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共役と有理化

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§1. 共役な複素数
§2. 係数の属する数体系
§3. 分母の有理化
§4. 複雑な分母の有理化
§5. 数Ⅰの分母の有理化
§6. 結語にかえて

§1. 共役な複素数

【定義1-1】 $2+3 i$ と $2-3 i$ のように、複素数 $a+b i$ ($a,b$は実数) において $i$ を $-i$ に取り換えた2数を互いに共役な複素数と言う。---

$2+3 i \rightarrow 2+3(-i)=2-3 i$,
$2-3 i \rightarrow 2-3(-i)=2+3 i$

という訳だ。「共役」と名前を付けるだけあって、これら2数には密接な関係がある。

$x=2 \pm 3 i \rightarrow (x-2)^2=(\pm 3 i)^2 \rightarrow x^2-4x+13=0$

だから、これら2数は同じ2次方程式:

$x^2-4x+13=0$ … (*)

の解なのである。$2+3 i$ と $2-3 i$ を2次方程式 (*) の共役な解と言い、方程式 (*) を $2+3 i$(または $2-3 i$)の定義方程式と言う。

こう言うと、$(x-2)(x-5)=0$ の解は $x=2, 5$ だから「$2$ と $5$ は共役なのか」という疑問が湧くかもしれない。この場合には共役とは言わない。
$2$ と $5$ の間に密接な関係がありそうにもないからではあるが、因数分解できる方程式の解に関しては「共役」という言葉は使わないのだ。
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§2. 係数の属する数体系

共役と呼ばれるのは因数分解できない多項式の場合に限定される。
でも、因数分解できる・できないの判断は、係数の属する数体系を何にするかで変わってくる。

$ax^2+bx+c=(dx+e)(fx+g)$

のように因数分解しようとするとき、係数 $a,b,c,d,e,f, g$ という数を「整数 $\mathbb Z$」、「有理数 $\mathbb Q$」、「実数 $\mathbb R$」、「複素数 $\mathbb C$」のどれに制限するかで、結果が変わる。

【問題2-1】 $f(x)=2x^2-x, g(x)=x^2+x-1, h(x)=x^2+x+1$ を因数分解せよ。---

【解】 いずれも係数は整数 $\mathbb Z$ だから、係数が整数の範囲で因数分解することは許される。しかも、整数は有理数や実数、複素数でもあるので、係数の範囲を有理数や実数、複素数として因数分解することも許される。
(1) 係数の範囲を $\mathbb Z$ とすれば、

$f(x)=x(2x-1)$ と因数分解できて、解は $x=0,\frac{1}{2}$
  $\mathbb Z$上で因数分解できても解 $x$ は整数になるとは限らず、$x \in \mathbb Q$ である。
$g(x), h(x)$ は因数分解できない。方程式としては「解なし」だ。

(2) 係数の範囲を $\mathbb Q$ とすれば、

$f(x)=x(2x-1)$ または $f(x)=2x(x-\frac{1}{2})$
  いずれの因数分解も正解で、この多項式は $\mathbb Q$上で因数分解できる。
  $\frac{1}{2}$ という係数は有理数であるから、後者の因数分解も正解なのである。ただし、テストでこれをやると×にされる。
  暗黙の裡に「整数の係数の範囲で因数分解せよ」と言っているからである。
$g(x), h(x)$ は因数分解できない。

(3) 係数の範囲を $\mathbb R$ とすれば、

$f(x)=x(2x-1)=2x(x-\frac{1}{2})$
$g(x)=(x-\frac{-1+\sqrt{5}}{2})(x-\frac{-1-\sqrt{5}}{2})$
  なぜこのように因数分解できたかと言えば、解の公式を使ったからだ。
  $\frac{-1+\sqrt{5}}{2}$ と $\frac{-1-\sqrt{5}}{2}$ は$\mathbb Q$ 上で共役であると言う。
$h(x)$ は因数分解できない。

