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アとイから、掛け算をしてウを求めているが、これは次の筆算による掛け算の結果をウという狭い場所に無理矢理書いているものである。(だからウにおいては同類項がまとめられていない。ウの下の行で同類項をまとめている。)

これでホーナーの右下から $f(x+h)=2x^2+4hx+3x+2h^2+3h+4$ が分かり、この式に $h=0$ を代入して、$f(x)=2x^2+3x+4$ だから

$\Delta y=f(x+h)-f(x)=4hx+2h^2+3h$

が分かる。平均変化率とその極限は

$\frac{\Delta y}{\Delta x}=\frac{4hx+2h^2+3h}{h}=4x+2h+3 \rightarrow 4x+3$

これで $f'(x)=4x+3$ が導かれた。

上の方法が実際に昨年筆者が授業で行ったものである。
定義に従わずに導関数を求めるのなら、任意の点の周りでテイラー展開してもよい。この場合もホーナー法である。

ホーナーを 2 回使った結果、次の等式を得る。

$f(x)=2(x-x_{0})^2+(4x_{0}+3)(x-x_{0})+2x_{0}^2+3x_{0}+4$

よって、インデックス(添え字)の 0 を外せば

$\frac{f''(x)}{2}=2$,
$ f '(x)=4x+3$

このやり方は 10 進数を例えば 7 進法に直すのに、7 で繰り返し割って余りを出していく

という方法に似ている。(というより、本質的に同じものである。なぜならテイラー展開はいわば $(x-x_{0})$ 進法だからだ。)
上図は $234_{(10)}=453_{(7)}$ の、10進→ 7進の変換を表している。テイラーと本質的に同じと分かるだろう。

ところで、数学Uで導関数の定義に関して、「極限値

$\displaystyle \lim_{x\rightarrow 1}\frac{x^3-1}{x-1}$

を求めよ」のような問題をたくさん出したらすべてロピタルの定理を使って答を出している生徒がいた。しかも数学で原級留置確実と噂されていた生徒である。
塾で習っていたのか、高校2年生でもロピタルは自明なのか、筆者にはいまだに分からない。(簡単に了解できる考え方があるのかもしれない。)

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§5. デザルグの方法

図形と方程式の分野には、次のような問題がある。

【問5-1】 2直線 $3x-2y+5=0, 6x+5y+1=0$ の交点を通る直線のうち、点$(5, 6)$ を通るものを求めよ。---

2 曲線 $F(x,y)=0, G(x,y)=0$ の交点を通る曲線の方程式は、定数 $m, n$ を使って
$m F(x,y)+n G(x,y)=0$ … @
と書ける。この定理を名前がないと不便なので筆者は「デザルグの定理」と呼んでいる。
$F(x,y)+n G(x,y)=0$ … A
であるとする流儀もあって同値なのだが、実際に授業にかけてみると前者の方が使いやすい。(パラメータが少ない方がいいかと思っていたが、意外にも実際は反対だった。)

さて、解答だが
$m(3x-2y+5)+n(6x+5y+1)=0$
に $(x,y)=(5,6)$ を代入して
$8m+61n=0$
だから、$m=61, n=-8$ として
$61(3x-2y+5)-8(6x+5y+1)=0$,
$135x−162y+297=0$,
$5x-6y+11=0$ … (答)
途中の計算は下図のようにやっている。
これをAの方法でやると分数が出てきて、ウッカリ通分などしようものならグチャグチャになってしまう。
@とおく方法はトリッキーなテクニックだとばかり思っていたが、これは $F, G$ が生成するイデアルのようなもので(「のような」というのは $m, n$ が多項式でなく定数だから)、$F, G$ の共通零点(交点、連立方程式の解)が代数多様体で、代数幾何学では王道の方法であるようだ。

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§6. 曲線外からの接線

読者諸氏は次の問をどう解かれるか。

【問6-1】 曲線 $y=x^3+2x^2-3x-4$ に点$(-3, 5)$ から引いた接線の接点の $x$ 座標 $t$ を求めよ。---

多くの方は、接線の方程式を

$y-(t^3+2t^2-3t-4)=(3t^2+4t-3)(x-t)$

とおいた後

$5-(t^3+2t^2-3t-4)=(3t^2+4t-3)(-3-t)$

とするだろう。

これを

$y-5=(3t^2+4t-3)(x+3)$ … (*)

とおいた高校生がいて、「答案に×を付けられて先生に抗議したらダメと言われた」というのが SNS の書き込みにあった。
私もウッカリ「そりゃ君の間違いだよ」とレスポンスをしてしまった。
1か月ほどしてアルキメデスのエウレカではないが、突然ひらめいた。「あの高校生の答案、正解だ!」

実際、(*) において

$(t^3+2t^2-3t-4)-5=(3t^2+4t-3)(t+3)$

とすれば同じ等式が出てくる。さらに考えれば

$\frac{t^3+2t^2-3t-9}{t+3}=3t^2+4t-3$

というやり方もあると気づく。(下図)

難しかろうと慮って誘導尋問的な枝問を作って生徒に問題を与えると、思考が制限されてかえって難しくなるという事例が多い。(岡目八目で他の教員が作るテスト問題のアラが眼に付くことがある。)

岡目八目の例を最近体験したものから挙げよう。

【問6-2】 関数 $f(x)=x^3-3x^2+ax+b$ は $x=3$ で極小値 $-26$ をとる。極大値を求めよ。---

このテスト問題に対しある先生は

(1) $a, b$ についての連立方程式を作りそれを解け。
(2) 極大値を求めよ。

という枝問を付けた。余計なお世話だ。
筆者の授業では次のようにやった。
$f'(x)=3x^2-6x+a$ の零点が $3$ だから

で、$a=-9$ だ。どこが連立なんだろ。
このあと

で、$b=1$ が出て、あとは

$f'(x)=3x^2-6x-9=3(x+1)(x-3)$

3次の係数が正だったから、極大が極小の左に来るので、極大値は $f(-1)$ であり、その値をまたホーナーで

と求める。(答)$6$

誘導尋問の最たるものがセンター試験であろう。拷問のような変チクリンな論理展開に服従させられて答を導くのだが、天才ガロアなら受験会場で試験官に黒板消しを投げつけているに違いない。そもそも数学の試験に穴埋め問題はないって話だ。
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§∞. 文献

[1] 黒田孝郎ほか著 『高等学校の確率・統計』 ちくま学芸文庫、2011年

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