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計算できない確率
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【例題1】 下図のような街路がある。AからBまで最短経路で行くとき、Cを通過する確率はいくらか。
(誤答例1) A→Bの経路は 5C3 = 10 通りである。そのうち、Cを通過するのは 2C1×3C2=6通りだから
$P= \frac{6}{10} =\frac{3}{5}$
これは10経路あるから、10本くじを作ってそこから1本引いて行くべき経路を決める方式である。
(誤答例2) 各交差点では東か北に行くことになったとき、両者の確率は等しいとしよう。
A→Cとたどる確率は
$ P=\frac{1}{2} \times \frac{1}{2} + \frac{1}{2} \times \frac{1}{2} =\frac{1}{2}$
これは枝分かれの交差点に来るたびに2本のくじから1本を引くという考えに基づいている。
結局、この問題に正解はない。確率分布が決まっていないからである。(「同程度リスト」に出ていないからと言ってもよい。)
(参考文献)小柴善一郎『数学漂流記』(三省堂選書,1989刊)p.164
【例題2】袋の中に碁石が2個入っている。中から1個を取り出したら黒石だった。残る石も黒石である確率を求めよ。
(誤答例1) 1個目が黒のとき、袋の中が(黒黒)である条件付き確率だから、ベイズの定理である。
A:黒石2個
B:黒石1個
C:黒石0個
の3つの事象のうちのどれかが起きていたわけだが、この3つのおのおのが生起する確率(事前確率と言う)は等しいと考えると、
P(A)=P(B)=P(C)=1/3
である。問題の条件つき確率は
$ P_{K}(KK) $$= \frac{\frac{1}{3}}{\frac{1}{3}+\frac{1}{3} \times \frac{1}{2} } = \frac{2}{3}$
ということで答は2/3である。
どこが間違いかというと、袋に黒石が何個含まれているかという場合が3つあって、その各場合の起こる確率が等しい(従って1/3)としたところがおかしいのである。
(誤答例2) コインを2枚同時に投げて
(表表),(表裏),(裏裏)
の起こる確率はそれぞれ 1/4, 2/4, 1/4 であるのだから、碁石の場合も
P(A)=1/4, P(B)=2/4, P(C)=1/4
としてみたらどうなるか。この値を使ってベイズの定理を適用すると
$ P_{K}(KK) = \frac{\frac{1}{4}}{\frac{1}{4}+\frac{2}{4} \times \frac{1}{2} }=\frac{1}{2}$
となって、今度はなんと 1/2 が答となる。間違いの原因は誤答例1と同じ。
A,B,Cの各確率がこのように、どうにでも決められるのだ。だから、答はどのようにでもなる。答を一つに決めることはできない。
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