(4) 係数の範囲を $\mathbb C$ とすれば、

$f(x)=x(2x-1)=2x(x-\frac{1}{2})$
$g(x)=(x-\frac{-1+\sqrt{5}}{2})(x-\frac{-1-\sqrt{5}}{2})$
$h(x)=(x-\frac{-1+\sqrt{3}i}{2})(x-\frac{-1-\sqrt{3}i}{2})$
  $\frac{-1+\sqrt{3}i}{2}$ と $\frac{-1-\sqrt{3}i}{2}$ は$\mathbb Q$ 上で共役である。
  係数の範囲を $\mathbb C$ にすれば、すべての多項式は1次式の積に因数分解できる。これを代数学の基本定理と言い、ガウスが発見した。

上述のように、係数の範囲を $\mathbb Q \rightarrow \mathbb R \rightarrow \mathbb C$ と拡張すると「解なし」だったものが、因数分解できて解を持つように変化するのである。

(注意) $x=0$ と $\frac{1}{2}$ は$\mathbb Q$ 上で共役であるとは言わない。方程式 $f(x)=2x^2-x=0$ が$\mathbb Q$ 上で因数分解できるので、共役と言わない。
$\mathbb Q$ 上で因数分解できない多項式の解(当然2個以上ある)を互いに $\mathbb Q$ 上で共役な数と呼ぶ。

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§3. 分母の有理化

共役は何の役に立つのだろうか。冒頭で $2+3i$ と $2-3 i$ を共役と呼ぶと言った時点で、何か思いつかなかっただろうか。
$\frac{1}{2+3 i}$ の分母を有理化せよ、と言われたら

$\frac{1}{2+3 i}=\frac{2-3 i}{(2+3 i)(2-3i)}$

のように、分母と共役な(複素)数を分母・子に掛けるであろう。そうすると積は有理数(または実数)になる。

$\mathbb Q$ 上の2次式(係数が有理数という意味)を $f(x)$ とするとき、$f(x)$ が$\mathbb Q$ 上で因数分解できれば、2つの解 $\alpha,\beta$ はともに有理数だから、その積 $\alpha\beta$ は有理数になる。
これは自明だ。

さらに$\mathbb Q$ 上で因数分解できない場合でも $\alpha\beta$ は有理数になるのである。なぜなら

$ax^2+bx+c=a(x-\alpha)(x-\beta)$ とおいて係数比較すれば
$\alpha+\beta=-\frac{b}{a}$,
$\alpha\beta=\frac{c}{a}$
(これら2式を解と係数の関係と言う。)
有理数の和・差・積・商は有理数(有理数は四則演算について閉じている)から、解の積 $\alpha\beta$ は有理数である、

だからだ。ついでに言えば、$\alpha+\beta$ も有理数である。これをトレース(trace) と言う。$\alpha\beta$ の方はノルム(norm) と言う。
この、解の和と積が有理数になるという事実は3次以上の方程式でも成り立つ。実際、

$ax^3+bx^2+cx+d=a(x-\alpha)(x-\beta)(x-\gamma)$ とおいて係数比較すれば
$\alpha+\beta+\gamma=-\frac{b}{a}$,
$\alpha\beta+\beta\gamma+\gamma\alpha=\frac{c}{a}$,
$\alpha\beta\gamma=-\frac{d}{a}$
これら3つは有理数である。

ここでも、$\alpha+\beta+\gamma=-\frac{b}{a}$ をトレース、$\alpha\beta\gamma=-\frac{d}{a}$ をノルムと呼ぶ。($\alpha\beta+\beta\gamma+\gamma\alpha$ には名前はない。)

【問題3-1】 $3+4i$ の $\mathbb Q$ 上のノルムを求めよ。---

【解1
】 $x=3 \pm 4 i \rightarrow (x-3)^2=(\pm 4 i)^2 \rightarrow x^2-6x+25=0$ と定義方程式を作る。
   解と係数の関係より

