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【授業】 2次・3次方程式をめぐって
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§1. ホーナー法
§2. 共役と有理化
§3. 3次方程式
§4. 導関数を求める
§5. デザルグの方法
§6. 曲線外からの接線
§∞. 文献
なぜこの方法で関数値が求まるのかと言うと、下図で簡単に証明できる。
@下ろす、A掛ける、B足す、(以下ABの繰り返し)
(上は 2次式の場合だが、3次、4次でも同様。)上の問題1-1 は数学Tの関数の章の冒頭に出てくるものだが、ホーナー法は微分の章で増減表の 3 行目の臨界値(極値と停留値)を求めるときにも重宝する。
をして、 この筆算の式から
$(ax+a\alpha+b)(x-\alpha)+a\alpha^2+b\alpha+c=ax^2+bx+c$が出ることから分かる。
$(3\times 2-5)\times 2 + 6=8$とやっていることになる。昔、大学の授業で「関数電卓で計算するときはこのようにしろ」と習ったものである。これを
$3\times 2^2-5\times 2+6$とやったら叱られる。なぜなら $2^2$は計算機の内部では
$e^{2 \log 2}$で処理されている。$\log 2$ は無限小数になるので四捨五入され、それを指数としてさらに指数関数の値を求めればまたもや無限小数になって四捨五入。何度も四捨五入しているうちに、$4$ という整数値を得ることができなくなる危険が生じる。
$V(X)=E(X^2)-E(X)^2$を使うとベラボーな値になる。定義式の
$V(X)=E((X-E(X))^2)$でやるのと比べて 2 倍くらい値が違う。これくらい違うと分散はなんでも正解になってしまう。
$x=\frac{-b\pm\sqrt{b^2-4ac}}{2a}$である。(有理係数は係数の分母の最小公倍数を掛ければ、整係数になってしまうが。)
$\sqrt{n}=\frac{a}{b} \rightarrow nb^2=a^2$最後の等式で、両辺を素因数分解する。右辺には各素数が偶数個含まれる。ところが左辺はそうではない($n$ は 2 乗数でないから)。これは矛盾。
$5+3 \sqrt{2}$だったら何を掛けて分母を有理化するだろうか。
$a+b i \rightarrow a+b(-i)$のことと教えるのが自然だろう。
$(x-2)^2=\sqrt{3}^2, x^2-4x+4=3, x^2-4x+1=0$だから、あとは解の公式で $x=2-\sqrt{3}$ … (答)
$\alpha+\beta=-\frac{b}{a},\alpha\beta=\frac{c}{a}$でトレース(解の和)もノルム(解の積)も有理数になる。(2次でなくてもそうなる。)このうちの後者を利用する。
$(1+\sqrt{2}+\sqrt{3})(1-\sqrt{2}-\sqrt{3})=-4-2\sqrt{6}$,だから、次の数を掛ければよい。
$(-4-2\sqrt{6})(-4+2\sqrt{6})=-8$
$(1-\sqrt{2}-\sqrt{3})(-4+2\sqrt{6})$ …(答)
【蛇足】 試行錯誤ではなく、計算するにはこうする。
有理数 $\mathbb{Q}$ を地上の世界と考える。ある 2次方程式を与えることにより、上空には有理数 $\mathbb{Q}$ に $\sqrt{2}$
を添加した世界 $\mathbb{Q}(\sqrt{2})$ が現れる。ここでノルムを作ると地上の世界に降りて来る。
さらにこの上空に $\sqrt{3}$ を添加した世界 $\mathbb{Q}(\sqrt{2})(\sqrt{3})=\mathbb{Q}(\sqrt{2},\sqrt{3})$
を構築する。ここで 1 回ノルムを作れば、1 階だけ低い世界に降りられ、さらにもう 1 回ノルムを作れば地上に降りて来られる。だから
$(1+\sqrt{2}+\sqrt{3})(1+\sqrt{2}-\sqrt{3})=2\sqrt{2}$(2階から 1 階へ),
