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作図可能な線分の長さ

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定規とコンパスを使って作図せよ、という問題がある。原則、作図と言えば定規、コンパス以外の道具を使ってはいけない。だから、2枚1組の三角定規を使うのはルール違反である。
どんな図形でも作図ができる訳ではなく、作図できるものは限定されている。線分に絞って、話を展開しよう。

まず単位の長さを持つ線分を任意に指定する。この線分の長さが1ということになる。ここで、作図可能な線分の長さを仮に「作図可能数」と名付けておく。それはどんな数になるだろうか。

(1) 十分長い線分を定規にて作図しておいて、この線分上に単位長さの線分をコンパスで測り取って作図する。さらに、この長い線分上において、単位長さの線分を2個、3個、……、$n$個と連結すれば、長さが$1,2,3,\cdots,n$の線分が作図できる。だから、「作図可能数」全体の集合を$S$とおけば
   $1,2,3,\cdots,n \in S$
となる。ただし、この連結操作は有限回しかできない。なぜなら、人間の生は有限だから。したがって、長さが∞の直線を作図することはできない。作図できるのは直線の一部分である。

(2) 次に、任意の有理数$\frac{n}{m}$の長さを持つ線分が作図可能であることを示す。例えば、$n=4,m=3$ならば
   
上図のように長さが$4$と$3$の線分に対し、平行線(三角定規を使わず描くこと)を引けば、長さ$\frac{4}{3}$の線分が作図できる。

(3) √ が作図できることを示そう。任意の有理数$a$に対し、$\sqrt{a}$の長さを持つ線分を以下のようにして作図できる。
   
単位長さの線分に長さ$a$の線分を連結し、長さ$1+a$の線分を作り、その中点を中心として円(半円)を描く。連結部にて直径に垂線を立てる。直径に対する円周角の定理により$\triangle ABD $と$\triangle BCD $は相似なので
   $1:x=x:a \Rightarrow x=\sqrt{a}$
となる。

(4) ここまでで、任意の有理数とその平方根を長さを持つ線分は作図可能だと分かった。すなわち、それらの数は作図可能数である。それのみならず、それらの数に加減乗除および開平操作を有限回施した数も作図可能数である。和と差が作図可能であるのは明らかとして、積と商の作図法を示しておく。
積は
   
例によって平行線を使う。平行線の定理より $1:a = b:x \Rightarrow x=ab$でOKだ。
商は
   
積とは平行線を引く順序を反対にする。$1:a = x:b \Rightarrow x=\frac{b}{a}$となる。
開平の作図については前述した。

(5) 以上でいろいろな作図可能数が出てきたが、実はこれ以外に作図可能数はない。実際、定規とコンパスのみで作図するということは、直線と円だけを使って、その交点を求め、それらの点を定規で結んで線分を作るということである。ということは、交点は1次方程式と2次方程式の連立方程式を解くことと同じであるから、座標で表わせばそれらは、解の公式から分かるように与えられた数に加減乗除と開平操作を施して得られる数でなければならないからである。
つまり、はじめに単位の1が与えられ、それに対して「加減乗除と開平」を有限回繰り返して施して得られる数は作図することができ、またそれしか作図できないのである。

このようにして、
   $\sqrt{\sqrt{\sqrt{2}}}$
は作図できるが、
   $\sqrt[3]{2}$, $\pi$
は作図できないことが分かる。(それを厳密に証明するのは難しいが。)

【例】 正5角形の作図法


別のページで示したように、1辺の長さを1にしたとき対角線の長さは$\frac{1+\sqrt{5}}{2}$だから、この数が作図できればよい。上に縷々説明した方法に則って作図してもよいのだが、下記のように作図する方法もある。
   
単位長さの線分に対し、垂線を立て、$\frac{1}{2}$の長さの線分をとる。斜辺の長さが$\frac{\sqrt{5}}{2}$になるので、これをコンパスで垂線に写し取れば、長さが
   $\frac{1+\sqrt{5}}{2}$
の線分が作図できる。


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