$N=\alpha\beta=\frac{c}{a}=\frac{25}{1}=25$ … (答)

でもいちいち定義方程式を作っていては大変だ。$\alpha=3+4i$ の共役複素数である $\bar{\alpha}=3-4i$ が、$\alpha$ の共役な解であるという事実を使えば、別解が作れる。つまり次の事実が成り立つ。

【定理3-1】 $\alpha$ が2次方程式(3次以上でも成り立つのだが) $f(x)=ax^2+bx+c=0$ ($a,b,c$ は実数)の解であれば、$\bar{\alpha}$ も解である。---

【証明】 $\alpha=x_{0}+y_{0}i$ とすれば、方程式に代入して、次の等式が成り立つ。

$f(x_{0}+y_{0}i)=a(x_{0}+y_{0}i)^2+b(x_{0}+y_{0}i)+c$
$=(ax_{0}^2-ay_{0}^2+bx_{0}+c)+(2ax_{0}y_{0}+by_{0})i=0$

$0=0+0i$ の共役な複素数はやはり $0+0(-i)=0$ だから

$(ax_{0}^2-ay_{0}^2+bx_{0}+c)-(2ax_{0}y_{0}+by_{0})i=0$

したがって

$f(x_{0}-y_{0}i)=a(x_{0}-y_{0}i)^2+b(x_{0}-y_{0}i)+c=0$ ■

【別証明】 $f(x)=a_{0}x^n+a_{1}x^{n-1}+\cdots+a_{n}=0$ (各 $a_{i}$ は実数)とおいて

$f(\alpha)=a_{0}\alpha^n+a_{1}\alpha^{n-1}+\cdots+a_{n-1}x+a_{n}=0$

ならば

$\overline{f(\alpha)}=\overline{a_{0}\alpha^n+a_{1}\alpha^{n-1}+\cdots+a_{n-1}\alpha +a_{n}}$
$=\overline{a_{0}\alpha^n}+\overline{a_{1}\alpha^{n-1}}+\cdots+\overline{a_{n-1}\alpha}+\overline{a_{n}}$
$=a_{0} \bar{\alpha}^n+a_{1}\bar{\alpha}^{n-1}+\cdots+a_{n-1}\bar{\alpha}+a_{n}$
$=f(\bar{\alpha})=0$ ■

この定理を使って、先の問題の別解を記せば、

【解2】 $3+4i$ の共役複素数 $3-4i$ との積を作って、ノルムは
   $(3+4i)(3-4i)=3^2-(4i)^2=9+16=25$ …(答)

虚数ではなく、ルートが出てくる場合のノルムはどうなるだろうか。

【問題3-2】 $2-\sqrt{3}$ の $\mathbb Q$ 上のノルムを求めよ。---

【解1】 まず共役な解を求める。

$\frac{-b \pm \sqrt{b^2-4ac}}{2a}=2-\sqrt{3}$
の分母を払って
$4a=-b, 2a\sqrt{3}=\sqrt{b^2-4ac}$
よって、$b=-4a,c=a$ だから、$a:b:c=1:-4:1$
所与の数が満たす定義方程式は
   $x^2-4x+1=0$
解の公式で解いて
   $x=2 \pm \sqrt{4-1}=2 \pm \sqrt{3}$
ノルムは、$(2-\sqrt{3})(2+\sqrt{3})=4-3=1$ …(答)

【解2】 $x=2 - \sqrt{3} \rightarrow (x-2)^2=(-\sqrt{3})^2 \rightarrow x^2-4x+1=0$ と定義方程式を作る。
   あとは解1と同じ。

実は虚数の場合と同様な定理が成り立つ。すなわち、

【定理3-2】 $\sqrt{m}$ が無理数のとき $x_{0}+y_{0}\sqrt{m}$ ($x_{0},y_{0}$ は有理数)が2次方程式 $f(x)=ax^2+bx+c=0$ ($a,b,c$ は有理数)の解であれば、$x_{0}-y_{0}\sqrt{m}$ も解である。---

