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sin, cos の定義

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高校には、以下のように4つの定義が登場します。
すなわち

  1. 狭義の三角比(鋭角)
  2. 拡張された三角比($0^{\circ} \leq \theta \leq 180^{\circ}$)
  3. 三角関数(一般角から実数への写像)
  4. 三角関数(実数から実数への写像)

まるで昆虫が、卵→幼虫→さなぎ→成虫のように、定義が変態(メタモルフォーゼ)する。


(1)狭義の三角比
今から50年前、「三角比」といえば鋭角に決まっていた。そして、それは中学3年生で教えられていた。
「三角比」とは元来直角三角形の辺の比のことであるから、鈍角の三角比なんてものはないのがホントだ。
1角が鈍角の直角三角形などないからである。

狭義の三角比とは直角三角形において

$ \cos \theta = \frac{\mbox{隣辺}}{\mbox{斜辺}} = \frac{x}{r},
\sin \theta = \frac{\mbox{対辺}}{\mbox{斜辺}} = \frac{y}{r} ,
\tan \theta = \frac{\mbox{対辺}}{\mbox{隣辺}} = \frac{y}{x} $

等々というやつだ。

$ \frac{x}{r}=\cos\theta, \mbox{ } \frac{y}{r}=\sin \theta , \mbox{ } \frac{y}{x}=\tan \theta $

の分母を払えば

$ x=r \times \cos\theta , $
$ y=r \times \sin\theta $
$ y=x \times \tan\theta $

となる。

【例】坂道の交通標識
坂道が20%というのは、

$ \tan \theta = \frac{20}{100}$

という意味であり、100m直進すれば20m上る(下る)坂道である。つまり、タンジェント=傾きのことを言っている。

(長崎市・オランダ坂)

(2)鈍角まで拡張された三角比
1977年告示の「ゆとりと充実」の学習指導要領の時代以降、中学から三角比が追放され、高校で教えられることになった。
しかも、面倒なことに高校1年では、狭義の三角比(鋭角のみ)と、$0^{\circ} \leq \theta \leq 180^{\circ}$ にまで拡張された三角比の両方が(異なる定義のもとに)教えられることになったのである。
さて、「鈍角の三角比」を考えるためには、補角に関する公式が必要になる。

【例題】鈍角のサイン・コサインの求め方

定義が鈍角に拡がったので、半径 $r$ の半円を描く。
   $ 0^{\circ}\leq \theta, \theta' \leq 180^{\circ} $
なる角 $\theta, \theta'$ が
   $ \theta+\theta'=180^{\circ} $
ならば、互いに補角という。このとき

$ \sin \theta = \sin \theta',$
$ \cos \theta = - \cos \theta' $
$ \tan \theta = - \tan \theta' $

という性質が成り立つ。

$\cos \theta'$ 等に $-$ が付くのは符号反転のためである。「負の値だから」と言ってはならない。$\cos \theta$ は正であることもあるからである。
 (注) `$-$' には、引くという演算記号、正・負の別を表わす符号という2つの他に、符号反転という意味がある。$|x|=-x(x<0$のとき) などは符号反転と考えるとよい。

この性質を使って、例えば $\cos 150^{\circ}$ の値は
   $ \cos \theta' = - \cos \theta= -\cos(180^{\circ}-\theta') $
より

$ \cos 150^{\circ}= -\cos(180^{\circ}-150^{\circ}) $
$ = -\cos30^{\circ}
= - \frac{\sqrt{3}}{2} $

と求まる。


(3)一般角にまで拡張された三角関数
数学Ⅱでは次のように定義される。

原点中心で半径1の円において、$x$ 軸の正の部分から左回りに測った角が $\theta$ の半径(動径) $OP$ を描く。
円周上の点 $P$ の $x$ 座標が $\cos\theta$ であり、$y$ 座標が $\sin\theta$ である。
ヨコ座標がコサインで、点$P$の$x$軸からのタカサがサインだから、

= サイン,
タカ = イン

尻取りになっている。

このように考えると、

$ \cos 0^{\circ}=1, \mbox{ } \sin 90^{\circ}=1, $
$ \cos 180^{\circ}=-1, \mbox{ } \sin 360^{\circ}=0, $
$ \cos 450^{\circ}=0, \mbox{ } \sin (-90^{\circ})=-1 $

のような値は簡単に分かる。
$360^{\circ}$ を超える角や負の角も、それほど難しくない。
タンジェントは、動径の傾きとして定義する。だから

$ \tan \theta = \frac{\sin \theta}{\cos \theta} $

である。また、傾きとは 1 だけ右へ行ったときの高さでもあるから、
さきの図の中の点 $(1,0)$ から真上に測った高さでもある。
したがって、

カサ = ンジェント

と、今度は頭韻を踏むことになる。

ところで、この数Ⅱで習う「量$\rightarrow$数」対応の三角関数は、
   $ \sin 45^{\circ} = \sin \frac{\pi}{4} rad $
のように、独立変数に単位の付いた量が代入される。$rad$ という単位はふつう「省略して書かない」と説明されるが、度の方はけっして省略されることはない。
これは高校数学に出てくる関数としては異色である。
例えば、2次関数で、
   $ s = 4.9 \times t^{2} $
とは書くが
   $ s = 4.9 \times ( t \mbox{秒})^{2} $
のように独立変数に単位を付けて書くことはない。
それなのに、数学IIに出てくる三角関数には、独立変数に単位をつける。

【例題】$90^{\circ}-\theta$の三角関数

上図のように、単位円内に角 $\theta(0^{\circ}<\theta< 90^{\circ})$ の動径を描く。
ここで動点 $P(x,y)$ の$x$ 座標と $y$ 座標を交換してできる点 $P'(y,x)$ を考えると、$x$ 軸と $y$ 軸とをひっくり返すことになるから、傾き $45^{\circ}$ の直線 $y=x$ についての対称移動になる。
$P'(y,x)$ に属する角は $90^{\circ}-\theta$ になり、$x$ と $y$ を交換しているので

$ \cos(90^{\circ}-\theta) = y =\sin\theta, $
$ \sin(90^{\circ}-\theta) = x =\cos\theta, $
$ \tan(90^{\circ}-\theta) = \frac{x}{y}=\frac{1}{\tan\theta} $

が、わりあい簡単に出てくる。
ただ、さきの図で分かりにくいのは、点 $P$ については $x$ 軸の正の部分から左回りに測っているのに、点 $P'$ については右回りなのか、左回りなのかどっちなのか混乱しそうなところだ。


(4)実数→実数対応の三角関数
数学IIIで扱うのは、「実数$\rightarrow$実数」対応の三角関数である。
   $ y= \sin x $
において、$x$ には「度」も「ラジアン」も、単位は付かない。
だから、$x=0$ における $\sin x$ の微分係数は誰が計算しても同じ値になる。
「僕は度を使ったから、微分係数の値が他の人と違う」ということはない。

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