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差分と和分

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§1.累乗を階乗関数で表す

次の問題について、2つの解を与えてみよう。

【例題1】
大小2つのサイコロを同時に投げる。目の出方は何通りあるか。---


(解1) 重複順列と考えて
   $ _{6}\Pi_{2} = 6^{2} = 6 \times 6 = 36 \mbox{通り} \mbox{■} $

(解2) ゾロ目が6通り。ゾロ目でないのが、$ 6 \times 5 = 30 $で、両者合わせて
   $ 6 + 30 = 36 \mbox{通り■} $



(解2)は、七面倒くさいやり方のようであるが、この解答には副産物がある。サイコロは6面だが、一般化して$n$面と考える。大小2個の$n$面サイコロを同時に振ったときの目の出方をゾロ目とそうでない場合に分けて考えると
   $n^{2} = n + n(n-1)$
となる。このように2項に分けると和分がしやすくなり
   $ \sum n^{2} $
が求まる。ただし、教科書では、$(n+1)^{3}-n^{3}=3n^{2}+3n+1$を和分して求めることが多い。
和分の公式については、節を改めて述べることにする。

さて、$ n^{2} = n + _{n}P_{2} = n + n(n-1) $ という等式において左辺の 2乗を 3乗に変えるとどうなるだろうか。

【例題2】
$n \geq 3$ 枚のカードがある。1枚引いて確認の上、もとに戻す。そして、また引く、という具合にこれを3回繰り返す。カードの出方は何通りか。---


(解) 重複順列だから $n^{3}$ だが、「3枚とも同じカード」、「2枚が同じカード」、「すべて異なるカード」に類別して、和をとると
   $ n^{3} = n + 3n(n-1) + n(n-1)(n-2) $
となる。■



さらに、3乗を 4乗に変えると、
   $ n^{4} = n + _{4}C_{1} \times n(n-1) + \frac{4!}{2!2!} \times _{n}C_{2} + \frac{4!}{2!1!1!} \times n \times _{n-1}C_{2} + _{n}P_{4} $
右辺の項は順に、「4枚とも同じカード(フォーカード)」、「3枚が同じカード(スリーカード)」、「ツーペア」、「ワンペア」、「みんなバラバラ」である。
   
右辺を計算すると、
   $ n^{4} = n + 4n(n-1) + 3n(n-1) + 6n(n-1)(n-2) + n(n-1)(n-2)(n-3) $
   $ = n + 7n(n-1) + 6n(n-1)(n-2) + n(n-1)(n-2)(n-3) $
たしかに右辺を展開すると左辺になる。でも、左辺を右辺に直す方法は、上のヒントがないと難しい。

上に導いた、累乗を階乗関数で表す公式をまとめておこう。その前に、
   $_{n}P_{3} = n(n-1)(n-2)$
などを
   $ n^{[3]} $
のように表し、階乗関数と呼ぶことにする。$[\mbox{ }]$はガウスの記号ではなく、上のような意味である。すると、
   $\begin{eqnarray}
n^{2} & = & n + n^{[2]} \label{rei:kai0} \\
n^{3} & = & n + 3n^{[2]} + n^{[3]} \\
n^{4} & = & n + 7n^{[2]} + 6n^{[3]} + n^{[4]}
\end{eqnarray}$
と表わすことができる。こう変形すると、和分・差分が非常にやりやすくなる。


§2.和分する

階乗関数
   $ n^{[k]} = n(n-1)(n-2) \cdots (n-k+1) $
が和分・差分と相性がよいことを示そう。

いくつでも同じだから $k=3$ の場合をやってみよう。まず、差分(階差数列)だが、差分とは
   $\Delta a_{n} = a_{n+1} - a_{n}$
であったから
   $\Delta n(n-1)(n-2) = (n+1)n(n-1) - n(n-1)(n-2) = 3n(n-1) $
となる。ここで
   $ \Delta n^{[3]} = 3 n^{[2]} $
という、導関数の公式 $ D x^{3} = 3 x^{2} $ にそっくりの式が出る。

和分(総和=Σ) は差分の逆演算だから、$\int x^{2} dx = \frac{1}{3} x^{3} +C$ とよく似た
   $ \sum_{n=0}^{N-1} n^{[2]} = \frac{1}{3} N^{[3]} $
が出てくる。添字を見れば分かるように$N$項の和だが、$n=0$から足していかないと都合が悪い。
   
もし $ \sum_{n=1}^{N} n^{[2]} $ としてしまうと、計算してみれば分かることだが、差分の公式と照らし合わせて、まずい。数列は第1項でなく、第0項から始まる方が合理的である。次のように教科書とは異なる公式ができる。

【差分の公式】
   $\Delta n^{[k]} = k n^{[k-1]} $

【和分の公式】
   $\sum_{n=0}^{N-1} n^{[k]} = \frac{1}{k+1} N^{[k+1]} $

ここで、初項を第0項にとると、公式がどう変わるかを調べてみよう。
初項(第$0$項)が $a$ のとき、等差・等比数列の一般項(第$n$項)はそれぞれ
   $a_{n} = a + d n $
   $a_{n} = a r^{n} $
で、$n-1$を使わなくて済む。初めの$n$項($0$ ~ $n-1$)の和は、それぞれ
   $S_{n} = \frac{n(a+l)}{2} = \frac{n \{ a+a+d(n-1) \}}{2} $
   $S_{n} = a + ar + \cdots + ar^{n-1} = \frac{a(r^{n}-1)}{r-1} $
となる。---