$2\sqrt{2}(-2\sqrt{2})=-8$(1 階から地上へ)
より、$-2\sqrt{2}(1+\sqrt{2}-\sqrt{3})$ を掛ければよい。…(答)
展開すれば、さきの答と同じと分かる。
さらに別解がある。2 階上空の世界は地上から見れば 4次拡大体だから、共役な数は自分も含めれば次の 4 数である。すなわち
$\alpha=1+\sqrt{2}+\sqrt{3}$,
$\beta=1+\sqrt{2}-\sqrt{3}$,
$\gamma=1-\sqrt{2}+\sqrt{3}$,
$\delta=1-\sqrt{2}-\sqrt{3}$
ノルムは 4 数の積 $\alpha\beta\gamma\delta=-8$ であり、$\alpha$ には残り 3 数の積
$\beta\gamma\delta=-2\sqrt{2}(1+\sqrt{2}-\sqrt{3})$
授業で次のようにやる訳ではないが、ホーナー法の効用を味わう意味で平方完成をしてみよう。
【問3-1】 $f(x)=2 x^2+8 x+3$ を平方完成せよ。---
零点を $\alpha,\beta$ とすれば、放物線の頂点の $x$ 座標はこれらの真ん中だから
$x_{0}=\frac{\alpha+\beta}{2}=\frac{-b}{2a}$
この公式は解の公式に出てくる 2 数 $\frac{-b+\sqrt{b^2-4ac}}{2a}$ と $\frac{-b-\sqrt{b^2-4ac}}{2a}$
を足して 2 で割れば出てくる。(ルートの部分が消えてなくなるから。)
今の場合、$x_{0}=\frac{-8}{4}=-2$ を左上に置いて
$f(x)=(x+2)(2x+4)-5=2(x+2)^2-5$ …(答)
さて、ホーナー法が多用される場面が 3次式の因数分解、または 3次方程式の解法である。いずれも 3次式の零点を求めればよく、関数値が 0 になる数を試行錯誤で見つけることになる。
試行錯誤とは言え、多少のコツがある。例えば首項(最高次の項)の係数が 1 のとき、すなわち $x^3 +b x^2 +c x +d$ なら
右下を 0 にするには
$\alpha \times\mbox{□}=-d$
でなければならないから左上の $\alpha$ は定数項 $d$ の約数でなければならない。$\alpha$ の候補になりうる数の個数はそんなに多くなくなるから、これで零点が見つけられる。
monic(首項の係数が 1) でないとき、すなわち首項が $ax^3(a \neq 1)$ のときは $a$ で割って、下図のホーナーになる。
$\alpha\times\mbox{□}=-\frac{d}{a}$
より、$\alpha$ は分子が定数項 $d$ の約数、分母が首項の係数 $a$ の約数である。
実例をいくつか挙げる。
【問3-2】 $8x^3+2x^2+5x+3$ を因数分解せよ。---
係数がすべて非負だから $\alpha$ が負でないと右下が 0 にならない。上述のように $\alpha$ の分子は $1$ か $3$ で、分母は $1, 2, 4, 8$ のいずれかである。よって下図。
$D=(-2)^2-4\times 8\times 6<0$
$(x+\frac{1}{2})(8x^2-2x+6)=(2x+1)(4x^2-x+3)$
左辺でも正解だが、整係数にできるので右辺を答とする。
実は「整係数多項式が有理係数上で因数分解できたら、整係数上でも因数分解できる」という定理がある。
証明は思いつくのは難関だが、できた証明(いくつかの証明法があるようだが、例えば本HPの「有理係数で因数分解できたら整係数でもできる」参照)をフォローすることは高校生でも難しくはない。証明を生徒に紹介するかはともかくとして、この定理自体は示しておく必要があると思う。
【問3-3】 $3x^3-4x^2-17x+6$ を因数分解せよ。---
$\alpha$ の分母は 1 とし、分子は定数項の約数 $\pm1, \pm2, \pm3, \pm6$ を絶対値の小さい方から試す。$\alpha=-2$
でうまくいく。
