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【入試問題研究】 名古屋大学 2019年度 前期日程 理系
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【第1問】 正の整数 $n$ に対して
   $I_{n}=\int_{0}^{\pi/3} \frac{d\theta}{\cos^n \theta}$
とする。
(1) $I_{1}$ を求めよ。必要ならば $\frac{1}{\cos\theta}=\frac{1}{2}(\frac{\cos\theta}{1+\sin\theta}+\frac{\cos\theta}{1-\sin\theta})$ を使ってよい。
(2) $n \geq 3$ のとき、$I_{n}$ を $I_{n}$ と $n$ で表せ。
(3) $xyz$ 空間において $xy$ 平面内の原点を中心とする半径 1 の円板を $D$ とする。$D$ を底面とし、点 $(0,0,1)$ を頂点とする円錐を $C$ とする。$C$ を平面 $x=\frac{1}{2}$ で2つの部分に切断したとき、小さい方を $S$ とする。$z$ 軸に垂直な平面による切り口を考えて $S$ の体積を求めよ。


【解】(1) 文中の公式で
   $I_{1}=\frac{1}{2} \int_{0}^{\pi/3} (\frac{\cos\theta}{1+\sin\theta}+\frac{\cos\theta}{1-\sin\theta}) d\theta$
   $=\frac{1}{2} [ \log |1+\sin\theta|-\log |1-\sin\theta|]_{0}^{\pi/3}$
   $=\frac{1}{2} ( \log |1+\frac{\sqrt{3}}{2}|-\log |1-\frac{\sqrt{3}}{2}|)$
   $=\frac{1}{2} \log \frac{2+\sqrt{3}}{2-\sqrt{3}}$
   $=\frac{1}{2} \log (2+\sqrt{3})^2=\log (2+\sqrt{3})$ ……(答)
(2) こういう漸化式はたいがい部分積分だ。
   $I_{n}=\int_{0}^{\pi/3} \frac{d\theta}{\cos^n \theta}$
   $=\int_{0}^{\pi/3} \frac{1}{\cos^2\theta} \cdot \frac{1}{\cos^{n-2}}d\theta$
   $=[\tan \theta\cdot \frac{1}{\cos^{n-2}\theta}]_{0}^{\pi/3} -(n-2) \int_{0}^{\pi/3} \tan\theta \cdot \frac{\sin\theta}{\cos^{n-1}\theta}d\theta$
   $=\sqrt{3}\cdot 2^{n-2}-(n-2) \int \frac{1-\cos^2\theta}{\cos^n \theta}d\theta$
   $=\sqrt{3}\cdot 2^{n-2}-(n-2)(I_{n} -I_{n-2})$
よってこれより
   $(n-1)I_{n}=\sqrt{3}\cdot 2^{n-2}+(n-2)I_{n-2}$
   $I_{n}=\frac{\sqrt{3}\cdot 2^{n-2}}{n-1} +\frac{n-2}{n-1}I_{n-2}$ ……(答)
(3) 原点から真上に $z$ ($0 \leq z \leq 1/2$) だけ離れたところで水平な平面で立体 $S$ をスライスする。厚み(高さ)が $dz$ の小片ができる。
   
この小片の底面積がどうなるかを調べる。真上から小片を見た図を描く。この小片の底面は円錐の頂点から $1-z$ の距離のところにあるから、底面は半径が $1-z$ である弓形である。
   