等差の和は
   $ \sum (a+dk) = \sum a + d \sum k = an + \frac{1}{2}dn(n-1) $
のように和分する方が素直かもしれない。

差分についてはどう変わるだろうか。
教科書によく出てくる問題に、次の問題がある。

【例題3】
$ S_{n} = n^{2} \mbox{  } (n \geq 1) $はどんな数列か。---


(解1) 教科書流。$n \geq 2$ のとき
   $a_{n} = S_{n} - S_{n-1} = n^{2} - (n-1)^{2} = 2n-1 $
とやる。つまり
   $ \Delta S_{n-1} = a_{n} $
という添え字が変な式になっている。
$n=1$だけは
   $ a_{1} = S_{1} = 1 $
と、別に調べなくてはならない。■

(解2) 第0項を基準に考えると、そもそも
   $ S_{n} = \sum_{k=0}^{n-1} a_{k} $
であるから $n \geq 1$ のとき
   $ a_{n} = S_{n+1} - S_{n} $

   $ \Delta S_{n} = a_{n} $
が素直に成り立っている。従って、
   $ a_{n} = (n+1)^{2} - n^{2} = 2n+1 $
ただし、$n=0$のときは
   $ a_{0} = S_{1} = 1 $
である。■





§3.累乗の和

教科書では累乗 $n,n^{2},n^{3}$ の和がおなじみである。

【例題4】
$\sum n^{2}$の公式を作れ。---


(解) $n^{2}=n+n(n-1)$ を和分する。第$0$項から足せば
   $\sum_{n=0}^{N-1} n^{2} = \sum n + \sum n^{[2]} = \frac{1}{2}N^{[2]} + \frac{1}{3}N^{[3]} $
   $= \frac{N(N-1)}{2} + \frac{N(N-1)(N-2)}{3} = \frac{N(N-1)(2N-1)}{6}$
教科書のように第$1$から足すのなら、このあと $N$ を $N+1$ で置き換えて
   $ \sum_{n=1}^{N} n^{2} = \frac{N(N+1)(2N+1)}{6} $
とする。先の式で初項($n=0$のとき)が0だから、うまくいく。■



3乗の和の公式を教科書流に表わすと
   $ \sum_{n=1}^{N} n^{3} = \frac{N^{2}(N+1)^{2}}{4} $
になる。
さらに発展させて

【例題5】
$\sum n^{4}$の公式を作れ。---


(解) 前問と同様のやり方をする。
   $ \sum_{n=0}^{N-1} n^{4} = \frac{1}{2}N^{[2]} + \frac{7}{3}n^{[3]} +
\frac{3}{2}N^{[4]} +\frac{1}{5}N^{[5]} $
ここで $N$ を $N+1$ で置き換えて
   $ \sum_{n=1}^{N} n^{4} = \frac{1}{2}N(N+1) + \frac{7}{3}N(N+1)(N-1) + \frac{3}{2}N(N+1)(N-1)(N-2) + \frac{1}{5}N(N+1)(N-1)(N-2)(N-3) $
   $ = \frac{1}{30}N(N+1)(6N^{3}+9N^{2}+N-1)$
となる。
実は、$6N^{3}+9N^{2}+N-1=(2N+1)(3N^{2}+3N-1)$と因数分解できる。■



さらに次数を上げる。

【例題6】
$\sum n^{5}$の公式を作れ。---

(解) さきと同様の公式を求めてもよいのだが、別のやり方でやってみる。
   $n^{[5]} = n(n-1)(n-2)(n-3)(n-4) = n^{5} - 10n^{4} + 35n^{3} - 50n^{2} + 24n $
より
   $ n^{5} = n^{[5]} + 10n^{4} - 35n^{3} + 50n^{2} - 24n $
ここで、右辺の各項の和分はすべて事前に求めてあるから、これで左辺の和分が分かって、
   $ \sum_{n=1}^{N} n^{5} $
   $=\frac{1}{6}N(N+1)(N-1)(N-2)(N-3)(N-4) + \frac{1}{3}N(N+1)(6N^{3}+9N^{2}+N-1) - \frac{35}{4}N^{2}(N+1)^{2} + \frac{25}{3}N(N+1)(2N+1)
- 12N(N+1) $
   $= \frac{1}{12}N(N+1)(2N^{4}+4N^{3}+N^{2}-N) $
   $= \frac{1}{12}N^{2}(N+1)^{2}(2N^{2}+2N-1) $
となる。■



思わず、計算を楽しんでしまい、深みにはまってしまったようだ。ここいらで終わりにするが、数列の各項が漸化式により帰納的に求まるように、数列の和の公式もやはり帰納的に求まることを確認して、この節を終える。


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