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ズラシ演算子と特性方程式

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§1.ズラシ演算子
作用素(演算子)という考えは必要だ。微分作用素、積分作用素、差分作用素、和分作用素という具合に、これらの演算をすべて作用素という概念でくくることができる。
数列の和の計算において

という線型性を学ぶが、そのあとは形式的に計算できなければならない。
例えば、
   $ \sum (5n^{2} + 3n) $
が出てきたら、
   $ 5 \sum n^{2} + 3 \sum n $
と機械的に変形すべきだ。$r \in$R のとき
   $ r(5n^{2} + 3n) = 5rn^{2} + 3rn $
と形式的に計算をするのと同じように、形式的に計算できなくてはならない。
いちいち$\sum$の意味を考えて計算していては(最初のうちはそれでもよいが)、見通しが悪くなり、本質が見えなくなる。つまり、$\sum$は線型作用素であるという理解が求められるのだ。

さて、フィボナッチ数列においては、漸化式
   $\begin{equation}
a_{n+2} = a_{n+1} + a_{n}
\end{equation}$
が成り立つが、これの一般項はどうなっているのだろうか。
そこで、登場するのがズラシ演算子$\tau$(タウ)である。これは、
   $ \tau(a_{n}) = a_{n+1} $
という変換を引き起こす。すると、さきの漸化式から
   $ (\tau^{2} - \tau - 1 )(a_{n}) =0 $
が成り立つ。これから特性方程式
   $ t^{2} - t - 1 = 0 $
を解いて、固有値
   $ \lambda_{1} = \frac{1+\sqrt{5}}{2}, \lambda_{2} = \frac{1-\sqrt{5}}{2} $
を得る。

この場合の固有値とは何かを考えてみよう。
特性方程式が1次方程式 $t - \lambda =0$ なら
   $ (\tau - \lambda)(a_{n}) = \tau(a_{n}) - \lambda a_{n} =0 $
となって、
   $ a_{n+1} = \lambda a_{n} $
だから、$\lambda$は等比数列の公比である。従って、
   $ a_{n} = C \lambda^{n} $
で、定数$C$の値は初期条件から定まる。

これの類推でフィボナッチの一般項
   $ a_{n} = C_{1}\lambda_{1}^{n} + C_{2}\lambda_{2}^{n} $
である。初期条件
   $ a_{1} = 1, a_{2} = 1 $
より係数を求めよう。
   $\left ( \begin{array}{cc}
\lambda_{1} & \lambda_{2} \\
\lambda_{1}^{2} & \lambda_{2}^{2}
\end{array} \right)
\left ( \begin{array}{c}
C_{1} \\
C_{2}
\end{array} \right)
=
\left ( \begin{array}{c}
1 \\
1
\end{array} \right)$
に逆行列を掛けて
   $\left ( \begin{array}{c}
C_{1} \\
C_{2}
\end{array} \right)
=\frac{1}{\Delta} \left ( \begin{array}{cc}
\lambda_{2}^{2} & -\lambda_{2} \\
-\lambda_{1}^{2} & \lambda_{1}
\end{array} \right)
\left ( \begin{array}{c}
1 \\
1
\end{array} \right)
=
\frac{1}{\Delta} \left ( \begin{array}{cc}
1 \\
-1
\end{array} \right)
=\left ( \begin{array}{c}
1/\sqrt{5} \\
-1/\sqrt{5}
\end{array} \right) $
となるので、一般項
   $a_{n} = \frac{1}{\sqrt{5}}\{ (\frac{1+\sqrt{5}}{2})^{n} -
(\frac{1-\sqrt{5}}{2})^{n} \} = \frac{1}{\sqrt{5}} (\lambda_{1}^{n} -\lambda_{2}^{n})$
が得られる。
特性方程式など出てきて、一見難しそうだが、いま求めた一般項から計算した各項の値と、漸化式から求めたそれが同じであることを確認することはパソコン(例えば Excel)を使えば楽であろう。

