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【授業】 整数の話題から
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§1. 互除法と不定方程式の特殊解
§2. パスカルの三角形
§3. 合同式における乗除
§4. 循環小数
【解】
→
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(1) 横 90 を縦 39 で測りきったときの余りが 12
(2) 縦 39 を横の余り 12 で測ったときの余りが 3
(3) 横 12 を縦の余り 3 だと測りきれる (余り 0 )
と、縦・横で互い違いに割っていけば、 90 × 39 の長方形を敷き詰める最大の正方形の辺の長さとして GCM =3 が得られる。(ユークリッドの互除法)
【答】 $(90,39)=3$
これを手早くやるには下図のように割り算を右から左へ連続して行い、余りが 0 になったところでヤメにすればよい。最左にある数 3 が GCM である。この問題の答は $(90,39)=3$ だったが、この GCM= 3 を 90 と 39 の 一次結合 で→
$90 x+39 y=3$と表すことができる。そこでこの不定方程式の特殊解を求めよう。
最右の ⑦ と右から2番目の商(または丸数字)の 3 が特殊解で、90 と 39 にたすき掛けすると確かに→
(1) 最初はグー、じゃなくて「最初は1」、これに〇印をつけて最左の商の上に①と書く。
(2) あとは商の並びに対し「足し算と掛け算」
①+3×2=7
をした結果の 7 に丸印をつけて商の上に⑦と書く。
(3) あとは(2)の繰り返しだが、今の場合は繰り返さずに 1 回で終わってしまう。
39×⑦-90×3=3で、GCM の 3 になっている。(特殊解は $x=-3, y=7$ という訳だ。)
【解】
上図の連続割り算により、$(105,38)=1$ が出てくるので、解は存在する。特殊解を求めよう。
初めは①,最後にたすき掛けすると
あとは「足し算と掛け算」を繰り返して、
①+4×3=13,
4+13×1=17,
13+17×2=47
と商の上に数を並べていき、
$105\times 17-38\times 47=-1$だから、$x=-17, y=47$ (答)
$x=-17+38 k$,である。
$ y=47-105 k$
$105 a+38 b=23$だが、【問1-2】の答の $(x,y)=(-17,47)$ を $-23$ 倍した $-23(x,y)=(-17\times 23,47\times 23)$ を使って
$105 \times (-17) \times 23+38 \times 47 \times 23 =23$だから、
$a=-391, b=1081$と分かる。与式に代入して、変形して
$\frac{23}{38 \times 105}=-\frac{391}{38}+\frac{1081}{105}$これが答の 1つ(ともに真分数)である。
$=-(10+\frac{11}{38})+(10+\frac{31}{105})$
$=-\frac{11}{38}+\frac{31}{105}$
$a=-391+38 k $,
$b=1081-105 k$
で、実は答は無数にあるのだ。「仮分数は使わず真分数だけの和差に変形せよ」と制限しておかないと答が絞れない。($k=10$ のときが先の答)
このように部分分数分解の答は1つとは限らぬ。例えば
$\frac{1}{x^2-1}=\frac{1}{2}(\frac{1}{x-1}-\frac{1}{x+1})$の部分分数分解には、この他に
$\frac{1}{2}(\frac{x}{x-1}-\frac{x+2}{x+1})$
などの分解がある。(もちろん真分数の和差に限定すれば答はユニークになる。)
【問1-3】の部分分数分解をした分数の分母は
$38 \times 105 =(2 \times 19)\times (3 \times 5 \times 7)$
と各素数を高々 1 個しか含まないが、分母に素数または既約多項式(2つひっくるめて素元と言う) のベキが含まれていると