【証明】 $x_{0}+y_{0}\sqrt{m}$ を方程式に代入して、次の等式が成り立つ。

$f(x_{0}+y_{0}\sqrt{m})=a(x_{0}+y_{0}\sqrt{m})^2+b(x_{0}+y_{0}\sqrt{m})+c$
$=(ax_{0}^2+amy_{0}^2+bx_{0}+c)+(2ax_{0}y_{0}+by_{0})\sqrt{m}=0$

ここで

$ax_{0}^2+amy_{0}^2+bx_{0}+c=2ax_{0}y_{0}+by_{0}=0$

が成り立つ。なぜならば、$2ax_{0}y_{0}+by_{0}\neq 0$ ならば

$\sqrt{m}=-\frac{ax_{0}^2+amy_{0}^2+bx_{0}+c}{2ax_{0}y_{0}+by_{0}}$

が有理数となってしまうからである。■


この事実を使えば、次の別解ができる。

【解3】 $2-\sqrt{3}$ の $\mathbb Q$ 上で共役な解の $2+\sqrt{3}$ との積を作って、ノルムは

$N=(2-\sqrt{3})(2+\sqrt{3})=4-3=1$ …(答)
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§4. 複雑な分母の有理化

分母が $\alpha=1+\sqrt{2}+\sqrt{3}$ だったら、何を掛けて分母を有理化できるだろうか。そのヒントがノルムである。
$\alpha$ が満たす定義方程式を作って、それを解いて解 $\alpha,\beta,\cdots,\lambda$ を求める。
$\alpha$ に $\beta\gamma\cdots\lambda$ を掛ければ有理化される。
この積、$\alpha\beta\cdots\lambda$ のことをノルムと言った。ノルムだけを求めるのであれば、作った定義方程式に解と係数の関係を使えばよい。

では、上の問題を解いてみよう。

【問題4-1】 $\alpha=1+\sqrt{2}+\sqrt{3}$ のとき、$1/\alpha$ の分母を有理化せよ。---

【解1】 定義方程式を作ると

$x=1+\sqrt{2}+\sqrt{3}$
$(x-1)^2=(\sqrt{2}+\sqrt{3})^2$
$x^2-2x+1=5+2\sqrt{6}$
$(x^2-2x-4)^2=(2\sqrt{6})^2$
$x^4-4x^3-4x^2+16x-8=0$

ルートが2個あったから、2乗を2回行った。2乗の2乗で4乗、だから4次方程式なのだ。この4次方程式を解いてみよう。いまの式変形を逆にたどればよい。

$x^4-4x^3-4x^2+16x-8=0$
$(x^2-2x-4)^2=(2\sqrt{6})^2$
$x^2-2x-4=\pm 2\sqrt{6}$
$x^2-2x+1=5\pm2\sqrt{6}$
$(x-1)^2=(\sqrt{2}\pm\sqrt{3})^2$
$x-1=\pm(\sqrt{2}\pm\sqrt{3})$
$x=1+(\sqrt{2}+\sqrt{3}),1+(\sqrt{2}-\sqrt{3}),1-(\sqrt{2}+\sqrt{3}),1-(\sqrt{2}-\sqrt{3})$

だから $\alpha$ 以外の3つの解は

$\beta=1+\sqrt{2}-\sqrt{3},\gamma=1-\sqrt{2}-\sqrt{3},\delta=1-\sqrt{2}+\sqrt{3}$

である。有理化するにはこの3数の積:

$\beta\gamma\delta=(1+\sqrt{2}-\sqrt{3})(1-\sqrt{2}-\sqrt{3})(1-\sqrt{2}+\sqrt{3})$
$=(1+\sqrt{2}-\sqrt{3})\{ (1-\sqrt{2})^2-3\}$
$=(1+\sqrt{2}-\sqrt{3})(-2\sqrt{2})$
$=-2(\sqrt{2}+2-\sqrt{6})$

