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§1. 分銅のパズル
§2. 0進数$\rightarrow$2進数
§3. お金の数え方
§4. 10進数$\rightarrow$2進数(再)
§5. 多項式のベキ展開
§6. 3次関数と変曲点
かずお 先生、いよいよ西暦2000年になりましたね、明けましておめでとうございます。
先生 やあ、おめでとう。
まなぶ 西暦2000年が明けると同時に、世界中の原発が爆発するのかと思っていたら、そんなことにはなりませんでしたね。(東電の原発が水素爆発するのは2011年のこと。)
先生 コンピュータの Y2K 問題のことかね。(当時、コンピュータの内部の時計は1999年までしか対応できないだろうと考えられており、世界中のコンピュータは2000年1月1日に一斉に暴走すると信じられていた。)
まなぶ Y というのは year のことだと分かりますが、2K というのは何ですか?
かずお K はキロ、つまり 1000 のことでしょ。
先生 ウン。でもほんとは、コンピュータの世界では K は 1024 のことを意味するんだ。昔、ある高校のコンピュータ教室に見学に行ったら、メモリが
2K もあるミニコンを使っていたのでビックリしたことがあるよ。
かずお 2K って、2 キロバイトのことですか。
まなぶ 僕が持ってるパソコンのメモリは、128 メガバイトだよ。(2000年当時の話です。現在のパソコンではメモリは数ギガバイトがふつう。) メガはキロ・キロのことだから、100万のことですよね?
先生 いや、正確には $1024 \times 1024$ のことだよ。
まなぶ でも、なんで $1024$ なんて中途半端な数を使うんですか?
先生 $2^{10} = 1024$ だから、半端ではなくてキリのいい数字なんだ。コンピュータでは 2進法が基本原理になっているから、このように
2 のベキを使うのさ。
まなぶ 2進法って分かりにくいですね。情報の授業で教わっていますが、僕は 10進法の数を 2進法に直したりするのが苦手です。先生、ひとつ教えてください。
先生 それじゃ、こんな問題を出してみよう。「ある物体の重さは $1g$(グラム), $2g$, $3g$, $\cdots$, $31g$ のうちのどれかである。重さを上皿天秤で測るには、どのような分銅を用意すればよいか。ただし、分銅の個数はなるべく少なくしたい。」
まなぶ 簡単です。$1g$ の重りを 31 個用意すればいいです。
かずお 『なるべく少なく』と言ってるんだよ。
まなぶ アー、そうか。それじゃ、$1g$, $5g$, $10g$ の 3 個だ。
かずお 3 個じゃないよ。3 種類でしょ。正解は、『$1g$が 4個、$5g$が1個、$10g$が3個』ではないですか? これなら、合計 8個です。
先生 いや、もっと少なくできるよ。
かずお アッ、そうか。$1g$, $2g$, $4g$, $8g$, $16g$ を各 1個、合計 5個用意すればいいんだ!
まなぶ (しばらく考えて)なるほど。結局、2進法じゃないですか。2進法は便利そうですね。2000円札を発行するのなら、次は 4000円札、8000円札ですね。5000円札は不便だから、なくしてもいいな。
先生 それじゃ、第2問だ。「1,2,4,8,16,32,64,128$(g)$ の分銅が各1個あるとする。$100(g)$ の物体と釣り合わせるには、どの分銅を秤にのせればよいか。」
まなぶ エーと、$ 100 - 64 = 36, 36 - 32 = 4, 4 -4 =0 $だから、$64+32+4(g)$ です。
かずお 今のやり方だと、答は重たい分銅の方から求まっていくんですね。
先生 今の答をこの表を埋めることによって、表してごらん。
$\begin{array}{|c|c|c|c|c|c|c|c|}\hline128 & 64 & 32 & 16 &
8 & 4 & 2 & 1 \\\hline&&&&&&& \\\hline\end{array}$
かずお このようになります。
$\begin{array}{|c|c|c|c|c|c|c|c|}\hline
128 & 64 & 32 & 16 & 8 & 4 & 2 & 1 \\
\hline
0 & 1 & 1 & 0 & 0 & 1 & 0 & 0 \\
\hline
\end{array}\\$
1 とか 0 は分銅の個数を意味しています。
先生 この答の表の数字をそのままの順に並べたものが、2進法による表記法だよ。
かずお そうすると、
$ 100_{(10)} = 1100100_{(2)} $
というわけですね。
まなぶ ところで、答は重い分銅の方から求めましたが、逆の順序で求めるやり方もあるんですか?