弧の中心角の半分を $\theta$ ($0 \leq \theta \leq \pi/3$)とおく。
   弓形=扇形-直角三角形
だから、弓形の面積は
   $\frac{1}{2}(1-z)^2\cdot 2\theta-2 \cdot \frac{1}{2}\cdot \frac{1}{2}\cdot (1-z)\sin\theta$
これに厚み $dz$ を掛けて積分するのだが、置換して $z$ でなく $\theta$ で積分しよう。2つの変数の関係は
   $(1-z)\cos \theta=\frac{1}{2}$
だから、
   $1-z=\frac{1}{2\cos\theta}$,
   $dz=-\frac{\sin\theta}{2\cos^2\theta}d\theta$
よって
   $S=\int_{0}^{1/2} \{ (1-z)^2 \theta-\frac{1}{2}(1-z)\sin\theta \} dz$
   $=\int_{\pi/3}^{0}(\frac{\theta}{4\cos^2\theta}-\frac{1}{4}\tan\theta) (-\frac{\sin\theta}{2\cos^2\theta})d\theta$
   $=\frac{1}{8} \int_{0}^{\pi/3} \frac{\theta \sin\theta}{\cos^4\theta} d\theta - \frac{1}{8} \int_{0}^{\pi/3} \frac{\sin^2\theta}{\cos^3\theta} d\theta$
最後の辺に出てきた2つの積分のうちの第1のものは部分積分により
   $\int_{0}^{\pi/3} \frac{\theta \sin\theta}{\cos^4\theta} d\theta=[\theta(\frac{1}{3\cos^3\theta})]_{0}^{\pi/3}-\frac{1}{3}\int_{0}^{\pi/3}\frac{d\theta}{\cos^3\theta}$
   $=\frac{8}{9}\pi-\frac{1}{3}I_{3}$
したがって
   $S=\frac{1}{8}( \frac{8}{9}\pi-\frac{1}{3}I_{3})-\frac{1}{8}\int_{0}^{\pi/3} \frac{1-\cos^2\theta}{\cos^3\theta} d\theta$
   $=\frac{\pi}{9}-\frac{1}{24}I_{3}-\frac{1}{8}I_{3}+\frac{1}{8}I_{1}$
   $=\frac{\pi}{9}-\frac{1}{6}I_{3}+\frac{1}{16}I_{1}$
先に求めておいた漸化式より
   $I_{3}=\sqrt{3}+\frac{1}{2}I_{1},I_{1}=\log(2+\sqrt{3})$
だから、
   $S=\frac{\pi}{9}-\frac{\sqrt{3}}{6}+\frac{1}{24}I_{1}$
   $=\frac{\pi}{9}-\frac{\sqrt{3}}{6} +\frac{\log(2+\sqrt{3})}{24}$ ……(答)
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【第2問】 空間内に $\angle BAC=\frac{\pi}{2}$ の直角二等辺三角形 $ABC$ と平面 $P$ がある。点 $A$ は $P$ 上にあり、点 $B$ と点 $C$ は $P$ 上にはなく、$P$ に関して同じ側に位置している。点 $B,C$ から $P$ に下ろした垂線と $P$ との交点をそれぞれ $B',C'$ とする。
(1) $\vec{AB'}\cdot\vec{AC'} + \vec{B'B}\cdot \vec{C'C}=0$ を示せ。
(2) $\angle B'AC' > \frac{\pi}{2}$ を示せ。
(3) $P$ 上の三角形 $AB'C'$ の辺の長さは短いものから $4,\sqrt{21},7$ であった。このとき、辺 $AB$ の長さを求めよ。


【解】(1) $\angle BAC=\frac{\pi}{2}$ より
   $\vec{AB}\cdot\vec{AC}=(\vec{AB'}+\vec{B'B})\cdot (\vec{AC'}+\vec{C'C})$
   $=\vec{AB'}\cdot\vec{AC'} + \vec{B'B}\cdot \vec{C'C} +\vec{AB'}\cdot \vec{C'C}+\vec{AC'}\cdot\vec{B'B}=0$
   
