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正17角形の作図に挑戦

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§1. 高校生にも解けそう
§2. 相反方程式
§3. さらなる置き換え
§4. cos 2π/17 が求まった

§1. 高校生にも解けそう

天才数学者ガウスは高校生のときに正17角形の作図法を考えついたと言われる。いくら天才と言え高校生のときなのだから、現代の高校生でも(ヒントがあれば)解けるかもしれないであろう。
そこでヒントを出していくので、作図問題を解いてみてください。

【注】 ガウスが開発した方法はガウスの著書『整数論』に書かれているが、それを要約したものを「正17角形の作図」に記した。本稿ではそれとは若干異なる方法を紹介する。

複素数平面上の単位円に内接する正17角形を描いたとしよう。ただし、$1$ を頂点の 1つとする。

各頂点は

$x=\cos\frac{2k\pi}{17}+i \sin\frac{2k\pi}{17}(k=1,2,\cdots,17)$

であり、17次方程式 $x^{17}=1$ を満たす。

移項して因数分解すれば、

$(x-1)(x^{16}+x^{15}+x^{14}+\cdots +x+1)=0$

だが、$x \neq 1$ ならば

$x^{16}+x^{15}+x^{14}+\cdots +x+1=0$

ここで、$\zeta=\cos\frac{2\pi}{17}+i \sin\frac{2\pi}{17}$ とおいて、これを代入すれば

$\zeta^{16}+\zeta^{15}+\zeta^{14}+\cdots +\zeta+1=0$ … (1.1)

となる。この 16次方程式が($\sin,\cos$ など使わずに) 有理数と四則演算とルートだけで解ければ、作図ができる。(→「作図可能な線分の長さ」のページ参照。)

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§2. 相反方程式

(1.1) のような係数が左右対称の方程式は相反方程式と言われる。その解き方は真ん中の $\zeta^8$ で割って

$\zeta^{8}+\zeta^{7}+\cdots+1+\cdots +\frac{1}{\zeta^7}+\frac{1}{\zeta^8}=0$

とし、項の順序を変えて

$(\zeta^8+\frac{1}{\zeta^8})+(\zeta^{7}+\frac{1}{\zeta^{7}})+\cdots +(\zeta+\frac{1}{\zeta})+1=0$ … (2.1)

とした後、

$t=\zeta+\frac{1}{\zeta}$

と置き換えるのが定石だ。ところがそうすると、$t$ の 8次方程式になって、しかも相反でなくなるので解けなくなってしまう。

そこで置き換え方を変えてやる。新たな置き換え方は

$t_{8}=(\zeta+\frac{1}{\zeta})+(\zeta^{2}+\frac{1}{\zeta^{2}})+(\zeta^{4}+\frac{1}{\zeta^{4}})+(\zeta^{8}+\frac{1}{\zeta^{8}})$ … (2.2)

である。(下添え字の $8$ は項が $8$ 個あることを示す。)


【問題2.1】 (2.1) において、(2.2) の置き換えをすると $t_{8}$ についての 2次方程式ができる。その方程式を求めよ。---

【ヒント】 $t_{8}^2$ を計算し、(2.1) と合わせて考えよ。

上図のような乗積表を作ると、

$t_{8}^{2}=3(\zeta+\frac{1}{\zeta})+3(\zeta^{2}+\frac{1}{\zeta^{2}})+4(\zeta^{3}+\frac{1}{\zeta^{3}})+3(\zeta^{4}+\frac{1}{\zeta^{4}})+4(\zeta^{5}+\frac{1}{\zeta^{5}})+4(\zeta^{6}+\frac{1}{\zeta^{6}})+4(\zeta^{7}+\frac{1}{\zeta^{7}})+3(\zeta^{8}+\frac{1}{\zeta^{8}})+8$

$=3\{(\zeta+\frac{1}{\zeta})+(\zeta^{2}+\frac{1}{\zeta^{2}})+(\zeta^{3}+\frac{1}{\zeta^{3}})+(\zeta^{4}+\frac{1}{\zeta^{4}})+(\zeta^{5}+\frac{1}{\zeta^{5}})+(\zeta^{6}+\frac{1}{\zeta^{6}})+(\zeta^{7}+\frac{1}{\zeta^{7}})+(\zeta^{8}+\frac{1}{\zeta^{8}})\}$
$\mbox{  }+\{(\zeta^{3}+\frac{1}{\zeta^{3}})+(\zeta^{5}+\frac{1}{\zeta^{5}})+(\zeta^{6}+\frac{1}{\zeta^{6}})+(\zeta^{7}+\frac{1}{\zeta^{7}})\}+8$

$=3\times (-1)+(-1-t_{8})+8$

【答】 $t_{8}^2+t_{8}-4=0$ … (2.3)

2次方程式は解の公式で解ける。
複号のどちらを採用するかの問題があるのだが、それは保留する。解(の候補)が複数出ても、それで作図してうまくいかないものを除去すれば、残った候補で正17角形が作図できる。実際問題としては、複号問題は些細な問題だ。

2次方程式 $t_{8}^2+t_{8}-4=0$ の解を(同じ記号のまま) $t_{8}$ とする。すなわち

$t_{8}=\frac{-1+\sqrt{17}}{2}=1.561553$

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§3. さらなる置き換え

さらに置き換えを行う。

$t_{4}=(\zeta+\frac{1}{\zeta})+(\zeta^4+\frac{1}{\zeta^4})$ … (3.1)

