

(証明)

$\frac{\Delta y}{\Delta x} = \frac{2axh+ah^{2}+bh} {h} = 2ax+ah+b $
$h=0$ を代入して
   $y'=2ax+b$■

(問) 3次関数 $y=x^{3}$ を微分してみよう。

$\frac{\Delta y}{\Delta x} = \frac{3x^{2}h+3xh^{2}+h^{3}} {h} = 3x^{2}+3xh+h^{2} $
$h=0$ を代入して
   $y'=3x^{2}$■
$(x+h)^{3}$ は、公式を忘れても $x+h$ を3個掛け合わせれば求まる。
上の結果から
   $y=ax^{3}+bx^{2} +cx +d$
だと
   $y'=3ax^{2}+2bx+c$
となることが予想できるね。
つまり、$ax^{3}$ なら指数の3が前に落ちてきて $a$ とのかけ算になり、$bx^{2}$ なら指数の2が前に落ちてきて $b$ とのかけ算になる。$cx$ は係数だけの $c$ になり、定数項 $d$ は消える。
曲線 $y=x^{3}$ の原点における接線の傾きは $y'(0)=0$ だから、そのグラフは下図の左側ではなく、右側のようになる。
 
次に、曲線 $y=x^{3}$ 上の点 $(1,1)$ における接線を求めよう。その傾きは
   $y'(1) = 3 \times 1^{2} =3$
であるので、接線の方程式は
   $y=3x+b$
とおける。$(1,1)$ を通ることから
   $1=3+b$
   $b=-2$
接線は
   $y=3x-2$

これを図示すると $y=x^{3}$ と2点で交わることが分かる。接点ではない方の点を求めてみよう。
$y=x^{3}$ と接線の方程式を連立して
   $x^{3}-3x+2 =0 $
が出てくる。$x=1$ が重解であることは既に分かっているので、簡単に因数分解できて
   $(x+2)(x-1)=0$
交点の座標は
   $(-2,-8)$
だ。
S「交わるのに接線と言うんですか」
局所的に、つまり狭い範囲だけを見て接するとか接しないとかを判断するので、接線と言ってよいのです。


【4 数学Vの微分】
以上が数学Uの微分の導入の授業を再現したもので、$h$ に $0$ を代入することにより微分係数・導関数を求めた。限りなく $0$ に近づくという極限の概念は使わなかった。数Uでは不必要と考えたからだ。数学Vでも $y=\frac{1}{x}$ や $y=\sqrt{x}$ の微分では極限概念を使わずに微分できる。
$y= \frac{1}{x}$ ならば

   $\Delta y = \frac{-h}{x(x+h)}$
   $\frac{\Delta y}{\Delta x} = \frac{-1}{x(x+h)}$
   $(\frac{1}{x})' = - \frac{1}{x^{2}}$

しかし、以下に示すように極限概念を使わざるを得なくなることも確かである。
数Vにおける関数の微分の導入を以下に記そう。まず三角関数 $y=\sin x$ の微分だが、
   $ \frac{\sin(x+h)- \sin x}{h} = \frac{\sin x \cos h + \cos x \sin h -\sin x}{h}$
   $ = \frac{\sin x(\cos h-1) + \cos x \sin h}{h}$

ここで
   $\displaystyle \lim_{x \rightarrow 0} \frac{\sin x}{x} = 1 $
が使われる。
この極限は $x$ が $0$ に近づけば、$2 \sin x$ と $2x$ が近い値をとるようになることから、極限値の1が導き出される。丸い地球も我々が住んでいるところでは平らな世界だ。
   $ \frac{\cos h-1}{h} = \frac{(\cos h-1)(\cosh+1)}{h(\cosh+1)}$
   $ = \frac{\sin^{2} h}{h(\cosh+1)}$
   $ = \frac{\sin^{2}h}{h(\cos h+1)}$
   $ =- \frac{\sin h}{h} \cdot \frac{\sin h }{\cos h +1} \rightarrow 0$
$\cos x$ の微分は、 $\cos x=\sin(x+\frac{\pi}{2})$ の両辺を微分して
   $(\cos x)'= \cos(x+ \frac{\pi}{2}) =- \sin x$

指数関数では、その微分を次のように導入する。
   $y=2^{x}$
をグラフを描いてその接線の傾きを見てみると
   $y'=A \cdot 2^{x}$
になりそうだと分かるが$A=y'(0)$ は1より小さい値である。なぜならば $x=0$ での接線の傾きは明らかに1より小さいからだ。

今度は
   $y=3^{x}$
でやってみると
   $y'=B \cdot 3^{x}$
で $B>1$ のようである。どうやら、2と3の間に
   $y=e^{x} \Rightarrow y'=e^{x}$
と余計な係数が出てこない $e$ なる値が存在しそうだ。実際このような $e$ が存在する。
   $y'(0)=1$ だから
   $\displaystyle \lim_{h \rightarrow 0} \frac{e^{h}-1}{h} =1$
となる $e$ が存在するのである。
$y=e^{x}$ を微分すると
   $\frac{e^{x+h} - e^{x}}{h} = \frac{e^{x}(e^{h}-1)}{h}$
で $y'=e^{x}$ が導き出される。
これが分かれば、逆関数の
   $y=\log x$
の方は、
   $e^{y}=x$
の両辺を微分して
   $e^{y} y' =1$
と合成関数の微分法を使う。そして
   $y'=\frac{1}{e^{y} }=\frac{1}{x}$
となる。
合成関数の微分法はチェーン・ルールと呼ばれる。微分の公式の中で最も頻繁に使われるものであろう。

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