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§1. 数 I の問題から
§2. 数 II の問題から
2次関数のある性質をうまく使うと、問題が簡単に解けることがある。その「ある性質」は、教科書であまり強調されていないものであったりする。それを紹介してみよう。
題材をセンター試験の問題から拾って、説明していくことにする。問題はいずれも、カタカナ([ア]、[イ]、[ウ]、$\cdots$)に当てはまる数字、記号を求めるものである。
まず、1999年度の数I・Aの追試験の問題を取り上げてみる。
§1-1. 頂点の公式を覚える
【問題1.1】
2次関数
$y = ax^{2}+bx-a^{2}+12a+12 $ ……(1)
は $x=4$ で最大値をとるものとし、そのグラフを $C$ とする。
このとき
$ b=- \mbox{[ア]}a $
が成り立つ。---
さて、
【性質1】
放物線 $y=ax^{2}+bx+c$ の頂点の $x$座標は
$x= \frac{-b}{2a}$ ……(2)
である---
という公式がある。
教科書では平方完成を使ってこれを証明してあるが、この結果(2)は覚えておくべきだと思う。
2次方程式の解の公式
$ x= \frac{-b \pm \sqrt{b^{2}-4ac}}{2a} $
において、ルートの部分がなくなったものと覚えておけばよい。なお、頂点の$y$座標の方は覚えなくてよいだろう。$y=f(x)$ への代入計算で求まるからである。
よって、答は
$ \frac{-b}{2a} = 4 $
より
$b= -8a $ ……(3)
である。[解答][ア]$=8$
§1-2. すべては $Y=aX^{2}$ になる
【問題1.2】
(i)この2次関数(1)の最大値が $7$ となるとき
$ a= \mbox{[イウ]} $
である。このとき、グラフ $C$ が $x$ 軸と交わる2点と、$C$が表す放物線の頂点で作られる三角形の面積は
$ \frac{\mbox{[エ]} \sqrt{\mbox{[オカ]}}}{\mbox{[キ]}} $
である。---
$y(4)=7$であることから
$ 16a +4b -a^{2} +12a +12 = 7 $
これに(3)を代入して、$a$についての2次方程式を作り、
$ a = -5, \mbox{ } 1 $
「最大値」ということから $a < 0$ だから、答が一意に決まって
$ a = -5 $
である。[解答][イウ]$=-5$
このことから、放物線$C$は、$y=-5x^{2}$ のグラフを平行移動したものと分かった。
【性質2】
放物線 $y=ax^{2}+bx+c$ は、その頂点が新原点になるように、座標軸を平行移動して新しく $X$-$Y$座標系を導入すると、
$ Y = aX^{2} $
と表現される(係数 $a$ が不変)---
であるから、$C$ の方程式は
$ Y = -5 X^{2} $
になる。
さて、三角形の高さは$7$であったので、底辺の半分は
$ -5X^{2} = -7 $
を解くことにより、
$ \sqrt{\frac{7}{5} } $
と求まる。よって、三角形の面積は
$ \frac{1}{2} \times 2 \sqrt{\frac{7}{5} } \times 7
= \frac{7\sqrt{35}}{5} $
である。[解答][エ]$=7$, [オカ]$=35$, [キ]$=5$
§1-3. 頂点だけを移動して考える
【問題1.3】
(ii)グラフ $C$ が点$(3,8)$を通るとき
$ a=-\mbox{[ク]} $
である。このとき、$C$ を$y$軸に関して対称移動したグラフは、頂点の座標が
$ (\mbox{[ケコ]},\mbox{[サシ]}) $
の放物線である。---
今度は $y(3)=8$ から $a$ の2次方程式を作って、$a<0$より
$ a=-4 $
となる。[解答][ク]$=4$
また、(3)から
$ b= 32 $
だから、$C$ の方程式は
$ y= -4 x^{2} + 32 x -52 $
となる。この放物線の頂点は、$x$座標が 4 であったことから、$y$座標は代入計算で、
$ y(4) = -4 \times 4^{2} +32 \times 4 -52 = 12 $
と求まる。
この頂点 $(4, 12)$ を $y$軸について対称移動すれば
$ (-4, 12) $
である。[解答][ケコ]$=-4$, [サシ]$=12$
次に、同年度の数II・Bの本試験の問題を解いてみよう。
§2-1. 2次関数のベキ展開
【問題2.1】
放物線
$y=-x^{2}+2x$ ……(4)
を$C_{1}$ とし、$C_{1}$ 上に点$P(a, -a^{2}+2a)$ をとる。ただし、$a$は$0 < a< 2$ を満たす定数とする。
(i)$P$ における$C_{1}$ の接線$l_{1}$ の方程式は
$ y= \mbox{[ア]}( \mbox{[イ]}- \mbox{[ウ]})x+ a^{\mbox{[エ]}} $
である。原点$O$における$C_{1}$の接線を$l_{2}$とすると、$l_{1}$と$l_{2}$との交点$Q$の座標は