を掛ければよいのだが、$-2$ は不要で、$\sqrt{2}+2-\sqrt{6}$ を掛ければよい。では、$\alpha$ にこの数を掛けたらいくらになるか。実際に掛け算をしてもよいのだが、4次方程式の解と係数の関係:

$\alpha\beta\gamma\delta=(-1)^4 \times \frac{a_{4}}{a_{0}}$

を使ってもよい。ここに $a_{0}$ は最高次(4次)の係数、$a_{4}$ は4次方程式の定数項である。4次(偶数次)だと符号は $(-1)^4=1$ でプラスになる。したがって、ノルムは

$N=+\frac{-8}{1}=-8$

さっき $-2$ で割ったから、分母は $-8 \div (-2)=4$ になる。結局、

$\frac{1}{\alpha}=\frac{1}{1+\sqrt{2}+\sqrt{3}}=\frac{\sqrt{2}+2-\sqrt{6}}{4}$ …(答)

【解2】 直観的に $\alpha$ の共役な解は

$\beta=1+\sqrt{2}-\sqrt{3},\gamma=1-\sqrt{2}-\sqrt{3},\delta=1-\sqrt{2}+\sqrt{3}$

と考え、

$\frac{1}{\alpha}=\frac{\beta\gamma\delta}{\alpha\beta\gamma\delta}$
$=\frac{(1+\sqrt{2}-\sqrt{3})(1-\sqrt{2}-\sqrt{3})(1-\sqrt{2}+\sqrt{3})}{(1+\sqrt{2}+\sqrt{3})(1+\sqrt{2}-\sqrt{3})(1-\sqrt{2}-\sqrt{3})(1-\sqrt{2}+\sqrt{3})}$
$=\frac{-2(\sqrt{2}+2-\sqrt{6})}{-2(1+\sqrt{2}+\sqrt{3})(\sqrt{2}+2-\sqrt{6})}$
$=\frac{-2(\sqrt{2}+2-\sqrt{6})}{-2 \times 4}$ …(答)
$=\frac{\sqrt{2}+2-\sqrt{6}}{4}$ …(答)

【解3】 有理数全体の集合 $\mathbb Q$ に $\sqrt{2}$ を添加した集合を作り、これに属する数に四則演算を施してできる数の集合を $\mathbb Q'$ とする。さらに、$\mathbb Q'$ に $\sqrt{3}$ を添加した集合を作り、これに属する数に四則演算を施してできる数の集合を $L$ とする。

$1+\sqrt{2}+\sqrt{3} \in L$ だが、この数の $\mathbb Q'$上共役な数は $1+\sqrt{2}-\sqrt{3} (\in L)$, $\mathbb Q'$ 上のノルムは

$N_{1}=(1+\sqrt{2}+\sqrt{3})(1+\sqrt{2}-\sqrt{3})=(1+\sqrt{2})^2-3=2\sqrt{2} \in \mathbb Q'=\mathbb Q(\sqrt{2})$

とノルムを作ると一つ下の数体系の世界に降りることになる。さらにこのノルムの $\mathbb Q$上共役な数は $-2\sqrt{2} (\in \mathbb Q')$, $\mathbb Q$ 上のノルムは

$N_{2}=2\sqrt{2}( -2\sqrt{2})=-8 \in \mathbb Q$

である。このように2段階に分けて有理化すれば

$\frac{1}{\alpha}=\frac{1+\sqrt{2}-\sqrt{3}} {(1+\sqrt{2}+\sqrt{3})(1+\sqrt{2}-\sqrt{3})}$
$=\frac{1+\sqrt{2}-\sqrt{3}} {N_{1}}$
$=\frac{1+\sqrt{2}-\sqrt{3}} {2 \sqrt{2}}$
$=\frac{-2\sqrt{2}(1+\sqrt{2}-\sqrt{3})} {N_{2}}$
$=\frac{-2\sqrt{2}(1+\sqrt{2}-\sqrt{3})} {-8}$
$=\frac{\sqrt{2}(1+\sqrt{2}-\sqrt{3})} {4}$ …(答)


