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【第1-1節】 ベクトルの世界(書きかけ)

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【第01講】 ベクトルとは何か
【第02講】 ベクトルの演算
【第03講】 成分表示
【第04講】 ベクトルの大きさ
【第05講】 図形とベクトル
【第06講】 直線のベクトル方程式

【第01講】 ベクトルとは何か

ベクトルとは移動のことである。

【例1】 全校集会でのこと。全体に左に寄っているので「全員、右へ50cm移動!」と指示が飛んだ。

Aという生徒もBという生徒も、「南東の方向に50cm」移動したわけだ。この向きと距離を合わせて考えた移動がベクトルである。
反対にAとかBとかの位置には関わらない。上図ではこの移動を赤い矢印(矢線)で表したが、すべての矢線が平行で向きが同じ(逆向きではなく)で、長さが等しいことに注目されたい。

【例2】 グラフGを$x$軸方向に$2$, $y$軸方向に$1$ だけ平行移動する。グラフG上の点の位置は関係ない。

この移動を

$(2,1)$

と書き、これをベクトルの成分表示と言う。ベクトルは、上図の矢線は、始点から終点に向けてへの平行移動を意味している。G上の任意の点の座標を$(x,y)$とすれば、移動後の点の座標$(X,Y)$は

$(X,Y)=(x,y)+(2,1)=(x+2,y+1)$

となる。つまり

移動後の座標=移動前の座標+移動ベクトル

となる訳だ。ところで移動後のグラフG' の方程式はGの方程式を$y=f(x)$なら、小文字の変数を消去して

$Y-1=f(X-2)$

となるし、Gの方程式を$F(x,y)=0$なら、

$F(X-2,Y-1)=0$

となる。符号が反転することに注意しよう。

【例3】 理科で出てくる力はベクトルだ。

滑車にひもが掛けてある。向きと大きさが等しいベクトル(力)を点Aと点Bに作用させたとき、その結果はまるで違う。理科に出てくるベクトルは自由に平行移動してはいけないのである。そういうベクトルは束縛ベクトルと言って、数学で扱うベクトルとは区別する。(蛇足:今の例では作用線上を平行移動することは許される。)
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【第02講】 ベクトルの演算

ベクトルは2つの演算---加法と実数倍について閉じている。

では、加法とは何か。

点Aから点Bへの移動を表すベクトルを$\overrightarrow{AB}$, 点Bから点Cへの移動を表すベクトルを$\overrightarrow{BC}$ としよう。AからBを経由してCに行くことは、AからCへ行くことを意味する。これがベクトルの和である。上図のようにベクトルの和を作図することを三角形の法則と呼ぶ。なにはともあれ次式が成り立つ。

$\overrightarrow{AB}+\overrightarrow{BC}=\overrightarrow{AC}$

いまは始点、終点を明示する形式でベクトルを表したが、$\vec{a}=\overrightarrow{AB}, \vec{b}=\overrightarrow{BC}$ のように小文字と→で表す方法もある。この場合は

$\overrightarrow{AC}=\vec{a}+\vec{b}$

となる訳だ。一方の実数倍だが、例えば2倍だったら、$2 \vec{a}=\vec{a}+\vec{a}$とすればよいだろう。これは$\vec{a}$と向きが同じで長さが2倍のベクトルだ。だから、$\vec{a}$の実数$r$倍とは、

$r>0$のときは$\vec{a}$と向きが同じで、長さが$r$倍のベクトル、
$r<0$のときは$\vec{a}$と向きが反対で、長さが$|r|$倍のベクトル、
$r=0$のときは長さが0$のベクトル

のことと定義しよう。最後に出てきた長さ0の矢線は、1点のことである。これを(れい、ゼロ)ベクトルと言い、$\vec{0}$と書く。零ベクトルは向きについては考えないか、すべてのベクトルと平行と考える。

零ベクトルが出てくる計算例を考えよう。

$\overrightarrow{AB}+\vec{0}=\overrightarrow{AB}+\overrightarrow{BB}=\overrightarrow{AB}$,
$\vec{0}+\overrightarrow{AB}=\overrightarrow{AA}+\overrightarrow{AB}=\overrightarrow{AB}$

