[婆茶留高校数学科☆HP] Top pageに戻る このページを閉じる

グラフの移動と落下法則

Copyright (C) virtual_high_school, 2002-2018

§1. どっちを移動するのか


2次関数のグラフでは平行移動が大切だが、この平行移動には


の2つがある。
例えば、放物線 $y=ax^{2}$ について、この図形を $x$ 軸の正の方向に $p$, $y$軸の正の方向に $q$ だけ平行移動すれば
   $y=a(x-p)^{2}+q$ ……(1)
という放物線になる。
一方、$x$ 軸を負の方向に $p$, $y$軸を負の方向に $q$ だけ平行移動すれば、$X=x+p,\mbox{ }Y=y+q$ より放物線の方程式は
   $Y=a(X-p)^{2}+q $ ……(2)
になる。
(1)と(2)は同じ式だから、グラフを平行移動しようが、座標軸を平行移動しようが、どちらでもたいして変わりがないように見える。数の世界プロパーならそれでよいのだが、量の世界になると様相が変わる。


§2. 2つの移動の違い


ある地点から物体 A を自由落下させる実験を何度も行なって、落とし始めてからの経過時間を$x[\mbox{秒}]$, 落下距離を $y[m]$ とするとき
   $ y=4.9x^{2} $
となることが分かったとしよう。
このとき、測り始める時間と測り始める距離の基準点をずらす(単位の長さは変えない)と、
   $ Y=4.9(X-p)^{2}+q $
となることは、自明である。これは、座標軸の変換をしていることになる。
同じようなことをグラフの移動の考えでやろうとすると、どうなるか。式は
   $y=4.9(x-p)^{2}+q$ ……(3)
となるが、この式は物理学的に正しいだろうか。
この式は、さっきの実験より $q[m]$ 低いところから物体 A を落とした場合の落下法則を表している。しかし、落とし始める地点の高さを変えると、地球の中心からの距離が変わることにより万有引力の大きさが変わる。そうすれば、重力加速度も変化し、2次の係数は 4.9 ではなくなる。したがって、厳密に言えば(3)は成り立たない。
このような例をみると、


の2つはまったく異なる操作であるということに気づくのである。前者は、ある法則(関数)から異なる法則(関数)を生み出す。新たに生み出された法則の正しさは、もとの法則が正しかったとしても自動的に導かれることはない。一方、後者は新たな法則を生むことをしない。ただ法則(関数)の式表現が変わっただけで、ある1つの法則の異なる表現を与える作用しかしない。


§3. グラフの移動の意味づけ


さて、物理学により、以下の3つの法則を得たとしよう。


$ y= f_{1}(x)= 4.9x^{2}, $
$ y= f_{2}(x)= 4.9x^{2}+1, $
$ y= f_{3}(x)= 4.9(x-2)^{2}. $



つまり、めでたく2次の係数はすべて 4.9 でよいことが分かったとするのである。ここで、この3つの法則は物理学的にお互いにどういう関係にあるのか、また3つの関数のグラフを同一座標平面上に表すとお互いはどういう関係になるのかが問われなくてはならない。
まず、$f_{1}$ と $f_{2}$ の関係である。

$f_{2}(x) - f_{1}(x) = 1 $ ……(4)
であるから、$f_{2}$ の物体は $f_{1}$ の物体より常に $1[m]$ 前方を走っていることになる。落とし始める時点において、$1[m]$ の高度差があった2つの物体は、その高度差を維持したまま落ちていくのである。2つの物体を``込み''で(2両編成の列車にするように)1つの物体だと考えても、$\mbox{落下距離}=4.9 \times \mbox{(経過時間)}^{2}$ なる法則が成り立つ訳である。ここから、質量が2倍になっても落下の速度や距離は同じだと想像がつく。(実際、ガリレオはこのような思考実験により、落下の法則は質量に無関係であることを結論づけるのである。)
なお、(4)より、$f_{1}$ のグラフを $y$軸方向に$1$ だけ平行移動すると $f_{2}$ のグラフに重なることが分かる。
次に、$f_{1}$ と $f_{3}$ の関係を調べよう。

$f_{3}(2)=0$ だから、
$f_{3}$ の物体は、$f_{1}$ の物体より $2[\mbox{秒}]$ 遅れでスタートすることになる。そして、
   $ f_{3} (x+2) = f_{1}(x) $
より、つねに $2[\mbox{秒}]$ 遅れであとを追いかけることになる。$2[\mbox{秒}]$ 遅れで $f_{1}$ がいた場所( $y$ の値)に到達する訳である。したがって、$f_{3}$ のグラフは $f_{1}$ のグラフを $x$ 軸方向に$2$ だけ平行移動したものになる。
$f_{3}$ の物体は 2秒後の未来の自分の姿である $f_{1}$ の物体を追いかけて進むのだが、$f_{1}$ の物体は $f_{3}$ の物体より何 $[m]$ 先を走っているだろうか。
   $ f_{1}(x)-f_{3}(x)= 19.6(x-1) $
となるので、追いかけ始めた時点($x=2$)で $19.6[m]$ 先行しているが、この高度差は時間の経過とともに拡がっていく。$f_{1}$ と $f_{2}$ の高度差がつねに一定であったのとは異なる。
ここで、同じ性能の2台の車がサーキット場で追いかけっこをしている場面を想像してみよう。カーブの所で車間距離は縮まっても、直線コースに入ると加速しだして車間距離は拡がっていくだろう。そんな感じが $f_{1}$ と $f_{3}$ の関係である。
$f_{1}$ と $f_{2}$ の方は、綱に引っ張られて走る水上スキーにたとえることができよう。


★「婆茶留高校」は架空の存在であり、実在の人物、団体とは関係ありません。
<-- クリックして婆茶留高校へメール送信 mailto: virtual_h_s@yahoo.co.jp 
婆茶留高校数学科HP http://www.virtual-hs.com/ Powered by   Copyright(c) virtual_high_school, 2001-2022