フィボナッチ数列と黄金比との関係を調べてみよう。黄金比というのは正五角形の対角線と1辺の長さの比で、
   $ \frac{1+\sqrt{5}}{2} \doteq 1.6$
である。(逆数の$ 2/(\sqrt{5}+1)= (\sqrt{5}-1)/2 \doteq 0.6$の方を黄金比と言う人もいる。)
黄金比は下図の相似の三角形から $1:x=x-1:1$だから$x^{2}-x-1=0$(先の特性方程式と同じ)の正根である。
   
   $ \lim_{n \rightarrow \infty} \frac{a_{n}}{a_{n+1}}
= \lim
\frac{\lambda_{1}^{n} - \lambda_{2}^{n}}
{\lambda_{1}^{n+1} - \lambda_{2}^{n+1}}
= \lim \frac{1 - (\frac{\lambda_{2}}{\lambda_{1}})^{n}}
{\lambda_{1}-\lambda_{2}(\frac{\lambda_{2}}{\lambda_{1}})^{n}} $
ここで、
   $ \mid \frac{\lambda_{2}}{\lambda_{1}} \mid = \frac{3-\sqrt{5}}{2} \doteq 0.38 < 1 $
だから収束して
   $ = \frac{1-0}{\lambda_{1}-\lambda_{2} \times 0} = \frac{1}{\lambda_{1}}
= \frac{2}{1+\sqrt{5}} $
となって、分母を有理化すれば黄金比の逆数に等しいことが分かる。


§2.漸化式を解く
教科書に出てくる数列には、特性方程式が1次方程式になるものがある。例えば、

【例題】
   $a_{n+1} = \frac{1}{2}a_{n} + 3 $
   $a_{1} = 1 $
の一般項を求めよ。---


(解1) 階差の考えを使う。
   $\begin{eqnarray*}
a_{n+2} & = & \frac{1}{2}a_{n+1} + 3 \\
a_{n+1} & = & \frac{1}{2}a_{n} + 3
\end{eqnarray*}$
を辺々引いて、階差数列は
   $ a_{n+2}-a_{n+1} = \frac{1}{2}(a_{n+1}-a_{n}) $
より、公比$1/2$の等比数列であるから、
   $ a_{n} - a_{1} = \sum_{k=1}^{n-1}
\frac{5}{2} \cdot (\frac{1}{2} )^{k-1} $
よって
   $ a_{n} = 1 + 5 \{ 1-(\frac{1}{2})^{n-1} \}
= 6 - 5 \cdot (\frac{1}{2})^{n-1} $
となる。■


(解2) パソコンを使って、この数列の挙動を調べてみる。すると、$\lim a_{n} = 6 $であることが分かる。もし収束するなら、極限値を$\lim a_{n} =\alpha$とおいて
   $ \alpha = \frac{1}{2} \alpha +3 $
となることより、$\alpha = 6$とならなければならないことからも予想が立つ。

問題の漸化式をズラシ演算子を使って書きなおすと、
   $ (\tau - \frac{1}{2})(a_{n}) = 3 $
右辺の定数項の3が消えてくれると、特性方程式は1次方程式になる。そのためには、「平行移動」して定数項をなくそう。
   $ (\tau - \frac{1}{2})(a_{n}-p) = 0 $
となってほしいから
   $ (\tau - \frac{1}{2})(a_{n}) - (\tau -\frac{1}{2})(p) = 0 $
よって
   $ 3 -p +\frac{1}{2}p = 0 $
となるので$p = 6$になればよい。
   $ (\tau - \frac{1}{2})(a_{n} -6) = 0 $
であることより、数列$\{ a_{n} -6 \}$の特性方程式は
   $ t - \frac{1}{2} =0 $
となり、固有値は$\lambda = 1/2$で、
   $ a_{n} - 6 = C \cdot (\frac{1}{2})^{n} $
初期条件から$C=-10$だから
   $ a_{n} = 6 -10 \cdot (\frac{1}{2})^{n} $
ここに出てきた$p=6$は、数列の極限値でもあり、「標準形」にするために平行移動した移動量とも言える。■

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