より、

$\vec{a}+\vec{0}=\vec{0}+\vec{a}=\vec{a}$

という計算規則が出てくる。零ベクトルは数の計算における零のようなものだ。また、

$\overrightarrow{AB}+\overrightarrow{BA}=\overrightarrow{AA}=\vec{0}$,
$\overrightarrow{BA}+\overrightarrow{AB}=\overrightarrow{BB}=\vec{0}$

より、$\vec{a}=\overrightarrow{AB}$のとき、$\overrightarrow{BA}=-\vec{a}$と表すことに決めれば

$\vec{a}+(-\vec{a})=(-\vec{a})+\vec{a}=\vec{0}$

という計算規則が出てくる。$-\vec{a}$を$\vec{a}$の逆ベクトルと(反ベクトルとも)言う。

数学では矢線ベクトルは自由に平行移動してよい(長さは変えてはならない)ということであったから、次図のように和を表すこともできる。

ACが対角線になるように平行四辺形ABCDを描くのである。すると

$\vec{b}+\vec{a}=\overrightarrow{AD}+\overrightarrow{DC}=\overrightarrow{AC}=\vec{a}+\vec{b}$

ベクトルの加法について交換法則が成り立つことが分かった。それとともに、矢線ベクトルの和を上図のように平行四辺形を利用して描けることが分かった。この描き方を平行四辺形の法則と言う。結局、ベクトルの和は、三角形でも平行四辺形でもどちらの法則でも作図できることが分かった。
交換法則以外にも下記のようにいろいろな公式が成り立つ。(ただし$r,s$は実数) すべて矢線を描いてみれば納得できよう。

(1) $(\vec{a}+\vec{b})+\vec{c}=\vec{a}+(\vec{b}+\vec{c})$ (結合法則)
(2) $\vec{a}+\vec{b}=\vec{b}+\vec{a}$ (交換法則)
(3) $r(\vec{a}+\vec{b})=r\vec{a}+r\vec{b}$ (分配法則みたい)
(4) $(r+s)\vec{a}=r\vec{a}+s\vec{a}$ (分配法則みたい)
(5) $(rs)\vec{a}=r(s\vec{a})$ (結合法則みたい)
(6) $\vec{a}+\vec{0}=\vec{0}+\vec{a}=\vec{a}$ (零ベクトルの役割)
(7) $\vec{a}+(-\vec{a})=(-\vec{a})+\vec{a}=\vec{0}$ (逆ベクトルの役割)
(8) $1\vec{a}=\vec{a}$ (実数$1$の役割)

【問題】 下図において $\vec{a}+\vec{b}+\vec{c}$を描き込め。---

(図の上にマウスを置くと答が出ます。)

【解】 $\vec{a}+\vec{b}$を描こうとすると画面からはみ出る。そこで$\vec{b}+\vec{c}$を三角形の法則で描き、それの始点が$\vec{a}$の終点に一致させ、再度三角形の法則を使うと作図ができる。答は赤い矢線である。

でもこの手の問題、少しおかしくないだろうか。答が与えられた方眼の中に描けるか否かは自明でない。実際、枠からはみ出る問題を作るのは簡単だし、枠からはみ出なくても始点の取る場所によってははみ出てしまう。作図可能か否かを、いろんな作図を試してみて確認することはできない。なぜなら試行錯誤を無限に繰り返すことができないからである。
ということは、作図以外の方法で作図可能なことを確認した後でなければ、矢線ベクトルは描けないということになる。

【ホントの解】 成分表示により答のベクトルを求め、それと方眼を比較検討し、作図できるためには始点をどこに取るかを決めるのである。成分表示してから計算すると

$\vec{a}+\vec{b}+\vec{c}=(4,1)+(1,3)+(-3,-2)=(4+1+(-3),1+3+(-2))=(2,2)$

だから、$x$軸方向に2, $y$軸方向に2 だけ移動するベクトルが答だから、始点を$(0,0), (0,1), (1,0), (1,1), (2,0), (2,1)$ のどこかに置けば描ける。
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【第03講】 成分表示

