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√2が無理数であること

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【問題1】$\sqrt{2}$ は有理数でないことを証明せよ。---

【教科書によくある証明】有理数であったとし、$\sqrt{2}=\frac{m}{n}$ (ただし既約分数)とおく。分母を払って2乗すると
   $2 n^2=m^2$
$m^2$が偶数だから、$m$ も偶数でなければならない。実際、奇数だったら$m^2=(2 k+1)^2=4(k^2+k)+1$で偶数であることに反する。そこで$m=2 m'$とおけば
   $2 n^2=4 m'^2$
2で約して
   $2 m'^2=n^2$
となるから、同じ論法により$n$も偶数でなければならない。これは既約分数とした仮定に反する。■

これは誰が考えた証明なんだろうか。ユークリッドだとばかり思っていたが、原論にはこんな数式を使っては証明していない。
ユークリッドに敬意を表してでないのだったら、この証明にこだわらなくてよい。

【第2証明】有理数であったとし、$\sqrt{2}=\frac{m}{n}$ とおく。分母を払って2乗すると
   $2 n^2=m^2$
ここで両辺を素因数分解すると、左辺には奇数個の素数があるのに右辺は偶数個である(同じ素数はダブってカウントする)。これは矛盾だ。■

この証明を変形すれば2乗数でない整数$n$について、$\sqrt{n}$ が無理数であることが証明できる。(後述)

ところで、最近第2証明に対する批判を見つけた。それが
   ポール・J・ナーイン著、小山信也訳『オイラー博士の素敵な数式』ちくま学芸文庫、2020年11月刊
のp.38 にある。第2証明で一意分解定理 (整数はすべて素因数分解でき、その方法はただ一通りという定理) を使っていて論理の飛躍がある、と言うのである。最初の証明にはそれがないとのことだが、本当だろうか。

【教科書によくある証明】で「$2 n^2=m^2$より$m$ も2で割り切れる」という事実が使われているが、それが依拠する定理は

$ab$が素数$p$で割り切れ、$a$が$p$では割り切れないとき、$b$は$p$で割り切れる。

$p$が素数のとき、$p | ab, p \not| a \Rightarrow p | b$

$p$が素数のとき、$ab \equiv 0 (mod.p), a \not\equiv 0 (mod.p) \Rightarrow b \equiv 0 (mod.p)$

ではこの定理はどうやって証明するかと言うと、整数の体系$\mathbb Z$ はユークリッド整域だから、除法の原理が成り立つ。すなわち

$a,b \neq 0$に対して$a=b q+r, 0 \leq r<b$と一意的に整除法が可能

という定理である。実際、$a=p q+r,b=p q'+r'$とおいて、$ab=p(p q q'+q'r+q r')+rr', 0 \leq r, r'<p$が$p$で割れるから、除法の原理から$r$または$r'$が$p$で割れる。
当該証明では、そうではなくて奇数が$2 k+1$となることしか使っていないと言い張るかもしれないが、ここにすら除法の原理が使われている。

数体系同士の関係として

ユークリッド整域 ⇒ 単項イデアル整域 ⇒ 一意分解整域

という包摂関係(右に行くほど広い)がある。ナーイン氏は一意分解整域でない数体系もあるではないかと指摘するのだが、ユークリッド整域でない数体系の方がもっといっぱいあるのだから、ここはナーイン氏の思い込み(自分が習ったもの以外はウソを言ってでも一切認めないという無意識的心理)だろう。

【問題2】2乗数(整数の2乗)でない正の整数$n$について、$\sqrt{n}$ は無理数であることを証明せよ。---

【証明】$n$を素因数分解し、同じ素数が偶数個あったら、√ の外へ追い出してやる。そうすると
   $\sqrt{n}=\sqrt{p^{2e+1}q^{2f+1}r^{2g+1} \cdots}= (p^{e}q^{f}r^{g} \cdots )\sqrt{p q r \cdots}$
の形になる。ここで$\sqrt{p q r \cdots}$が無理数であることを言えばよい。
有理数であったとし、$\sqrt{p q r \cdots}=\frac{m}{n}$ とおく。分母を払って2乗すると
   $p q r n^2=m^2$
ここで両辺を素因数分解すると、左辺には$p$が奇数個あるのに、右辺には偶数個ある。これは矛盾だ。■

【別証明】 平方数とは、$0,1,4,9,16,25,36,\cdots$である。$n$を平方数でない自然数とする。
もし$\sqrt{n}$が有理数であったとしよう。$n$は平方数でないのだから、$\sqrt{n}$は整数にはならない。それを自然数$a,b(b\geq2)$を使って
   $\sqrt{n}=\frac{a}{b}$
と、既約分数の形に表す。2乗すれば
   $n=\frac{a^2}{b^2}$
と整数になるのだから、分母の$b^2(\geq4)$は約分されて消えてしまう訳だが、既約分数と仮定したから$a^2$と約分はできない。
よって、$\sqrt{n}$は無理数である。■


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