ではルートを2個から3個に増やしてみよう。

【問題4-2】 $\alpha=1+\sqrt{2}+\sqrt{3}-\sqrt{6}$ のとき、$1/\alpha$ の分母を有理化せよ。---

【解】 前問の解1のようにやると、2乗の2乗の2乗で、8次方程式になってしまうかもしれない。(後述するように、実際は4次。) そこで解3のようにやってみよう。

$\frac{1}{1+\sqrt{2}+\sqrt{3}-\sqrt{6}}=\frac{1}{(1+\sqrt{2})+(1-\sqrt{2})\sqrt{3}}$
$=\frac{1+\sqrt{2}-(1-\sqrt{2})\sqrt{3}}{(1+\sqrt{2})^2-3(1-\sqrt{2})^2}$
$=\frac{1+\sqrt{2}-\sqrt{3}+\sqrt{6} }{-6+8\sqrt{2} }$
$=\frac{1+\sqrt{2}-\sqrt{3}+\sqrt{6} }{-2(3-4\sqrt{2}) }$
$=\frac{(1+\sqrt{2}-\sqrt{3}+\sqrt{6})(3+4\sqrt{2}) }{-2(3^2-4^2\times 2) }$
 
$=\frac{11+7\sqrt{2}+5\sqrt{3}-\sqrt{6} }{46 }$ …(答)
ルートの計算は田の字計算でやると斜めに同じ仲間の数が出てきてまとめることができるので、便利だ。


【問題4-3】
$\alpha=1+\sqrt{2}+\sqrt{3}-\sqrt{6}$ の定義方程式を求めよ。---

【解】 $x=1+\sqrt{2}+\sqrt{3}-\sqrt{6}$ とおいて、

$(x-1-\sqrt{2})^2=\{ \sqrt{3}(1-\sqrt{2}) \}^2$
$x^2-2x-2\sqrt{2}x+3+2\sqrt{2}=3(3-2\sqrt{2}) $
$(x^2-2x-6)^2=\{ 2\sqrt{2}(x-4) \}^2$
$x^4-4x^3-8x^2+24x+36=8(x^2-8x+16)$
$x^4-4x^3-16x^2+88x-92=0$ … (答)

$\sqrt{6}$ は $\sqrt{2},\sqrt{3}$ に従属した関係になっているので、定義方程式は8次まで上がらずに、4次方程式になるのである。ついでにノルムを計算しておくと

$N=(-1)^4 \times \frac{a_{4}}{a_{0}}=+\frac{-92}{1}=-92$

である。


【問題4-4】 $\alpha=1+\sqrt{2}+\sqrt{3}-\sqrt{6}$ と共役な数を求めよ。---

【解】 自分自身も自分と共役だと考えて、共役な数の個数をカウントすると、いくつになるだろうか。一瞬、

$1+\sqrt{2}+\sqrt{3}+\sqrt{6},1+\sqrt{2}+\sqrt{3}-\sqrt{6},1+\sqrt{2}-\sqrt{3}+\sqrt{6},1+\sqrt{2}-\sqrt{3}-\sqrt{6},$
$1-\sqrt{2}+\sqrt{3}+\sqrt{6},1-\sqrt{2}+\sqrt{3}-\sqrt{6},1-\sqrt{2}-\sqrt{3}+\sqrt{6},1-\sqrt{2}-\sqrt{3}-\sqrt{6}$

の8個と思ってしまうが、4次の定義方程式の解は4個(「$n$ 次方程式はちょうど $n$ 個の複素数解を持つ」という代数学の基本定理による)だから、共役な数は4個のはずである。