ホーナーの後、続いてたすき掛けをする。
(答) $(x+2)(3x-1)(x-3)$
$\alpha$ として約数をぶち込めばいい、という話をしたが、例外がある。定数項が 0 のときだ。
【問3-4】 方程式 $x^3-5x^2+6x=0$ を解け。---
原則に従うと、$\alpha$ は定数項 0 の約数ということになるが、0 の約数は任意の整数だから、候補が絞れない。このときは $\alpha=0$
とし、$(x-0)$ が因数の 1 つになると覚えておかないとならない。
(一見して $x$ が括り出せると分かるが、ホーナーにこだわるときは上のような注意が必要。)
$f(x)=(x-0)(x^2-5x^2+6)=x(x-2)(x-3)=0$
$x=0,2,3$ … (答)
「一般から特殊へ」の原則通りに、後回しにしていた退化型の問題に進む。
【問3-5】 方程式 $64x^3-27=0$ を解け。---
2次、1次の項がないから退化型である。
$x^3=\frac{27}{64} \rightarrow x=\sqrt[3]{\frac{27}{64}}=\frac{3}{4}$
と 3 乗根が簡単に求まるので、これを $\alpha$ にすればよい。(ホントは 3 乗根は 3 つある理屈だが $y=x^3$ のグラフから分かるように、実の 3 乗根は 1 つのみだ。)
$ax^3\pm b^3$ タイプの問題は、3 乗の和差の因数分解の公式 $a^3\pm b^3=(a\pm b)(a^2\mp ab+b^2)$
を暗記しておくか、次のように田の字で因数分解するのが楽だ。
$2\times 3$ の長方形を描き、上図にように左上と右下に $64x^3$ と $-27$ を入れる。$64x^3$ と $-27$ の
3 乗根 $\sqrt[3]{64x^3}=4x,\sqrt[3]{-27}=-3$ をそれぞれ左の枠外に描く。(負数でも 3 乗根は存在する。)
残りの空白を埋めれば、答が求まる。
(答) $(4x-3)(16x^2+12x+9)$
導関数の定義はもちろん
$\displaystyle \lim_{h\rightarrow 0}\frac{f(x+h)-f(x)}{h}$
だから次の表を作ればよい。
【問4-1】 $f(x)=2x^2+3x+4$ の導関数を定義より求めよ。---
関数値 $f(x+h)$ をホーナー法で求めよう。
アとイから、掛け算をしてウを求めているが、これは次の筆算による掛け算の結果をウという狭い場所に無理矢理書いているものである。(だからウにおいては同類項がまとめられていない。ウの下の行で同類項をまとめている。)
これでホーナーの右下から $f(x+h)=2x^2+4hx+3x+2h^2+3h+4$ が分かり、この式に $h=0$ を代入して、$f(x)=2x^2+3x+4$ だから
$\Delta y=f(x+h)-f(x)=4hx+2h^2+3h$
が分かる。平均変化率とその極限は
$\frac{\Delta y}{\Delta x}=\frac{4hx+2h^2+3h}{h}=4x+2h+3 \rightarrow 4x+3$
これで $f'(x)=4x+3$ が導かれた。
上の方法が実際に昨年筆者が授業で行ったものである。
定義に従わずに導関数を求めるのなら、任意の点の周りでテイラー展開してもよい。この場合もホーナー法である。
ホーナーを 2 回使った結果、次の等式を得る。
$f(x)=2(x-x_{0})^2+(4x_{0}+3)(x-x_{0})+2x_{0}^2+3x_{0}+4$
よって、インデックス(添え字)の 0 を外せば
$\frac{f''(x)}{2}=2$,
$ f '(x)=4x+3$
このやり方は 10 進数を例えば 7 進法に直すのに、7 で繰り返し割って余りを出していく
という方法に似ている。(というより、本質的に同じものである。なぜならテイラー展開はいわば $(x-x_{0})$ 進法だからだ。)
上図は $234_{(10)}=453_{(7)}$ の、10進→ 7進の変換を表している。テイラーと本質的に同じと分かるだろう。