先生 君たちはお金を勘定するとき、どうするかな? 例えば、ここにかねてより貯金した 1円玉がたくさんあるとする。どうやって数えるかね?
まなぶ そりゃ、当然、1つ、2つ、3つ、$\cdots$
かずお 今、なんどき?
まなぶ それじゃ、落語の時そばだよ。
先生 数えている最中に人に話しかけられてもいいように、いくつかずつ、例えば 10個ずつまとめていくのが普通だろうな。それで、問題はその先だ。
かずお 10個ずつのかたまりが $Q$ グループと、半端の $R$ 個に分別できたとします。
まなぶ そうすれば、全部で$ 10 \times Q + R \mbox{ (円)} $あると答が出ます。
かずお でも、$Q$ と $R$ が具体的にいくつなのかは、まだ数えていないから分からないよ。
先生 その通りだ。君らは、$Q$ と $R$ のどちらを先に数えるかね?
まなぶ 僕なら、$R$ が先だな。まず、1円単位の金額を求める。これで総額が$ \Box \Box \Box R \mbox{ (円)} $と分かる。この次は、10円ずつのかたまりをさらに 10個ずつのかたまりにまとめていく。これで、半端が $R_{1}$ グループできたなら、総額が$ \Box \Box R_{1} R \mbox{ (円)} $と、10の位の金額が分かる。以下同様に$ \Box R_{2} R_{1} R \mbox{ (円)}, $$ R_{3} R_{2} R_{1} R \mbox{ (円)} $という具合に、下の位から求めていくね。
かずお 僕なら、逆の数え方をするな。$Q$ の値を求めるために、100円ずつのグループにまとめていく。それで、100円のかたまりが $Q_{1}$ グループできたとするなら、今度はそれを1000円のかたまりにまとめていく。それが $Q_{2}$ グループできて、ここで $1 \leq Q_{2} < 10$ になったなら、最上位の金額が求まったことになり、総額は$ Q_{2} \Box \Box \Box \mbox{ (円)} $あとは、100の位 $\rightarrow$ 10の位 $\rightarrow$ 1の位と、下位へ進んでいけばよい。
先生 今のお金の数え方と同じように、10進法の数字を 2進法の数字に直す方法にも2通りあるんだ。
まなぶ 下位から求める方法と、上位から求める方法ですね。
かずお 僕らがさっき、$100_{(10)}$ を $1100100_{(2)}$ に直すときにとった計算方法が上位から求める方法ですね。
先生 では、今度は下位から求める方法によって、10進数を 2進数に直してみよう。例えば、$83_{(10)}$ を 2進数に直してごらん。
かずお 2進法だから 10 ではなく、2 のかたまりにまとめていきます。83 は奇数だから半端が1個出ます。だから$ \Box \Box \Box
\Box \Box \Box 1_{(2)} $です。
$ 83 \div 2 = 41 \cdots 1 $で、2個のかたまりが 41 グループできるので、また奇数です。$ \Box \Box \Box
\Box \Box 1 1_{(2)} $
$ 41 \div 2 = 20 \cdots 1 $その次が 20で偶数なので$ \Box \Box \Box \Box 0 1 1_{(2)}
$という具合に $\cdots$
まなぶ 要するに、83 をどんどん 2 で割っていって、偶数か奇数かを判定すればいいんだね。$ 83 \rightarrow 41 \rightarrow
20 \rightarrow 10 \rightarrow 5 \rightarrow 2 \rightarrow 1 $だから$ \mbox{奇}
\rightarrow \mbox{奇} \rightarrow \mbox{偶} \rightarrow \mbox{偶} \rightarrow
\mbox{奇} \rightarrow \mbox{偶} \rightarrow \mbox{奇} $このあと、奇に 1, 偶に 0 を対応させれば$
1 \rightarrow 1 \rightarrow 0 \rightarrow 0 \rightarrow 1 \rightarrow 0
\rightarrow 1 $だ。だから、答は $\cdots$ ?