$x=a+b\sqrt{2}+c\sqrt{3}+d\sqrt{6}$ ($a,b,c,d$ は有理数)

とおいて、これの共役を調べてみよう。
$x=(a+b\sqrt{2})+(c+d\sqrt{2})\sqrt{3}$ の ${\mathbb Q'}={\mathbb Q}(\sqrt{2})$ 上の(この数体系の数を係数とする)方程式に関する共役な解は

$y=(a+b\sqrt{2})-(c+d\sqrt{2})\sqrt{3}$
$=a+b\sqrt{2}-c\sqrt{3}-d\sqrt{6}$

この「共役を取る」という操作を $S$ と表そう。したがって、$y=S(x)$ という訳だ。(この $S$ を共役写像と言う。)
一方、$a+b\sqrt{2}$ と $c+d\sqrt{2}$ の ${\mathbb Q}$ 上共役な数はそれぞれ

$a+b\sqrt{2} \rightarrow a-b\sqrt{2}$
$c+d\sqrt{2} \rightarrow c-d\sqrt{2}$

である。こちらの共役写像を $T$ で表そう。

そうすると、共役を取るという操作が4つできる。すなわち、

(1) $x$ に $x$ 自身を対応させる。(操作としては「何もしない」という操作)
(2) $S$ という操作(「$\sqrt{3}$ を $-\sqrt{3}$ に置き換える」という操作)
(3) $T$ という操作(「$\sqrt{2}$ を $-\sqrt{2}$ に置き換える」という操作)
(4) $S$ を行った後に $T$ を行うという操作(「$\sqrt{3}$ を $-\sqrt{3}$ に置き換えた後、$\sqrt{2}$ を $-\sqrt{2}$ に置き換える」という操作)

である。上記4つの操作から成る集合を数体系 $L={\mathbb Q}(\sqrt{2})(\sqrt{3})$ のガロア群と言う。さて、これらの共役写像の結果、何という数に移るかと言うと

(1) $x=a+b\sqrt{2}+c\sqrt{3}+d\sqrt{6} \rightarrow x=a+b\sqrt{2}+c\sqrt{3}+d\sqrt{6}$
(2) $x=a+b\sqrt{2}+c\sqrt{3}+d\sqrt{6} \rightarrow y=a+b\sqrt{2}-c\sqrt{3}-d\sqrt{6}$
(3) $x=(a+b\sqrt{2})+(c+d\sqrt{2})\sqrt{3} \rightarrow (a-b\sqrt{2})+(c-d\sqrt{2})\sqrt{3}=a-b\sqrt{2}+c\sqrt{3}-d\sqrt{6}$
(4) $x=(a+b\sqrt{2})+(c+d\sqrt{2})\sqrt{3} \rightarrow (a-b\sqrt{2})-(c-d\sqrt{2})\sqrt{3}=a-b\sqrt{2}-c\sqrt{3}+d\sqrt{6}$

である。これら4つの数が $x$ と共役な数である。すなわち、

$a+b\sqrt{2}+c\sqrt{3}+d\sqrt{6}$
$a+b\sqrt{2}-c\sqrt{3}-d\sqrt{6}$
$a-b\sqrt{2}+c\sqrt{3}-d\sqrt{6}$
$a-b\sqrt{2}-c\sqrt{3}+d\sqrt{6}$

ここで $a=b=c=1,d=-1$ を代入すれば、答が得られる。

(答)
$1+\sqrt{2}+\sqrt{3}-\sqrt{6}$
$1+\sqrt{2}-\sqrt{3}+\sqrt{6}$
$1-\sqrt{2}+\sqrt{3}+\sqrt{6}$
$1-\sqrt{2}-\sqrt{3}-\sqrt{6}$