と置き換えるのである。

【問題3.1】 (3.1) のように置き換えたとき、$t_{4}$ と $t_{8}$ の間に成り立つ等式を求めよ。---

【ヒント】 $t_{4}^2, (t_{8}-t_{4})^2$ を計算し、両者の和を求める。それと (2.1), (2.2) と合わせて考えよ。



上記乗積表より

$t_{2}^2+ (t_{4}-t_{2})^2$

$=\{(\zeta+\frac{1}{\zeta})+(\zeta^{2}+\frac{1}{\zeta^{2}})+(\zeta^{3}+\frac{1}{\zeta^{3}})+(\zeta^{4}+\frac{1}{\zeta^{4}})+(\zeta^{5}+\frac{1}{\zeta^{5}})+(\zeta^{6}+\frac{1}{\zeta^{6}})+(\zeta^{7}+\frac{1}{\zeta^{7}})+(\zeta^{8}+\frac{1}{\zeta^{8}})\}$
$\mbox{  }+\{(\zeta^{3}+\frac{1}{\zeta^{3}})+(\zeta^{5}+\frac{1}{\zeta^{5}})+(\zeta^{6}+\frac{1}{\zeta^{6}})+(\zeta^{7}+\frac{1}{\zeta^{7}})\}+8$

$=-1+(-1-t_{8})+8$

【答】 $t_{4}^2-t_{8}t_{4}+\frac{1}{2} (t_{8}^2+t_{8}-6)=0$ … (3.2)

$t_{4}$ についての 2次方程式 (3.2) から解の公式で、解は有理数と $t_{8}$ に四則演算とルートを施して、求めることができる。その解を $t_{4}$ とするなら

$t_{4}=\frac{-1+\sqrt{17}+\sqrt{34-2\sqrt{17}}}{4}=2.049481$

次の置き換えは

$t_{2}=\zeta+\frac{1}{\zeta}$ … (3.3)

である。

【問題3.2】 (3.3) の置き換えをしたとき、$t_{2},t_{4},t_{8}$ の間に成り立つ等式を求めよ。---

【ヒント】 $t_{2}^2, (t_{4}-t_{2})^2$ を計算し、(2.2) と合わせて考えよ。



$t_{2}^2+ (t_{4}-t_{2})^2=(\zeta^2+\frac{1}{\zeta^2})+(\zeta^{8}+\frac{1}{\zeta^{8}})+4$

$=t_{8}-t_{2}-(t_{4}-t_{2})+4$

【答】 $t_{2}^2-t_{4}t_{2}+\frac{1}{2}(t_{4}^2+t_{4}-4-t_{8})=0$ … (3.4)

$t_{2}$ についての 2次方程式 (3.4) の解は、有理数と $t_{8},t_{4}$ に四則演算とルートを施して、求めることができる。その解を $t_{2}$ とするなら

$t_{2}=\frac{1}{8}(-1+\sqrt{17}+\sqrt{34-2\sqrt{17}}+\sqrt{68+12\sqrt{17}-(6+2\sqrt{17})\sqrt{34-2\sqrt{17}}}$

$=1.864944$

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§4. cos 2π/17 が求まった

$t_{2}=\zeta+\frac{1}{\zeta}$ を書き直すと

$t_{2}=(\cos\frac{2\pi}{17}+i \sin\frac{2\pi}{17})+( \cos\frac{2\pi}{17}-i \sin\frac{2\pi}{17})$
$=2 \cos\frac{2\pi}{17}$

だから、$t_{2}$ を半分にした値が §1 の図で $1$ の隣にある頂点の実部であるから、これで作図ができる。

最後に複号問題を解決しておこう。
我々は $\zeta=\cos\frac{2\pi}{17}+i \sin\frac{2\pi}{17}$ とおいた。ところが、$\cos\frac{4\pi}{17}+i \sin\frac{4\pi}{17}$ や $\cos\frac{6\pi}{17}+i \sin\frac{6\pi}{17}$ 等々とおいても、上と同じ 2次方程式が得られるのである。

2次方程式が 3つ出てきたが、各々で複号のどっちを取るかで 2通りずつの選択法があるので、全部で $2^3=8$ 個の解が出てくる。その解が(大きい順に並べると)、

$2 \cos\frac{2\pi}{17},2 \cos\frac{4\pi}{17},2 \cos\frac{6\pi}{17},2 \cos\frac{8\pi}{17},2 \cos\frac{10\pi}{17},2 \cos\frac{12\pi}{17},2 \cos\frac{14\pi}{17},2 \cos\frac{16\pi}{17}$

なのである。
このうち作図に不適なものを「除去」すればいいと先述したが、実はすべて作図に使える値なのである。
上の 8つの解のどれを使っても、正17角形の頂点が(実軸の上と下で) 2個取れる。あとは、$1$ とその頂点を両端とする弧をコンパスで 写し取って尺取虫のように円周を切っていけば、正17角形が描ける。

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参考 【「高校生のためのガロア群入門」のページの§8】 ←ここをクリック!

↑上のページには、2次方程式を導く計算の細部が記されている。

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