$\frac{1}{x^2(x+1)}=(\frac{a}{x^2}+\frac{b}{x})+\frac{c}{x+1}$
のようになる($x^2$ の処理に注目)。では分母が $ p^5q^4$ の場合をやってみよう。
【問1-4】 次の分数を部分分数分解せよ。---
$\frac{5}{2^5 \times 3^4}$
【解】 明らかに互いに素 $(2^5, 3^4)=1$ で、不定方程式の特殊解は下図のように、
$32\times 38-81\times 15=1$
である。 よって左辺を 5 倍して $2^5 \times 3^4$ で割って
$\frac{38 \times 5}{3^4}-\frac{15 \times 5}{2^5}=\frac{190}{3^4}-\frac{75}{2^5}$このあと、2つの分子を処理する。やり方は 十進法 → 3進法、2進法 の変換と同じだ。
上の連続割り算から3進数、2進数に直すとそれぞれ
$190=21001_{(3)}$,だが、前者は $3^4$ で割り、後者は $2^5$ で割るから、くだんの分数は小数点がそれぞれ 4 個、5 個ずれて
$75=1001011_{(2)}$
$\frac{190}{3^4}=2.1001_{(3)}$,
$\frac{75}{2^5}=10.01011_{(2)}$
となる。よって、2つの分数はそれぞれ
$\frac{190}{3^4}=2+\frac{1}{3}+\frac{0}{3^2}+\frac{0}{3^3}+\frac{1}{3^4}=2+\frac{1}{3}+\frac{1}{81}$,
$\frac{75}{2^5}=1\times 2+0+\frac{0}{2}+\frac{1}{2^2}+\frac{0}{2^3}+\frac{1}{2^4}+\frac{1}{2^5}=2+\frac{1}{4}+\frac{1}{16}+\frac{1}{32}$
となるので、問題の分数は
$(2+\frac{1}{3}+\frac{1}{81})-(2+\frac{1}{4}+\frac{1}{16}+\frac{1}{32})$となる。これが答だ。(すべてが真分数だ。)
$=\frac{1}{3}+\frac{1}{81}-\frac{1}{4}-\frac{1}{16}-\frac{1}{32}$
【答】
プリント教材の版下はExcelで作図する。でも作りにくい。上図のように三角形でなく、下図のような四角形にしてもよいのだ。
ところでコレって、格子状の街路を最短距離で行く経路の個数を表している。だから、パスカルに現れる数値は組合せの数(二項係数とも言う)なのである。
A地点からB地点に遠回りせずに行く経路の数を求めよ。---
22通り
授業では、色数をさらに増やして mod.7 の足し算を計算させて、7 色の色鉛筆を使って塗り絵をさせたこともある。色数はここらへんが限界で、これより増やすと色弱でなくても色の区別がつかなくなる。
[色塗りパターン]
上のパターンでは、同じ数字のところに同じ色が塗られている。
和の総当たりは $3 \times 3=9$ 通りだが、交換則が成り立つことから $_{3}H_{2}=6$ 通りの色塗りパターンとした。
[和の演算表]
掛け算九九の表だ。0 の行と、0 の列は結果が 0 と明らかだから省略してある。しかしそれ以外にも掛けて 0 になるところがある。2×3 や 3×4 などである。これらを零因子と呼ぶ。なぜこうなるかと言うと、法が合成数だからだ。
$\frac{5}{ 2}=\frac{5\times 3}{2\times3}=\frac{3}{0}=$?は計算できない。2の段の九九を見ても分かることである。でも法が素数なら、零因子がないだけでなく除法が必ずできる(もちろん0で割ることを除く)。
$7\times 1=7, 7\times 2=14=1, \cdots$となるから、逆数は $1/7=2$ とすぐ分かる。よって
$6 \div7=6\times(1\div 7)=6\times2=12$ (答)
【問3-3】 105 を法とするとき、38 の逆数を求めよ。---
【解】 105 は合成数なのだが、38 と互いに素だから(38 は法 105 の既約剰余類に属すると言う)、逆数を持つ。【問1-2】の(答)より
