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重心(質量中心)

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§1. 重心の公式
§2. 重心と釣り合いの支点の違い
§3. $1:m$の場合
§4. $m_{1}:m_{2}$の場合
§5. 質量中心の定義
§6. 質量中心$=$幾何学的重心
§7.コマの問題
§∞. 文献

§1. 重心の公式

質量×長さ、すなわち
   $m_{1} x_{1} + m_{2} x_{2} +\cdots +m_{n} x_{n}$
を全質量
   $m_{1} + m_{2} +\cdots +m_{n} $
で割ったもの、すなわち原点からの長さ=座標の、重み付き平均
   $\frac{ m_{1} x_{1} + m_{2} x_{2} +\cdots +m_{n} x_{n} }{m_{1} + m_{2} +\cdots +m_{n} } $
が、重心質量中心の定義の式である。

数学Ⅱに「重心」が出てくる。ただ、幾何学で三角形の重心と言えば、3中線の交点を意味する。これは、上に述べた物理学での重心の定義とは異なる。
物理における重心の定義の方が先で、それが幾何学に転用されたのであろう。三角形の幾何学的重心が、三角形(辺だけでなく内部も含む)の物体の質量中心と一致するからである。
本稿では、なぜ三角形の重心が中線を1:2に内分するかなどを述べたいが、その前に、複数の重りをぶら下げた天秤棒の重心を求める問題が解けなくてはならない。


§2.重心と釣り合いの支点の違い

まず初めに、質量が等しい重りを2個ぶら下げる場合から入ろう。
  
「上図のように、棒の両端に $1$ グラムの物体をくっつけたものがある。これの重心はどこか? ただし、棒の質量は無視する。」
当然、誰しも2つの重りの真ん中(中点)だと答えるだろう。そこが重心である。

では、この天秤棒を重心の位置でそっと支えると、釣り合うだろうか。
これは即答できない。地上で実験する場合と、宇宙空間や宇宙船内で実験するのでは違う。地上なら重力のモーメントが関与して釣り合う。しかし、無重力の世界ではモーメントが働かない。でも、慣性の法則により「そっと」支えれば静止している。(乱暴に支えようとして、力を加えると、天秤が無限遠の彼方にぶっとんでしまう。)
しかし宇宙船内では、空気があり宇宙飛行士が呼吸をしているから微妙に風が舞っているだろう。だから、この場合は天秤はふわふわと漂いだすに違いない。
私がわざわざ宇宙船の話を出したのは、天秤の釣り合いには力のモーメントが関与していることを言いたかったからである。
「重心で支えれば天秤は釣り合う」(もちろん地上での話だ)という定理は、別のページでを示すこととしよう。
ともかく、重心の定義はあくまで質量中心であって、けっして天秤が釣り合う点ではないのである。定義と定理を取り違えてはいけない。


§3.$1:m$の場合

質量が $1:1$ の場合を前節で解いたが、そこに出てきた棒の重心は下図のように、重りを真ん中に寄せて $2$ グラムにした棒の重心と同じである。
  
今度は $1:2$ の棒の問題を解こう。
この手の問題をユニークなやり方で解いたものが、文献[1]の153ページの問題及びその解答に示されている。中学生以上なら分かる説明である。ただ、パズル的な感じがしないでもない。
  
上図(上)の棒の重心だが、$2$ グラムの重りを半々に分けて、上図(下)のように置き換える。すると、$1$ グラムの重りが等間隔に並ぶので、重心の位置が分かる。質量が $1:2$ ならば、重心は $2:1$ と逆比に内分した位置に来る。
同様に、質量が $1:3$, $1:4$, $\cdots$ の場合も解ける。
  

  


§4.$m_{1}:m_{2}$の場合

$1:\mbox{(整数)}$ と同じように、質量が $1:\mbox{(有理数)}$ すなわち$m_{1}:m_{2}$ の場合も、質量の逆比に内分する点が重心だと分かる。

  
実際、2つのおもりの間のさおの長さが$(m_{1}+m_{2})k$だとすれば、上図(下)のようにおもりを分割して均等に並べると、さおは左に$m_{1}k$, 右に$m_{2}k$だけ延長しなければならない。この延長されたさおの真ん中が重心だが、そこは端から$(m_{1}+m_{2})k$だけ行ったところだ。左に$m_{1}k$だけ、行って右へ$(m_{1}+m_{2})k$だけ戻れば、そこは元のさおの左端から$m_{2}k$だけ進んだところである。したがって、元のさおを質量の逆比$m_{2}:m_{1}$に内分した点が重心である。
よって、重心の位置ベクトル $\vec{x}$ は、質量 $m_{1}, m_{2}$ の質点の位置ベクトルをそれぞれ $\vec{x_{1}}, \vec{x_{2}}$ とすると
   $ \frac{\vec{x}-\vec{x_{1}}}{m_{2}} = \frac{\vec{x_{2}}-\vec{x}}{m_{1}} $
   $ m_{1} ( \vec{x}-\vec{x_{1}} ) = m_{2} ( \vec{x_{2}}-\vec{x} ) $
   $ (m_{1}+m_{2}) \vec{x} = m_{1}\vec{x_{1}} +m_{2}\vec{x_{2}} $
   $ \vec{x} = \frac{m_{1}\vec{x_{1}} +m_{2}\vec{x_{2}} }{m_{1}+m_{2}} $
と、数学Ⅱの「内分点の公式」そのものとなる。