ついでにノルムを計算しておくと

$(1+\sqrt{2}+\sqrt{3}-\sqrt{6})(1+\sqrt{2}-\sqrt{3}+\sqrt{6})(1-\sqrt{2}+\sqrt{3}+\sqrt{6})(1-\sqrt{2}-\sqrt{3}-\sqrt{6})$
$=\{(1+\sqrt{2})^2-(\sqrt{3}-\sqrt{6})^2 \}\{ (1-\sqrt{2})^2-(\sqrt{3}+\sqrt{6})^2 \}$
$=\{ 3+2\sqrt{2}-9+6\sqrt{2} \}\{3-2\sqrt{2}-9-6\sqrt{2} \}$
$=(-6+8\sqrt{2})(-6-8\sqrt{2})$
$=36-128=-92$

となって、先に求めたものと一致する。

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§5. 数Ⅰの分母の有理化

数学Ⅰの教科書には次のような問題が出てくる。

【問題5-1】 $\frac{1}{\sqrt{2}+\sqrt{3}}$ の分母を有理化せよ。---

$\sqrt{2}$ と $\sqrt{3}$ を含む数の体系とは、どんなものであろうか。$\sqrt{2} \div\sqrt{2}=1$ だから $1$ を含む。$1$ があれば、これを何個か足したり引いたりして、$0$ と正負の整数を得る。それで割り算すれば、すべての有理数が得られる。$\sqrt{2}$ と $\sqrt{3}$ を掛ければ $\sqrt{6}$ が得られ、これら無理数に有理数を掛けて足せば、この数体系は

$x=a+b\sqrt{2}+c\sqrt{3}+d\sqrt{6}$ ($a,b,c,d$ は有理数)

の形の数で構成されることが分かる。よって、前問の方法が使える。

【解】 $a=d=0,b=c=1$ とすれば、$\sqrt{2}+\sqrt{3}$ と共役(自分自身も含める)な数は

$0+\sqrt{2}+\sqrt{3}+0\sqrt{6}=\sqrt{2}+\sqrt{3}$
$0+\sqrt{2}-\sqrt{3}-0\sqrt{6}=\sqrt{2}-\sqrt{3}$
$0-\sqrt{2}+\sqrt{3}-0\sqrt{6}=-\sqrt{2}+\sqrt{3}$
$0-\sqrt{2}-\sqrt{3}+0\sqrt{6}=-\sqrt{2}-\sqrt{3}$

となって、理屈通りにやると

$\frac{1}{\sqrt{2}+\sqrt{3}}$
$=\frac{(\sqrt{2}-\sqrt{3})(-\sqrt{2}+\sqrt{3})(-\sqrt{2}-\sqrt{3})}{(\sqrt{2}+\sqrt{3})(\sqrt{2}-\sqrt{3})(-\sqrt{2}+\sqrt{3})(-\sqrt{2}-\sqrt{3})}
$=\frac{(\sqrt{2}-\sqrt{3})(-1)}{(-1) \times (-1)}$
$=-\sqrt{2}+\sqrt{3}$ … (答)

なんだか面倒なことになってしまった。(もちろん数Ⅰでは、分母・子に $\sqrt{3}-\sqrt{2}$ を掛けることになっている。)
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§6. 結語にかえて

以上が分母の有理化のバックボーンである。しかし、数学Ⅱの教科書では共役な複素数、解と係数の関係、定義方程式(「〇, 〇を解とする方程式を作れ」)が出てくるのに、分母の有理化と関連付けて論じられることがない。
分母の有理化は $(a+b)(a-b)=a^2-b^2$ の公式の単なる練習に過ぎず、解と係数の関係は難しそうな方程式の問題がこれを使えば楽に解けるという受験テクニックの扱いを受けることが多い。
数学の捉え方が皮相であると言えるだろう。
こんな数学教育を続けていると、日本にガロアのような天才は現れないだろう。
今回このWebページで紹介した内容は、ガロア理論の一端であったのである。
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