$38\times 47-105\times 17=1$だったから、法 105 の世界では
$38 \times 47=105\times17+1=1 (mod.105)$となる。よって $\frac{1}{38}=47$ (答)
「先生、商の 4 は 5 の間違いじゃないですか」
$\frac{1}{2}=0.4999\cdots$と循環小数になる。つまり、有理数はすべて循環小数に直せる訳だ。
$x=0.4999\cdots$ とおいて、$10x=4.9999\cdots$ から引いてと、有限小数にも直せることを示す。
$9 x=4.5$
$x=0.5$
繰り返し 7 で割るのだが割り切れない。だから余りは 1~6 の 6 種類のうちのどれか。だから循環節の長さは高々 6 になるのは確かなのだが、この場合は最長の 6 になる。
【問4-3】 法 11 において、10 は原始根になるか。---
【解】
$10^1=-1 (mod. 11)$
$10^2=-10=1$
2 乗でもう 1 になってしまう。($10=-1$ だから 2 乗で 1 になるのは当たり前ではある。) 循環節の長さは 2 であって、実際
$\frac{1}{11}=0.090909\cdots$である。(答)原始根ではない。
【問4-4】 法11における原始根を探せ。---
【解】 2 の 1 乗、2 乗、3 乗、…、10 乗を計算すると
$2, 4, 8, 5,10, 9, 7, 3, 6, 1$ (*)
と 0 以外のすべての数を亘るから、2 は原始根だ。(答) 2
ちなみに、(*)において偶数番目の数 4, 5, 9, 3, 1 を 11 の平方剰余(略して剰余)と呼び、奇数番目の 2, 8, 10, 7, 6 を平方非剰余(非剰余)と呼ぶ。文法的には「非平方剰余」ではないかと思うが、歴史的にこのような術語になったのだろう。
2 以外でも原始根になるかと言うと、必ずしもそうはならず例えば 3 だと(*)より
$3=2^8, 3^5=2^{40}=1^4$と 5 乗で 1 になってダメ。2 以外で原始根になるのは 6, 7, 8 だけである。それを知るには下図の円盤を描けばよい。
ここには 1 の(複素)10乗根
原始根を探すには実は Excel を使えば楽勝だ。例えば mod.7 の場合、2~6 を各々 2 乗、3 乗、… した結果を作ると下表のようになる。
最下行を見ればどれでも 6 乗で 1 になること (フェルマーの小定理) が見て取れるが、6 乗するまで 1 が出てこないのは 3 と 5($=3^5$ ) のみなので、この 2 数が原始根と分かる。法が変わっても Excel なら即座に原始根が見つかるし、10 の累乗の列を見れば循環節の長さが $p-1$ になる分母 $p$ もたやすく見つかる。
(答) $3,5,6,7,10,11,12,14$
なんと 10 が原始根になっているではないか。
$\frac{1}{17}$ を割り算して小数に直そう。余りは円盤の 10 から始まって 3 個ずつ左回りするから、余りの系列は
$ 10,15,14,4,6,9,5,16,7,2,3,13,11,8,12,1$
と進む。商の方を求めると循環小数
$0.0\dot{5}8823529411764\dot{7}$
が得られ、たしかに循環節の長さが $17-1=16$ で最長になる。
原始根が見つかると、円盤が描け、円盤が計算尺となって、乗除の計算が楽にできる。
法17で、例えば $14\times 13$ なら円盤上で 14 から 4 個左回りして、
14→8→7→4→12
で $14\times 13=12$ と分かるし、割り算は逆回転で右回りすればよい。
逆数は共役複素数に対応しており、例えば 10 の逆数は $x$ 軸について対称移動して 12 であると分かる。たしかに $\frac{3}{16}$ 回転と $\frac{13}{16}$ 回転を合わせれば 1 周である。
【蛇足】通常、対数尺を利用して作ったものが計算尺だが、これには物指しタイプと円盤タイプの2種類がある。上述した計算尺は後者のことである。
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