ベクトルを成分表示して、加法と実数倍を施したときの計算経過と結果はどうなるだろうか。

$\vec{a}=(x_{1},y_{1}), \vec{b}=(x_{2},y_{2})$のとき、それの和と実数$r$倍は

$\vec{a}+\vec{b}=(x_{1}+x_{2}, y_{1}+y_{2})$,
$ r\vec{a}=(r x_{1},r y_{1})$

となる。その理由は両座標軸への正射影を考えれば分かる。図形の正射影というのは、図形上の点から座標軸へ下した垂線の足全体からなる図形のことである。

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【第04講】 ベクトルの大きさ

そもそも、ベクトルというのは向きと大きさ(長さ)を持つ量であった。ただそのままでは扱いづらいので、成分表示をした。ここで我々はベクトルの誕生より以前に座標軸が設定されていた、という構図を採用してきた。実は数学的にはベクトルを導入した後、ベクトルを使って座標軸を作るのである。

さて、ベクトルの大きさ(絶対値)とは矢線の長さのことである。ベクトル $\vec{a}=(a_{1},a_{2})$ の大きさを絶対記号を流用して表す。三平方の定理を使って成分で大きさを書き表せる。すなわち

$|\vec{a}|=\sqrt{a_{1}^2+a_{2}^2}$

大きさが 1 のベクトルは単位ベクトルと呼ばれる。与えらたベクトルと同じ向きの単位ベクトルは何かと役に立つ。

【問題】 $\vec{a}=(a_{1},a_{2})$ と同じ向きの単位ベクトルを求めよ。---

【解】 同じ向きだから正の実数倍しなければならない。長さが長ければ短くしなくてはいけないから、\frac{1}{|\vec{a}|$ 倍すればよい。だから求めるべき単位ベクトルは

$\vec{e}=\frac{1}{|\vec{a}|} \vec{a}= \frac{1}{\sqrt{a_{1}^2+a_{2}^2}}\vec{a} =(\frac{a_{1} }{\sqrt{a_{1}^2+a_{2}^2}},\frac{a_{2} }{\sqrt{a_{1}^2+a_{2}^2}})$

座標軸の正の向きと同じ向きを持つ単位ベクトルを基本ベクトルと言う。

のように表す。これを使って任意のベクトルを1次結合の形に表現できて、

$\vec{a}=(a_{1},a_{2})=a_{1}(1,0)+a_{2}(0,1)=a_{1}\vec{e_{1}}+ a_{2}\vec{e_{2}}$

となる。これって便利だな、と思うのは早計で、そもそもノッペラボーだった平面に原点 $O$ と直交する右手系の単位ベクトルを2つ、$\vec{e_{1}}$ と $\vec{e_{2}}$ を与えると、平面上の任意のベクトルは

$x \vec{e_{1}}+y\vec{e_{1}}$

と表現できる。このベクトルの始点を原点にしたときの終点の座標を $(x,y)$ と定義するのである。これにより、平面に座標が導入される。はじめに基本ベクトルありきで、座標はあとから生まれたのである。だから「便利」なのではなく当然なのである。

ベクトルは大きさと向きを持つ量と言った。では、$\vec{a}=(a_{1},a_{2})$ の向きを数式で表すにはどうすればよいだろう。傾き=偏角のタンジェント、すなわち $\tan \theta$ を使えばよさそうだが、ベクトルが $x$軸に垂直になると使い物にならなくなる。向きを表すには次の方法を使う。

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【第05講】 図形とベクトル

下図は以前にも出てきたものである。

$\overrightarrow{AB}=\overrightarrow{OP}$ であるのだが、これを成分表示するとどうなるか。$x$軸方向に 2, $y$軸方向に 1 だけ平行移動しているから $(2,1)$ だが、それは B の座標から A の座標を引いたものになっている。つまり

$\overrightarrow{AB}=B-A=(1,2)-(-1,1)=(1-(-1),2-1)=(2,1)$

と、終点の座標から始点の座標を引けばよい。このベクトルを平行移動して $\overrightarrow{OP}$ に持ってきたら、$P-O=\overrightarrow{OP}$ で、移項して $P=(0,0)+\overrightarrow{OP}$, すなわち