$ ( \frac{\mbox{[オ]}}{\mbox{[カ]}}, \mbox{[キ]} ) $
である。---
多項式関数のグラフの $x=x_{0}$ における接線の方程式は、関数を $x=x_{0}$ においてベキ展開すれば分かる。そしてベキ展開は、$x-x_{0}$
で順次割り算することにより求められる。つまり微分法を知らなくても、接線は求まるのである。
(4)を $x=a$ においてベキ展開するために、$x-a$ で2回割り算して
$ y = -x^{2} +2x $
$ = (-x+2-a)(x-a) -a^{2}+2a $
$ = \{ -(x-a)+2-2a \}(x-a) -a^{2}+2a $
$ = -(x-a)^{2}+(2-2a)(x-a) -a^{2}+2a $
である。
一般に
【性質3】
$y = ax^{2} +bx +c$ を $x=x_{0}$ において、ベキ展開すると
$ y= a(x-x_{0})^{2} + (2ax_{0}+b)(x-x_{0}) + ax_{0}^{2}+bx_{0}+c$ ……(5)
である。---
一方、$x=0$ におけるベキ展開の方は、そのままでよく、
$ y=-x^{2}+2x $
$ = -(x-0)^{2} +2(x-0) +0 $
である。
これらから接線を求めるには、2次以上の項を無視すればよく、
$ l_{1}: y=(2-2a)(x-a)-a^{2}+2a $
$ = 2(1-a)x+a^{2}, $
$ l_{2}: y=2x $
である。[解答][ア]$=2$, [イ]$=1$, [ウ]$=a$, [エ]$=2$
つまり、
【性質4】
$y = ax^{2} +bx +c$ の $x=x_{0}$ における接線の方程式は
$y= (2ax_{0}+b)(x-x_{0}) + ax_{0}^{2}+bx_{0}+c $ ……(6)
である。---
交点は、$l_{1}, l_{2}$ を連立して解けばよく、
$ Q \left( \frac{a}{2}, a \right) $
と求まる。[解答][オ]$=a$, [カ]$=2$, [キ]$=a$
ところで、【性質3】、【性質4】より、
【性質5】
ベキ展開の式(5)と、接線の方程式(6)の右辺同志の差は
$ y_{1}-y_{2} = a(x-x_{0})^{2} $
と、$x-x_{0}$ の2乗に比例する。---
すると、$y$座標の差は $x=x_{0}$ を中心にして左右対称ということだから、
【性質6】
任意の実数 $h \neq 0$ について、
$ f(x)=ax^{2}+bx+c $
の $x=x_{0}$ における接線の傾きは、$x=x_{0}-h$ から $x_{0}+h$ までの平均変化率
$ \frac{f(x_{0}+h)-f(x_{0}-h)}{2h} $
に等しい。---
ことが導かれる。実際、平均変化率を計算すれば $2ax_{0}+b$ になるが、図からも明らかである。
§2-2. 接線と放物線で挟まれた図形
【問題2.2】
(ii) 直線
$ x= \frac{\mbox{[オ]}}{\mbox{[カ]}}, $
$l_{2}$および$C_{1}$で囲まれた図形の面積$S_{1}$は
$ S_{1} = \frac{a^{\mbox{[ク]}}}{\mbox{[ケコ]}} $
である。---
いま面積を求めようとしている図形 $S_{1}$ というのは、直線 $x=a/2$ と、$x=0$ における接線
$l_{2}: y= 2x $ ……(7)
と、放物線
$C_{1}: y= -x^{2}+2x $ ……(8)
とで囲まれた図形である。
図形 $S_{1}$ の各点 $x$ における縦の長さは、(8)の右辺の差に等しい。従って $S_{1}$ は、3曲線 $x=a/2, y=0,
y=-x^{2}$ で囲まれた図形の面積 $S_{0}$ に等しくなる。ここで、面積が等しくなることは短冊形に細分して考えれば分かることで、この考え方を「カバリエリの原理」と呼ぶ。
では次に、$S_{0}$ の面積を求めよう。これは底面が1辺 $a/2$ の正方形で、高さが $a/2$ の4角錐の体積$V_{0}$の計算法と丸きり同じである。なぜならば、$S_{0}$
を細分した短冊形の面積 $dS$ は
$ x^{2} dx $
であって、これが $V_{0}$を底面に平行に薄切りにしたスライスの体積 $dV$ に等しいからだ。だから
$ S_{0} = \int_{x=0}^{x=a/2} dS = \int_{0}^{a/2} x^{2} dx = \int_{x=0}^{x=a/2}
dV = V_{0} $
となる。
角錐の体積なら、同じ底面積・同じ高さの角柱のそれの $1/3$ だから
$ V_{0} = \frac{1}{3} \cdot \left( \frac{a}{2} \right)^{2} \cdot \frac{a}{2}
= \frac{a^{3}}{24} $
である。従って、
$ S_{1}= \frac{a^{3}}{24} $
である。[解答][ク]$=3$, [ケコ]$=24$
上に述べた面積についてまとめると、
【性質7】