ところで、数学Uで導関数の定義に関して、「極限値
$\displaystyle \lim_{x\rightarrow 1}\frac{x^3-1}{x-1}$
を求めよ」のような問題をたくさん出したらすべてロピタルの定理を使って答を出している生徒がいた。しかも数学で原級留置確実と噂されていた生徒である。
塾で習っていたのか、高校2年生でもロピタルは自明なのか、筆者にはいまだに分からない。(簡単に了解できる考え方があるのかもしれない。)
$m F(x,y)+n G(x,y)=0$ … @と書ける。この定理を名前がないと不便なので筆者は「デザルグの定理」と呼んでいる。
$F(x,y)+n G(x,y)=0$ … Aであるとする流儀もあって同値なのだが、実際に授業にかけてみると前者の方が使いやすい。(パラメータが少ない方がいいかと思っていたが、意外にも実際は反対だった。)
$m(3x-2y+5)+n(6x+5y+1)=0$に $(x,y)=(5,6)$ を代入して
$8m+61n=0$だから、$m=61, n=-8$ として
$61(3x-2y+5)-8(6x+5y+1)=0$,途中の計算は下図のようにやっている。
$135x−162y+297=0$,
$5x-6y+11=0$ … (答)
これをAの方法でやると分数が出てきて、ウッカリ通分などしようものならグチャグチャになってしまう。
読者諸氏は次の問をどう解かれるか。
【問6-1】 曲線 $y=x^3+2x^2-3x-4$ に点$(-3, 5)$ から引いた接線の接点の $x$ 座標 $t$ を求めよ。---
多くの方は、接線の方程式を
$y-(t^3+2t^2-3t-4)=(3t^2+4t-3)(x-t)$
とおいた後
$5-(t^3+2t^2-3t-4)=(3t^2+4t-3)(-3-t)$
とするだろう。
これを
$y-5=(3t^2+4t-3)(x+3)$ … (*)
とおいた高校生がいて、「答案に×を付けられて先生に抗議したらダメと言われた」というのが SNS の書き込みにあった。
私もウッカリ「そりゃ君の間違いだよ」とレスポンスをしてしまった。
1か月ほどしてアルキメデスのエウレカではないが、突然ひらめいた。「あの高校生の答案、正解だ!」
実際、(*) において
$(t^3+2t^2-3t-4)-5=(3t^2+4t-3)(t+3)$
とすれば同じ等式が出てくる。さらに考えれば
$\frac{t^3+2t^2-3t-9}{t+3}=3t^2+4t-3$
というやり方もあると気づく。(下図)
難しかろうと慮って誘導尋問的な枝問を作って生徒に問題を与えると、思考が制限されてかえって難しくなるという事例が多い。(岡目八目で他の教員が作るテスト問題のアラが眼に付くことがある。)
岡目八目の例を最近体験したものから挙げよう。
【問6-2】 関数 $f(x)=x^3-3x^2+ax+b$ は $x=3$ で極小値 $-26$ をとる。極大値を求めよ。---
このテスト問題に対しある先生は
(1) $a, b$ についての連立方程式を作りそれを解け。
(2) 極大値を求めよ。
という枝問を付けた。余計なお世話だ。
筆者の授業では次のようにやった。
$f'(x)=3x^2-6x+a$ の零点が $3$ だから
で、$a=-9$ だ。どこが連立なんだろ。
このあと
で、$b=1$ が出て、あとは
$f'(x)=3x^2-6x-9=3(x+1)(x-3)$
3次の係数が正だったから、極大が極小の左に来るので、極大値は $f(-1)$ であり、その値をまたホーナーで
と求める。(答)$6$
誘導尋問の最たるものがセンター試験であろう。拷問のような変チクリンな論理展開に服従させられて答を導くのだが、天才ガロアなら受験会場で試験官に黒板消しを投げつけているに違いない。そもそも数学の試験に穴埋め問題はないって話だ。
[1] 黒田孝郎ほか著 『高等学校の確率・統計』 ちくま学芸文庫、2011年
[2] 銀林浩著 『初等整数論入門』 ちくま学芸文庫、2015年
[3] 木貞治著 『代数学講義 改訂新版』 共立出版、1965年
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