かずお このやり方では、下の位から求まるんだから、右から答を書いて$ 1010011_{(2)} $です。
まなぶ これで合っているのかな?
先生 検算してごらん。
かずお さっき出てきた表を利用すればいいですね。
$\begin{array}{|c|c|c|c|c|c|c|}\hline
64 & 32 & 16 & 8 & 4 & 2 & 1 \\
\hline
1 & 0 & 1 & 0 & 0 & 1 & 1 \\
\hline
\end{array}$
となります。あとは、ビットが立っているところ、すなわち 1 を記入したところの分銅の重さを合計すればいいです。だから$ 64 + 16 + 2
+ 1 = 83 $で正解です。
先生 2進法では、各位が 2 のベキだから、これは$ 83 = 2^{6} + 2^{4} + 2^{1} + 2^{0} $ ということだ。右辺を省略せずに書けば
$ 1 \cdot 2^{6}+ 0 \cdot 2^{5}+ 1 \cdot 2^{4}+ 0 \cdot 2^{3} $$ + 0
\cdot 2^{2}+ 1 \cdot 2^{1}+ 1 \cdot 2^{0} $
となるわけだ。
かずお これって、10進法と同じ原理ですね。例えば $1234_{(10)}$ なら
$ 1 \cdot 10^{3}+ 2 \cdot 10^{2}+ 3 \cdot 10^{1}+ 4 \cdot 10^{0} $
と、10 のベキの和に展開できるわけですから。
先生 そうだね。何のベキに展開するかで 10 進法になったり、2 進法になったり、はたまた 3進法になったりとするんだ。それでは、多項式を単項式のベキの和に展開することを考えてみようじゃないか。
かずお 先生、問題を出してください。
先生 それでは$ f(x) = 2 x^{2} + 3 x + 4 $を $x-1$ のベキで表してごらん。
かずお じゃあ、僕は上位から求めることにしてみます。まず$ 2 x^{2} + 3 x + 4 = a(x-1)^{2} + \Box, $$ \mbox{ただし $\Box$ は1次以下の項} $となるが、係数比較法により $a=2$ となる。$\Box$ の項は、引き算で求まって$ 2 x^{2} + 3 x + 4 - 2(x-1)^{2} = 7x + 2 $次に$ 7x+2 = b(x-1) +c $とおいて、係数比較をして $b=7$, $c=9$. 結局、係数は上位から $2 \rightarrow 7 \rightarrow 9$ なので
$ f(x) = 2(x-1)^{2} +7(x-1) +9 $
と、ベキ展開できました。
先生 係数比較法を使うなら$ f(x) = a(x-1)^{2} + b(x-1) +c $とおいて、
$ f(1) = c = 9, $
$ f'(1) = b = 7, $
$ f''(1) = 2a = 4 $
から $a,b,c$ を求めることもできる。一般化すれば $(x- x_{0})^{k}$ の係数 $a_{k}$ は
$ a_{k} = \frac{f^{(k)}(x_{0})}{k!} $
となる。これがテイラーの定理だ。
まなぶ 僕は、下の位すなわち低次の項から求めてみます。$x-1$ のかたまりにまとめると考えて、半端の項を求めればいわけだから、$f(x)$ を $x-1$
で割り算します。
$ (2 x^{2} + 3 x + 4) \div (x-1) = 2x+5 \cdots 9 $
となって、
$ 2 x^{2} + 3 x + 4 = \Box + 9, \mbox{ただし $\Box$ は1次以上の項}. $
次は、
$ (2x+5) \div (x-1) = 2 \cdots 7 $
となるので、余りを見ていけば、係数は下位から $9 \rightarrow 7 \rightarrow 2$と分かります。
先生 では、一般の 3次式をベキ展開する問題をやってみよう。
$ f(x) = ax^{3} +bx^{2} +cx +d $
を $x-x_{0}$ のベキの和に展開してごらん。
まなぶ まず、$x-x_{0}$ で 1回割ります。