$y=ax^{2}$ のグラフがもとになってできる図形について、図中の影をつけた部分の面積は長方形 $ABCD$ の面積の $1/3$ であり、差し引きした残りの三日月形の面積は長方形 $ABCD$ の面積の $2/3$ である。---
§2-3. 三日月形の面積
【問題2.3】
(iii)放物線 $y=px^{2}+qx+r$ を$C_{2}$ とする。$C_{2}$が3点$O,P,Q$ を通るとき、$p=\mbox{[サシ]},q=a+\mbox{[ス]},r=\mbox{[セ]}$ となる。
このとき$C_{1}$と$C_{2}$で囲まれた図形の面積$S_{2}$は
$ S_{2} = \frac{a^{\mbox{[ソ]}}}{\mbox{[タ]}} $
である。したがって
$ S_{2} = \mbox{[チ]}S_{1} $
が成り立つ。---
3点 $O,P,Q$ の座標を書き並べてみると
$ O (0,0) $
$ P (a, -a^{2}+2a ) $
$ Q (a/2, a) $
となっていて、$Q$ の $x$座標は $O, P$ のそれのちょうど真ん中(相加平均)になっていることに気づく。そこで【性質6】が使えて、放物線$C_{2}$
上の点 $Q$ における接線の傾きは2点 $O, P$ を結ぶ割線の傾き
$ \frac{(-a^{2}+2a)-0}{a-0} = -a+2 $
に等しい。よって、点 $Q$ における接線の方程式は
$ y = (-a+2)(x-\frac{a}{2}) +a $
すなわち
$ y=(-a+2)x+ \frac{a^{2}}{2} $
であり、その $y$切片は $a^{2}/2$ である。
従って、$C_{2}$ の方程式は、接線の方程式に 2次の項を付け足して
$ y= p(x- \frac{a}{2})^{2} + (-a+2)x+ \frac{a^{2}}{2} $
になる。ここで $p$ の値を求めなくてはならない。
接線の $y$切片が $a^{2}/2$ であったことから、接点 $Q$ から接線伝いに左(右)に $a/2$ だけ動くと、$a^{2}/2$
だけ下に落ちることが分かる。だから
$ p \cdot \left( \frac{a}{2} \right)^{2} = -\frac{a^{2}}{2} $
となり、$p= -2$ が分かる。あとは、
$ y= -2(x- \frac{a}{2})^{2} + (-a+2)x+ \frac{a^{2}}{2} $
を展開して、$y=px^{2}+qx+r$ と係数比較して
$ p=-2, \mbox{ } q= a + 2, \mbox{ } r=0 $
である。[解答][サシ]$=-2$, [ス]$=2$, [セ]$=0$
最後に、面積 $S_{2}$ を求めよう。【性質5】と【性質7】をカバリエリの原理で結びつければ、次の性質を得る。
【性質8】
放物線とその割線とで囲まれる三日月形の面積 $S$ は、この図形をすっぽりと取り囲む平行四辺形(割線の対辺が接線になる)の面積の $2/3$ である。---
この性質により、放物線 $C_{2}$ とその割線 $OP$ でできる三日月形 $OPQ$ の面積は、これを取り囲む平行四辺形の面積 $A_{2}$
の $2/3$ であり、放物線 $C_{1}$ とその割線 $OP$ でできる三日月形のそれも、同様にこれを取り囲む平行四辺形の面積 $A_{1}$
の $2/3$ である。よって、
$ S_{2}=\frac{2}{3} (A_{2}-A_{1}) $
である。
あとは、面積 $A_{1}, A_{2}$ を縦(底辺) $\times$ 幅(高さ) で求めるだけである。
先に求めた $y$切片$=a^{2}/2$ より
$ A_{2} = \frac{a^{2}}{2} \times a = \frac{a^{3}}{2} $
である。一方、$A_{1}$ の方は放物線 $C_{1}$ 上で $x=a/2$ となる点
$ Q' (\frac{a}{2}, -\frac{a^{2}}{4}+a ) $
と、線分 $OP$ 上で $x=a/2$ となる点
$ Q'' (\frac{a}{2}, \frac{-a^{2}+2a}{2} ) $
の $y$座標の差をとれば縦の長さが分かるので、
$ A_{1} = \left( -\frac{a^{2}}{4}+a - \frac{-a^{2}+2a}{2} \right) \times
a $
$ = \frac{a^{2}}{4} \times a = \frac{a^{3}}{4} $
となる。よって、
$ S_{2} = \frac{2}{3} \left( \frac{a^{3}}{2} - \frac{a^{3}}{4} \right)
= \frac{a^{3}}{6} $
である。[解答][ソ]$=3$, [タ]$=6$
なお、
$ S_{2}/S_{1} = \frac{a^{3}}{6} / \frac{a^{3}}{24} = 4 $
より
$ S_{2} = 4 S_{1} $
も分かる。[解答][チ]$=4$
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