$P=\overrightarrow{OP}$

座標と原点を始点とするベクトルが等しくなる。この、原点を始点とし、終点を $P$ とするベクトルを点 $P$ の位置ベクトルと言う。今後は座標と位置ベクトルを同一視しよう。だから

点 $P(\vec{p})$

のような書き方をする。今までなら括弧の中に座標を書いていたが、そこに位置ベクトルを書くのである。座標を使って解ける問題は、ベクトルでも解ける。ただ、どっちで解くのが楽かという問題はあるが。

【問題】 2点 $A(\vec{a}), B(\vec{b})$ を結ぶ線分を $m:n$ (一方のみが負なら外分)に分ける点 $P(\vec{p}$ を求めよ。---

【解】 図より


$\vec{p}=\overrightarrow{OP}=\overrightarrow{OA}+\frac{m}{m+n}\overrightarrow{AB}$
$=\vec{a}+\frac{m}{m+n}(\vec{b}-\vec{a})$
$=\frac{n\vec{a}+m\vec{b}}{m+n}$ …(答)

ここで、$m=t,m+n=1$ と置き換えれば

$\vec{p}=(1-t)\vec{a}+t\vec{b}$

となる。こちらの方が便利であることが多い。

【問題】 3点 $O(\vec{0}), A(\vec{a}), B(\vec{b})$ からなる $\triangle OAB$ の周上または内部にある点 $P(\vec{p})$ を $\vec{a},\vec{b}$ を使って表せ。---

【解】 線分 $AB$ を $t:1-t$ $(0 \leq t \leq 1)$ に内分する点は

$(1-t)\vec{a}+t\vec{b}$

であり、内部または周上の点はこれを 0~1倍に縮小したものだから、$0 \leq s \leq 1$ として

$\vec{p}=s \{(1-t)\vec{a}+t\vec{b}\} =s(1-t)\vec{a}+st\vec{b}$
$0 \leq s(1-t) \leq 1,0 \leq st \leq 1,0 \leq s(1-t)+st=s \leq 1$ だから、$x=s(1-t),y=st$ とおけば
$\vec{p}=x\vec{a}+y\vec{b}$ $(0 \leq x,y \leq 1,0 \leq x+y \leq 1)$ …(答)

上の問題の答は餅網をひしゃげたと考えるとすぐに求まる。

左側の青い三角形 (3点 $(0,0),(1,0),(0,1)$ が作る三角形)が、右側の赤い三角形に移ると考えるのである。

左の世界の点 $(x,y)$ は右側の $x\vec{a}+y\vec{b}$ に移るのだから、青の領域を $x,y$ で表せばよい。だから

$x \geq 0,y \geq 0,x+y \leq 1$

でもよいことが分かる。

【蛇足】 右側の世界で、2つのベクトル $\vec{a},\vec{b}$ を基本ベクトルだと思えば、斜めに交わる座標軸が設定できる。こうしてできる座標平面を斜交座標系と言う。
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【第06講】 直線のベクトル方程式

【問題】 点 $A(\vec{a})$ を通り、$\vec{0}$ でないベクトル $\vec{u}$ に平行な直線の方程式を求めよ。---

【解】 $t$ を任意の実数とすれば、直線上の点 $P(\vec{p})$ は

$\overrightarrow{OP}=\overrightarrow{OA}+\overrightarrow{AB}=\vec{a}+t\vec{u}$
だから、
$\vec{p}=\vec{a}+t\vec{u}$ …(答)

$t$ はパラメータ(媒介変数)と呼ばれる。

もし、$A(a_{1},a_{2}),\vec{u}=(u_{1},u_{2})$ ならば

$(x,y)=(a_{1},a_{2})+t(u_{1},u_{2})$,
$\left\{ \begin{array}{ll} x=a_{1}+tu_{1} \\ y=a_{2}+tu_{2} \end{array} \right.$
ここから加減法で $t$ を消去すると
$u_{2}(x-a_{1}) = u_{1}(y-a_{2})$
もし $u_{1},u_{2}$ がともに 0 でなければ、割り算できて
$\frac{x-a_{1}}{u_{1}} = \frac{y-a_{2}}{u_{2}}$

といろんな形の直線の方程式が得られる。
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