ところで、平面 $P$ 上のベクトル $\vec{AB'},\vec{AC'}$ は ベクトル $\vec{B'B},\vec{C'C}$ のいずれとも
垂直だから
   $\vec{AB'}\cdot \vec{C'C}=\vec{AC'}\cdot\vec{B'B}=0$
となって、
   $\vec{AB'}\cdot\vec{AC'} + vec{B'B}\cdot \vec{C'C}=0$ ■
(2) 内積の公式より
   $\cos \angle B'AC' =\frac{\vec{AB'}\cdot\vec{AC'}}{|\vec{AB'}||\vec{AC'}|}$
だが前問より、$\vec{AB'}\cdot\vec{AC'} =- \vec{B'B}\cdot \vec{C'C}$であり、しかも 2つのベクトル $\vec{B'B},\vec{C'C}$ は向きが同じだからなす角が $0$ となり
   $\cos \angle B'AC' =-\frac{|\vec{B'B}||\vec{C'C}|}{|\vec{AB'}||\vec{AC'}|}<0$
よって $\angle B'AC'$ は鈍角、すなわち $\angle B'AC' > \frac{\pi}{2}$ ■
(3) 前問より $\triangle AB'C'$ は鈍角三角形だから最長辺は $B'C'=7$ で確定である。あとの長さは、そもそも二等辺三角形だからどっちがどっちでも同じだ。
そこで、$AB'=4,AC'=\sqrt{21}$ と仮定しよう。前問に出てきた
   $\cos \angle B'AC' =-\frac{|\vec{B'B}||\vec{C'C}|}{|\vec{AB'}||\vec{AC'}|}$
を使う。左辺は余弦定理より
   $\cos \angle B'AC'=\frac{|\vec{AB'}|^2+|\vec{AC'}|^2-|\vec{B'C'}|^2}{2|\vec{AB'}||\vec{AC'}|}$
   $=\frac{4^2+\sqrt{21}^2-7^2}{2|\vec{AB'}||\vec{AC'}|} = \frac{-6}{|\vec{AB'}||\vec{AC'}|}$
と変形できるから
   $|\vec{B'B}||\vec{C'C}|=6$ ……(*)
ところで図より三平方の定理を使って
   $AB^2=|\vec{B'B}|^2+16=|\vec{C'C}|^2+21$
よって
   $|\vec{B'B}|^2-|\vec{C'C}|^2=5$ ……(**)
(*), (**) の連立方程式より
   $|\vec{B'B}|^4-5|\vec{B'B}|^2-36=0 \Rightarrow (|\vec{B'B}|^2+4)(|\vec{B'B}|^2-9)=$
となって、$|\vec{B'B}|=3, |\vec{C'C}|^2=2, AB^2=25$ を得るから
   $AB=5$ ……(答)
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【第3問】 正の整数 $n$ の正の平方根 $\sqrt{n}$ は整数ではなく、それを 10 進法で表すと、小数第 1 位は 0 であり、第2位は 0 以外の数であるとする。
(1) このような $n$ の中で最小のものを求めよ。
(2) このような $n$ を小さいものから順に並べたときに 10 番目にくるものを求めよ。


【解】 (1) $n$ が平方数ならその平方根はピッタリ整数になってしまうから、$N=0,1,2,3,\cdots$ とするとき
   $N^2 < n < (N+1)^2=N^2+2N+1$
   
ここで
   $n=N^2+k, (1 \leq k \leq 2N)$
とおこう。これの正の平方根が所与の条件を満たすから
   $N+\frac{1}{100} \leq \sqrt{N^2+k} < N+\frac{1}{10}$
これを2乗して
   $N^2+\frac{N}{50}+\frac{1}{10000} \leq N^2+k < N^2+\frac{N}{5} +\frac{1}{100}$,
   $\frac{N}{50}+\frac{1}{10000} \leq k < \frac{N}{5} +\frac{1}{100}$
この連立不等式を $N$ について解くと
   $5k-\frac{1}{20}< N \leq 50k-\frac{1}{200}$
   (ただし $1 \leq k \leq 2N$)
分数 $1/20,1/200$ は些細なものだからたいして影響はないのだが、ただ不等号は以下のように変化する。
● $k=1 \Rightarrow 5 \leq N <50$
$n=N^2+k=N^2+1$ より
   $n=26,37,50,65,82,101,122,145,170,197,\cdots$
● $k=2 \Rightarrow 10 \leq N <100$
$n=N^2+k=N^2+2$ より
   $n=102,123,146,171,198,\cdots$
● $k=3 \Rightarrow 15 \leq N <150$
$n=N^2+k=N^2+3$ より
   $n=228,\cdots$
ここまでで整理すると、$n$ は小さい方から
   $n=26,37,50,65,82,101,102,122,123,145,146,\cdots$
だから $k \geq3$ は調べる必要がなかった。
【答】(1)最小は $n=26$,(2) 10番目は $n=145$
【蛇足】 Excel で計算してみた。
   