§5.質量中心の定義

2個の質点(質量は異なっていてよい)からなる物体の重心は、以上のようになった。$n$個の質点からなる場合は、帰納的に考えればよい。
$m_{1}, \cdots, m_{n}$ を合わせた質量 $m_{1}+ \cdots + m_{n}$ の質点が
   $ \vec{y} = \frac{m_{1}\vec{x_{1}}+ \cdots +m_{n}\vec{x_{n}}} {m_{1}+\cdots +m_{n}} $
にあると考えて、$n+1$ 個の質点系の場合は
   $ \vec{x} = \frac{(m_{1}+\cdots +m_{n})\vec{y} +m_{n+1}\vec{x_{n+1}}} {m_{1}+\cdots +m_{n}+m_{n+1}} $
   $ = \frac{\sum m_{i}\vec{x_{i}}} {\sum m_{i}} $
となる。
今までは質量の比が有理数の場合しか扱ってこなかったが、ここで改めて(無理数の場合も込めて)
   $ \vec{x} = \frac{\sum m_{i}\vec{x_{i}} }{\sum m_{i}} $
質量中心の定義とする。これが冒頭に述べた「定義」そのものである。


§6.質量中心$=$幾何学的重心

では、三角形の質量中心を求め、それが幾何学的重心に一致することを見てみよう。
  
三角形を上図のように、ある辺に平行に細分する。各細片は均質な棒状であるから、重心はそれぞれ細片の中心にある。各細片の中心に質量が載っかっていて、それら質点たちが1直線(中線)上に並んでいる。ただ、これら質点たちはおのおの質量が異なるので、三角形の質量中心は中線の真ん中とはならない。
中線を2本引いてその交点が質量中心であるとする方法もあるのだが、ここでは積分を使って質量中心の位置 $x$ を求めよう。
  
上図のように $x$軸を設定する。細片に平行な辺の長さを $a$ とすれば、質量中心の定義を拡張して積分で表わして
   $ x = \frac{\int_{0}^{1} (xa)x dx }{\int_{0}^{1} xa dx } = \frac{a/3}{a/2} =\frac{2}{3} $
となる。これで中線を $2:1$ に内分した点が質量中心であると分かる。従って、三角形の3頂点の位置ベクトルをそれぞれ $\vec{a}, \vec{b}, \vec{c}$とすれば、質量中心の位置ベクトルは
   $ \vec{x} = \frac{2 \frac{\vec{a}+\vec{b}}{2}+\vec{c}}{3}= \frac{\vec{a} +\vec{b} +\vec{c} }{3} $
となる。$\vec{a}, \vec{b},\vec{c}$を輪環の順に回しても同じ(対称式)であるから、3中線が 1点で交わることが示された。よって、質量中心は幾何学的重心に一致する。


§7.コマの問題

【問題】 図のような放物線のコマがある。どこに軸をさして回すとよく回るか(重心にさせばよいことは分かっているものとする)。
  

よくある解答は次のものだ。

(解) 重心に軸を突き刺せば、最もよく回る。そこで重心の座標を求める。質点系(離散型)なら
   $x= \frac{\sum mx_{i}}{\sum m_{i}}$
だが、剛体(連続型)の場合には $\int$を使う。
   $x= \frac{\int x dm}{\int dm}= \frac{ \int_{0}^{1}2xydx} {\int_{0}^{1}2ydx} = \frac {\int_{0}^{1}2x^{3}dx }{ \int_{0}^{1}2x^{2}dx} =\frac{1/4}{1/3} = \frac{3}{4}$■

ところで、重心に回転軸を通すとよく回るのはなぜか。上の解ではそのことに言及していないが、このことはそれほどやさしくはない。
これも別ページで述べたが、コマの回転には慣性モーメントが関係しており、重心に心棒を刺せばよいというのは自明ではない。


§∞.文献

[1] D・ウェルズ『みつけよう!数学!』(岩波書店,1989年)

    



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