$ \mbox{商}=ax^{2}+(ax_{0}+b)x+ax_{0}^{2}+bx_{0}+c, $
$ \mbox{余り}= ax_{0}^{3}+bx_{0}^{2}+cx_{0}+d $
かずお 余りはちょうど、$f(x_{0})$ に等しいですね。
先生 それを余りの定理というんだ。
まなぶ 商をまた $x-x_{0}$ で割ります。
$ \mbox{商}=ax+2ax_{0}+b, $
$ \mbox{余り}= 3ax_{0}^{2}+2bx_{0}+c $
もう 1回割ると
$ \mbox{商}=a, $
$ \mbox{余り}= 3ax_{0}+b $
結局、係数は低次から順に $f(x_{0}) \rightarrow 3ax_{0}^{2}+2bx_{0}+c \rightarrow 3ax_{0}+b \rightarrow a$ となるので
$ f(x) = a(x-x_{0})^{3}+(3ax_{0}+b)(x-x_{0})^{2} +(3ax_{0}^{2}+2bx_{0}+c)(x-x_{0})+f(x_{0})
$
まなぶ ウワー、大変な計算だった。
先生 今まで、$x-x_{0}$ を 10 や 2 のアナロジーとして、考えてきたかもしれない。$x-x_{0}$ を $0.1$ とおけば、10進小数のアナロジーになる。ただ、このときは次数の低い方が位が高くなるんだが。
かずお $x-x_{0} =0.1$ とすると、$(x-x_{0})^{2}=0.01$, $(x-x_{0})^{3}=0.001$, $\cdots$
となりますね。
先生 $0.1$ に比べれば、$0.01$ や $0.001$ はかなり小さいから、$(x-x_{0})^{2}$ と $(x-x_{0})^{3}$
を無視してみよう。
まなぶ すると
$ f(x) \mbox{≒} (3ax_{0}^{2}+2bx_{0}+c)(x-x_{0})+f(x_{0}) $
です。
かずお 右辺を $y$ とおけば、接線の方程式
$ y = (3ax_{0}^{2}+2bx_{0}+c)(x-x_{0})+f(x_{0}) $
が得られます。
先生 接線の傾きが $0$ になる $x_{0}$ の値は?
まなぶ 2次方程式$ 3ax_{0}^{2}+2bx_{0}+c =0 $を解けば得られます。2つの異なる実数解を持つなら、極大値と極小値がそれぞれ存在します。
先生 では、$(x-x_{0})^{2}$ の係数を $0$ とおいて出てくる$ 3ax_{0}+b = 0 $を解くと得られる
$x_{0} = -b/(3a)$
は何かね?
かずお エーと、
$ f(x) = a(x-x_{0})^{3} + (3ax_{0}^{2}+2bx_{0}+c)(x-x_{0})+f(x_{0})
$
$= a \left( x+\frac{b}{3a} \right)^{3}+\left( c-\frac{b^{2}}{3a} \right)
\left( x+\frac{b}{3a} \right) +f \left( -\frac{b}{3a} \right) $
となりますが $\cdots$
まなぶ 接線に $y=a(x-x_{0})^{3}$ を重ねたものだから $\cdots$
かずお そうか。仮に $a>0$ とすると、グラフは接点より右では接線より上側に行き、接点の左では接線の下側に行きます。つまり、グラフの曲がり方がこの接点のところで切り替わります。
まなぶ そうか。このとき、点
$(x_{0},f(x_{0}))$, $x_{0}= -b/(3a)$
は変曲点になっているんだ!
先生 3次関数のグラフは、この点に関して点対称になっているんだが、その証明は宿題ということにしておこう。それほど難しくはないよ。
かずお 分かりました。家に帰ったらすぐに考えてみます。
まなぶ 今日は 2進法から微分まで広い範囲にわたって教えていただき、ありがとうございました。まさか、2進法が微分につながるとは思いませんでした。
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