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【第4問】 正の整数 $n$ に対して $1,2,\cdots,n$ を一列に並べた順列を考える。そのような順列は $n!$ 個ある。このうち 1つを等確率で選んだものを $(a_{1},a_{2},\cdots,a_{n})$ とする。この $(a_{1},a_{2},\cdots,a_{n})$ に対し、各添字 $i=1,2,\cdots,n$ について、$a_{i}$ の値が $j$ であるとき、その $j$ を添字にもつ $a_{j}$ の値が $k$ であることを $a_{i}=j \rightarrow a_{j}=k$ と書くことにする。ここで $a_{i}=j \rightarrow a_{j}=k \rightarrow a_{k}=l \rightarrow \cdots$ のようにたどり、それを続けていく。例えば $(a_{1},a_{2},a_{3},a_{4},a_{5},a_{6},a_{7})=(2,5,6,1,4,3,7)$ のとき、
   (i) $a_{1}=2 \rightarrow a_{2}=5 \rightarrow a_{5}=4 \rightarrow a_{4}=1 \rightarrow a_{1}=2$
   (ii) $a_{3}=6 \rightarrow a_{6}=3 \rightarrow a_{3}=6$
   (iii) $a_{7}=7 \rightarrow a_{7}=7$
となり、どの $i$ から始めても列は必ず一巡する。この一巡するそれぞれの列をサイクル、列に現れる相異なる整数の個数をサイクルの長さと呼ぶ。上の (i), (ii), (iii) は長さがそれぞれ 4,2,1 のサイクルになっている。
(1) $n=3$ とする。選んだ順列が長さ 1のサイクルを含む確率を求めよ。
(2) $n=4$ とする。長さ 4 のサイクルを含む順列をすべて挙げよ。
(3) $n$ 以下の正の整数 $k$ に対して
   $\sum_{j=k}^{n} \frac{1}{j} > \log(n+1) -\log k$
を示せ。
(4) $n$ を奇数とする。選んだ順列が長さ $\frac{n+1}{2}$ 以上のサイクルを含む確率 $p$ は $p>\log 2$ をみたすことを示せ。

【解】(1) いくつかのサイクルに分割しよう。
● 1-サイクルと、2-サイクルの積。
長さ 1のサイクルは 3個作れる。残った 2つの整数で長さ 2のサイクルは 1通りしか作れない。
● 1-サイクルが3つ。
これは恒等置換と呼ばれるが、1通りしかない。
よって、求めるべき確率は
   $\frac{3 \times 1+1}{3!}=\frac{2}{3}$ ……(答)
(2) 4-サイクルとは、4個で作る円順列だ。それは $(4-1)!=6$ 個ある。作り方は 1 を先頭にしてこれを固定し、残り 3この整数を任意に並べる。すなわち
   $(1,2,3,4), (1,2,4,3), (1,3,2,4), (1,3,4,2), (1,4,2,3), (1,4,3,2)$ ……(答)
【蛇足】
4つの数字で作る 1000台の 4桁の整数と同じ。
(3) 右辺は積分、左辺は過剰積分だ。そこで、下図のように $y=\frac{1}{x}$ のグラフを描く。この関数は単調減少だから、$x$軸とグラフと 2本の縦線 $x=x_{0}$ と $x=x_{0}+1$ で囲まれた図形の面積は、縦 $\frac{1}{x_{0}}$ で横 $1$ の長方形の面積より小さい。
   
   $\frac{1}{x_{0}} > \int_{x{0}}^{x_{0}+1} \frac{1}{x} dx$
これの和をとって
   $\frac{1}{k} + \frac{1}{k+1} +\cdots +\frac{1}{n} >\int_{k}^{k+1}\frac{1}{x}dx +\int_{k+1}^{k+2}\frac{1}{x}dx +\cdots +\int_{n}^{n+1}\frac{1}{x}dx$,
   $\sum_{j=k}^{n} \frac{1}{j} >\int_{k}^{n+1}\frac{1}{x}dx$
よって
   $\sum_{j=k}^{n} \frac{1}{j} >[ \log x]_{k}^{n+1}=\log(n+1)-\log k$ ■
(4) 番号「1」が属するサイクルの長さが $\frac{n+1}{2}$ 以上である確率を求めよう。
番号「1」の属する円順列の長さが $j$ である確率は、$j$ 個取ってきてそれで円順列を作ればいいと考えて
   $\frac{_{n}C_{j} (j-1)!(n-j)!}{n!} =\frac{1}{j}$
したがって、サイクルの長さ $j$ が $\frac{n+1}{2}$ 以上である確率 $p$ は
   $p= \sum_{j=(n+1)/2}^{n} \frac{1}{j} >\log(n+1)-\log(\frac{n+1}{2})=\log 2$ ■
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